弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人A弁護人郭明徳、同大里一郎の上告趣意第一点について。
 原判決挙示の証拠、特に第一審第一回公判調書中原審分離前の相被告人Bの供述
記載、Cに対する検察事務官の聴取書により、原判決の如く被告人が本件犯行に共
謀加担した事実はこれを認めるに十分である。したがつて、所論は事実誤認の主張
であつて、上告適法の理由とならない。
 同第二点について。
 所論は量刑不当の主張であるから、これまた上告適法の理由とならない。
 被告人D弁護人石川小市の上告趣意第一点について。
 所論は、被告人がB等の犯した本件密輸出行為に全然関与しなかつた旨主張し、
もつて、原判決の適法に認定した事実の誤認を前提として独自の法律論を主張する
ものたるに過ぎないものである。即ち原判決の認定判示する事実によれば、被告人
右B等が密輸出をするであろうことを察知しながら、所論ハンカチーフを同人等に
売却してその密輸出行為を容易ならしめたというのであるから、その幇助犯として
も責任を免れないことは当然である。それ故論旨は到底採用に値いしない。
 同第二点について。
 原判決挙示の証拠、特に原判決の摘録する第一審第一回公判調書中の被告人の供
述記載、同公判調書中のBの供述記載、Cに対する検察事務官の聴取書中の供述記
載によつて、被告人が前記B等の密輸出の企図に基く買受けであることを察知しな
がら、敢てハンカチーフを同人等に売却した原判示事実を十分に認めることができ
るのであるから、被告人に所論の犯意なしとは到底いうを得ない。従つて原判決に
は証拠に基かずして幇助を認定したという如き違法はない。また、原判決挙示の征
拠、特に第一審第一回公判調書中のBの供述記載により、所論E丸に積載したハン
カチーフが被告人の売却したものと同一品であることは極めて明白であるから、こ
の点の論旨も理由がない。
 同第三点について。
 原審昭和二五年一月二三日の第三回公判調書によれば、裁判長は証拠調べをなす
旨を告げ「原審(第一審)公判調書記載の各証拠書」を公判廷に顕出した旨の記載
がある。そして右第一審第三回公判調書によると証拠書類としてその公判廷に顕出
されたものの内には「一、押収調書、一、E丸遭難証明書其他関係書類」と記載さ
れている。そこで所論の領置目録は記録編綴の書類の順序から見ても右「其他関係
書類」中に包含されていることを十分に窺われるから、所論領置目録は原審におい
て証拠調べがなされたものと認むるを相当とする。ただ右「…:其他関係書類」と
いう如き十把一からげ的な調書の作成記載は不正確のそしりを免れず、そのため疑
問を生ずる場合があるから、厳に注意すべきことである。以上の理由により、本点
論旨はこれを件用することができない。
 被告人B弁護人下田三子夫の上告趣意第一点について。
 記録第四冊第一丁(通し丁数一四八〇丁)以下の告発書によれば、神戸税関長F
は昭和二二年一二月一三日附鳥取地方検察庁山崎検察官宛、所論B被告人をも指名
し、もつて本件事実を指定して告発していることが明瞭であるから、論旨は理由が
ない。
 同第二点について。
 (一)本件ハンカチーフの買主が所論の如くGであつたとしても、原判決が適法
に認定判示した事実によると、被告人は右G等と共謀して、本件ハンカチーフを密
輸出をしたというのであるから、被告人として共犯の責任を免れることはできない
のである。したがつて所論は畢竟事実誤認を前提とする議論であつて、採用するに
足りない。
 (二)E丸に積載した本件ハンカチーフはDから買受けたものであることは、原
判決挙示の証拠、特に原審及び第一審の各第一回公判調書中における被告人B本人
の供述記載に徴し明白であるから論旨は理由がない。
 (三)原判決挙示の諸証拠により、原判決判示の所論の点の事実は十分にこれを
認めることができるから、原判決には所論の違法はなく、論旨は理由がない。
 (四)原判決挙示の証拠を綜合すれば、被告人BがG等と共謀の上、本件密輸出
行為に加担した事実は明瞭に肯認することができる。論旨は事実誤認の主張に帰す
るから、上告適法の理由とならない。
 よつて、刑訴施行法二条旧刑訴四四六条に従い、裁判官全員一致の意見によつて、
主文のとおり判決する。
 検察官 安平政吉関与
  昭和二六年一一月二日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎

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