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平成30年7月18日判決言渡
平成30年(ネ)第10010号特許権侵害差止等請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所平成29年(ワ)第10742号)
口頭弁論終結日平成30年6月6日
判決
控訴人(一審原告)アイリスオーヤマ株式会社
同訴訟代理人弁護士生田哲郎
名越秀夫
高橋隆二
佐野辰巳
中所昌司
吉浦洋一
被控訴人(一審被告)日立アプライアンス株式会社
同訴訟代理人弁護士古城春実
牧野知彦
加治梓子
同訴訟代理人弁理士井上学
主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。ただし,原判決の別紙1被告製品目録Aに記載された製
品のうち別紙物件目録に記載されていない各製品に係る差止請求及び廃棄請求に関
する部分を除く。
2被控訴人は,別紙物件目録記載の各製品を製造,譲渡してはならない。
3被控訴人は,別紙物件目録記載の各製品を廃棄せよ。
4被控訴人は,控訴人に対し,6億6000万円及びこれに対する平成29年
4月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要(以下,用語の略称及び略称の意味は,本判決で付するもののほ
かは,原判決に従い,原判決に「原告」とあるのを「控訴人」に,「被告」とある
のを「被控訴人」に,適宜読み替える。また,原判決の引用部分の「別紙」をすべ
て「原判決別紙」と改める。なお,書証の掲記は,枝番号を全て含むときは,枝番
号の記載を省略する。)
1事案の要旨
本件は,発明の名称を「加熱処理システム,加熱調理器および換気ファン装置」
とする発明についての本件特許1(特許第3797900号)に係る本件特許権1
及び発明の名称を「加熱調理器」とする発明についての本件特許2(特許第379
7904号)に係る本件特許権2並びに本件各特許権に基づく被控訴人(一審被告)
に対する一切の請求権の譲渡を受けたと主張する控訴人(一審原告)が,被控訴人
(一審被告)の製造,販売する被告製品A(原判決別紙1被告製品目録A記載の各
製品)及び被控訴人が過去に製造し,販売していた被告製品B(原判決別紙2被告
製品目録B記載の各製品)につき,①被告各製品(被告製品A及びB)は,本件発
明1-1(本件特許1に係る本件明細書等1の特許請求の範囲の請求項1記載の発
明)又は本件発明1-2(同請求項5記載の発明)の技術的範囲に含まれる物の生
産にのみ用いる物であるから,被控訴人が被告各製品を製造し,販売する行為は本
件特許権1を侵害するものとみなされる行為である(特許法101条1号),②被
告各製品は,本件発明1-1又は同1-2の技術的範囲に含まれる物の生産に用い
る物であってこれらの発明の課題の解決に不可欠なものであるから,被控訴人が本
件発明1-1及び同1-2が特許発明であることを知りながら被告各製品を製造し,
販売する行為は本件特許権1を侵害するものとみなされる行為である(特許法10
1条2号),③被告各製品と別紙訂正後被告製品目録C記載の各レンジフードファ
ン(以下,併せて「対応レンジフードファン」という。)とを併せた加熱調理シス
テムは,本件発明1-1又は同1-2の技術的範囲に属するから,被告各製品と対
応レンジフードファンを併せて販売する行為は本件特許権1を侵害する行為である,
④被告各製品は,本件発明2-1(本件特許2に係る本件明細書等2の特許請求の
範囲の請求項2記載の発明)又は本件発明2-2(同請求項4記載の発明)の技術
的範囲に属するから,被控訴人が被告各製品を製造し,販売する行為は本件特許権
2を侵害する行為である,と主張して,被控訴人に対し,①特許法100条1項に
基づき,被告製品Aの製造及び販売の差止め,②同条2項に基づき,被告製品Aの
廃棄,③特許権侵害の不法行為による損害賠償請求権(対象期間は,平成19年1
月1日から平成28年12月31日までである。また,本件特許権1の侵害を原因
とする損害賠償請求と,本件特許権2の侵害を原因とする損害賠償請求とは,選択
的併合の関係にある。)に基づき,損害賠償金6億6000万円(逸失利益8億8
500万円の一部である6億円及び弁護士費用6000万円)及びこれに対する不
法行為後の日である平成29年4月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割
合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
原判決は,本件発明1-1,同1-2,同2-1及び同2-2についての特許は,
特許法29条2項に違反してされたものであって,特許無効審判により無効にされ
るべきものと認められるから,控訴人は,被控訴人に対し,本件特許権1又は2を
行使することができず,その余の点を判断するまでもなく,控訴人の請求にはすべ
て理由がないとして,控訴人の各請求をいずれも棄却したため,控訴人は,これを
不服として本件控訴を提起した。
なお,控訴人は,被告製品Aのうち,別紙物件目録に記載されていない各製品に
係る差止請求及び廃棄請求については,控訴を提起しなかった。
2前提事実(当事者間に争いのない事実,当裁判所に顕著な事実並びに文中に
掲記した証拠及び弁論の全趣旨により認定できる事実)
以下のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」の第2の2のうち3頁2
3行目~7頁2行目に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)原判決4頁14行目の「東芝がその後吸収合併した」を削除し,同頁1
9行目の「あったが,」の後に「東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディ
ングス株式会社の持分については,平成26年2月19日を受付日として,一般承
継による本権の持分移転を原因として,東芝を持分権者とする特許権の持分の移転
登録がされ,」を加える。
(2)原判決6頁21行目の「8,」を削除する。
(3)原判決6頁26行目~7頁1行目の「上記各構成要件・・・被告は,」
を削除する。
3争点及び争点に関する当事者の主張
争点及び争点に関する当事者の主張は,次のとおり,当審における主張を追加す
るほかは,原判決「事実及び理由」の第2の3及び4(7頁3行目~30頁21行
目)に記載のとおりであるから,これを引用する。
ただし,原判決9頁26行目の「トッププレートで」を「トッププレートに」と,
11頁3行目の「加熱料理システム」を「加熱調理システム」と,同頁9行目の
「販売」を「使用」と,同頁13行目~15行目の「購入することになる
が,・・・に用いられる」を「採用する場合があり得るところ,このような用途は,
他の用途に該当する」と,13頁5行目~7行目の「本件明細書等2には,・・・
わかる」を「本件明細書等2の記載によると,「通電制御手段」は,加熱手段を制
御する機能と換気装置を制御する機能を有する一つの制御回路であると理解される」
と,同頁15行目の「両者は異なる制御回路によるものである」を「加熱手段と換
気装置は,異なる制御回路により制御されている」と,それぞれ改め,16頁6行
目~14行目の「乙4発明(1)の・・・そうすると,」を削除し,同頁24行目の
「(ウ)」を「(イ)」と,17頁1行目~2行目の「「赤外線送信フィールド6」
が,・・・個数については」を「調理器具2に設けられている「赤外線送受信フ
ィールド6」の個数は」と,18頁26行目~19頁1行目の「『赤外線送信フ
ィールド6』が,・・・個数については」を「調理器具2に設けられている『赤外
線送受信フィールド6』の個数は」と,19頁10行目~11行目の「天板の形状
がフラットであるとか,・・・自明とはいえない」を「「視覚的に簡素なデザイン」
であることと電子調理器の天板の形状や材質とは関係がない。そうすると,天板に
耐熱ガラスを採用する以外の構成はあり得ない旨の被控訴人の主張には根拠がない」
と,21頁10行目の「無効理由1」を「無効理由2-1」と,同頁16行目~2
0行目の「原告は,・・・図面にはない」を「本件明細書等2には「表示手段の近
傍」であれば「通信用投光部」をどこに配置してもよいとの記載はなく,また,当
該構成要件に関する説明はなく,図5があるのみであるから,当該構成要件は,本
件明細書等2においてサポートされていない」と,22頁3行目の「の主張として
成り立っていない」を「としての主張が不明確である」と,それぞれ改め,同頁7
行目の「仮に,」を削除し,同頁8行目~10行目の「につき,原告が主張す
る・・・いえない」を「は,その意味を特定できる構成ではなく,「通信用投光部
を表示手段の近傍といえればどこに配置してもよい」という発明は,本件明細書等
2には開示されていないから,本件発明2-1及び同2-2には,当該補正によっ
て新規事項が追加されている」と,同頁18行目~20行目の「原告は,・・・無
効理由3は」を「「前記表示手段の近傍に配置」の意義は,必ずしも加熱手段と通
信用投光部の間に表示手段が設けられている必要はなく,通信用投光器の上に調理
容器が置かれると表示手段の表示がわからなくなるような位置に配置されていれば
よいのであって,被控訴人の補正要件違反の主張は」と,それぞれ改め,23頁1
0行目~15行目の「乙4発明(2)の・・・そうすると,」を削除し,24頁5行
目の「(ウ)」を「(イ)」と,同頁13行目~23行目の「乙4発明(2)は,・・・容
易に想到し得たことである」を「相違点2-①は,相違点1-②と同様の理由によ
り,実質的な相違点ではないか,容易想到である」と,同頁25行目~25頁11
行目の「電子調理器の・・・容易に想到し得たことである」を「相違点2-②は,
相違点1-①と同様の理由により,実質的な相違点ではないか,容易想到である」
と,それぞれ改め,同頁17行目~18行目の「そうすると,・・・記載されてい
るといえる。」を削除し,同頁19行目~20行目の「加熱手段の・・・としても」
を「この点が相違点であるとしても」と,同頁23行目~25行目の「「セラミッ
クガラスの・・・備え付けられている」を「加熱手段の火力を表示する表示装置を
調理器具のトッププレートの下方に設けるとともに赤外線受信機をその表示装置の
近傍に配置する」と,同頁25行目~同26頁2行目の「乙4発明(2)に・・・容
易に想到し得たことである」を「「トッププレートの下方に,前記加熱手段の火力
を表示する表示手段を備え,前記通信用投光部を,前記表示手段の近傍に配置」す
ることは,設計的事項の問題にすぎない」と,同頁4行目~11行目の「赤外線
の・・・容易に想到し得たことである」を「相違点2-④は,相違点1-③と同様
の理由により,実質的な相違点ではないか,容易想到である」と,同頁23行目~
26行目の「相違点2-④について,・・・明白である」を「相違点2-①は,争
う。乙4発明(2)では,赤外線送受信フィールド6は,調理器具2の外部表面から
その表面が露出する態様で埋め込まれている。また,相違点2-④は,「本件発明
2-1及び同2-2では,「前記通信用投光部は,前記トッププレートの下方に複
数個配設されている」のに対し,乙4発明(2)では,その数が一つである点」とす
べきである」と,27頁3行目~18行目の「被告は,・・・認められないという
べきである」を「争う。相違点1-②と同様である」と,同頁20行目~25行目
の「被告は,・・・自明とはいえない」を「争う。相違点1-①と同様である」と,
それぞれ改め,28頁1行目の「被告は,・・・とするが,」及び同頁5行目~1
0行目の「次に,・・・しかし,」を,それぞれ削除し,同頁16行目~22行目
の「被告は,・・・開示されていない」を「争う。相違点1-③と同様である」と,
同頁26行目の「無効理由4」を「無効理由2-4」と,それぞれ改め,29頁4
行目の「既に主張してきたとおり」及び同頁26行目の「前記前提事実(2(2))の
とおり,」を,それぞれ削除し,30頁3行目の「東芝ら」を「東芝ライフスタイ
ル株式会社」と改め,同行目の「自己の」を削除し,同頁4行目の「損害賠償請求
権を」の次に「,東芝についてのものを含めて」を加え,同頁20行目~21行目
の「そもそも・・・立証していない。」を削除する。
(当審における当事者の主張)
1控訴人
(1)無効理由1(乙4を主引例とする進歩性欠如)に関する判断の誤り
ア相違点1-1及び1-2の判断の誤り
(ア)a原判決が,乙5~7から「調理器具に備え付けられ,調理器具外
に備え付けられた機器との間で赤外線を送受信する赤外線送受信器を,調理器具の
トッププレートの下方に配置した……構成」を周知技術であると認定したのは,誤
りである。
乙7には,調理器具のトッププレートの下方に「赤外線センサーレシーバ」すな
わち赤外線受信器を配置することが記載されているものの,「赤外線送受信器」を
配置することは記載されていない。
乙6においては,「赤外線送受信器」をトッププレートの下方に配置するのは,
「特別な実施形態」に限られており,通常の実施態様であるとは記載されていない。
そうすると,乙6及び7には,「赤外線送受信器を,調理器具のトッププレート
の下方に配置した……構成」が,一般的な技術として記載されているとはいえず,
前記構成が記載されているといえるのは,乙5のみである。
したがって,乙5~7に基づいて上記構成が周知技術であると認定することはで
きない。
b原判決が,乙5のみに記載されている技術的事項と,乙6のみに
記載されている技術的事項を併せて,「調理器具に備え付けられ,調理器具外に設
けられた機器との間で赤外線を送受信する赤外線送受信器を,調理器具のトッププ
レートの下方に配置した上で,当該トッププレートとして,赤外線が透過する性質
を有するセラミックガラスを採用し,このトッププレートを介して赤外線信号を受
送信する構成」が周知の構成であったと認定しているのは,誤りである。
このように,一つの特許公報に記載された技術的事項と別の特許公報に記載され
た技術的事項を組み合わせて周知技術であるとすることはできない。
c原判決が,乙6に記載された「赤外線送受信装置を備える調理機器
において,赤外線送受信装置を損傷や汚染から保護することによりワイヤレス送信
の信頼性を確保する」という課題を「自明な課題」と認定しているのは,誤りであ
る。
この課題が,乙6記載の発明以外の発明にも共通する解決課題であるとする根拠
はない。乙4には,「調理機器および排煙装置から成る今日の機器コンビネーショ
ンのその他の欠点は,排煙装置が操作および表示エレメントを有していて,この操
作および表示エレメントを清潔に保っておくことはしばしば困難であり」(【00
03】)との記載があるが,この記載における「清潔に保っておく」対象は排煙装
置であり,調理機器ではない。そのため,乙6の記載に加えて,乙4の記載を考慮
し得ないはずである。
d乙5~7をそれぞれ公知技術とみて,引用発明1に適用して,本件
発明1-1の構成要件G1の構成とすることが,容易想到であるとはいえない。
(a)乙4では,排煙装置に操作及び表示エレメントを有することを
欠点と評価している([0003])のに対し,乙5に記載された技術的事項は,
乙4において欠点と評価されている,排煙装置(レンジフード)に操作及び表示エ
レメントを有する技術的事項であるから,引用発明1に,乙5に記載された技術的
事項を適用してみることを阻害する事情がある。
また,乙5において,レンジフード(5)内に組み込まれている赤外線送信機
(6)から赤外線受信器(4)に送られている信号は,調理レンジの出力に関する
信号であり,換気ファンの駆動制御に関する信号ではないから,乙5には本件発明
1-1の構成要件G1が記載されていない。したがって,引用発明1に,乙5に記
載された技術的事項を適用することができたとしても,本件発明1-1の構成要件
G1にはならない。
(b)乙4の[0003]の「操作および表示エレメントを清潔に保
つ」対象は排煙装置にある「操作および表示エレメント」であるのに対し,乙6に
記載されている「こぼれた調理物による損傷と汚染から保護」の対象は調理機器内
に設けられた赤外線受信器であるから,清潔に保つ対象物が引用発明1と乙6に記
載された技術的事項では異なっている。このため,引用発明1に乙6に記載された
技術的事項を組み合わせる動機付けがない。
また,乙6には調理器具による操作装置への熱的影響を回避する技術的事項が記
載されており,その実施態様では,調理器具外(設置場所は排煙装置に限定されな
い)に設けられた操作装置5に赤外線送信機3が設けられ,調理器具に赤外線受信
器4が設けられている。このように,乙6に記載された技術的事項において,赤外
線送信機3から赤外線受信器4に送信されている赤外線信号は,調理器具の運転操
作に関する信号であり,換気ファンの駆動制御に関する信号ではない。
さらに,乙6の図2,図4では,赤外線受信器4はトッププレート2の下側であ
るものの受け皿12の外側に描かれており,赤外線受信器4を調理器本体に収容し
ていないという相違点がある。
したがって,乙6に記載された技術的事項を引用発明1に適用する動機付けが存
在しないし,引用発明1に乙6に記載された技術的事項を適用できたとしても,本
件発明1-1の構成要件G1にはならない。
(c)乙7の図面に記載された実施態様では,調理器の制御部(1)
が調理器上方の調理器フード(4)に設けられており,調理器側には赤外線セン
サーレシーバー又は無線機(5)が設けられている。乙7に記載された実施態様で
は,制御部(1)に設けられた送信機から赤外線センサーレシーバー又は無線機
(5)に送信されている信号は,調理器のオン/オフの信号であって,換気ファン
の駆動制御の信号ではない。
また,乙7では,赤外線センサーレシーバー又は無線機を調理器本体に収容する
ことは記載されていない。
したがって,乙7に記載された技術的事項を引用発明1に適用する動機付けが存
在しないし,引用発明1に乙7に記載された技術的事項を適用できたとしても,本
件発明1の構成要件G1にはならない。
e仮に,乙5~7から周知技術を認定することができたとしても,原
判決が,「周知技術」又は「自明な課題」であることのみを理由として,引用発明
1に周知技術を適用して本件発明1-1及び同1-2に到達することが容易であっ
たと判断しているのは,進歩性の判断手法に誤りがある。
特定の技術が「周知である」ということは,「主たる引用発明に,特定の技術を
適用して,前記相違点に係る構成に到達することが容易である」との立証命題の成
否に関する判断過程において,特定の文献に記載,開示された技術内容を上位概念
化したり,抽象化したりすることを許容することを意味するものではなく,また,
特定の文献に開示された周知技術の示す具体的な解決課題及び解決方法を捨象して
結論を導くことを,当然に許容することを意味するものでもないから,原判決の進
歩性の判断手法は,後知恵との批判を免れない誤った判断手法である。
なお,原判決は,乙6の解決課題を摘示しているが,周知技術の認定根拠の一つ
である乙6に解決課題が記載されているからといって,これが認定された周知技術
に係る解決課題となることにはならず,周知技術を主たる引用発明に適用する動機
付けにはならない。また,本件発明1-1と従たる引用発明(乙6記載の発明)に
解決課題の共通性があるからといって,周知技術を主たる引用発明(乙4記載の発
明)に適用することの動機付けにはならない。
(イ)相違点1-1及び1-2は容易想到ではない。
a乙5~7に記載された技術的事項の一部分を抜き出して抽象化でき
る理由がなく,また,仮に,抽象化できると仮定しても,抜き出した技術的事項を
引用発明1に適用する動機付けもない。
b引用発明1は,調理機器の運転状態に対応して調理機器側から排煙
装置の運転を制御する発明であるのに対し,乙5~7記載の発明は,いずれも,加
熱調理器を排煙装置側又は外部から遠隔操作する発明である。
引用発明1と乙5~7記載の発明には,制御信号の発信が調理機器側からか排煙
装置側からかの基本的な違いがあり,それに応じて,発明の構成が大きく異なって
いるため,組み合わせる動機付けが存在しない。
c引用発明1と乙5~7記載の発明は,それぞれ,解決課題が大きく
相違しているため,組み合わせる動機付けが存在しない。
引用発明1の解決課題は「必要に応じて排煙装置の運転を可能にするような,調
理機器と排煙装置とを有する機器コンビネーション…を提供することである。」
(【0004】)のに対し,乙5記載の解決課題は「多くの場合には,操作ユニッ
トは,調理レンジの高温となる範囲に位置している。このことは,温度に敏感な操
作ユニットの電子部品の熱的な保護を必要とする」(訳文1頁17行~18行)こ
とを解消すること,乙6記載の解決課題は「従来技術に基づく操作装置は調理器具
に直接存在し,したがって調理器具によって生成される熱の影響下にある」(訳文
2頁13行~14行)ことを解消すること,乙7記載の解決課題は「家庭電化製品
のリモート制御のシステム」(訳文3頁3行~4行)を提供することである。
イ相違点1-3の判断の誤り
(ア)a原判決においては,本件発明1-2と乙6に記載された発明との
間に課題の共通性があることが摘示されている。
しかし,乙6に共通の課題が記載されているからといって自明な解決課題という
わけではなく,主たる引用発明に従たる引用発明を適用する動機付けにはならない。
bそもそも,主たる引用発明の課題と従たる引用発明の課題が共通し
ているわけではないから,主たる引用発明に従たる引用発明を適用することの動機
付けにはならないはずであるところ,原判決の判断は,主たる引用発明に従たる引
用発明を適用することの動機付けについて,何ら検証していない。
(イ)相違点1-3は容易想到ではない。
a上記(ア)のとおり,引用発明1に乙6に記載された技術的事項を適
用する動機付けはないから,相違点1-3が容易に想到し得たものであるとはいえ
ない。
b乙6には,赤外線受信器4を赤外線受信器4A~4Dに複数化する
ことが記載されているが,赤外線送信機3を複数化することは記載されていない。
したがって,乙6には換気ファンの駆動信号を送信する送信手段を複数化する構
成が記載されておらず,相違点1-3に係る構成は記載されていない。
なお,乙6には,「特別な実施態様において,双方向赤外線伝送路を設けること
ができる。その場合,調理器具の運転状態を調節するための制御信号を赤外線信号
として伝送するのみではなく,調理器具の状態信号または別の信号を,料理器具の
現在の運転状態を表示する表示装置へ伝送することができる」(訳文2頁44行~
47行)と記載されている。しかし,この構成は,「調理器具の運転状態を調節す
るための制御信号」を調理器具側で受信することと,「調理器具の状態信号または
別の信号」を表示装置へ送信するための受送信器を複数化することにすぎず,換気
ファンの駆動信号を送信する送信手段を複数化する本件発明1-2の構成が開示さ
れているわけではない。
したがって,引用発明1に乙6に記載された技術的事項を適用したとしても,構
成要件I1にならず,容易に想到し得たものではない。
(2)無効理由2-4(乙4を主引例とする進歩性欠如)に関する判断の誤り
ア相違点2-1及び2-2の判断の誤り
(ア)a「調理器具に備え付けられ,調理器具外に備え付けられた機器と
の間で赤外線を送受信する赤外線送受信機を,調理器具のトッププレートの下方に
配置した上で,当該トッププレートとして,赤外線が透過する性質を有するセラミ
ックガラスを採用し,このトッププレートを介して赤外線信号を送受信する構成」
を周知技術と認定したことは,誤りである。
b特定の技術的事項が周知であることのみを理由として,主たる引用
発明に当該特定の技術的事項を適用することが容易であるという立証命題の検証を
省くことはできない。
c乙6に記載された解決課題と本件発明2-1及び同2-2の解決課
題との間に共通性があったとしても,乙6に記載された課題が,「周知技術」全般
に共通する解決課題であるとする根拠がないから,乙6に課題が記載されていると
いうだけでは,主たる引用発明に周知技術を適用する動機付けにはならない。主た
る引用発明と従たる引用発明の課題が共通しているわけでもないから,主たる引用
発明に周知技術を適用する動機付けにはならない。
したがって,主たる引用発明である引用発明2に従たる引用発明を適用すること
が容易であったことについての原判決の判断は誤りである。
(イ)相違点1-1及び1-2と同様の理由で,相違点2-1及び2-2
は,本件出願日2に当業者が容易に想到したものではない。
イ相違点2-3の判断の誤り
(ア)a原判決は,「表示手段が調理容器により視認することが妨げられ
にくい箇所に備えられるべきこと」が技術常識であると認定しているが,証拠から
どのような間接事実を認定し,どのように推認して技術常識を認定したのか判断理
由が示されていない。
また,原判決は,乙5及び6の二つの文献の記載だけで「自明な課題」や「周知
技術」を認定しているが,二つの公報の記載だけで「自明な課題」や「周知技術」
を認定するのは誤りである。
b原判決は,「赤外線送受信機を表示手段の近傍に設けること」を適
宜設計し得る事項であると判断しているが,根拠が示されていない。
原判決は,「調理容器により視認することが妨げられにくい箇所に同表示手段を
設ける」ことと「調理容器により赤外線通信が遮断されにくい箇所に赤外線送受信
機を設ける」ことを摘示している。
しかし,乙5及び6に記載された技術的事項では,表示手段が調理器具側に存在
せず,表示手段が調理容器によって視認することが妨げられるという事態が生じ得
ないから,乙5及び6に記載された技術的事項は,「調理容器により視認すること
が妨げられにくい箇所に同表示手段を設ける」ことを前提としていない。
また,「表示手段は調理容器により覆われにくい」かつ「赤外線送受信機を調理
容器により覆われにくい箇所に設ける」からといって,赤外線送受信機が表示手段
の近傍に設けることを適宜設計し得るわけではない。調理容器に覆われにくい箇所
は表示手段の近傍以外にもいくらでも存在するから,「表示手段の近傍であれば調
理容器に覆われにくい」という命題が成立するからといって,「調理容器に覆われ
にくい場所は表示手段の近傍である」という逆命題が成立するわけではない。
したがって,「調理容器により視認することが妨げられにくい箇所に同表示手段
を設ける」ことと「調理容器により赤外線通信が遮断されにくい箇所に赤外線送受
信機を設ける」ことは,「適宜設計し得る事項」と認定する根拠にならず,原判決
には,「赤外線送受信機を表示手段の近傍に設けること」が適宜設計し得る事項で
あるとする理由が示されていない。
c特定の技術的事項が周知技術であるからといって,主たる引用発明
に当該特定の技術的事項を適用することが容易であったことの検証を省略すること
はできない。
(イ)相違点2-3は容易想到ではない。
a乙5~7に記載された発明では,いずれも調理機器の操作装置が調
理機器の外部にあり,加熱手段の火力を表示する表示手段が調理機器に存する必要
性がない。
乙5の図面並びに乙6の図面2及び4では,表示手段は,調理機器の外部に設け
られている。この場合,調理容器を載置することによって表示手段が見えなくなる
という事態があり得ず,乙5及び6に記載された発明では,「調理容器により視認
することが妨げられにくい箇所に表示手段を設ける」ことを考える必要性がない。
通信用投光部(赤外線送受信機)を調理容器により覆われにくい箇所に設けるため
に,その設置箇所として表示手段の近傍を選択することは,適宜設計し得たことで
はなく,当業者といえども想到することは容易ではない。
また,乙5の図面では,赤外線受信機4は加熱手段の右側脇に描かれており,乙
6の図3では,赤外線受信器4A~4Dがトッププレートのコーナーに描かれてい
る。これらの赤外線受信器を赤外線送受信機に置き換えることができたとしても,
赤外線送受信機を表示手段の近傍に配置することは乙5及び6に記載されていない。
さらに,乙6記載の発明では,赤外線受信器4A~4Dをトッププレートのコー
ナーに配置することによって,「赤外線受信器4A~4Dの3つまでが調理器また
は別の物体によって覆われている場合も赤外線遠隔操作は機能する」(訳文3頁4
8行~49行)という機能が明記されているが,赤外線送受信機を表示手段の近傍
に設けることにより調理器によって覆われにくくすることは何ら記載も示唆もされ
ていない。
これらのことから,通信用投光部の設置箇所として表示手段の近傍を選択するこ
とは,適宜設計し得たことではなく,当業者が引用発明2に乙5及び6に記載され
た技術的事項を適用して相違点2-3を想到することは容易ではない。
乙7では,トッププレートの下方に赤外線センサーレシーバを配置することしか
記載されておらず,調理機器側に赤外線送受信器を配置することが記載されていな
いから,赤外線送信器が調理容器によって覆われるということを考える必要性がな
い。通信用投光部(赤外線送信機)を調理容器により覆われにくい箇所に設けるた
めに,その設置箇所として表示手段の近傍を選択することは,適宜設計し得たこと
ではなく,当業者といえども想到することは容易ではない。
b引用発明2は調理機器側から排煙装置を制御する発明であるのに対
し,乙5~7に記載の発明は外部から調理機器を制御する発明であるから,引用発
明2に乙5~7に記載の発明を組み合わせる動機付けがない。また,引用発明2に
乙5~7に記載の発明を組み合わせたとしても,構成要件G2に到達しない。
また,乙8,9及び17に記載されている調理機器は,調理機器と排煙装置とが
連動しているわけではなく,通信用投光部が設けられていないから,これらには,
相違点2-3の「前記通信用投光部を前記表示手段の近傍に配置」することが開示
も示唆もされていない。したがって,乙8,9及び17に記載された調理機器では,
相違点2-3に係る構成が採用されているということはできず,相違点2-3に係
る構成が通常のデザインにすぎないということもできない。
ウ相違点2-4の判断の誤り
(ア)原判決においては,本件発明2-2と乙6記載の発明との間に課題
の共通性があることが摘示されている。
しかし,主たる引用発明の課題と従たる引用発明の課題が共通しているわけでは
ないから,主たる引用発明に従たる引用発明を適用することの動機付けにはならな
い。原判決の判断は,主たる引用発明に従たる引用発明を適用することの動機付け
が判断されておらず,誤りである。
(イ)相違点1-3と同様の理由で,相違点2-4は,本件出願日2当時
に当業者が容易に想到したものではない。
(3)本件発明2に係る訂正の再抗弁
ア訂正審判請求
(ア)控訴人は,平成30年2月26日,本件特許2の請求項2につき,
訂正審判(訂正2018-390036,以下,この訂正を「本件訂正」という。)
を請求した。
(イ)本件訂正後の本件特許2の特許請求の範囲の請求項2に係る発明
(以下「本件訂正発明2」という。)を構成要件に分説すると,以下のとおりであ
る。
(A2)鍋などの調理容器が載置されるトッププレートと,
(B2’)このトッププレートの下方であって左右方向に並設された調理用の2つ
の電磁誘導式の加熱手段と,
(C2)この加熱手段を制御する通電制御手段と,
(D2)前記トッププレートの下方に配設され,当該トッププレートを通して光信
号を上方に向けて発する通信用投光部と
(K2’)前記トッププレートの下方かつ前記加熱手段のそれぞれの前側に対応し
て配置され,当該加熱手段の火力を前記トッププレートを透過して表示する表示手
段とを具備し,
(E2)前記通電制御手段は,前記通信用投光部を介して,前記トッププレートの
上方に配設される換気装置を制御する機能を有し,
(F2)前記トッププレートを,前記光信号の波長が透過する光透過性を有する耐
熱強化ガラスから構成し,
(G2’)前記通信用投光部を,前記表示手段の近傍にそれぞれ配置したこと
(H2)を特徴とする加熱調理器。
イ訂正要件
(ア)新規事項の追加等について
a本件訂正における請求項間の引用関係を解消して,独立形式請求項
へ改める訂正事項(以下「訂正事項1」という。)は,「他の請求項の記載を引用
する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」(特許法
126条1項ただし書4号)を目的とする訂正であり,実質的な内容の変更を伴う
ものではないから,特許法126条5項及び6項に適合する。
b本件訂正における訂正前の請求項2で引用する請求項1に「トップ
プレートの下方に配設された調理用の加熱手段」とあるのを「トッププレートの下
方であって左右方向に並設された調理用の2つの電磁誘導式の加熱手段」に訂正す
る訂正事項(以下「訂正事項2」という。)は,特許請求の範囲の減縮(特許法1
26条1項ただし書1号)を目的とする訂正である。
本件明細書等2の【0021】には,「図5に示すように,それぞれ調理用の加
熱手段を構成する左IH用の加熱コイル20と,右IH用の加熱コイル21と」と
記載されており,図5には加熱コイル20及び加熱コイル21が左右方向に並設さ
れている図が描かれている。
したがって,訂正事項2は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に
記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法126条5項に適合する。
また,訂正事項2は,加熱手段の設置位置を限定しかつ加熱手段を電磁誘導式の
加熱手段に限定するものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではない
から,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではなく,特許法126
条6項に適合する。
c本件訂正における訂正前の請求項2に「前記加熱手段の火力を表示
する表示手段を備え」とあるのを「前記トッププレートの下方かつ前記加熱手段の
それぞれの前側に対応して配置され,当該加熱手段の火力を前記トッププレートを
透過して表示する表示手段とを具備し」に訂正する訂正事項(以下「訂正事項3」
という。)は,表示手段を配置する位置を「前記加熱手段のそれぞれの前側」に限
定し,かつ,表示手段を「前記トッププレートを透過して表示する表示手段」に限
定するものであるから,「特許請求の範囲の減縮」(特許法126条1項ただし書
1号)を目的とするものである。
本件明細書等2の【0022】には,「左側の加熱コイル20の前側に位置させ
て多数個の表示用LED25からなる左用LED群(表示手段)26」,「右側の
加熱コイル21の前側に位置させて多数個の表示用LED25からなる右用LED
群(表示手段)27」と記載されており,加熱手段のそれぞれの前側に表示手段が
配置されていることが記載されている。また,本件明細書等2の【図5】から,表
示手段26及び表示手段27がトッププレートの下方に配置されていることが明ら
かであり,当該表示手段の表示はトッププレートを透過して表示されていることが
明らかである。
したがって,訂正事項3は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に
記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法126条5項に適合する。
また,訂正事項3は,表示手段の設置位置を限定しかつ表示手段をトッププレー
トを透過して表示する表示手段に限定するものであり,カテゴリーや対象,目的を
変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正で
はなく,特許法126条6項に適合する。
d本件訂正における前記通信用投光部の配置位置について訂正前の請
求項2には「前記表示手段の近傍に配置した」とあるのを「前記表示手段の近傍に
それぞれ配置した」と訂正する訂正事項(以下「訂正事項4」という。)は,訂正
前の請求項2で引用する請求項1では「加熱手段」が一つか二つ以上であるかが特
定されておらず,訂正前の請求項2の「前記加熱手段の火力を表示する表示手段」
が一つか二つ以上であるかが特定されていなかったため,訂正前の請求項2の「前
記表示手段の近傍に配置した」と特定されている「前記通信用投光部」が一つか二
つ以上であるかが特定されていなかったところ,「2つの電磁誘導式の加熱手段」
(訂正事項2)の「それぞれの前側に配置され」(訂正事項3)ている「表示手段
の近傍にそれぞれ配置した」ことに限定することにより,「前記通信用投光部」が
二つ以上であるものに限定したのであるから,「特許請求の範囲の減縮」(特許法
126条1項ただし書1号)を目的とするものである。
本件明細書等2の【0022】,【0023】には,左側のプリント基板23に
は,左用表示手段26と通信用投光部が,右側のプリント基板24には,右用表示
手段27と通信用投光部が,それぞれ配設されていることが記載されている。
したがって,訂正事項4は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に
記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法126条5項に適合する。
また,訂正事項4は「前記通信用投光部」が「前記表示手段の近傍にそれぞれ配
置した」ものに限定するものであり,かつ,カテゴリーや対象,目的を変更するも
のではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではなく,特
許法126条6項に適合する。
(イ)独立特許要件について
a本件訂正前の請求項2に係る発明(本件発明2-1)には無効理由
がない。
訂正事項1は,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記
載を引用しないものとする訂正であり,訂正事項2~4は,特許請求の範囲の減縮
を目的とするものである。
したがって,本件訂正後の特許請求の範囲の請求項2(本件訂正発明2)は,独
立特許要件(特許法126条7項)を満たす。
b進歩性について
(a)相違点
本件訂正発明2と主たる引用発明である引用発明2との相違点は,次のとおりで
ある。
(相違点2-1’)
本件訂正発明2の「通信用投光部」は,「前記トッププレートの下方かつ前記加
熱手段のそれぞれの前側に配設され,当該トッププレートを通して光信号を上方に
向けて発する」のに対し,引用発明2において「通信用投光部」に相当する「調理
器具2の送受信フィールド6」がどのような態様で調理器具2内に設けられている
か,また,調理天板を通して光信号を発するかが不明である点。
(相違点2-2)
本件訂正発明2の「トッププレート」は,「前記光信号の波長が透過する光透過
性を有する耐熱強化ガラスから構成」されているのに対し,引用発明2において
「トッププレート」に相当する「調理天板18」の性質・材質は明記されていない
点。
(相違点2-3’)
本件訂正発明2は,「表示手段」が「当該加熱手段の火力を前記トッププレート
を透過して表示する表示手段」であるのに対し,引用発明2が「表示装置」に相当
する構成を備えているか不明である点。
(相違点2-3”)
本件訂正発明2は,「前記通信用投光部を,前記表示手段の近傍にそれぞれ配置
し」ているのに対し,「通信用投光部」に相当する「調理器具2の送受信フィール
ド6」が上記「表示装置」の近傍に配置されているかが不明である点。
(相違点2-4’)
本件訂正発明2の「通信用投光部」は,「前記表示手段の近傍にそれぞれ配置し」
ており,二つ以上の通信用投光部が配置されているのに対し,引用発明2において
「通信用投光部」に相当する「調理器具2の送受信フィールド6」は,「排煙装置
4の送受信フィールド6」との関係で一対になっている点。
(相違点2-5)
本件訂正発明2では加熱手段が「電磁誘導式の加熱手段」に限定されている(構
成要件B2’)のに対し,引用発明2では単に「調理機器」と記載され加熱手段の
限定がない点。
(b)相違点の判断
ⅰ相違点1-1及び1-2と同様の理由で,相違点2-1’及
び同2-2は,本件出願日2当時に当業者が容易に想到したものではない。
ⅱ相違点2-3’
乙7では,「7セグメントの表示器が,セラミックガラスの下方またはその正面
(4)に位置し」(訳文5頁23行~24行)と記載されているものの,7セグメ
ントの表示器が「トッププレートを透過して表示する表示手段」であるか不明であ
る。また,乙5の図面並びに乙6の図2及び4では,表示手段が調理機器の外部に
設けられているから,表示手段が「トッププレートを透過して表示する表示手段」
であることはあり得ない。
したがって,引用発明2に乙5~7に記載された技術的事項を適用する動機付け
は存在しない。また,引用発明2に乙5~7に記載された技術的事項を適用するこ
とができたとしても,相違点2-3’に到達することは当業者にとって容易なこと
ではない。
ⅲ相違点2-3”
相違点2-3と同様の理由で,引用発明2に乙5~7に記載された技術的事項を
適用する動機付けが存在せず,引用発明2に乙5~7に記載された技術的事項を適
用することができたとしても,相違点2-3”に到達することは当業者にとって容
易なことではない。
本件訂正発明2では,「表示手段が,2つのIHヒータのそれぞれの前側に対応
して配置」されているのに対し,乙7の図1では「表示手段が,前方中央にまとめ
て配置されている」点で相違している。また,本件訂正発明2では,「加熱手段の
それぞれの前側に配置された表示手段の近傍に投光部が配置され」ることから,投
光部がおのずと分離して配置されるのに対し,乙7の図1では「まとめられた表示
装置群の近傍に一つの赤外線レシーバーが配置されている」点で相違している。
乙8,9及び17に記載された調理機器では,各火力表示手段が前方中央にまと
めてひとかたまりにして配置されており,「表示手段が,2つのIHヒータのそれ
ぞれの前側に対応して配置され」という構成になっていない。
したがって,引用発明2に乙7,8,9及び17を組み合わせても,本件訂正発
明2の構成にはならない。
また,本件訂正発明2は,「表示手段の近傍に投光部を設けること」により光信
号が遮断される確率を小さくできるが,さらに「表示手段が…2つのIHヒータの
それぞれの前側に対応して配置され」,かつ,「それぞれの表示手段の近傍に投光
部が配置され」ることによって,より一層光信号が遮断される確率を小さくするこ
とができるという作用効果を奏する。
したがって,本件訂正発明2は,引用発明2と乙7,8,9及び17との組合せ
によって容易に発明できたものではない。
ⅳ相違点2-4’
相違点1-3と同様の理由で,引用発明2に乙6に記載された技術的事項を適用
する動機付けが存在しないし,引用発明2に乙6に記載された技術的事項を適用し
たとしても,相違点2-4’に到達せず,本件訂正発明2は容易に想到し得たもの
ではない。
(c)小括
したがって,本件訂正発明2に係る特許には,無効理由2-4が成り立たず,本
件訂正発明2は特許出願時に独立して特許を受けることができたものである。
c明確性要件及びサポート要件について
構成要件G2’の訂正は,本件明細書等2の【0022】及び【0023】に根
拠となる記載がある。また,同【0047】の記載から,本件訂正発明2の効果を
奏するための「近傍」の程度を容易に理解できるから,明確性要件を満たすもので
ある。
ウ訂正発明に係る特許権侵害
被告製品Aは,本件訂正発明2の技術的範囲に属する。
(ア)被告製品Aは,トッププレートの下方に「左右方向に並設された調
理用の2つの電磁誘導式の加熱手段」を有しているから,構成要件(B2’)を充
足する。
(イ)被告製品Aには,加熱手段のそれぞれの前側に対応する表示部6
(表示手段)が配置されており,表示部6(表示手段)はトッププレートを透過し
て表示しているから,被告製品Aは,構成要件(K2’)を充足する。
(ウ)被告製品Aは,表示部6Aのそれぞれの近傍に赤外線発信器16,
17が配置されているから,構成要件(G2’)を充足する
2被控訴人
(1)無効理由1について
ア相違点1-1及び1-2の判断について
(ア)「調理器具に備え付けられ,調理器具外に備え付けられた機器との
間で赤外線を送受信する赤外線送受信器を,調理器具のトッププレートの下方に配
置した上で,当該トッププレートとして,赤外線が透過する性質を有するセラミッ
クガラスを採用し,このトッププレートを介して赤外線信号を送受信する構成」は,
本件出願日1当時,周知の構成であり(乙5~7),IHヒータのトッププレート
が耐熱ガラスでできていないものの方が稀であるといってよい。また,耐熱ガラス
である以上,通常は赤外線を透過するし,乙5~7のようにトッププレートの下に
赤外線通信機を配置しているものにおいて,トッププレートの耐熱ガラスが赤外線
を透過させることは自明事項にすぎない。
(イ)a仮に,控訴人の主張を前提としたところで,乙5には原判決が認
定した「調理器具に備え付けられ,調理器具外に備え付けられた機器との間で赤外
線を送受信する赤外線送受信器を,調理器具のトッププレートの下方に配置した…
…構成」が記載されていることに争いはない。乙4には,「視覚的に簡素な
(schlichten)デザイン,および衛生的に特に好適な解決策を得るために,」との
記載があって,調理機器と排煙装置との接続をより簡素で,衛生的なものとすべき
旨の課題が記載又は示唆されている。また,乙6には,赤外線受信器をトッププ
レートの下方に設けることにより,当該赤外線受信器をこぼれた調理物による損傷
と汚染から保護するという課題解決手段が明確に記載されているから,これを動機
付けにして,引用発明1に乙5を適用することは容易であり,当該構成が周知か否
かは判断の結論には影響を与えない。
b乙5~7には,送受信器又は受信器をトッププレートに覆設し,ト
ッププレートを介してワイヤレス送受信,ワイヤレス受信する構造が開示されてい
るところ,そのいずれを覆設したとしても,トッププレートの平滑な表面が阻害さ
れず,それらが汚染から保護されることは,当業者に自明な効果である。このよう
な効果は赤外線がトッププレートを透過することにより得られるものであるから,
トッププレートに覆設されるものが受信器であるか,送信機であるか,あるいは送
受信器であるかによって異なるものではないことは自明である。
c原判決は,乙4と乙6の記載を引用したうえで,「赤外線送受信装
置を備える調理機器において,赤外線送受信装置を損傷や汚染から保護することに
よりワイヤレス送信の信頼性を確保するという課題」が自明であったと認定してい
るのであって,乙6に記載された課題を自明と認定しているのではない。
d乙5~7により,相違点1-1及び1-2に係る構成が周知の構成
又は自明の構成と認定できるから,個別の公知例を適用する必要はない。
仮に,個別の公知例について議論をするとしても,乙5には相違点1-1及び1
-2に係る構成の開示があるから,引用発明1に対し,乙4や乙6に記載された動
機付けに基づいて乙5記載の構成を適用することは容易である。
イ相違点1-3の判断について
(ア)原判決は,「本件発明1-2と乙6公報に記載された発明との間に
課題の共通性があることが摘示されている」ことを指摘しており,動機付けがある
ことを積極的に認定している。
(イ)乙6と本件発明1-2の信号内容の相違については,ファンとレン
ジのどちらに制御部分が設けられているかの相違にすぎず,レンジ側で制御してい
る乙4に乙6を適用することで自動的に解消する。
(2)無効理由2-4について
相違点2-1,2-2は無効理由1の相違点1-2,1-1に対応し,相違点2
-4は相違点1-3に対応するから,無効理由1について述べたとおり,これらも
容易想到である。
相違点2-3については,「前記トッププレートの下方に,前記加熱手段の火力
を表示する表示手段を備え」る構成は,本件出願日2に現に公然実施されていた製
品にも備えられた,ごく当たり前の構成であり(乙8,9,17),このような公
然実施された製品において普通に採用されているデザインを採用することは,設計
的事項の適用にすぎず,当業者にとって容易である。
また,乙7の図1には,トッププレートの下方に火力表示手段を配置し,赤外線
受信器(5)を火力表示手段(6)の近傍に配置する構成が示されている。相違点
2-3に係る構成要件G2は,本件特許の出願経過で通知された拒絶理由通知(乙
1)に対し,出願人が補正をして追加したものであるところ(乙2),これと同日
付で提出された意見書(乙3)において,出願人は,表示手段と通信用投光部の位
置関係に関し,「トッププレート上において,加熱手段の火力を表示する表示手段
の近くに調理容器を置くと,その表示手段の表示がわからなくなるので,調理時に
表示手段の近くに調理容器が置かれることは少ない。このため,通信用投光部を表
示手段の近傍に配置することで,通信用投光部の光信号がトッププレート上に載置
される調理容器などによって遮断される確率を一層少なくできます。」(2頁3行
~7行)と説明している。このような構成により,「通信用投光部の光信号がトッ
ププレート上に載置される調理容器などによって遮断される確率を一層少なくでき
る」効果が得られることは自明である。
したがって,乙7に接した当業者であれば,乙7において,「通信用投光部の光
信号がトッププレート上に載置される調理容器などによって遮断される確率を一層
少なくできる」効果を得られることを理解するから,引用発明2に相違点2-3に
係る乙7の構成を採用することは,自明といってよい程度に容易である。
(3)本件発明2に係る訂正の再抗弁について
ア新規事項の追加について
本件訂正によって,構成要件G2’として「通信用投光部を表示手段の近傍にそ
れぞれ配置」との構成要件が付加されたが,本件明細書等2をみても,「近傍」の
程度・範囲は不明確であるから,このような構成の追加は「願書に添付した明細書,
特許請求の範囲又は図面・・・に記載した事項の範囲内において」された訂正とは
いえない。
イ独立特許要件について
(ア)進歩性欠如について
本件訂正により,新しく相違点となった点は,①左右に二つのIHヒータがある
こと,②表示手段が,トッププレートの下方で,かつ,二つのIHヒータのそれぞ
れの前側に対応して配置され,IHヒータの火力をトッププレートを透過して表示
すること,③そのような表示装置の近傍に投光部が配置されていることである。
上記①及び②については,乙8,9及び17にも示された公然実施品で普通に採
用されているデザインにすぎない。左右に二つの電気調理器具を備える引用発明2
において,このような周知慣用の構成を採用することは,単なる設計的事項の適用
の問題にすぎない。
そして,その場合に,その近傍に投光部を設けること(③)については,相違点
2-3と同様である。
なお,本件訂正発明2には特別な効果は認められない。
したがって,これらの相違点を引用発明2に適用することは極めて容易であるか
ら,本件訂正発明2は乙4に乙5~7及び周知技術(必要であれば,乙8,9,1
7のいずれか)を組み合わせることで当業者が容易に想到できた発明であり,本件
訂正発明2は進歩性を欠如する。
(イ)明確性要件及びサポート要件違反について
前記アのとおり,構成要件G2’の「近傍」の程度・範囲は不明確である。また,
本件明細書等2には,その範囲がどのような範囲であるか記載されていないから,
このような発明は本件明細書に記載されたものともいえない。
したがって,本件訂正発明2は,明確性要件及びサポート要件に違反する。
第3当裁判所の判断
当裁判所は,当審における主張及び立証を踏まえても,本件発明1-1,同1-
2,同2-1及び同2-2についての特許は,いずれも,特許法29条2項に違反
してされたものであり,控訴人は,被控訴人に対し,本件特許権1及び2を行使す
ることはできず,また,訂正の再抗弁は認められないものと判断する。
1本件訂正前の本件発明1-1,同1-2,同2-1及び同2-2に係る上記
判断の理由は,次のとおり原判決を補正するほか,原判決の「事実及び理由」の第
3の1~3(30頁23行目~73頁7行目)に記載のとおりであるから,これを
引用する。
(原判決の補正)
(1)原判決53頁10行目の「上記(1)に認定した」を削除する。
(2)原判決54頁12行目の「設置態様」を「表面が露出されているかどう
か」と改める。
(3)原判決56頁26行目の「実際の」を「実際に」と改める。
(4)原判決60頁2行目の「配置される」の後に「4つの」を加える。
(5)原判決62頁19行目~64頁10行目の「上記(4)にみた・・・できな
い。」を次のとおり改める。
「a乙5公報には,調理レンジの上方に設けられたレンジフードに,調
理レンジの操作ユニットと,操作ユニットに接続された赤外線送信機及び受信機と
を配置し,調理レンジのガラスセラミック調理プレートの調理領域近傍に,出力切
換部と出力切換部に接続された赤外線受信機及び送信機を配置し,レンジフードの
赤外線送受信機と調理レンジの赤外線受信機との間で,赤外線により双方向の信号
伝達を行うに当たり,その調理レンジ側の赤外線送受信器を,調理レンジのガラス
セラミック調理プレートの下方に配置することにより,ガラスセラミックプレート
に穿孔を生じさせないとともに,その平滑な表面を阻害しないという技術的事項が
記載されている。
調理レンジの天板の上面上は,加熱調理による調理容器からの調理物の吹きこぼ
れ等による汚損のおそれがあることは,自明であり,証拠(乙6)及び弁論の全趣
旨によると,赤外線送受信機が吹きこぼれた調理物に接すれば,損傷等の危険性が
あることが認められる。穿孔のない調理レンジのガラスセラミック調理プレートの
下方は,調理物の吹きこぼれの落下による損傷から装置を保護できる位置であり,
赤外線送受信機を,穿孔のない調理レンジのガラスセラミック調理プレートの下方
に配置することにより,赤外線送受信機の調理物による汚損防止を図ることができ,
その結果として,通信の信頼性が向上することは,当業者にとって自明であるとい
える。
そして,引用発明1と乙5に記載された前記の技術とは,換気装置と調理器具と
の間で赤外線により信号伝達を行う点で共通するところ,信号伝達を行う場合,そ
の信号伝達の信頼性の向上を図ることは,普遍的な課題であるといえるから,通信
の信頼性を向上させるために,赤外線送受信機の損傷を防ぐために,引用発明1に
乙5に記載された前記の技術的事項を組み合わせることには,動機付けがあるとい
える。
また,乙5~7の各公報の記載によると,調理器具のトッププレート(調理天板)
として赤外線を透過するセラミックガラス(耐熱性のある結晶化ガラス)を用いる
ことは,調理器具において広く用いられている技術であると認められる。
これらのことからすると,引用発明1において,赤外線の波長が透過する性質を
有する耐熱ガラス製で調理天板を構成し,赤外線送受信器を調理天板の下方に設け
て,調理器具の送受信フィールドを構成すること,すなわち,調理天板に覆設され
るようにして調理器具本体に赤外線送受信機を収容し,当該赤外線送受信機が調理
天板を介して駆動信号をワイヤレス送信するという構成にすることは,当業者が容
易に想到し得ることであるといえる。
b控訴人は,乙4では,排煙装置に操作及び表示エレメントを有する
ことを欠点と評価しているのに対し,乙5に記載された技術的事項は,乙4におい
て欠点と評価されている,排煙装置(レンジフード)に操作及び表示エレメントを
有する技術的事項であるから,引用発明1に乙5に記載された技術的事項を適用し
てみることを阻害する事情があると主張する。しかし,前記aの乙5公報に記載さ
れた技術的事項は,排煙装置に操作及び表示エレメントを設けるというものではな
いから,引用発明1と組み合わせることが阻害されることはなく,このことは,乙
5公報に排煙装置に操作及び表示エレメントを設ける装置が記載されていても左右
されるものではない。
また,控訴人は,乙5において,レンジフード(5)内に組み込まれている赤外
線送信機(6)から赤外線受信機(4)に送られている信号は,調理レンジの出力
に関する信号であり,換気ファンの駆動制御に関する信号ではないから,乙5には
本件発明1-1の構成要件G1が記載されていないと主張する。しかし,乙5公報
には,前記aの技術的事項が記載されており,この技術的事項は,前記aのとおり
引用発明1と組み合わせることについて動機付けがあるのであって,乙5公報にお
いて赤外線送受信機で送られる信号の内容が本件発明1-1と異なることは,この
判断を左右するものではない。
さらに,控訴人は,乙5に記載された解決課題は,引用発明1とは異なっている
と主張する。しかし,乙5公報に記載された解決課題が乙4公報に記載された解決
課題と異なるとしても,前記aのとおり,赤外線により信号伝達を行う場合に,そ
の信号伝達の信頼性の向上を図るという普遍的な課題を解決するために,引用発明
1と前記aの乙5公報に記載された技術的事項を組み合わせる動機付けがあるとい
うことができる。
その他の控訴人の主張が前記aの判断を左右するものでないことは,既に判示し
たところから明らかである。」
(6)原判決64頁18行目~65頁19行目の「上記(4)イのとおり・・・採
用することができない。」を次のとおり改める。
「乙6公報には,「機能の信頼性を高めるために,トッププレートの下側の異な
る位置に,優先的に調理ゾーンの外側に配置される複数の赤外線受信機を設けるこ
とができる。赤外線受信機の1つが例えば調理器によって覆われた場合においても
尚,赤外線制御信号は別の赤外線受信機によって受信することができる。」との記
載があり,調理器具のトッププレートの下側に,赤外線受信機を複数設けることに
より,複数の赤外線伝送路を設け,通信の信頼性を向上させることが記載されてい
る。
また,乙6公報には,「双方向赤外線伝送路を設けることができる。その場
合,・・・トッププレートの下側にトッププレートを通して表示装置の赤外線受信
機へ赤外線状態信号を送信するための赤外線送信機が配置される。」との記載があ
り,調理器具のトッププレートの下側に赤外線送信機を設けることが記載されてい
る。
そうすると,引用発明1と乙6公報に記載された技術的事項とは,調理器具に赤
外線による通信機能を付加した点で共通する。
そして,前記のとおり,信号伝達を行う場合,その信号伝達の信頼性の向上を図
ることは,普遍的な課題であるといえるから,引用発明1に乙6公報に記載された
上記の技術的事項を組み合わせることには,動機付けがある。
したがって,引用発明1に乙6公報に記載された上記の技術的事項を組み合わせ,
調理器具に複数の赤外線送受信機を設けることにより,調理器具と換気装置との間
に複数の赤外線伝送路を設けることは,当業者が容易に想到し得ることであるとい
える。
この点について,控訴人は,乙6には,赤外線受信機4を4A~4Dに複数化す
ることは記載されているが,赤外線送信機3を複数化することは記載されていない
と主張するが,乙6には,調理器具に複数の赤外線受信機を設けられること,双方
向赤外線伝送路を設けることができ,その場合,調理器具の側に赤外線送信機が配
置されることが記載されているから,調理器具に設置される赤外線送信機を複数と
する構成も記載されているといえる。
また,控訴人は,乙6に開示された構成は,調理機器の外部に設けられた操作装
置から調理器具の運転操作を行う発明に係るものであり,解決すべき課題が引用発
明1とは異なるから,引用発明1に上記構成を組み合わせる動機付けは認められな
いと主張する。しかし,上記のとおり,信号伝達を行う場合,その信号伝達の信頼
性の向上を図ることは普遍的な課題であるといえるから,当業者において,引用発
明1に乙6公報に記載された技術的事項を組み合わせ,調理器具に複数の赤外線受
信機を設ける動機付けが認められるというべきである。」
(7)原判決65頁22行目の「周知の構成又は公知の構成」を「乙5及び6
に記載された技術的事項」と改める。
(8)原判決66頁6行目の「上記2(1)に認定した」を削除する。
(9)原判決67頁21行目の「F2」を「G2」と改める。
(10)原判決68頁23行目~69頁22行目の「上記2(4)にみた・・・で
きない。」を,次のとおり改める。
「a前記のとおり,乙5公報には,調理レンジの上方に設けられたレン
ジフードに,調理レンジの操作ユニットと,操作ユニットに接続された赤外線送信
機及び受信機とを配置し,調理レンジのガラスセラミック調理プレートの調理領域
近傍に,出力切換部と出力切換部に接続された赤外線受信機及び送信機を配置し,
レンジフードの赤外線送受信機と調理レンジの赤外線受信機との間で,赤外線によ
り双方向の信号伝達を行うに当たり,その調理レンジ側の赤外線送受信器を,調理
レンジのガラスセラミック調理プレートの下方に配置することにより,ガラスセラ
ミックプレートに穿孔を生じさせないとともに,その平滑な表面を阻害しないとい
う技術的事項が記載されている。
また,前記のとおり,調理レンジの天板の上面上は,加熱調理による調理容器か
らの調理物の吹きこぼれ等による汚損のおそれがあることは,自明であり,証拠
(乙6)及び弁論の全趣旨によると,赤外線送受信機が吹きこぼれた調理物に接す
れば,損傷等の危険性があることが認められる。穿孔のない調理レンジのガラスセ
ラミック調理プレートの下方は,調理物の吹きこぼれの落下による損傷から装置を
保護できる位置であり,赤外線送受信機を,穿孔のない調理レンジのガラスセラミ
ック調理プレートの下方に配置することにより,赤外線送受信機の調理物による汚
損防止を図ることができ,その結果として,通信の信頼性が向上することは,当業
者にとって自明であるといえる。
そして,引用発明2と乙5公報に記載された前記の技術とは,換気装置と調理器
具との間で赤外線により信号伝達を行う点で共通するところ,信号伝達を行う場合,
その信号伝達の信頼性の向上を図ることは,普遍的な課題であるといえるから,通
信の信頼性を向上させるために,赤外線送受信機の損傷を防ぐために,引用発明2
に乙5公報に記載された前記の技術的事項を組み合わせることには,動機付けがあ
るといえる。
また,乙5~7の各公報の記載によると,調理器具のトッププレート(調理天板)
として赤外線を透過するセラミックガラス(強度,耐熱性のある結晶化ガラス)を
用いることは,調理器具において広く用いられている技術であると認められる。
これらのことからすると,引用発明2において,光信号である赤外線の波長が透
過する性質を有する耐熱強化ガラスであるセラミックガラス製で調理天板を構成し,
赤外線送受信器を調理天板の下方に設けて,調理器具の送受信フィールドを構成す
ること,すなわち,通信用投光部がトッププレートの下方に配設され,当該トップ
プレートを通して光信号を上方に向けて発するという構成にすることは,当業者が
容易に想到し得ることであるといえる。
bこの点についての控訴人の主張を採用することができないことは,
前記2(5)ア(ウ)bで判示したとおりである。」
(11)原判決70頁1行目の「F2」を「G2」と改める。
(12)原判決70頁6行目~71頁25行目の「乙7公報には・・・採用する
ことができない。」を次のとおり改める。
「a乙7公報には,「調理プレート内のヒータと同数の電力表示器
が,・・・セラミックガラスの下方に存在でき,7セグメントの表示部が,動作中
の各々の抵抗器の電力の容易な表示を可能にする。」との記載があり,また,証拠
(乙8,9,17)によると,トッププレートの下方に,加熱手段の火力を表示す
る表示手段を備えた加熱調理器は,本件出願日2前に一般に販売されていたことが
認められるから,加熱調理器において,「トッププレートの下方に,加熱手段の火
力を表示する表示手段を備え」る構成は,本件出願日2当時に広く知られていた技
術であったと認められ,同じく加熱調理器に関する引用発明2に,上記の広く知ら
れた技術を適用するのに何らの困難もないというべきである。なお,当該表示手段
は,使用者に加熱手段の火力を表示するものであるから,調理容器により視認する
ことが妨げられにくい箇所に備えられるべきことは,当業者が当然に考慮すべき事
項であるということができる。
次に,乙5公報には「特別な場合においては,受信機(4)は例えば鍋又はその
他の物体によって覆われることがあり得る。伝達区間は,これにより遮断されてい
る。」との,乙6公報には「機能の信頼性を高めるために,トッププレートの下側
の異なる位置に,優先的に調理ゾーンの外側に配置される複数の赤外線受信器を設
けることができる。赤外線受信器の1つが例えば調理器によって覆われた場合にお
いても尚,赤外線制御信号は別の赤外線受信器によって受信することができる。」
との各記載があり,赤外線送受信装置を備える調理機器において,調理容器等によ
り赤外線の送受信が遮られる可能性があり,その送受信の信頼性を確保するという
課題は,当業者にとって,本件出願日2当時,自明な課題であったということがで
きる。
そして,当該自明な課題につき,乙5公報には「受信機(4)は,調理プレート
(1)のこのような箇所,例えば右後ろに配置されており,鍋又はこれに類するも
のによってこの箇所が覆われることはできる限り起こり得ない。」との,乙6公報
には「図3は,4つの調理ゾーン20~23と,トッププレートのコーナーの下側
に配置される4つの赤外線受信器4A~4Dを有するトッププレート2の実施形態
を平面図で示す。複数の赤外線受信器4A,4B,4C,および4Dを設けること
によって,これらの赤外線受信器4A~4Dの3つまでが調理器または別の物体に
よって覆われている場合も赤外線遠隔操作は機能する。」との各記載があるから,
調理容器により赤外線通信が遮断されにくい箇所に赤外線送受信器を配設する構成
を採用することにより,上記自明な課題が解決されることも,本件出願日2当時明
らかであったと認められる。
そうすると,乙4公報に接した当業者において,引用発明2に,加熱手段の火
力を表示する表示手段に係る上記技術を適用して,トッププレートの下方であって,
調理容器により視認することが妨げられにくい箇所に同表示手段を備えるものとし,
同じくトッププレートの下方に配設され,調理容器により赤外線通信が遮断されに
くい箇所に設けるべきとされる赤外線送受信器(「調理器具2の送受信フィールド
6」)を,同表示手段の近傍に設けることは,調理器具の構造やデザインに応じ,
適宜設計し得る事項であり,容易に想到し得たことというべきである。
b控訴人は,乙5~7の各公報に開示されたシステムでは,調理機器
の操作装置が調理機器の外部にあるから,表示手段を調理器具に設ける必要がない
と主張するが,引用発明2に表示手段を設けることに何らの困難もないことは既に
説示したとおりであり,このことは乙5~7の各公報に開示されたシステムに表示
手段を設ける動機付けがあるかによっては左右されない。
また,控訴人は,乙5及び6に記載された技術的事項では,表示手段が調理器具
側に存在せず,表示手段が調理容器によって視認されることが妨げられるという事
態が生じ得ないから,乙5及び6に記載された技術的事項は,「調理容器により視
認することが妨げられにくい箇所に同表示手段を設ける」ことを前提としていない
と主張するが,当業者において表示手段を調理容器により視認することが妨げられ
にくい箇所に設けることを想到し得ることは,前記aのとおりであって,このこと
は,乙5及び6に記載された技術的事項では,表示手段が調理器具の側に存在しな
いことによって左右されるものではない。
その他の控訴人の主張が前記aの判断を左右するものでないことは,既に判示し
たところから明らかである。」
(13)原判決72頁7行目~18行目の「上記2(4)イのとおり・・・という
べきである。」を次のとおり改める。
「乙6公報には,「機能の信頼性を高めるために,トッププレートの下側の異な
る位置に,優先的に調理ゾーンの外側に配置される複数の赤外線受信機を設けるこ
とができる。赤外線受信機の1つが例えば調理器によって覆われた場合においても
尚,赤外線制御信号は別の赤外線受信機によって受信することができる。」との記
載があり,調理器具のトッププレートの下側に,赤外線受信機を複数設けることに
より,複数の赤外線伝送路を設け,通信の信頼性を向上させることが記載されてい
る。
また,乙6公報には,「双方向赤外線伝送路を設けることができる。その場
合,・・・トッププレートの下側に・・・赤外線送信機が配置される」との記載が
あり,調理器具のトッププレートの下側に赤外線送信機を設けることが記載されて
いる。
そうすると,引用発明2と乙6公報に記載された技術的事項とは,調理器具に赤
外線による通信機能を付加した点で共通する。
そして,前記のとおり,信号伝達を行う場合,その信号伝達の信頼性の向上を図
ることは,普遍的な課題であるといえるから,引用発明2に乙6公報に記載された
上記の技術的事項を組み合わせることには,動機付けがある。
したがって,引用発明2に乙6公報に記載された上記の技術的事項を組み合わせ,
調理器具に複数の送受信フィールドを設けることにより,調理器具と換気装置との
間に複数の赤外線伝送路を設けることは,当業者が容易に想到し得ることであると
いえる。」
(14)原判決72頁20行目の「操作装置を」及び23行目の「など」を削除
する。
(15)原判決73頁2行目の「周知の構成ないし周知技術」を「乙5及び6の
各公報に記載された技術的事項」と改め,同頁2行目の「又は」を削除する。
2訂正の再抗弁(本件特許2)について
(1)控訴人は,平成30年2月26日,本件特許2の特許請求の範囲を次の
とおり訂正することを求める訂正審判を特許庁に請求した(本件訂正,甲16)。
(2)本件訂正後の特許請求の範囲請求項2の記載は,次のとおりである(甲
16。なお,「A2」等の段落頭の記号は,当裁判所が付したものである。)。
A2鍋などの調理容器が載置されるトッププレートと,
B2’このトッププレートの下方であって左右方向に並設された調理用の2つの
電磁誘導式の加熱手段と,
C2この加熱手段を制御する通電制御手段と,
D2前記トッププレートの下方に配設され,当該トッププレートを通して光信
号を上方に向けて発する通信用投光部と,
K2’前記トッププレートの下方かつ前記加熱手段のそれぞれの前側に対応して
配置され,当該加熱手段の火力を前記トッププレートを透過して表示する表示手段
とを具備し,
E2前記通電制御手段は,前記通信用投光部を介して,前記トッププレートの
上方に配設される換気装置を制御する機能を有し,
F2前記トッププレートを,前記光信号の波長が透過する光透過性を有する耐
熱強化ガラスから構成し,
G2’前記通信用投光部を,前記表示手段の近傍にそれぞれ配置したこと
H2を特徴とする加熱調理器。
(3)進歩性の判断
事案に鑑み,本件訂正後の特許請求の範囲請求項2に係る発明(以下「本件訂正
発明2」という。)の進歩性につき,まず検討する。
ア本件訂正発明2と引用発明2との対比
本件訂正発明2と引用発明2との相違点は,次のとおりであり,他の点は一致す
る。
【相違点3-1】
本件訂正発明2の「通信用投光部」は,「前記トッププレートの下方に配設さ
れ,当該トッププレートを通して光信号を上方に向けて発する」のに対し,引用発
明2において「通信用投光部」に相当する「調理器具2の送受信フィールド6」が
どのような態様で調理器具2内に設けられているか,また,調理天板を通して光信
号を発するかが不明である点。
【相違点3-2】
本件訂正発明2の「トッププレート」は,「前記光信号の波長が透過する光透過
性を有する耐熱強化ガラスから構成」されているのに対し,引用発明2において
「トッププレート」に相当する「調理天板18」の性質・材質は明記されていない
点。
【相違点3-3】
本件訂正発明2においては,「調理用の加熱手段」が,「電磁誘導式」で,「2
つ」の加熱手段が「左右方向に並設された」,「2つの」加熱手段であるのに対
し,引用発明2においては,加熱手段の数と複数ある場合の相互の位置関係が特定
されていない点。
【相違点3-4】
本件訂正発明2においては,トッププレートの下方かつ加熱手段のそれぞれの前
側に対応して配置され,当該加熱手段の火力を前記トッププレートを透過して表示
する表示手段が具備されており,前記通信用投光部は,前記表示手段の近傍にそれ
ぞれ配置されているのに対し,引用発明2においては,上記のような加熱手段毎の
表示手段の存否,「通信用投光部」に相当する「調理器具2の送受信フィールド
6」が配置される位置が特定されていない点。
イ相違点についての判断
(ア)相違点3-1及び3-2について
相違点2-1及び2-2についての前記判断と同様に,引用発明2に乙5公報に
記載された技術的事項等を組み合わせることにより,相違点3-1及び3-2に係
る本件訂正発明2の構成に至るのであって,引用発明2に乙5公報に記載された技
術的事項等を組み合わせることは,当業者が容易に想到し得ることである。
(イ)相違点3-3について
二つの電磁誘導式の調理用の加熱手段が左右方向に並設された加熱調理器は,一
般的に知られており(乙8,9,17),引用発明2において,調理用の加熱手段
を電磁誘導式として,左右に二つ並設することは,当業者が適宜設計し得る事項に
すぎない。
(ウ)相違点3-4について
a加熱手段毎の表示手段の具備について
加熱手段毎の火力をトッププレートを透過して表示する表示手段を,トッププ
レートの下方に配置した加熱調理器は,一般的に知られており(乙8,9,1
7),引用発明2において,加熱手段毎の火力をトッププレートを透過して表示す
る表示手段を,トッププレートの下方に配置することは,当業者が容易に想到し得
ることである。
また,加熱手段毎の火力を表示する表示手段を,加熱手段のそれぞれの前側に対
応して配置することは,利用者が視認しやすい位置はどこかという見地から,当業
者が適宜設計し得る事項であり,容易に想到し得ることである。
b表示手段と通信用投光部の位置関係について
相違点2-3,相違点2-4についての前記判断と同様に,引用発明2におい
て,送受信フィールドを複数設け,複数設置する送受信フィールドを前記表示手段
の近傍にそれぞれ配置することは,当業者が適宜設計し得る事項であり,容易に想
到し得ることである。
この点について,控訴人は,本件訂正発明2では,「加熱手段のそれぞれの前側
に配置された表示手段の近傍に投光部が配置され」ることから,投光部が分離して
配置されるのに対し,乙7では,「まとめられた表示装置群の近傍に一つの赤外線
レシーバーが配置されている」点で相違しているから,引用発明2に乙7~9及び
17を組み合わせても本件訂正発明2の構成にならないと主張する。
しかし,本件訂正発明2は,「通信用投光部を,前記表示手段の近傍にそれぞれ
配置」するものであり,前記aのとおり,複数の表示手段を,複数の加熱手段のそ
れぞれの前側に対応して配置することが,当業者にとって容易に想到し得ることで
ある以上,複数の送受信フィールドを複数の当該表示手段の近傍にそれぞれ配置す
ることも,当業者にとって容易に想到し得ることであるから,控訴人の上記主張
は,理由がない。
(エ)作用効果について
控訴人は,本件訂正発明2は,表示手段の近傍に投光部が配置されること,表示
手段が二つのIHヒータのそれぞれの前側に対応して配置されることにより,より
一層光信号が遮断される確率を小さくすることができるという作用効果を奏する旨
主張するが,控訴人の主張する上記作用効果は,当業者が予測可能な内容であり,
それをもって,進歩性を認める理由となり得るものではない。
(オ)小括
以上によると,本件訂正発明2は,当業者が引用発明2に乙5及び6の各公報に
記載された技術的事項を適用し,適宜設計することにより,容易に発明をすること
ができたものといえる。
(4)そうすると,本件訂正発明2は,特許を受けることができないものであ
る(特許法29条2項)から,本件訂正によって,本件特許2に係る無効理由が解
消するものではない。
したがって,その余の点を判断するまでもなく,控訴人の訂正の再抗弁は,理由
がない。
第4結論
以上の次第で,控訴人の本件請求は,その余の点を判断するまでもなく,理由が
なく,原判決は相当であるから,本件控訴を棄却することとして,主文のとおり判
決する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官
森義之
裁判官
森岡礼子
裁判官
古庄研
(別紙省略)

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