弁護士法人ITJ法律事務所

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       主   文
特許庁が昭和五八年審判第一六五七八号事件について昭和六三年三月九日にした審
決を取り消す。
訴訟費用は被告らの負担とする。
       事   実
第一 当事者の求めた裁判
一 原告
主文同旨の判決
二 被告ら
「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」の判決
第二 請求の原因
一 特許庁における手続の経緯
 原告は、意匠に係る物品を「配線用コンクリート桝」とする別紙第一記載のとお
りの構成からなる登録第五七八七六二号意匠(昭和五四年四月一二日登録出願、昭
和五七年三月三一日設定登録、以下「本件意匠」という。)の意匠権者であるが、
被告らは、昭和五八年七月二六日、原告を被請求人として、本件意匠の登録無効審
判を請求し、昭和五八年審判第一六五七八号事件として審理された結果、昭和六三
年三月九日、「登録第五七八七六二号意匠の登録を無効とする。」との審決があ
り、その謄本は同年三月二六日原告に送達された。
二 審決の理由の要点
1 本件意匠は、昭和五四年四月一二日に意匠登録出願をし(昭和五四年意匠登録
願第一四四六五号)、昭和五七年三月三一日に設定の登録がされたものであり、願
書の記載及び願書に添付した図面の記載によれば、本件意匠に係る形態は、別紙第
一に示すとおりである(意匠に係る物品「配線用コンクリート桝」)。
2 昭和五二年実用新案出願公開第一五一六七三号公報(以下、「引用公報」とい
う。)第一七七頁第2図の記載の意匠(以下、「引用意匠」という。)に係る形態
は、別紙第二に示すとおりである(意匠に係る物品「鉄筋コンクリート製マンホー
ル」)。
3 本件意匠と引用意匠(以下、「両意匠」という。)を対比し、その類否につい
て考察する。
 まず、両意匠に係る物品は、本件意匠に係る物品が「配線用コンクリート桝」で
あるのに対して、引用意匠に係る物品は「鉄筋コンクリート製マンホール」であつ
て、両物品は用途・機能からみて共通する物品と認める。
 両意匠に係る形態については、次に示す基本的構成態様において共通しているも
のと認める。すなわち、全体を有底の縦長四角筒体状とし、その筒体上端に短円筒
状開口部を突設した上面板を固着したものとし、筒体枠壁の外面下方に凹陥部を設
けたものである。
 そして、両意匠は具体的構成態様において、次に示す共通点及び相違点を有して
いるものである。すなわち、筒体枠壁の外面下方に設けた凹陥部について、ともに
横長四角形状としている点、及び上面板の平面について、四隅にボルト頭又はボル
ト孔を設けている点において共通しているものであり、筒体枠壁について、引用意
匠では底部を除き一体に形成した四角筒体としているのに対し、本件意匠では、有
底筒体と無底筒体とに二分割して形成し、それを中央で嵌合させて全体の縦長四角
筒体を構成している点、及びその筒体の横辺と高さの構成比率について引用意匠の
方が本件意匠に比して横辺に対する高さの比がやや大きく、全体にやや細長く形成
されている点において相違しているものである。
 そこで、前記両意匠に係る物品及び形態の共通点がもたらす共通性と相違性を総
合し、両意匠の類否について考察する。
 まず、相違性についてみると、筒体枠壁を一体に形成しているか、又は分離して
別々に形成しているかの点が第一の差異点と認められる。引用公報の記載によれ
ば、引用意匠は従来品に関する図面として記載されたものであり、本件意匠とは形
成方法が異なるものである点は認められるが、本件意匠と引用意匠とを対比した場
合のこの点に関する外観上の差異は、筒体枠壁の各面の中央に表された横一本線の
有無にすぎないものである。また、当該物品において筒体枠壁を分離形成したもの
は、本件出願前にもみられることは請求人ら(被告ら)提出の甲号各証によつても
認められるところであるから、横一本線の有無は、被請求人(原告)が主張するよ
うにこれによつて両意匠の美感を異にするものではなく、両意匠を各全体として対
比観察したときには、この差異は微差と認めるほかないものである。次に、四角筒
体の横辺と高さの構成比率の差異については、前記差異が認められるとしても、両
意匠を各全体として対比観察したときには、その差異が両意匠のそれぞれの全体の
形態の特徴を構成しているものとはいい難く、したがつて、この点が両意匠の類否
の判断を左右する点とも認められないから、この点の差異も微差と認める。
 これに対し、形態の基本的構成態様及び具体的構成態様の共通性についてみる
と、前記基本的構成態様は、両意匠の形態全体に共通する視覚的な特徴を表してい
るものであると同時に、造形的な特徴においても共通しているものであつて、前記
具体的構成態様の共通性と相まつて両意匠の類否の判断を左右するものと認める。
 してみれば、両意匠は、物品が同一であり、意匠に係る形態全体の特徴を表して
いる基本的構成態様において共通性を有するものと認められるから、両意匠に係る
形態には微差が認められるとしても、互いに類似することを免れないものである。
4 以上のとおりであるから、その余の証拠方法について判断するまでもなく、本
件意匠は意匠法第三条第一号に規定する意匠に該当し、同法同条の規定に違反して
登録されたものであり、その登録は同法第四八条第一項第一号の規定によつて無効
とすべきものである。
三 審決の取消事由
 審決は、引用意匠の認定、両意匠に係る物品の用途、機能についての認定、及び
両意匠の基本的構成態様並びに具体的構成態様についての認定を誤り、その結果両
意匠の類否判断を誤つたものであり、違法であるから、取り消されるべきである。
1 引用意匠の認定の誤り
 審決は、引用意匠の形態は、別紙第二に示すとおりである(意匠に係る物品「鉄
筋コンクリート製マンホール」)と認定している。
 審決のいう引用意匠の形態が何を意味しているか不明であるが、引用意匠は、模
様、色彩等を問題にした意匠ではないから、形状の意匠であることは明らかであ
る。
 ところで、意匠法にいう意匠の形状はあくまでも現実的に考えなければならない
から、形状の意匠である引用意匠は、別紙第二(引用公報の第2図)に記載されて
いる意匠そのもの、すなわち、スラブ5´と本体枠壁3´と底板4´が上、中、下
にそれぞれ別れて配置されたもの、つまりこのように分解されたものであつて、こ
れらを一体にしたものではない。
 しかるに、審決は、本件意匠との類否判断からみて、引用意匠をスラブ5´と本
体枠壁3´と底板4´とを上下方向に一体にしたものと把握しており、その認定は
明らかに誤りである。
 また、引用意匠に係る物品は、「鉄筋コンクリート製マンホール」の分解された
ものであるから、これを「鉄筋コンクリート製マンホール」であるとした審決の認
定も誤つている。
2 両意匠に係る物品の用途機能についての認定の誤り
 審決は、本件意匠に係る物品は「配線用コンクリート桝」であるのに対し、引用
意匠に係る物品は「鉄筋コンクリート製マンホール」であつて、両物品は用途機能
からみて共通する物品であると認定している。
 しかしながら、引用意匠に係る物品は前記1のとおり「鉄筋コンクリート製マン
ホール」そのものでなく、「鉄筋コンクリート製マンホール」の分解されたもので
あるから、本件意匠に係る物品である「配線コンクリート桝」と異なることは明ら
かである。
 仮に、引用意匠に係る物品が「鉄筋コンクリート製マンホール」であるとして
も、別紙第二から明らかなように、引用意匠に係る物品はマンホールの埋設現場に
おいて別体となつていたスラブ、本体枠壁、底板を組み立てて現場打ちするもので
あるのに対して、本件意匠に係る物品は工場で全体を製造しているプレハブの「配
線用コンクリート桝」であり、これを埋設現場においてコンクリート等を用いて現
場打ちするものではない。
 したがつて、両意匠は物品の用途機能を異にするものであるから、用途機能から
みて共通する物品であるとした審決の認定は誤りである。
3 引用意匠の基本的構成態様の認定の誤り
 審決は、両意匠に係る基本的構成態様は全体を有底の縦長四角筒体状とし、その
筒体上端に短円筒状開口部を突設した上面板を固着したものとし、筒体枠壁の外面
下方に凹陥部を設けたものであると認定している。
 しかしながら、引用意匠の形状は前記1のとおりスラブ5´、本体枠壁3´、底
板4´の三部材に分解されたものであり、これら三部材を上下に一体にしたもので
ないから、引用意匠の基本的構成態様を審決のように認定できないことは明らかで
ある。
 仮に、引用意匠の形状をスラブ5´、本体枠壁3´、底板4´の三部材を上下に
一体にしたものであるとしても、その形状は別紙第三のとおりであつて、別紙第二
(引用公報の第二図)に記載されている底板4´の一辺は本体枠壁3´の底部の一
辺よりかなり長いため、本体枠壁3´と底板4´とを上下に重ね合わせると、底板
4´は本体枠壁3´の底部より広くなる。このことは、別紙第二によれば、底板
4´の一辺は、一・六cmあるのに対し、本体枠壁3´の底部の一辺は一・二cm
であること、及び底板4´の対角線(底板4´についての水平方向の対角線)と本
体枠壁3´の底部の対角線(本体枠壁3´の底部の水平方向の対角線)との比較か
ら明らかである。
 したがつて、引用意匠の基本的構成態様は、筒状のもののまわりに底板のでつぱ
りのついたものであるから、「全体を有底の縦長四角筒体状」としたものではな
い。
 したがつて、審決が「両意匠に係る基本的構成態様は全体を有底の縦長四角筒体
状とし」と認定したのは誤りであり、しかも両意匠において全体として筒体状をな
しているかそうでない(底板に筒板が乗つている状態)かは、両意匠の基本的構成
態様のうち最も重要な要素であるから、この点に差異がある以上、本件意匠を引用
意匠に類似の意匠とすることはできない。
4 引用意匠の具体的構成態様の認定の誤り
 審決は、引用意匠は「上面板の平面について四隅にボルト頭又はボルト孔を設け
ている」点で本件意匠と共通していると認定している。
 しかしながら、引用意匠の本体枠壁3´の四隅から出ているのは鉄筋コンクリー
トの鉄筋であり、ボルトを止めるためのナツトのねじではないから、審決の右認定
は誤りである。
 また、審決は、「引用意匠では底部を除き一体に形成した四角筒体としている」
と認定している。
 しかしながら、引用意匠は底部だけでなくスラブも別体をなしていることは、別
紙第二により明らかであるから、審決の右認定は誤りである。
 さらに、審決は、「その筒体の横辺と高さの構成比率」の違いについて認定して
いるが、そうであれば、本体枠壁3´の下方の凹陥部の形状も筒体横辺と高さの違
いと同程度の違いがあるし、引用意匠には蓋がないという違いもあり、審決はこれ
らの具体的構成態様における両意匠の差異を看過している。
5 両意匠の具体的構成態様の差異についての認定の誤り
 審決は、筒体枠壁を一体に形成している(引用意匠)か、分離して別々に形成し
ている(本件意匠)かの差異は、「筒体枠壁の各面の中央に表された横一本線の有
無にすぎないものである」と認定している。
 しかしながら、審決が「両意匠に係る基本的構成態様は全体を有底の縦長四角筒
体状とし、その筒体上端に短円筒状開口部を突設した上面板を固着したもの」と認
定していることからみて、審決は両意匠を「筒体状のもの」と「上面板」という別
体のものを固着したものととらえており、そうであれば、別体のものを固着したも
のと、当初から一体であるものとは別の意匠であるから、引用意匠のように筒体枠
壁を一体に形成するものと本件意匠のように筒体枠壁の中央で分離されているもの
とは、意匠の基本的構成態様を異にするものと考えるべきであり、短に横一本線の
有無の差異にすぎないものではないから、この点に関する審決の認定は誤りであ
る。
 審決は、「当該物品において筒体枠壁を分離形成したものは本件出願前にもみら
れる」から横一本線の有無は「両意匠の美感を異にするものでなく両意匠を各全体
として対比観察したときにはこの差異は微差と認めるほかない」と認定している。
 しかしながら、二つの意匠を対比してその差異点が公知であれば、その差異点は
微差であるとすることはできない。両意匠の差異点はその部分自体でその違いを判
断すべきであつて、一方が公知であるかないかによつてその違いの判断が変動する
ものではない。公知意匠があることにより非類似の意匠が類似になることはあり得
ない。
 本件意匠において、筒体部分は単なる長方形という最も単純な形状をなしてお
り、その筒体中央に横一本線の配されることは極めて重要なことであるから、両意
匠における横一本線の有無は単なる徴差にすぎないとした審決の前記認定は誤りで
ある。
第三 請求の原因に対する認否及び被告らの主張
一 請求の原因一及び二の事実は認める。
二 同三は争う。審決の認定、判断は正当であり、審決には原告主張の違法はな
い。
1 引用意匠の認定について
 意匠は、物品の形状、模様もしくは色彩又はこれらの結合であつて、視覚を通じ
て美観を起こさせるものと定義されているから、必ず物品と一体不可分の関係にお
いて成立するものということができ、したがつて、物品の働きを踏まえて全体的な
まとまりとして把握されなくてはならない。
 そして、引用意匠はあくまでも「鉄筋コンクリート製マンホール」についての意
匠であるから、原告主張のようにこれをスラブ、本体枠壁、底板といつた構成部分
に分解して認定することは妥当でなく、意匠を物品の働きとの関係において把握す
べきものとする以上、これらを一体として認定しなければならないことは明らかで
あつて、この点に関する審決の認定に誤りはない。
2 両意匠に係る物品の用途機能の認定について
 引用意匠に係る物品は、前記1のとおり「鉄筋コンクリート製マンホール」であ
るから、これと前提を異にする原告の主張は理由がない。
 また、原告は、引用意匠に係る物品は埋設現場において組み立てるものであり、
本件意匠に係る物品は埋設現場に運んでその場に置くだけで機能を果たすものであ
ると主張するが、右は単に物品を運んでから組み立てるか、組み立ててから運ぶか
という工程の順序の相違にすぎず、このような相違があるからといつて両物品の用
途機能まで異なるものとすることはできない。
 なお、通常「現場打ち」とは、現場で型枠を組み生コンクリートを流し込んで形
成する場合をいい、引用意匠に係る物品のように、現場で組立てを行うだけの場合
を「現場打ち」とはいわない。
3 引用意匠の基本的構成態様の認定について
 引用意匠の形状は、前記1のとおりスラブ、本体枠壁、底板を一体としたものと
して理解すべきものであり、これと前提を異にする原告の主張には理由がない。
 また、原告は、本件意匠においては全体が筒体をなしているが、引用意匠におい
ては底板4´が本件枠壁3´の底部からはみ出しているため、両意匠はその基本的
構成態様を異にすると主張する。
 しかしながら、意匠は物品の働きとの関連において全体的なまとまりとして把握
されるべきものであり、引用意匠において底板が多少はみ出しているとしても、そ
れは物品の働きを認定するについて何ら意味を有するものではないから、両意匠を
全体として観察した場合この相違が看者に強い印象を与えるものとは考えられず、
これによつて両意匠が基本的構成態様を異にするということはできない。
4 引用意匠の具体的構成態様の認定について
 引用意匠の本体枠壁の四隅上部から出ているのは、鉄筋コンクリートの鉄筋では
なく、ナツトで止まるためのボルトのねじ部である。このことは、通常鉄筋はコン
クリート製品の内部に埋没されており、外部に突出していることはないこと、及び
引用意匠のスラブの四隅の孔の位置と突出物の位置とが対応していることから明ら
かである。
 引用意匠において構造上スラブが別体をなしていることは原告主張のとおりであ
るが、意匠としては全体として把握すべきことは前述のとおりである。
 さらに、両意匠は、筒体の横辺と高さの比率が相違するほか、本体枠壁下方の凹
陥部の形状も相違することは、原告主張のとおりである。
 しかしながら、右差異点は、内部の配線の量に応じて相違が生じているにすぎ
ず、物品の働きそのものとの関連からみれば微差というほかない。
 なお、引用意匠に蓋が省略されていることは認めるが、鉄鋼コンクリート製マン
ホールの意匠として重要な部分は、スラブ・本体枠壁・底板が一体となつたマンホ
ールの本体部分であつて、蓋の有無は重要ではない。
5 両意匠の具体的構成態様の差異の設定について
 原告は、審決は、筒体枠壁の構成について別体のものを固着したものと当初から
一体であるものとは別の意匠であると考えているのであるから、引用意匠のように
筒体枠壁を一体に形成するものと本件意匠のように筒体枠壁の中央で分離されてい
るものとは基本的構成態様を異にしている、と主張する。
 しかしながら、引用意匠は「鉄筋コンクリート製マンホール」についての意匠と
して全体を一体に理解すべきものであるから、別体のものを固着するか当初から一
体であるかという形成方法の相違は、意匠の類否判断に影響を及ぼすものではな
く、両意匠の相違点は筒体中央における横一本線の有無にすぎないことになるか
ら、この点に関する審決の認定に誤りはない。
 原告は、本件意匠において筒体部分は単なる長方形という最も単純な形状をなし
ており、その筒体中央に横一本線の配されることは極めて重要であり、これをもつ
て単なる微差ということはできない、と主張する。
 しかしながら、意匠間に差異が存する場合であつても、その差異がありふれたも
のである場合には、特徴あるものとして看者に強い印象を与えることはできないの
であるから、その意味で意匠の公知性と類似性とは関連性を有する。そして、当該
物品について筒体枠壁を分離形成する技術が公的のものである以上、筒体中央にお
ける横一本線の有無はもはやありふれた相違にすぎず、単なる微差というほかな
い。
       理   由
一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、同二(審決の理由の要点)の事
実は、当事者間に争いがない。
二 そこで、原告主張の審決の取消事由の存否について判断する。
1 成立に争いのない甲第四号証によれば、引用意匠は、引用公報の第2図(従来
品の分解斜視図、別紙第二参照)に記載された意匠であつて、短円筒状開口部を突
設したスタブ5´、有底の縦長四角筒体状をなし、その外面下方に凹陥部を設けた
本体枠壁3´、及び正四角形状の底板4´より構成されていることが認められる。
 原告は、引用意匠は別紙第二に記載されている意匠そのもの、すなわち、スラブ
5´と本体枠壁3´と底板4´が上、中、下にそれぞれ別れて配置されたものであ
り、これを一体にしたものでないのに、審決がこれを上下方向に一体にしたものと
把握し、引用意匠に係る物品を「鉄筋コンクリート製マンホール」と認定したのは
誤りである旨主張する。
 しかしながら、前掲甲第四号証によれば、引用公報は、名称を「完成マンホー
ル」とし、実用新案登録請求の範囲を「内面にタラツプ、外面に管路布設のための
加工用薄壁部を設けた角筒状本体枠壁と、下部に底板、上部にスラブ部を各々設
け、一体成型にて規格化生産せる鉄筋コンクリート製マンホールの構造」とする実
用新案に関する出願公開公報であつて、前記第2図は「従来品の分解斜視図」であ
ると記載されていることが認められる。右認定の事実によれば、引用公報の第2図
に記載されたものが、鉄筋コンクリート製マンホールの従来品の分解斜視図である
ことは明らかである。そしてこの分解斜視図は、斜視図を単に上下方向に三つの部
分に分離しているだけのものであるから、ここに図示されているものを、鉄筋コン
クリート製マンホール、すなわちスラブ5´、本体枠壁3´、底板4´を上下方向
に結合して一体としたものの意匠として把握し、その具体的形状を認識できること
は明らかであり、本件において、右第2図が分解図であることは引用意匠をこのよ
うなものとして把握し、本件意匠と対比して類否を判断する妨げとなるものではな
い。
 したがつて、引用意匠をもつて、前記第2図に記載されたスラブ5´、本件枠壁
3´、底板4´を上下方向に一体としたものとして把握し、引用意匠に係る物品を
「鉄筋コンクリート製マンホール」とした審決の認定に誤りはない。
2 原告は、引用意匠は「鉄筋コンクリート製マンホール」そのものでなく、「鉄
筋コンクリート製マンホール」の分解されたものであり、本件意匠に係る物品であ
る「配線用コンクリート桝」とは物品の用途機能を異にする旨主張する。
 しかしながら、引用意匠に係る物品は「鉄筋コンクリート製マンホール」である
こと前記1説示のとおりであつて、原告の右主張はその前提において誤つており、
採用することができない。
 また、原告は、仮に引用意匠に係る物品が「鉄筋コンクリート製マンホール」で
あるとしても、引用意匠に係る物品はマンホールの埋設現場において別体となつて
いた底板、本体枠壁、スラブを組み立てて現場打ちするものであるのに対し、本件
意匠に係る物品は工場で全体を製造し、埋設現場に運んでその場に置くだけで機能
を果たすものであるから、両意匠は物品の用途機能を異にする旨主張する。
 しかしながら、両意匠は物品の形状をもつて意匠とするものであることは別紙第
一及び第二から明らかである(本件意匠の構成が別紙第一のとおりであることは当
事者間に争いがない。)ところ、形状をもつて意匠とするものの類否判断において
は、視覚を通じて認識される物品の形態の外観に係る構成と態様が判断の対象とな
るのであつて、両意匠とも全体を一体とした前記形態の物品として把握できること
前述のとおりである以上、それが現場打ちされるものであるか否かは両意匠の類否
判断に何ら影響を及ぼすものではないというべきである。したがつて、原告の前記
主張は理由がない。
3 そこで、両意匠の基本的構成態様について検討すると、前記認定の別紙第二に
示されたスラブ5´、本体枠壁3´、底板4´を上下方向で一体にした引用意匠の
構成を図示すると、別紙第三のとおりであることが認められる。そして、本件意匠
の構成を示すことについて当事者間に争いがない別紙第一に記載の意匠と右引用意
匠を対比すると、両意匠に係る基本的構成態様は、本体(引用意匠の本体枠壁
3´)を有底の縦長四角筒体状とし、その筒体上端に短円筒状開口部を突設した上
面板(引用意匠のスラブ5´)を固着し、筒体枠壁の外面下方に凹陥部を設けた構
成において共通しているが、引用意匠は前記本体枠壁3´の下部にこれより幅広の
底板4´を設け、右底板4´上に縦長四角筒体状の本体枠壁3´が載置されている
構成であるのに対し、本件意匠には、このような底板はなく、全体が縦長四角筒体
状をなしている構成である点において相違しているものと認められる。引用意匠が
全体を縦長四角筒体状としたものでないことは、前掲甲第四号証によれば、引用公
報の第2図に示された本体枠壁3´の底部は一辺がそれぞれ一・二cmであるのに
対し、底板4´の一辺はそれぞれ一・六cmであること、本体枠壁3´の底部の一
つの頂角と対角線上にある他の頂角間の長さは二・四cmであるのに対し、底板の
それは三cmであること、引用公報の第1図及び第3図から明らかなように、同公
報記載の考案においても、本体枠壁は底板上に載置される構成になつていることが
認められることから明らかである。
 したがつて、両意匠に係る基本的構成態様に関する審決の認定は、両意匠が全体
を有底の縦長四角筒体状とした点において共通しているとの認定において誤つてい
るというべきである。
 また、同様に両意匠の具体的構成態様を対比すると、両意匠は、審決認定の
(1) 筒体の形成方法の相違に伴う外観上の差異、(2) 筒体の横辺と高さの
構成比率(別紙第一中の斜視図と別紙第二の斜視図により対比すると、その比率は
本件意匠が約一対一・四であるのに対し、引用意匠は約一対二・八であることが認
められる。)において相違するのみならず、(3) 本件意匠には短円筒状開口部
に蓋があるのに対し、引用意匠には蓋がないことで相違し、かつ審決が共通として
いる点においても、(4) 筒体枠壁の外面下方に設けた凹陥部は横長四角状であ
るが、その横辺と縦辺の長さの比において、本件意匠は約四・五対一であるのに対
し、前記斜視図によると引用意匠は約一・五対一であること、(5) 本件意匠は
上面板の平面について四隅にボルト頭又はボルト孔を設けているのに対し、引用意
匠はスラブの平面について鉄筋と鉄筋挿入用の孔を設けているが、右鉄筋の上端に
ボルト、ナツトを装着するかどうか明らかでないこと、において相違していること
が明らかである。
 したがつて、両意匠に係る具体的構成態様に関する審決の認定は、右(3)ない
し(5)の相違点を看過した点において誤つているというべきである。
 そして、両意匠に係る物品及びその用途等からみて、両意匠の基本的構成態様と
具体的構成態様のうち、物品の正面、側面及び平面に顕著に表れる部分が看者の最
も注意を引く意匠の要部というべきであつて、その場合、本件意匠は、全体が有底
の縦長四角筒体状をなし、その筒体上端に短円筒状開口部を突設した上面板を固着
し、筒体外面下方に凹陥部を設け、かつ筒体の横辺と高さの比の差が一対一・四と
小さいため、看者に全体としてずんぐりとした重量感のある印象を与えるのに対
し、引用意匠は、本体枠壁3´が有底の縦長四角筒体状をなし、その筒体上端に短
円筒状開口部を突設したスラブ5´を固着し、筒体外面下方に凹陥部を設け、さら
に前記本体枠壁3´の下部に本体より幅広の底板4´を設け、底板上に本体を載置
するように構成されており、かつ筒体の横辺と長さの比の差が一対二・八と大きい
ため、看者に全体としてスマートな印象を与えるものである。
 審決は、筒体の横辺と長さの比の差について、微差にすぎないとしているが、こ
の点は両意匠の正面及び側面に顕著に表れる部分であり、前記認定の基本的構成態
様と共に両意匠の要部をなすものというべきであるから、この点をもつて単なる微
差とすることはできない。
 したがつて、両意匠は看者にそれぞれ異なつた美感を起こさせるものであるか
ら、両意匠の具体的構成態様における前記認定のその余の相違点について検討する
までもなく、本件意匠は引用意匠に類似しない意匠というべきである。
4 以上のとおりであつて、審決は、引用意匠の基本的構成態様及び具体的構成態
様についての誤定を誤り、その結果両意匠の類否判断に当たり、本件意匠は引用意
匠に類似する意匠であると誤つて判断したものであり、違法であるから、取消しを
免れない。
三 よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は正当として
これを認容し、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八
九条、第九三条第一項の各規定を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 藤井俊彦 竹田稔 春日民雄)
別紙第一
<12761-001>
別紙第二
<12761-002>
別紙第三
<12761-003>

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今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
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