弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役一〇か月に処する。
         理    由
 本件控訴の趣意は、弁護人塩見秀則名義の控訴趣意書に、これに対する答弁は、
名古屋高等検察庁検察官検事河野芳雄名義の答弁書に、それぞれ記載されたとおり
であるから、これらを引用する。
 控訴趣意のうち訴訟手続の法令違反の論旨について
 所論は、要するに、原審が採用し、かつ、原判決の(証拠の標目)に挙示されて
いる証拠からすれば、原判決は、名古屋地方裁判所に起訴されていた被告人に対す
る職業安定法違反の事実や、その他の起訴されていない余罪を認定し、これらを実
質上処罰する趣旨で、被告人に対し、懲役一年二か月の実刑という重い量刑をした
ものとみざるを得ないから、原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟
手続の法令違反がある、というのである。
 そこで、記録を調査し、当審における事実取調べの結果をも参酌して検討する
に、本件は、被告人が、A(昭和五五年一月二一日生)が満一八歳に満たない児童
であることを知りながら、同女に売春することを示唆し、平成九年五月六日午後五
時三〇分ころ、名古屋市a区所在のラブホテルにおいて、不特定の遊客甲を相手に
手淫等の性交類似行為をさせ、もって、児童に淫行させた、という児童福祉法違反
の事案である。
 一方、被告人に対しては、本件の被害児童である前記Aを、平成九年三月二一日
ころから同年四月五日ころまでの間、名古屋市b区内のファッションヘルス店に、
不特定多数の男性客を相手に対価を得て卑猥な接客行為をするいわゆるヘルス嬢と
して稼働させ、もって、公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で労働者の供給を行
った、との職業安定法違反の事実で、本件の起訴と同日である同年七月二五日名古
屋地方裁判所に公訴が提起されており(「別事件通知書」(記録第一冊二七丁)参
照)、原審の弁論終結当時、右の事件は右裁判所に係属中であったものである。
 原審は、平成九年八月二七日の第一回公判期日において、検察官請求の甲号証一
八点及び乙号証一七点を弁護人の同意によりすべて採用して取り調べ、即日結審し
た。ところが、原審が採用し取り調べた証拠のうち、Aの平成九年七月四日付け及
び同月一一日付け各検察官調書(いずれも謄本。検甲2、3)、千代谷一仁の検察
官調書謄本(検甲13)、並びに被告人の平成九年七月三日付け、同月一一日付け
及び同月二二日付け各検察官調書(いずれも謄本。検乙12ないし14)は、それ
らの供述記載の内容自体からして、いずれも、もっぱら又は主として前記の職業安
定法違反の公訴事実に関するものであることが明かであり、その立証趣旨も、「被
告人の指示により風俗店で働かされていた状況及び稼働内容等」(検甲2)、「被
害少女を採用し、稼働させていた状況等」(検甲13)、「被害少女を風俗店で働
かせていた状況等」(検乙12)などというものである。しかも、原審は、右の各
証拠を、本件の証拠として採用し取り調べただけではなく、本件の児童福祉法違反
の(罪となるべき事実)を認定した証拠として、(証拠の標目)に挙示しているの
である。
 <要旨>起訴されていない犯罪事実をいわゆる余罪として認定し、実質上これを処
罰する趣旨で量刑の資料として考慮することは許されないけれども、単に被
告人の性格、経歴及び犯罪の動機、目的、方法等の情状を推知するための資料とし
てこれを考慮することは適法と解されるが、この理は同一被告人について他の裁判
所に起訴されている犯罪事実についても同様と考えられる。もとより、本件におい
ても、専属管轄を有する家庭裁判所である原審が、時期的にほぼ重なり合う被告人
の前記の職業安定法違反の事実を、単に、被告人が前記Aと知り合った後、本件の
児童福祉法違反の犯行に及ぶに至った経緯ないし犯行の動機等の情状を推知するた
めの資料として、考慮したにすぎないと考える余地がないわけではない。しかしな
がら、すでに述べたとおり、その供述記載内容や立証趣旨等に照らし、前掲の各証
拠はもっぱら又は主として職業安定法違反の事実に関するものといわざるを得ない
だけでなく、これらの証拠は、原審が取り調べた証拠のうちでもかなりの部分を占
めていること、さらに、原審が、これらを、本来、本件の罪となるべき事実を認定
するに必要かつ十分な証拠を挙示すれば足る(証拠の標目)に挙示していることな
どに照らすと、原判決には、客観的にみて、本件公訴事実のほかに、現に他の裁判
所に起訴され係属中の職業安定法違反の犯罪事実を認定し、これをも実質上処罰す
る趣旨で被告人に対する刑を量定した違法がある、との非難を免れないものといわ
なければならない。
 右によれば、その余の点について検討を加えるまでもなく、原審の訴訟手続に
は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があるというべきであり、論旨は
理由がある。
 よって、量刑不当の控訴趣意に対する判断を省略し、刑訴法三九七条一項、三七
九条により、原判決を破棄した上、同法四〇〇条ただし書を適用して、当裁判所に
おいて更に判決する。
 原判決が認定した事実(ただし、「いわゆるテレクラを通じて連絡しあった」と
の部分を除く。なお、(証拠の標目)のうち、前掲の職業安定法違反の事実に関す
る各証拠も削除する)に、原判決と同一の法令(刑種の選択を含む)を適用し、そ
の刑期の範囲内で処断すべきところ、本件は、当時一七歳の被害児童に対し、不特
定の遊客を相手に売春することを示唆し、右遊客を相手に性交類似行為をさせて、
児童に淫行させた、との児童福祉法違反の事案であるが、被告人は自己の遊興費等
に充てる金欲しさに被害児童に売春をさせたもので、犯行の動機にいささかも酌む
べきものはないこと、街で知り合った被害児童に対し、あるいは甘言を弄し、ある
いは脅迫や暴行を加えるなどし、自己の意のままにした上で売春をさせるなどして
いたもので、犯情はきわめて悪質であり、被害児童の心身にも著しい悪影響を及ぼ
していること、ファッションヘルスで稼働する妻から小遣いを貰って遊び暮らしな
がら、他方において、被害児童から得た金銭を遊興費等に費消し、さらには、被害
児童の身の上を心配し、被告人との関係を断ち切らせようとした被害児童の母親か
らも、その心配につけこんで多額の金銭の交付を受けるなどしていることなどの事
情に照らすと、被告人の刑責を軽視することは許されず、原判決後の平成九年一〇
月六日に被害児童とその母に六〇万円を支払って示談を成立させ、同女らからは寛
大な処分を希望する旨の嘆願書が提出されていること、被告人は、職業安定法違反
等の事件について、第一審で懲役二年、四年間刑執行猶予、保護観察付きの判決を
受け、控訴中であること、被告人に前科はなく、二一歳と若年であり、本件を反省
しており、今後は父が準備してくれた稼働先でまじめに働きたいと供述しているこ
となどの被告人に有利な諸事情を考慮しても、本件について刑の執行を猶予するこ
とは相当でない。よって、被告人を懲役一〇か月に処することとし、原審及び当審
における訴訟費用は、刑訴法一八一条一項ただし書を適用し、被告人に負担させな
いこととして、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 笹本忠男 裁判官 志田洋 裁判官 川口政明)

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