弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
被告人両名をそれぞれ懲役1年10か月に処する。
被告人両名に対し,未決勾留日数中各180日をそれぞれその刑に算入する。
理由
(犯罪事実)
被告人Aは,同被告人から建物賃貸借契約の仲介の依頼を受けていた株式会社C店舗の
従業員のDが,その仲介業務を行った際に,同被告人の交際相手であるEに対し,自分の
父親がやくざであったと話し,脅すようにして交際を求めたと考えて立腹し,平成18年
6月27日午後1時2分ころから同日午後2時35分ころまでの間,神戸市a区bc丁目
d番e号の前記店舗にいたDに電話をかけ,Dに対し「どういうつもりや。わしの女が,
。,,。びびっとるおまえのおやじがやくざやっていうのでびびって泣いてる脅されたって
fの家は住めへん。もう解約や。お金全部返せ」などと怒鳴りつけた。。
その後,被告人両名は,DのEに対する言動に言いがかりをつけ,前記賃貸借契約を解
約するとしてその損害賠償金等名下に金銭を脅し取ろうと企て,共謀の上,同日午後5時
ころ,被告人両名で前記店舗に押しかけ,そのころから同日午後7時ころまでの間,同店
舗の1階事務室において,D及び前記店舗の店長のFに対し,被告人Aにおいて「どうい
。。。。。」うつもりや何しとんねんもう荷物まとめて行くぞどうすんねや連れていこうや
などと怒鳴りつけ,被告人Bにおいて「兄ちゃん,分かるやろ。こいつもこんなに怒っと
るんや。どうするつもりやねん」などと言った後,同店の地下応接室において,Dを床。
に正座させた上,Dに対し,被告人Aにおいておしぼり及び火のついたたばこをそれぞれ
投げつけ,床に正座している同人の姿をカメラで撮影し,被告人Aにおいて「ばらまいと
くわ,被告人Bにおいて「もう神戸おられへんな」と言った上,更に,D及びFに対。」。
し,こもごも「誠意を見せろ「誠意みせなあかんのちゃうか」などと,また,Dに。」,。
対し,被告人Aにおいて「個人的には,おまえどうするんや。別に誠意みせなあかんのち
ゃうんか。おれら,どんな人間か分かってるやろう」と言うなどして暗に金銭の交付を。
要求し,その要求に応じなければD及びFの生命,身体,名誉等に危害を加えるような気
勢を示して同人らを畏怖させ,同人らから金銭を脅し取ろうとしたが,同人らが警察に届
け出たため,その目的を遂げなかった。
(証拠)
記載省略
(補足説明)
1被告人両名及びその各弁護人は,①被告人両名がD及びFに対して判示の言動をした
ことについてその一部はなかったとした上で,②被告人両名のD及びFに対する言動は,
被告人Aから賃貸マンションの仲介を受けたDが,業務上知り得た情報をもとに被告人A
の交際相手のEに電話をかけ,Dの父親がやくざであったと脅すなどしてEを食事に誘う
などしたことから,被告人Aが,Dに謝罪を求め,同人の仲介した賃貸マンションの賃貸
借契約(及び仲介契約)を解除し,支払済みの金銭の返還等を求めたものであり,権利行
使の範囲内にあり違法性が阻却される,また,③被告人両名の間に恐喝の共謀はなかった
旨主張して,被告人両名はいずれも無罪である旨主張するので,以下,当裁判所が判示犯
罪事実を認定した理由について補足して説明する。
2()まず,被告人両名が平成18年6月27日(以下「本件当日」という)午後5時1。
(「」。),ころから午後7時ころまでの間判示の前記店舗以下C店舗というに行ったこと
また,その際,被告人Aに対して神戸市g区hの賃貸マンション(以下「fの物件」とい
う)の契約に要した諸経費89万4700円の返金並びに次に入居する際の諸費用及び。
引越代金の支払の約束が記載された上,これにC店舗の印が押され,かつ,F及びDが署
,,,名押印した示談書が作成されたことは証拠上明らかであるところDは公判廷において
被告人両名が本件当日C店舗に来てからの状況及び本件に至る経緯について,次のように
供述する。
すなわち,Dは,本件に至る経緯については,①平成18年5月28日,被告人A
から賃貸マンションの仲介を依頼され,同被告人及びEを神戸市i区内の賃貸マンション
に案内し,Eの名義で申込みをしたが審査に落ちたため,更に物件を案内し,同年6月8
日,Gの名義でfの物件を申し込んだ,②同日ころから,Eと何度か携帯電話でやりとり
をするようになり,当初は賃貸マンションの契約に関する話をしていただけであったが,
途中から,Eは,被告人Aは暴力を振るうなど怖いときがある,被告人Aと別れたいなど
,,とプライベートな話をしてくるようになりEの態度から自分に好意を持っていると感じ
,,,自分もEに好意を持っていたことから同年6月25日にEと電話をした際Eに対して
被告人Aと別れたときは食事に行かないかと誘い,また,被告人Aと別れたときは彼氏に
立候補したい旨言った,③同月27日,Eから,Eが自分と連絡を取っていたのが被告人
Aにばれたかもしれない旨の電話があり,同被告人に対して何か理由を付けて言ってごま
かしてよいかと聞かれたので了承したところ,同日午後1時2分から午後2時35分ころ
にかけて,被告人Aから5回にわたり電話があり「どういうつもりや。わしの女がびび,
っとる。おまえのおやじがやくざやっていうので,びびって泣いてる,脅されたって。f
の家は住めへん。もう解約や。お金全部返せ」などと怒鳴りつけてきて,いったんはj。
に来るように言ってきたが,その後C店舗に行くから待っているように言ってきた,④そ
こで,外出中の店長のFに連絡をとり,C店舗に戻るよう依頼し,同店に戻ってきたFに
経緯を説明した旨供述する。また,本件当日被告人両名がC店舗に来てからの状況につい
ては,①午後5時ころ,被告人両名がC店舗に来て,被告人Aが,同店の1階事務室にお
いて,自分及び途中から同所に来たFに対し「どういうつもりや。びびって泣いとるやな
いか。何しとんねん。もう荷物まとめて行くぞ。どうすんねや」などと怒鳴りつけてき。
たが,被告人Bがまあ待てやという感じで割って入ってきた,②被告人Bは,自分の頭の
位置が高いから座るように言ってきたので正座したところ,被告人Aはなおも「どうすん
のや。連れていこうや」などと言い,被告人Bも「こんな怒っとるやないか。どうする。
つもりやねん」などと言ってきた,③その後,Fの申し出により同店の地下応接室に移。
動したが,そこでも被告人Aが「おまえはこんなとこに座らんでええ」と言って応接セ。
ットのいすをどけたため,自分はその場で正座した,④更に,被告人Aは「どういうつも
りや。うちの女がびびってずっと泣いとるやないか。誠意を見せろ。どうすんねや。お前
の嫁はんにも一緒のことしょうか」などと言い,また,Fに対して,自分が免許停止中。
に運転していることや,賃貸借契約に際して保証人を立てる会社を利用していることを知
っているかとの話をし,自分がこれを認めると,Fは自分の頭をたたいて自分の隣に正座
した,⑤被告人Aは,正座していた自分をカメラで撮影し「ばらまいとくわ」と言い,,。
その際,被告人Bも「もう神戸おられへんな」と言った,⑥その後,被告人Aは繰り返。
し「どうすんねや。誠意を見せろ」などと言い「分かっているか」などと言いながら。,。
おしぼりや火のついたたばこを投げつけ,更に,Eに電話をかけ,自分に電話を代わらせ
てEに謝らせた上,なおも「誠意を見せろ」などと言い,被告人Bも「誠意みせなあか。
んのちゃうか」などと言った,⑦これに対してFが「お金ですか」と尋ねたところ,。。
被告人両名は「考えろ」と言い,Fが契約金を返す旨言うと,被告人Bは「引っ越し代。
も掛かっとる」と言い,また,被告人AはFに次の引っ越し先の面倒をみるように言っ。
た,⑧そして,被告人BがC店舗内のパソコンを使用して前記示談書を作成し,Fが署名
押印したほか,被告人Aに言われて自分も署名押印した,⑨その後,被告人Aは「会杜は
これでええ。あとは個人的には,おまえどうするんや。別に誠意みせなあかんのちゃうん
か。おれら,どんな人間か分かってるやろう」などと言い,保険証を渡すよう求めてき。
たので渡すとそのコピーをとったが,被告人Bが「もうこれ以上詰めてもテンパっとうか
ら,何も出えへんやろう。また考えて電話してこいや」と言ったことからその場はおさ。
まり,fの物件の契約関係書類を持って退店した旨供述する。
()次に,Fは,公判廷において,本件当日に被告人両名がC店舗に来てからの状況及2
びこれに至る経緯について,次のように供述する。
すなわち,①本件当日の午後2時ころ,外出中にDからクレームが入ったのでC店
舗に大至急戻ってほしいとの電話があり,午後3時から3時30分ころC店舗に戻りDか
らクレームの内容について確認した,②同日午後5時ころ,被告人両名がC店舗に来たと
の連絡を受け,同店の1階事務室に行ったところ,被告人Aは,Dに対して「おまえ,お
れの女に何してんねん。何電話かけてきてんねん。さろてまうぞ。ここでやってしもても
ええねんぞ。誠意を見せろ」などと怒鳴りつけ,被告人Bは,横で相づちを打つように。
「兄ちゃん,分かるやろ。どう責任取んねん」などと言った上「何高いところから物。,
言うてんねんそこ座れと言ってDをその場に正座させたそれからも被告人Aはど。。」,「
ないすんねん。どう責任取んねん。誠意見せろ」などと言い,被告人Bも「こいつもこ。
んなに怒っとんや」と言っていたので割って入り,同店の地下応接室に移動した,③地。
下応接室で,被告人AはDに正座をさせた上,Dが自分の父親が元やくざであると言って
Eを脅しており,Eは怖がって家で泣いている旨言い,また,Dに同人が無免許運転をし
たり,賃貸借契約に際して保証人を立てる会社を利用していることを話させたので,自分
もDの頭を叩いた上でその隣に正座した,④被告人Aは,自分とDに対し「どう責任取ん
ねん。誠意見せろ」などと怒鳴り,被告人Bも,相づちを打つように「兄ちゃん,分か。
るやろう」などと言い,更に,被告人両名は「Dが知ってるようなところには住まれへ。
。」,「,,,。」ん被告人Aは彼女が怖がってるんでもう引っ越すからお金を契約金を返せ
と言ってきた,⑤その後被告人Aは,正座していたDをカメラで撮影し,その際,被告人
「。。」,,両名はこれをばらまいたるここらで仕事できんようになるなあなどと言いまた
その後被告人Aが怒り,Dにおしぼりやたばこを投げつけたり,Eに電話をかけ,Dに電
話を代わらせてEに謝らせたりしたことがあった,⑥被告人両名はその後もなお「誠意を
見せろ」などと言ってきたことから「お金ですか」と尋ねたところ,被告人Bは「自。,。
分で考えろ」と言い,契約金を返す旨言うと,被告人Aは引っ越し代も支払うように言。
ってきた,⑦そして,被告人BがC店舗内のパソコンを使用して前記示談書を作成し,同
被告人に言われてC店舗の印を押し,自分とDが署名押印した,⑧その後,被告人Aは,
「会社との話はもうこれで済んだから,今度は個人的な話で,Dどうすんねん」と言っ。
てDに詰め寄り,Dに社会保険証のコピーをとるように求めていたので,その場をしのぐ
ために,検討して連絡する旨申し出て,被告人両名には帰ってもらった旨供述する。
3()そこで,これら各供述の信用性について検討する。1
まず,Dの供述のうち,本件当日のC店舗における被告人両名の言動に関する部分
は,その順序や,被告人A,同B,あるいは被告人両名のいずれの言動であったかの点に
ついて,記憶が若干あいまいであったり,Fの供述内容と一致しないところがみられるも
のの,これらは,被告人両名から突然脅されて動転し,また強い緊張を強いられる中で,
若干不正確な記憶となり,あるいは記憶が混乱したものと理解することが十分にできるも
のであって,前記の点に関する供述内容を全体的にみれば,具体的で臨場感がある上,F
の供述内容ともおおむね符合しており,特に不自然,不合理な点もない。また,反対尋問
にも揺らいでおらず,捜査段階から公判に至るまで供述に変遷もみられない上,Dには,
前記の点に関して殊更被告人両名に不利な虚偽の供述をする動機や利益も認められないと
いうべきである。
この点,被告人Bの弁護人は,C店舗では,他人名義による賃貸借契約や,賃貸借
契約に際しての保証人を立てる会社の利用等組織ぐるみの不正が行われており,DやFに
はこの不正を隠ぺいするために虚偽の供述をする動機や利益がある旨主張し,証拠によれ
ばC店舗でこれらの行為が行われていたことがうかがわれるものの,これらの事実は,D
及びFが警察に被告人両名の恐喝行為について虚偽の申告をすることによって隠ぺいでき
るものとは到底考えられず,むしろ,これらの事実はD及びFが本件被害を届け出たから
こそ明らかになった面があるのであって,被告人両名がこれらの事実を隠ぺいするために
被告人両名に不利な虚偽の供述する動機や利益があるとはいえないというべきである。ま
た,被告人Aの弁護人は,DにはEを脅して食事に誘うなどしたことによる損害賠償責任
やこれによる会社内での処分を免れるために被告人両名に不利益な虚偽の供述をする動機
や利益があり,FもDに対する監督責任を免れるために同様の供述をする動機や利益があ
る旨主張するが,仮にDがEを脅していたのが真実であれば,D自身にはそのような動機
や利益があるといえるとしても,Fにとっては,自らが直接指揮,指導したものではない
Dの行為によって生ずる自らの責任は,わざわざDと口裏を合わせた上で被告人両名から
恐喝されたという虚偽の供述をしてまで免れたいと考えるような重大なものとはいえない
ことからすれば,同弁護人が指摘する点もFの供述とおおむね一致するDの供述の信用性
を左右するものとはいえない。これらの事情に加え,Dは本件の翌日には警察に被害届を
提出していることなども併せ考慮すれば,Dの前記の点に関する供述は信用性が高いとい
える。
他方,Dの供述のうち,その他の部分については,①被告人両名がC店舗に来た時
間や,最初に被告人Aを案内した垂水の賃貸マンションの申込みが審査に落ちた理由,E
に対して彼氏に立候補したい旨言ったかどうか,Eを誘うなどした日がいつであったか等
について,捜査段階における供述との間に変遷があること,②Dには,特にEに対する誘
いに関しては,できるだけ自分の落ち度を隠したいという動機があるといえる上,供述経
過からもその傾向がうかがわれることからすれば,その信用性についてより慎重な検討を
要する。しかし,前記の変遷のうち,日時に関する変遷は,記憶が不正確であったことに
よるものと認められ,その変遷から供述の全体的な信用性が左右されるとはいえないし,
垂水の賃貸マンションが審査に落ちた理由についての変遷も,供述全体の信用性を左右す
るような重要な事項についての変遷とはいい難い。Eに対する誘いの内容やその日がいつ
であったかに関する変遷についても,最終的にDが供述する内容には客観的証拠と整合し
ないような不自然,不合理な点はなく,むしろ,Dの供述内容からすれば,①平成18年
6月中旬以降DとEが度々長時間の電話をしていることも自然に理解できること,②当時
Eはいまだ前夫との離婚が成立していなかったことからすれば,EがDに対して被告人A
に住民票を渡したくないので直接渡したいと言ってきたとするDの供述は自然といえるこ
と,③後記のとおり,この点に関するEの公判廷における供述は明らかに信用できないこ
とからすれば,Dの供述の全体的な信用性を左右するものではないというべきである。な
お,被告人Bの弁護人は,Dが,平成18年6月27日午後零時5分ころ,Eから,Eが
自分と連絡を取っていたのが被告人Aにばれたかもしれない旨の電話があった旨供述して
いることについて,Dは他方で同日午前11時46分の時点で被告人Aと通常の会話をし
ており,少なくともこの時点で被告人AはDとEが連絡を取っていたことには全く気付い
ておらず,また,その後同日午後零時5分までの間に被告人AとEの間には携帯電話の通
話履歴がないのであるから,Dの供述によれば,Eは同日午後零時5分の電話ではうそを
言っていたことになるところ,Eにはそのようなうそを言う理由はないとして,Dの供述
は不合理である旨主張する。しかし,被告人Aは捜査公判を通じて同日午前中にEからD
との間で起きた事柄を聞いた旨供述している上,Eは,当時携帯電話は故障していて代わ
りの電話機を借りていた旨供述していること(第5回公判のEの証人尋問調書35頁,)
被告人Aも当日は違う携帯電話も使用していた旨供述していること(第6回公判の被告人
Aの供述調書72頁)からすれば,同日午前11時46分から同日午後零時5分までの間
に被告人AとEの間に電話やメールなどによって会話があったとしても何ら不自然ではな
いから,同弁護人が指摘する点は,Dの供述の信用性を左右するものとはいえない。
したがって,Dの供述は全体的に信用性が高いということができる。
()次に,Fの供述の信用性について検討するに,同人の供述のうち,本件当日のC店2
舗における被告人両名の言動に関する部分は,その順序や,被告人A,同B,あるいは被
告人両名いずれの言動であったかの点について,あいまいであったり,主尋問と反対尋問
とで変遷しているところがある上,Dの供述内容とも一致しないところがみられるが,こ
れらは,被告人両名から突然脅されて動転し,また強い緊張を強いられる中で若干不正確
な記憶となり,あるいは記憶が混乱したことによるもの,又は公判廷で証言を求められた
ことによる緊張からくるものと理解することができるものであって,被告人両名の言動の
,,,内容という枠組みでみればDの供述内容ともおおむね符合しておりその内容に不自然
不合理な点もない。また,反対尋問にも揺らいでおらず,捜査段階から公判に至るまで供
述に変遷もみられないこと,Fには殊更被告人両名に不利な虚偽の供述をする動機や利益
は認められないこと,本件の翌日には警察に被害届を提出していることは,Dの供述につ
いて述べたのと同様である。
なお,Fの供述のうち,被告人両名がC店舗に来る前にDからEや被告人Aとの間
で起きた事柄について聞いた内容に関する部分は,主尋問と反対尋問とで供述が変遷した
り,Dの供述とも一致しないところがあるが,この点の供述の不自然さは,前記の事情か
らして,本件当日のC店舗における被告人両名の言動に関するFの供述の信用性を左右す
るものではないというべきである。
したがって,Fの供述も,少なくとも本件当日のC店舗における被告人両名の言動
に関する部分については,信用性が高いということができる。
4()これに対し,Eは,公判廷において,本件に至る経緯について,次のように供述す1
る。
すなわち,①平成18年6月に入ってから,Dから電話がかかるようになり,怒っ
た様子でG名義の通帳や自分と子供の写真と住民票を用意するように言われ,Dに強い不
,,,,信感を抱くようになった②またこのころDから何で被告人Aと付き合っているのか
釣り合っていない旨言われ,客である自分になんでそんなことを言うのか,気持ち悪い人
だと思った,③その後も,Dから,自分の顔写真をパソコンの待ち受け画面にしているな
どという内容の電話があり,④本件前日にも,Dから電話があり,父親がやくざであった
と言われた上,食事に誘われたが,自分を脅しているのではないかと思い怖かった,⑤本
件当日の朝方,携帯電話にDから1回か2回の着信履歴があったことから怖くなり,被告
人Aにそれまでの経緯を話し,fの物件は場所や電話番号を知られており,怖いので住み
たくないと言った旨供述する。
()また,被告人Aは,公判廷において,本件に至る経緯について,①本件当日の昼前2
ころ,Eから電話があり,Dが夜中に電話をかけてくるなど,何度も電話をかけてきて怖
いという話があり,更に事情を聞くと,Dから父親がやくざだと言われた,食事やデート
に誘われた,被告人Aと別れて自分と付き合わないかとか,Eの写真をパソコンの待ち受
け画面にしているとか言われたということだったのでDに腹が立ち,電話でDをきつい口
調で責め立て,またfの物件を解約するので,契約にかかった費用の返還を求め,他方で
被告人Bにも経緯を説明した,②その後,被告人Bからのアドバイスもあって,当初考え
ていたC店舗の外ではなく,C店舗に行ってDと会うことにし,また被告人Bが自分一人
で行くことを心配して付いてきてくれることになったので,同日午後5時20分ころ,被
告人BとともにC店舗に行った旨供述する。また,本件当日C店舗に行ってからの状況に
ついて,D及びFの供述と異なり,①同店の1階事務所で,Dに対し「この場でやっても
ええやんぞ。さらって行こうや」などと言ったことはなく,このとき被告人Bが「兄ち。
ゃん,分かるやろ,こいつもこんなに怒っとるんや。どないするんや」などと言ったこ。
ともない,②同店の地下応接室に移動した後,正座していたDをカメラで撮影したが,こ
れはDが謝っている姿をEに見せたいと考えたからであり,Dに対し,自分が「これを神
戸中にばらまくからな。これでもう商売できへんぞ」とか,被告人Bが「もう神戸おら。
れまへんなあ」などと言ったことはなく,自分がDに対しておしぼりや火のついたたば。
こを投げつけたこともないが,ものに当たったことはあるかもしれないので,おしぼりや
たばこを投げたことがあるかもしれないが,DやFに向かって投げたことはない,③被告
人Bとともに「誠意を見せろ」などと言って金銭の交付を求めたことはない,④前記示。
談書に次に入居する際の諸費用及び引越代金の支払の約束が記載されているのは,自分が
fの物件から引っ越さなければならないと言っていたら,Fが次の家は責任を持って探す
と言い,またそれに関する費用はC店舗側が負担する旨言ってきたことから,その申出を
そのまま記載したものである,⑤前記示談書の作成後,更にDに対して個人的な責任を求
めたことはない旨供述する。
()そして,被告人Bも,公判廷において,本件に至る経緯について,①本件当日の午3
後1時53分及び午後2時11分ころの被告人Aからの電話で,fの物件を解約すること
やその件でDと会うつもりであることを聞き,その話をするのであればC店舗で会うよう
にアドバイスした,②被告人Aがかなり腹を立てていたことから,同被告人が手を出した
りしないようにするため,また,相手にやくざがいるかもしれないと聞いたことから,実
際にやくざがいた場合は自分が話をしようという考えから,自分も被告人Aに付いていく
ことにした旨供述する。また,本件当日C店舗に行ってからの状況について,D及びFの
供述と異なり,①同店の1階事務室で,被告人Aが,Dに対し「この場でやってもええや
んぞ。さらって行こうや」などと言ったことはなく,このとき自分はDに対し「兄ちゃ。
ん,分かるやろ,こいつもこんなに怒っとるんや」とは言ったが「どないするんや」。,。
などと言ったことはない,②同店の地下応接室に移動した後,被告人Aが正座していたD
をカメラで撮影したのは見ておらず,したがって被告人Aが「これを神戸中にばらまくか
らな。これでもう商売できへんぞ」とか,自分が「もう神戸おられまへんなあ」など。。
と言ったこともない,③被告人AがDに対しておしぼりや火のついたたばこを投げつけた
ことはあるが,突然のことであって制止できなかった,④被告人Aとともに「誠意を見せ
ろ」などと言って金銭の交付を求めたこともない,⑤前記示談書については,自分がF。
,,,に会社としての対応を求めたところFが掛かったお金はお返しすると言ったことから
自分がパソコンで作成したものであり,これに次に入居する際の諸費用及び引越代金の支
払の約束が記載されているのは,Fが自ら申し出た内容をそのまま記載したものである,
⑥前記示談書の作成後,被告人Aが更に「おまえ個人的にはどうするんや。わしらがどう
いう人間かわかっとるやろ。誠意みせんかい」などと怒鳴りつけたことはない旨供述す。
る。
5()そこで,これら各供述の信用性について検討する。1
まず,Eの供述は,そもそもその供述内容自体が不自然というべきである。すなわ
ち,①Eの供述する,Dが自分の父親がやくざであったと言ったとの点は,父親がやくざ
であったことと食事への誘いがいかなる関係にあるのかなど,Dの話の前後の脈略が判然
とせず,いかにも唐突であって不自然である。また,EとDの携帯電話の通話履歴によれ
ば,平成18年5月28日から本件当日までの間に,EとDが通話した回数は33回,そ
のうちEからDに電話した回数は21回にのぼり,EがDに恐怖を感じたという同年6月
25日には,午後8時37分ころから2回にわたり合計約41分間通話しており,その翌
日である本件当日も,Eから2度にわたってDに電話し,それぞれ約2分間,約6分間の
通話をしているのであるが(甲8,25日の合計約41分間の通話は,Dが父親がやく)
ざであったと言ってEを食事に誘ったということだけで,なぜこのような長い時間を要し
たのか説明が付かないし,Eが供述するように,G名義の通帳に関する話をしたり,Eが
Dに対してfの物件に関する契約の進め方に文句を言っていたというのも,父親がやくざ
であったと言われて怖かったと述べる一方で長時間にわたってそのような文句を言ってい
たというのは不自然というほかない。本件当日の2度の電話についても,Eは,G名義の
通帳が用意できたかどうかの話をしていたと供述するが,前日の電話でDのことが怖かっ
たと述べる一方で自らDに連絡するというのはやはり不自然というほかない。これらに加
え,②Eの供述は,主要な部分を含めてそのほとんどすべてが弁護人の誘導によるもので
ある上,Eは,主尋問では泣きながら供述しながら,後にその理由について問われると供
述を拒絶するという不自然極まりない供述態度をとっていること,③前記のとおりDの供
述は全体的に信用性が高いことなどにかんがみれば,Eの供述は到底信用することができ
ないというべきである。
()次に,被告人Aの供述についてみるに,①被告人Aの供述は,Dに対しておしぼり2
や火のついたたばこを投げつけたという,D,F及び被告人Bが一致して供述している事
実についても否定しているところ,これは,被告人Aが自己の責任を免れあるいは軽減す
るために意図的に虚偽の供述をしているか,それとも本件当時極度の興奮状態にあるなど
,,して記憶が不明確になっているかのいずれかと考えられるところ後者であったとしても
そのように自分の重要な行為についての記憶すらあいまいであるのに,他方でDらに対し
て「この場でやってもええやんぞ。さらって行こうや「これを神戸中にばらまくから。」
な。これでもう商売できへんぞ「誠意を見せろ」などと言ったことについては明確に。」。
否定するというのは,不自然というほかない。また,②前記示談書に次に入居する際の諸
費用及び引越代金の支払の約束が記載されていることについて,Fが自ら申し出た内容を
記載したと述べる点も,前記約束は,その文言からして,少なくとも次の家の契約に必要
な仲介手数料,保証金(敷金)等の費用及び次の家への入居のために必要な引越代金を含
むものと解するのが自然であって,相当多額の金銭の支払約束を意味するものであるとこ
ろ,Fが,fの物件の契約に要した諸経費全額89万円余りの返還に加えて,このような
多額の金銭の支払約束を,特に被告人両名からの要求がないにもかかわらず自ら申し出た
上,しかも,株式会社Hの本社等の了解を得ることなく,その場で,その約束を記載した
前記示談書にC店舗の印を押し,自ら署名押印したというのは不自然というほかない。こ
れらに加え,③被告人Aは,捜査段階においてはいったん事実を認めながらその供述を変
遷させていること,④被告人BがC店舗の1階事務室でDに対して「兄ちゃん,分かるや
ろ,こいつもこんなに怒っとるんや」と言ったことについて,被告人Bが認めているに。
もかかわらず否定していることなども考慮すれば,被告人Aの供述は,DやFの供述に比
べて信用できないことは明らかというべきである。
()続いて,被告人Bの供述についてみるに,①前記示談書に次に入居する際の諸費用3
及び引越代金の支払の約束が記載された経緯に関する供述が不自然であることについて
は,被告人Aの供述について述べたのと同様であるし,また,②C店舗の地下応接室にお
いて,被告人Aが正座しているDをカメラで撮影したのは見ていないと述べる点について
も,被告人Aは,同店の従業員にカメラを買いに行かせ,同従業員はカメラを買って被告
人Aに渡し,被告人Aはその上でカメラで撮影しているところ,被告人AがDらに手を出
したりしないようにするために同被告人に付いていったという被告人Bが,これらの3つ
の場面を一切見ていないというのは,被告人Bが駐車禁止の取締りの確認やたばこの購入
のために2度ほど席を外したことがあったことを考慮に入れてもなお不自然である。そも
そも,③被告人Bは,被告人AがDらに手を出したりしないようにするために同被告人に
付いていったと述べながら,同店の地下応接室で被告人AがDを正座させた際にもこれを
やめさせず,被告人AがDに対しておしぼりや火のついたたばこを投げた後も,被告人A
に退店を促すなどすることなく同被告人とともに引き続きその場に残り,Fらに対応を考
えさせたというのも不自然というほかない。これらに加え,④被告人Bは,地下の応接室
でDがずっと正座していたという,D,F及び被告人Aが一致して供述している事実につ
いても否定していること,⑤捜査段階では被告人Aがおしぼりやたばこを投げたことにつ
いて否定していたなどその供述の重要な部分に変遷がみられることなども考慮すれば,被
,。告人Bの供述もまたDやFの供述に比べて信用できないことは明らかというべきである
6このように,本件に至る経緯については,Dの供述が全体的に信用性が高く,他方で
Eの供述は全く信用できないから,Dの供述が不明確であるような部分を除いて,同人の
供述するとおりと認めるのが相当である。
また,本件当日のC店舗における被告人両名の言動については,D及びFの供述が信
,,用でき他方で被告人両名の供述のうちこれらに反する部分については信用できないから
少なくとも,D及びFの供述が符合する事柄,そしてD又はFのいずれかが供述する事柄
であって,各被告人が認めるものについては,これを事実と認定することができる。
7そうすると,本件当日のC店舗における被告人両名の言動は,前記犯罪事実に記載の
とおりと認められるが,これらの言動は,D及びFに対して暗に金銭の交付を求める恐喝
行為であることは明らかであって,被告人両名にその故意に欠けるところがないことも,
被告人両名の間に共謀のあったこともまた明らかである。この点,被告人Bの弁護人は,
被告人両名の間の共謀を争うが,被告人Bは,C店舗において被告人Aと行動を共にして
いた上,同店1階事務室ではDを正座させて「兄ちゃん,分かるやろ,こいつもこんなに
怒っとるんや」と言うなどし,同店の地下応接室でも,被告人Aが正座しているDをカ。
メラで撮影した際に同人に「もう神戸おられへんな」と言ったり,D及びFに「誠意み。
せなあかんのちゃうか」などと言うなどし,被告人AがDに対しておしぼりや火のつい。
たたばこを投げた後も,被告人Aに退店を促すなどすることなく同被告人とともに引き続
きその場に残り「お金ですか」と尋ねたFに対して自分で考えるように言い,前記示,。
談書をパソコンで作成したことが認められる。他方で,被告人Bの話し方は冷静で普通な
ものであったことが認められるものの(第3回公判のD証人尋問調書13頁,第4回公判
のF証人尋問調書17頁,前記認定の被告人両名の言動からすれば,被告人Bはいわゆ)
るなだめ役として,いわゆる脅し役の被告人AとともにD及びFに金銭を交付させようと
していたとみるのが自然であることからすれば,被告人Bが被告人AとD及びFに対する
恐喝を共謀し,また自らも金銭の交付を求めるために両名を脅迫したことは明らかという
,。べきであって被告人両名に恐喝未遂罪の実行共同正犯が成立することは優に認められる
ただし,被告人両名が共謀した時期について,検察官は,被告人Aが本件当日の午後
にDに電話をかけて怒鳴りつけたときには既に被告人両名の間に共謀があった旨主張する
が,被告人AがEからDとの間で起きた事柄を聞いたのは早くても同日の午前中と認めら
れる上,その後同日午後に被告人AがDに最初に電話するまでの間に被告人両名が電話な
どによって会話をした事実も認められないことからすれば,前記の時点で被告人両名の間
に共謀があったとは認められず,被告人両名がC店舗に行った時点で被告人両名の間に共
謀が成立したと認めるのが相当である。
8そこで次に,被告人両名の行為が権利行使に基づくものであったかどうかについて検
討するに,前記のとおり,本件に至る経緯については,Dの供述するとおりと認められ,
Dが自分の父親がやくざであると言って脅すなどして嫌がるEに対して一方的に交際を迫
った事実はなく,Dは,被告人Aは暴力を振るうなど怖いときがある,被告人Aと別れた
いなどとプライベートな話をしてきたEに対して,被告人Aと別れたときは食事に行かな
,,,いかと誘いまた被告人Aと別れたときは彼氏に立候補したい旨言っただけであるから
被告人Aにfの物件の賃貸借契約(及び仲介契約)の解除権が発生するとは到底認められ
ない。したがって,被告人Aには解除権の存在や行使を前提とするfの物件の契約に要し
た諸経費の返還や損害賠償を請求する権利はなく,被告人両名の行為が権利行使として違
法性を阻却される余地はない。
,,,,なおEは被告人Aに対し公判廷における供述と同様の話をしていたと認められ
被告人Aもそれを信じていたことがうかがわれるので,被告人両名は,被告人Aにはfの
物件の契約に要した諸経費の返還や損害賠償を請求する権利があると誤信していたという
ことができる。しかし,被告人両名がそのように誤信していたとしても,前記示談書でC
店舗又はHが支払を約束した金銭は,fの物件の契約に要した諸経費全額89万円余りの
返還に加えて,少なくとも次の家の契約に必要な仲介手数料,保証金(敷金)等の費用及
び次の家への入居のために必要な引越代金を含むものであって,被告人両名は,その誤信
の内容を前提としても権利行使の範囲を超える過大な要求をしていたものと認められる
上,Dを正座させてその姿をカメラで撮影した上,それをばらまくとかもう神戸にいられ
ないだろうなどと言ったり,Dに対しておしぼりや火のついたたばこを投げたりした上,
長時間にわたって誠意をみせろなどと言って金銭を要求したという被告人両名の一連の行
為は,その誤信の内容を前提しても,権利行使として社会通念上一般に認容すべきものと
認められる限度を逸脱していることは明らかである。
9以上のとおりであるから,前記犯罪事実記載の事実は優にこれを認定でき,各被告人
及び各弁護人の主張はいずれも採用できない。
(法令の適用)
被告人両名について
1罰条被害者ごとに刑法60条,250条,249条1項
2科刑上一罪の処理刑法54条1項前段,10条(犯情の重いDに対する恐喝未遂
罪の刑で処断)
3未決勾留日数の算入刑法21条
4訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
1本件は,被告人両名が,被告人Aから賃貸マンションの仲介業務の依頼を受けていた
仲介業者の従業員が,その仲介業務の際に,被告人Aの交際相手に対し,自分の父親がや
くざであったと話し,脅すようにして交際を求めたと考えて立腹し,仲介を受けた賃貸マ
(),ンションの賃貸借契約及び仲介契約の解除及びこれに伴う損害賠償金の請求の名目で
前記従業員及び前記仲介業者の店長から現金を脅し取ろうとしたが,未遂に終わったとい
う恐喝未遂の事案である。
2被告人Aは,前記従業員が前記交際相手にプライベートな電話をしたことはあるもの
の,それは前記交際相手からのプライベートな話題をきっかけとするものであった上,自
,,分の父親がやくざであったなどと脅した事実はなかったにもかかわらず前記交際相手の
一方的に脅すようにして交際を迫られたかのような話を盲信し,十分な事実確認もせずに
本件犯行に及んだもの,被告人Bも,被告人Aの話を疑うことなく同被告人とともに本件
犯行に及んだものであって,その犯行の動機は短絡的で軽率である。犯行態様をみても,
被告人Aがいわゆる脅し役,被告人Bがいわゆるなだめ役という役割分担の下,長時間に
わたり被害者らを脅迫した上,その過程では床に正座させた被害者の写真を撮影するなど
して被害者らに強い恐怖感や屈辱感を与え,最後は示談書を作成させるという執拗で狡猾
な犯行であり,脅し取ろうとした金銭も,前記交際相手の話が仮に真実であったとしても
合理性を欠くような多額のものである。ところが,被告人両名は,本件犯行を否認して不
自然,不合理な弁解に終始しており,反省の態度は全くうかがわれないばかりか,被告人
Aに至っては,なお前記従業員に対する怒りと不満の気持ちばかりを述べて,およそ自ら
の行為を客観的に顧みる態度に欠けているのであって,被害者らの処罰感情が厳しいのは
当然である。
また,被告人Aは,平成17年6月に恐喝罪等により懲役3年,4年間執行猶予,付
保護観察の刑の言渡しを受け,被告人Bも,同年7月に恐喝未遂罪により懲役2年,4年
,,間執行猶予の刑の言渡しを受けながらいずれもその後1年もたたない執行猶予期間中に
またもや同種の犯行に及んだものであって,被告人両名の規範意識は相当に低下している
というほかない。
加えて,被告人Bは現役の暴力団組員であり,被告人Aも暴力団関係者との親交がう
かがわれるのであって,いずれもその生活状況は芳しくなく,これらの事情にかんがみる
と,被告人両名の刑事責任はいずれも重い。
3他方,本件は未遂に終わり被害者らに経済的な実害は生じていない上,本件では,前
記従業員が,前記交際相手からの話がきっかけとはいえ,顧客の交際相手に誘いをかけた
ことがその発端となっており,被害者側にも軽率な面があったといえる。
また,被告人Aには,本件当時まじめに働いていたこと,前刑の執行猶予が取り消さ
れてその刑と併せ執行される蓋然性が高いこと,被告人Bには,同被告人は被告人Aの友
人として本件犯行に協力したものと考えられ,自らの利得を図る意図があったとまでは認
められないこと,被告人Bを必要とする妻と幼い子供がいること,同様に前刑の執行猶予
が取り消されてその刑と併せ執行される蓋然性が高いことなど,被告人両名のために酌む
べき事情も認められるので,これらの事情も十分に考慮し,被告人両名をそれぞれ主文の
刑に処することとした。
(検察官伊藤伸次,被告人Aの私選弁護人宮本清司(主任,被告人Bの国選弁護人河端)
亨各出席)
(求刑―被告人両名に対していずれも懲役3年)
平成19年5月10日
神戸地方裁判所第2刑事部
裁判官岩崎邦生

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