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裁判例


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○ 主文
第一審原告ら及び第一審被告らの本件各控訴をいずれも棄却する。
訴訟費用中、第一審原告らの控訴に関する部分は第一審原告らの負担とし、第一審
被告らの控訴に関する部分は第一審被告らの負担とする。
○ 事実
第一審原告ら代理人は「原判決中、第一審原告ら敗訴の部分を取消す。第一審被告
aは、東京都国立市に対し金一、三〇五万二、二三五円及びこれに対する昭和四〇
年一月一一日以降完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。第一審被告ら
の控訴を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも第一審被告らの負担とする。」との
判決並びに仮執行の宣言を求め、第一審被告ら代理人は「第一審被告aにつき、原
判決中、同第一審被告敗訴の部分を取消す。第一審被告b同cにつき、原判決を取
消す。第一審原告らの請求を棄却する。第一審被告aにつき、第一審原告らの控訴
を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも第一審原告らの負担とする。」との判決を
求めた。
当事者双方の事実上の陳述及び証拠の関係は、次のとおり附加、訂正する外、原判
決の事実摘示と同一であるから、これを引用する。
一 原判決六枚目裏八行目から九行目「利息として合計三四、六五七、四七七円」
とあるを「利息として合計三二、六三九、七一九円」と改め、同一一枚目裏一一行
目「日歩」の次に「二銭一厘ないし」を加え同一二枚目表五行目「合計三四、六五
七、四七七円」とあるを「合計三二、六三九、七一九円」と改め、同六行目から八
行目までの「(ただし・・・・・・利息である。)」とある部分を削除する。
二 第一審被告らの主張
仮に本件借入及びその利息の支払が違法であつて、その結果、第一審被告らが国立
町に対し右支払利息と同額の損害を与えたとしても、本件借入は国立町が本件土地
を取得することにより、農地法違反によつて生じた砂利穴の問題を処理、解決する
と共に、同土地を町営グランドとして造成、利用することをも目的としてなされた
ものであるところ、その後国立町は昭和四〇年一〇月、建設省から多摩川の河川敷
を無償且つ無期限で借受けることにより町営グランドを確保することができたの
で、同四一年三月三〇日議会の議決を経て本件土地を国立町農業協同組合に売却し
たが、以上の本件土地取得から売却に至るまでの必要経費と収入とを対比すると、
差引き国立町は本件土地の売却により金三、四四二万二七二円の利益を得ており、
しかも本件土地取得のための借入から同土地の処分までは一連の且つ完結した社会
的事実であつて、本件土地の売却処分による利益と本件借入による利息の支払とは
相当因果関係の範囲内にあるから、結局、損益相殺をすれば、国立町は違法な右利
息の支払によりなんら損害を被つていないものというべきである。従つて、第一審
被告らには、違法な公金の支出による損害賠償義務は存しない。
三 右主張に対する第一審原告らの答弁
全部争う。仮に本件土地が、第一審被告ら主張のとおり、後に高価に売却され、そ
の結果、利益が出たとしても、その法的因果関係は、土地を取得したこと、後にこ
れが値上りしたこと及びこの土地を売却したことの三者であつて、いずれも本件借
入とは別個、無関係な法的、社会的事実である。
四 なお、第一審原告らは承継前第一審被告dは昭和四八年九月一三日死亡したの
で同日その子である第一審被告aがその権利と義務を承継したと主張し、第一審被
告らは右事実を認めると述べた。
五 立証(省略)
○ 理由
当裁判所は、当審における証拠調の結果を勘酌し更に審究した結果、第一審原告ら
の本訴請求は原判決認容の限度において理由があり、その余は失当として棄却すべ
きものと判断するものであつて、その理由は左記のとおり附加、訂正する外、原判
決の理由の説示と同一であるから、ここにこれを引用する。
一 原判決一六枚目表八行目「・・・・・・の結果に」の次に「当審における証人
e、同f、第一審被告本人cの各供述並びに」を加え、同二三枚目裏二行目
「・・・・・・の結果に」の次に「当審における第一審被告本人cの供述並びに」
を加える。
二 原判訣二三枚目裏二行目「被告ら」の次に「(被告cについては、原審並びに
当審)」を、同八行目「日歩」の次に「二銭一厘ないし」を加える。
三 原判決二四枚目表一〇行目から一一行目及び同二九枚目裏五行目に各「三四、
六五七、四七七円」とあるをそれぞれ「三二、六三九、七一九円」と改める。
四 原判決二八枚目裏六行目「・・・・・・となるものではないし、」の次に「勿
論、右利息の支払につき町議会の議決を得たことによつて、逆に基本たる本件借入
が追認され、その違法性が治癒されたものとは解せられず」を加える。五 当審に
おいて追加した第一審被告らの損益相殺の主張に対する判断
損益相殺とは、損害賠償請求者が損害を被つたのと同一原因(即ち、同一の社会的
事実)によつて反面利益をも得た場合に、公平の原則上、損害から利益を差引いた
残額を以て実際に賠償すべき損害額とすることをいうものであるが、その際控除す
べき右利益の範囲は賠償原因と相当因果関係に立つものに限定するを相当とすると
ころ、本件における損益相殺の前提となる損害賠償の原因は、第一審被告らが本件
土地を不当に高価に買収して、国立町に適正買収額との差額に相当する損害を与え
たという事実ではなく、第一審被告らが違法な本件借入による利息の支払をして、
国立町に右利息相当額の損害を与えたという事実であるから、右賠償原因と相当因
果関係に立つ利益のみが損害額から控除されるべきものである。しかるに、本件に
おいて第一審被告らが主張する損益相殺の対象となる利益は、要するに国立町が本
件土地を取得した後、同土地を他へ高価に売却して利益を得たというものであるか
ら、賠償原因が前者の場合であるならともかく、賠償原因が後者の場合である本件
においては、右利益は、前記相当因果関係の範囲をかなり広く解するとしても、本
件借入の目的及び国立町の爾後における本件土地売却の理由が何であつたかを論ず
るまでもなく、前記賠償原因、即ち違法な本件借入による利息の支払と相当因果関
係に立つものとは到底認められないものと解するのが相当である。従つて、第一審
被告らの前記損益相殺の主張は主張自体失当であるのみならず、仮に主張自体失当
でないとしても、本件土地の買収が、農地法違反によつて生じた砂利穴の問題を処
理、解決すると共に同土地を将来公共施設の敷地として利用することをも目的とし
てなされたものであることは既に引用部分において認定したとおりであるが、本件
土地を町営グランドとして造成利用するためにも買収したという第一審被告らの主
張はこれを認めるに足る的確な証拠がなく、かえつて引用部分において成立を認め
た乙第二、第六号証、原審における第一審被告本人b、当審証人e同fの各供述及
び弁論の全趣旨を綜合すれば、本件土地は利用目的を明確にした上で買収されたも
のではなく、国立町が公共用地の取得難にかんがみ、将来の公共用地を確保するた
め、いわば先行投資として買収したにすぎないものであることが認められ、また成
立に争いない甲第九号証、乙第一九号証及び同第三七号証の一、二に原審における
承継前の第一審被告本人d及び当審証人fの各供述並びに弁論の全趣旨を綜合すれ
ば、成程、国立町は、本件土地を買収後、昭和四〇年一〇月、建設省から多摩川の
河川敷を町営グランドの敷地として、無償且つ無期限で借受けたこと、並びに同四
一年三月三〇日、議会の議決を経て、本件土地を前記引用部分において認定した大
村建材からの買収代金(従つて多摩中央信用金庫からの借入金)及び同金庫に対す
る支払利息との合計額をはるかに上廻る代金一億八、一六四万三、一九〇円で国立
町農業協同組合に売却し、差引き三千数百万円の利益を得たことが認められるが、
反面、成立に争いない甲第五号証、乙第七号証の二の一、二、同第一八号証、同第
二〇号証、当審証人e同f、原審における承継前の第一審被告本人d及び第一審被
告本人bの各供述並びに弁論の全趣旨を綜合すれば、国立町が本件土地を国立町農
業協同組合に売却したのは、同町が建設省から多摩川の河川敷を町営グランドの敷
地として借受けることができたためであるというより、昭和三九年以降本件土地の
買収をめぐり、国立町民及び同町議会において、町長である承継前の第一審被告d
の行動につきごうごうたる非難が起り、このまゝでは円滑な町政の運営が危ぶまれ
たことと本件借入金の長期にわたる利子負担が町財政を圧迫するため、議会におい
て速かに本件土地を処分して一切を解決するよう強くd町長に要望した結果である
ことが認められるから、結局、以上の各事情を綜合して考えてみると、前記本件土
地取得のための借入から同土地の処分までは一連の且つ完結した社会的事実であつ
て、本件土地の売却処分による利益と本件借入による利息の支払とは相当因果関係
の範囲内にあるものとは到底認めることができないものというべきである。それゆ
え、第一審被告らの前記主張は採用できない。
六 なお、承継前第一審被告dが昭和四八年九月一三日死亡したので、同日その子
である第一審被告aがその権利義務を承継したことは当事者間に争いがない。
よつて、以上と同旨で、第一審原告らの本訴請求中、第一審被告ら各自に対し、金
一、五〇〇万円を国立市に支払うべきことを求める部分を認容し、その余を失当と
して棄却した原判決は相当であつて、第一審原告ら及び第一審被告らの本件各控訴
はいずれも理由がないから、民事訴訟法第三八四条第一項によりいずれもこれを棄
却し、訴訟費用の負担につき同法第九五条、第八九条を各適用して、主文のとおり
判決する。
(裁判官 杉山 孝 古川純一 岩佐善己)
(原裁判等の表示)
○ 主文
被告らは連帯して東京都国立市に対し一五、〇〇〇、〇〇〇円を支払え。
原告らのその余の請求を棄却する。
訴訟費用はこれを二分し、その一を被告ら、その余を原告らの負担とする。
第一 申立て  事実
(原告ら)
主文第一項と同旨に加えて、「被告dは東京都国立市に対し一三、〇五二、二三五
円およびこれに対する昭和四〇年一月一一日から完済にいたるまで年五分の割合に
よる金員を支払え。訴訟費用は被告らの負担とする。」との判決ならびに仮執行の
宣言を求める。
(被告ら)
「原告らの請求を棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする。」との判決を求め
る。
第二 原告らの請求原因
一 原告らは、いずれも東京都国立市(その市制施行前は北多摩郡国立町。以下国
立町という。)の住民であるが、同市の市制施行前において、被告dは昭和三〇年
から昭和四二年まで国立町町長、被告bは昭和三四年から昭和四二年まで同町助
役、被告cは昭和三四年以前から昭和四二年まで同町収入役の地位にあつたもので
ある。
二 被告dは、国立町町長として、同町の「議会の議決を経べき財産、営造物及び
契約の締結に関する条例」第五条に定める権限に基づき、昭和三八年三月一一日大
村建材株式会社(ただし、後に商号を大村興業株式会社と変更。以下大村建材とい
う。)との間において、別紙不動産目録記載の土地合計四、四一七坪(実測約五、
〇〇〇坪。以下A地という。)につき、同会社がこれを路面より平均一三センチ高
くなるように埋立てたうえ、坪当り一一、五〇〇円の価格で国立町がこれを買い受
ける旨の契約を締結した。
ところが、同被告は、その後なんらの理由もなく、大村建材からの不当な申込みに
応じて、右売買価格を坪当り一四、四五五円に増額するとともに、他の土地約三、
〇〇〇坪(以下B地という。なお、AB両地を合わせて本件土地ともいう。)を右
同様の条件で売買の目的に加える旨の契約変更を合意し、さらに、同年九月三〇日
までの間に後記のとおり右代金全額に近い一一〇、〇〇〇、〇〇〇円を大村建材に
支払いながら、同年一〇月一日同町議会に対し、以上の経過をことさら秘匿したま
ま、右変更にかかる内容の買収契約を締結する旨の議案(議案第八六号ないし第八
八号)を提出した。このため、右買収について経過の真相を知りえなかつた同町議
会は、尽すべき審議を尽さず、即日同議案を議決するにいたつた。
右の結果、国立町は、本件土地の買収代金として坪当り一四、四五五円を支出した
のであるが、被告dが町長として、前記買収価格の増額を承諾し、かつ、議会に対
し真相を秘匿するという違法行為をあえてしなかつたならば、A地だけは坪当り一
一、五〇〇円で取得できたのであるから、四、四一七坪分の差額合計一三、〇五
二、二三五円は同被告の右違法行為により国立町の被つた損害というべきである。
よつて、同被告は、国立町に対し右損害を賠償すべき義務がある。
三 (一)国立町は、大村建材に対する右買収代金の支払いにあてるため、昭和三
八年三月一一日から同年一二月二七日までの間に、多摩中央信用金庫から別表
(一)欄記載のとおり総額一二三、八四五、〇〇〇円を利息日歩二銭三厘の約定で
借り入れ、これを同表(二)欄記載のとおり大村建材に支払い、かつ、昭和四二年
三月一三日までに右借入金に対する同月二三日までの利息として合計三四、六五
七、四七七円を同信用金庫に支払つた(ただし、右代金については、本件土地の一
部に国有地が含まれていたので、その代金相当分一、五六一、一四〇円を昭和三九
年一〇月大村建材が国立町に返還した。)。
しかし、右借入金に対する利息の支払いおよび大村建材に対する代金の支払いは、
次の(二)(三)記載の理由によりいずれも違法な公金の支出である。しかるに、
被告dはこれを知りながらあえてその支出を命令し、被告cは右命令に従つてはな
らないのにこれに応じて支出を行ない、被告bは右支出に関して町長を補佐し収入
役を監督する職務を故意もしくは過失により怠つたもので、被告らの右共同違法行
為により国立町は後記損害を被つたのであるから、被告らは同町に対し右損害を連
帯して賠償すべき義務がある。
(二) 利息の支払いについて
地方自治法(ただし、昭和三八年法律第九九号による改正前のもの。以下旧地方自
治法という。)によれば、地方公共団体が行なう借入れは、地方債(第二二六条)
と一時借入金(第二二七条)とに限られているが、本件の借入れは右の一時借入金
でないことが明白であるし、また、地方債としても、同法第二二六条、第二五〇
条、同法施行令第一七四条の定める町議会の議決および東京都知事の許可を経てい
ないから無効である。したがつて、右借入れに対する前記利息の支払いも違法であ
り、国立町は同額の損害を被つたものというべぎである。
被告らは、前記議案第八八号の議決により本件買収代金支払いのための借入れが承
認されたものであると主張するが、同議案は、旧地方自治法第九六条第一項第八号
に定める予算外義務負担のための議案であつて、買収代金の支払いという予算外の
あらたな債務を負担し、その支払いを昭和三九年度中に行なうことの承認を求める
ものにすぎず、それ以外になんらの意味も有しない。右議案が議決されたときは、
その支払資金の手当として、昭和三五年度予算において歳入から支出するよう計上
するか、あるいはあらたに起債の手続をとることが必要となるのであり、被告らの
前記主張は同法第二二六条、第二五〇条を無視するものである。
(三) 代金の支払いについて
地方公共団体は、予算に基づくか、あるいは予備費、費目流用その他財務に関する
規定によらなければ公金を支出することができないところ(同法第二三二条第二
項)大村建材に対する本件買収代金の支払いについては、国立町の昭和三八年度予
算に計上されておらず、他に法定の正当化事由もないばかりでなく、前記議案第八
八号によれば、右代金の支払時期は昭和三九年度と予定されているのであるから、
昭和三八年度中になされた本件支払いは違法である。もつとも、同町議会は、昭和
四一年三月三〇日にいたり、右代金の支払いを同町の昭和四一年度一般会計補正予
算として議決したが、これによつて右代金の支払いが遡つて適法となるものではな
い。のみならず、国立町と大村建材との前記契約によると、本件買収代金は本件土
地につき農地法第五条の転用許可と所有権移転登記がなされた後に支払うものと定
められていたのに、右各手続の履行前に代金が支払われた点においても違法な支出
というべきである。
このため国立町は、
1 右代金を支払うべきでない時期に支払つたことにより、その支払額一二三、八
四五、〇〇〇円に対する最後の支払日の翌日である昭和三八年一二月二八日から前
記昭和四一年度一般会計補正予算成立の前日である昭和四一年三月二九日まで民事
法定利率年五分の割合による利息相当額一三、九四五、二八六円の損害を被つた
か、
2 または、右代金の支払いにあたり控除すべきところの右同期間、同利率による
中間利息を控除しなかつたことにより、ホフマン式計算によつて算出される右中間
利息相当額一二、五三一二、九三三円の損害を被つたか、
そのいずれかである。そして、右損害が被告らの違法な職務執行によるものである
ことは前記のとおりである。
四 原告らは、昭和三九年九月三〇日国立町監査委員に対し、同町の被つた以上の
損害を補填するため必要な措置を講ずべきことを請求したが、同年一一月二八日同
監査委員から右請求は理由がない旨の通知を受けた。
五 よつて、原告らは、前記改正後の地方自治法第二四二条の二第一項第四号の規
定に基づき、国立町に代位して、被告dに対し、前記二の損害額一三、〇五二、二
三五円の賠償とこれに対する本訴状送達の日の翌日である昭和四〇年一月一一日か
ら完済に至るまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金を同町に支払うべき
ことを求め、被告らに対しては前記三の(二)または(三)の各損害のいずれかの
うち一五、〇〇〇、〇〇〇円を連帯して同町に賠償すべきことを請求する。
第三 被告らの答弁
一 請求原因第一項は認める。
二 同第二項のうち、被告dが昭和三八年一〇月一日国立町議会に議案第八六号な
いし第八八号を提出し、同議会がこれを議決したことは認めるが、その余は否認す
る。
もつとも、同被告が、同年三月一一日に大村建材の代表取締役gと原告ら主張のよ
うな内容の契約(ただし買主は同被告)を結び、次いでこれを原告主張のとおり変
更し、かつ、その代金の一部をgに支払つた事実はあるが、これらはいずれも国立
町の機関としてではなく、同被告個人としての行為にすぎない。同被告は、その後
同年一〇月一日に前記議案が議決されたので、これに基づき、国立町を代表してg
との間に右議決どおりの契約を締結したものである。
また、同被告が買収価格の増額に応じたのは、当初の契約締結後間もなくA地の付
近の土地が高速道路用地として坪当り一八、〇〇〇円余で日本道路公団に買収され
たことなどからみて、A地についても坪当り一四、五〇〇円程度に増額することは
やむをえないと判断されたからであつて、右価格は決して高すぎない。同被告とし
ては、事案の重要性にかんがみ、前記議案を議会に提出するに先立ち、同年七月二
七日に同町議会議員の全員協議会を招集し、本件土地を同町が買収すること、その
買収価格は坪当り一四、〇〇〇円ないし一五、〇〇〇円であることなどを説明した
ところ、各議員は現地を視察したうえ、多数をもつて同被告に買収を一任する旨の
決議をしたのであり、その後の議会においても買収価格を一四、四五五円とする前
記議案が議決されているのであるから、右買収価格について同被告が責任を問われ
るいわれはない。
三 (一)同第三項(一)のうち、国立町が多摩中央信用金庫から利息日歩二銭三
厘の約定で別表(一)欄番号7ないし9記載のとおり金員を借り入れ、これを同表
(二)欄番号7ないし9記載のとおりgに支払つたこと、代金の一部一、五六一、
一四〇円が後日gから国立町に返還されたこと、本件土地買収資金の借入利息とし
て原告ら主張のとおり合計三四、六五七、四七七円が同信用金庫に支払われたこと
(ただし、右支払利息のうち国立町の借入金に対する利息は三二、七八二、八九二
円であり、残額は後記の被告d個人の借入金に対する利息である。)は認めるが、
その余は否認する。
別表(一)(二)欄番号1ないし6記載の各借入れおよび支払いは、同被告が個人
としてしたもので、国立町とは関係がない。もつとも、その後前記議案が議決され
たことに伴ない、昭和三八年一一月五日に同町が前記信用金庫から右個人借入分と
同額の一一〇、〇〇〇、〇〇〇円をさらに借り入れ、同日これをgに支払つたの
で、被告dがさきに個人として支払つた代金一一〇、〇〇〇、〇〇〇円はgから同
被告に返還された。
(二) 同第三項(二)のうち、前記信用金庫からの借入れが旧地方自治法の定め
る地方債および一時借入金のいずれにもあたらないことは認めるが、右借入れが違
法であるとの主張は争う。
旧地方自治法のもとにおいて地方公共団体の行なう借入れは、右地方債および一時
借入金だけに限られず、それ以外のものであつても、同法第九六条第一項第八号、
第二三九条の二の規定により予算外義務負担として議会の議決を経れば適法になし
えたものである。そして、前記議案第八八号は、本件土地の買収代金を昭和三八年
度内に支払うため、同年度の予算外義務負担として金員を借り入れ、これを昭和三
九年度に一般歳入をもつて返済することの承認を求めるものであり、右借入金に対
する利息も義務負担額一四八、〇〇〇、〇〇〇円のうちに含まれているのであるか
ら、同議案の議決を経たうえでなされた前記借入れおよび利息の支払いになんら違
法の点はない。右議案には借入先および借入利息について記載がないけれども、国
立町においては、借入先が同町の指定金融機関である前記信用金庫であることなら
びに借入利息は町理事者の交渉に一任することが議員間に公知の事実となつてお
り、しかも右借入れおよび利息の支払いに関しては同町の昭和三九年度一般会計補
正予算、昭和四〇年度一般会計予算に計上して議会の議決を経ているから、議案第
八八号の前記一部脱漏の瑕疵に補正されたものというべきである(なお、同町にお
いては従来から予算外の借入れをする場合つねに本件と同様の方法によつて処理し
てきた。)。
(三) 同第三項(三)のうち、本件買収代金の支払いが国立町の昭和三八年度予
算に計上されていないこと、右代金が本件土地について農地法第五条の転用許可お
よび所有権移転登記が未了の間に支払われたことは認めるが、右支払いが違法であ
るとの主張は争う。
前記のとおり、議案第八八号の議決により、本件買収代金を昭和三八年度内に支払
うための予算外義務負担が認められたのであるから、右支払いを同年度の予算に計
上せずになしうることは当然である。
また、本件土地の買収にあたつては、事前に関係官庁と折衝して農地転用につき一
応の了解を得ていたし、移転登記についてもgから登記手続に必要な書類の交付を
受けていたので、実質的には右許可および移転登記を経たものと同視して代金を支
払うのが取引上の信義則にかなう所以である。
四 同第四項は認める。
第四 証拠関係(省略)
○ 理由
一 請求原因第一項記載の原告らおよび被告らの地位については当事者間に争いが
ない。
二 買収価格の不当を理由とする被告dに対する請求について
(一) 成立に争いのない乙第一ないし第六号証、第一〇号証、第一四号証の一、
証人g、同hの各証言、原告iおよび被告ら各本人尋問の結果に本件口頭弁論の全
趣旨を合わせると、次の事実を認めることができる。
本件土地はもと農地であつたが、地下に埋蔵されている砂利を大量に採取したた
め、その砂利穴に雨水がたまり、昭和三七年当時には同地の大半が広大な湖沼と化
していた。このため、国立町においては、同土地の右のような農地法違反の状態を
早急に解消し、あわせて住民の危険を防止することが町政の懸案となつていた。と
ころで、砂利採取等を業とする大村建材(代表取締役g)は、かねてから同土地の
一部を取得し、他の部分については所有者からその埋立てと売却を委任されたう
え、右砂利穴の埋立工事を行なつていたが、埋立用土砂を運ぶトラツクの道路が国
立町の行政上の措置により通行禁止となり、工事に支障を生じたので、昭和三七年
暮ごろ同町に対し、本件A地を廉価で売却したい旨申し入れたところ、町当局にお
いても、右土地を町が買収すれば、前記懸案を解決できるばかりでなく、将来公共
施設の敷地として利用することもできるため好都合であるという判断から、右申入
れに応じてA地を買収することとなり、昭和三八年三月一一日被告dが国立町町長
として、大村建材との間に、右A地を路面より平均一三センチ高くなるよう同会社
が埋立て、これを国立町が坪当り一一、五〇〇円で買い受ける旨の契約を締結し
た。しかし、国立町においては、旧地方自治法第九六条第一項第九号および同町の
「議会の議決を経べき財産、営造物及び契約の締結に関する条例」第三条により、
契約金額一件一、〇〇〇、〇〇〇円以上の不動産を購入するときは議会の議決を経
なければならないものと定められており、A地の買収についてはいまだ右議決を経
ていなかつたので、前記契約の締結にあたつては、買主名義を国立町とせずに被告
d個人とし、かつ、同町議会の議決を経たときに右契約が正式に成立するものとし
た。
ところが、同年六、七月ごろ大村建材から国立町当局に対し、A地の砂利穴が予想
以上に深く埋立費用が余分にかかるため、前記買収価格では採算がとれないから、
坪当り一五、〇〇〇同程度に増額してもらいたい旨の申入れがあつた。被告dは、
当初これを拒否していたが、もし大村建材が採算上の理由等から契約を履行しない
ようなことになれば、前記懸案の解決が困難となつて好ましくないこと、また、同
年一二月下旬ごろにはA地の付近の土地が高速道路用地として坪当り一八、三六〇
円で日本道路公団に買収されていることなどに加え、右増額申入れと前後して、大
村建材からさらにA地と隣接する本件B地をもA地と合わせて売却してもよい旨の
申出があり、これは町としても歓迎すべきことであつたので、被告dはこれらの事
情を考慮のうえ、さきの契約の変更に応ずることとし、改めて本件AB両地を大村
建材に前同様埋立てさせ、これを坪当り一四、四五五円で国立町が買い受けること
に合意した。
その後、被告dは、右買収について町議会の議決を求めるに先立ち、あらかじめ議
員の了解を得ておくため、同年七月二七日同町議会議員の全員協議会を開催し、席
上、本件土地を町の公共用地として買収したいこと、その坪当り価格は最高一五、
〇〇〇円、最低一四、〇〇〇円となる見通しであること、農地転用については東京
都の所管部局の了承を得ていることなどを説明したところ(それ以外の取引経過に
ついては説明しなかつた。)、一部議員から、右買収価格が高すぎるとする反対意
見も出たが協議の途中で議員が現地を視察した結果、九、〇〇〇坪余のまとまつた
土地を取得することは町のために有益であるとの意見が支配的となり、結局、出席
議員二五名中一七名の賛成により、右買収問題を町長に一任することが決まつた。
次いで、同年一〇月一日、被告dは、前記条例の規定に基づき、本件土地の買収に
ついて同町議会の議決を求めるため、次のような内容の議案第八六号ないし第八八
号を同町議会に提出した(前記のとおり本件土地の売主は実際には大村建材である
が、同会社の所有名義となつていなかつたので、農地法第五条の転用許可を受ける
関係上、議案第八六号では土地所有名義人であるjほか一七名を売主と表示し、こ
れに伴い、大村建材の施行する埋立工事関係を右売買から切り離して議案第八七号
としたものである。)。
1 議案第八六号
公共用地取得のため買収契約を左記により締結する。
契約の目的  公共用地の買収
土地の所在地 東京都北多摩郡<以下略>ほか三九筆
土地の種類  田 七反五畝五歩
および坪数  畑 一町七反二畝一一歩
原野 一反一畝一二歩
山林 六畝一四歩
芝地 九畝歩
合計 二町七反四畝一二歩(公簿面)ほか畦畔三畝二七歩
実測坪数 九、〇四七坪
契約金額   五二、一九三、五〇〇円
契約の方法  随意契約
契約の相手方 jほか一七名
2 議案第八七号
公共用地埋立工事請負契約を左記により締結する。契約の目的  公共用地(議案
第八六号により取得した公共用地九、〇四七坪)の埋立工事
契約の方法  随意契約
契約金額   七八、五八六、〇〇〇円
契約の相手方 大村建材
工期 契約の日から昭和三九年三月三一日まで
3 議案第八八号
公共用地の取得および埋立工事施行のため左記により予算外義務負担をする。
目  的  公共用地の取得および埋立工事
内  容  土地買収契約および公共用地埋立工事請負契約の締結
限  度  一四八、〇〇〇、〇〇〇円以内
契約締結の時期  昭和三八年度
支払の時期  昭和三五年度
引当財源  一般歳入
そして、右議案の提案理由の説明および質疑の応答において、同被告は、大村建材
との当初の契約の締結やその変更の事実をなんら明らかにせず、また、後記のとお
り、当時まですでに一一〇、〇〇〇、〇〇〇円の代金を大村建材に支払いずみであ
つたのに、この事実についても説明しなかつたが、同町議会の審議においては、買
収価格の点について異論をとなえる議員もなく、賛成多数をもつて即日右議案を議
決したので、これにより、同町と大村建材との間に前記変更にかかる内容の契約が
正式に成立した。
以上の事実を認めることができ(ただし、前記議案の提出およびその議決の事実は
当事者間に争いがない。)右認定を左右するに足りる証拠はない。
(二) 右事実によれば、大村建材との当初の契約の締結およびその変更は、形式
上被告d個人の名義をもつて行なわれたといえ、実際は同被告が国立町町長として
の立場でその職務の執行としてなしたものと認めるべきであるから、これを同被告
個人の行為にすぎないという被告らの主張はとうてい採用できないけれども、他
方、坪当り一四、四五五円の価格による買収が同被告の違法行為によるものである
との原告らの主張もまた次のような理由からたやすく是認することができない。
すなわち、原告らは、同被告が、(1)本件A地の買収価格の増額に応じたことお
よび(2)当初からの交渉経過等を町議会に対して明らかにしなかつたことこの二
点をもつて違法であると主張するのであるが、右(1)の点については、本件と同
時期における前記近隣地の公共用地としての買収価格と対比し、坪当り一四、四五
五円の価格自体が不当なものとは認めがたい。もつとも、右価格自体が適正であつ
ても、当初の価格を増額したことの当否がなお問題となるわけであるが、元来、不
動産取引における売買価格は諸種の複雑な要因によつて左右されるものであり、い
つたんその価格を合意した後であつても、交渉によりこれを増減する例は取引上往
々みられるところである。そして、本件の場合は、大村建材が当初の価格では採算
がとれないとして坪当り一五、〇〇〇円程度に増額することを訴えており、前記買
収実例からすれば右価格でもなお安かつたといえるのであるから、町当局者の立場
としては、もし増額に応じないために、大村建材が採算上の理由等で契約を履行し
ないことになると、実際上事態が紛糾し、せつかくの議案解決が困難になるという
ことを配慮するのも無理からぬことというべきであつて、これらを勘案すれば、他
に特段の事情が認められないかぎり、同被告が前記増額に応じたことをもつて職務
上の義務に違背したものということはできない。
また、前記(2)の点についていえば、本件買収は、その買収価格の総額からして
も国立町の町政に重大な影響を及ぼすものであるから、町長として議会の議決を求
めるにあたつては、秘匿するにつき相当の合理的理由がないかぎり、取引の経過等
についてもこれを明らかにすべきことは当然である。しかしながら、本件において
は、同町議会の議員が全員協議会で現地を視察のうえ坪当り一四、〇〇〇円ないし
一五、〇〇〇円の価格で買収することを相当として是認し、さらに、買収議案の審
議に際しても価格の点についてはなんら問題とならなかつたことなどから考える
と、同被告が議会に対して当初からの取引経過等の全容を明らかにすることによ
り、買収価格の当否等についてさらに論議が行なわれたであろうことは推測しうる
けれども、それ以上に進んで、前記価格による買収が否決され、坪当り買収価格が
一一、五〇〇円と決定されたであろうとまではとうてい断定することができない。
要するに、同被告の右行為と本件買収価格の決定との間に法律上の因果関係を認め
がたいのである。
(三) 以上により、本件A地の買収価格の増額分につき、同被告に対してその賠
償を求める原告らの請求は、その余の点を判断するまでもなく失当といわなければ
ならない。
三 不当支出を理由とする被告らに対する損害賠償請求について
(一) 証人gの証言とこれにより成立を認める乙第一六号証の一ないし四および
被告ら各本人尋問の結果に本件口頭弁論の全趣旨を合わせると、次の事実を認める
ことができる。
被告dは前記大村建材との契約に基づく買収代金の支払いにあてるため、昭和三八
年三月一一日から同年一二月二七日までの間に、多摩中央信用金庫から別表(一)
欄記載のとおり総額一二三、八四五、〇〇〇円を利息日歩二銭三厘の約定で借り入
れ、これを同表(二)欄記載のとおり大村建財に支払つた。もつとも、右各借入れ
および支払いのうち、前記議案の議決後しなされた別表(一)(二)欄番号7ない
し9の借入れおよび支払いは、その実態にそくして国立町名義で行なわれたのに対
し、番号1ないし6の借入れおよび支払いは、その当時の大村建材との契約がまだ
同被告個人の名義であつたことに対応して、これも同じく同被告個人名義をもつて
行なわれたが、この個人名義の借入金合計一一〇、〇〇〇、〇〇〇円は同年一一月
五日付をもつて国立町名義の借入金に切り替えられ、かつ、同日右借入額を同町が
本件買収代金として大村建材に支払つたような形式がとられた。また、右別表
(一)欄記載の各借入金に対する借入時から昭和四二年三月二三日までの利息合計
三四、六五七、四七七円はすべて同町がこれを支払つた。
本件買収代金の決済は右のようにして行なわれたが、これら一連の処理に関して
は、被告b、同cも終始被告dから相談にあずかつており、前記代金および利息の
現実の支払いは、被告cが同dの命に従つて行なつたものである。
以上のとおり認めることができ(ただし、前記番号7ないし9の借入れおよび支払
いが国立町名義でなされたことならびに前記信用金庫に対し右借入利息が支払われ
たことは当事者間に争いがない。)、右認定を左右するに足りる証拠はない。
被告らは、前記番号1ないし6の借入れおよび支払いが被告dの個人的取引であつ
て、国立町には関係がないと主張するけれども、前認定の大村建材との契約の実態
ならびに右個人名義の借入利息を同町が支払つていることなどに徴すると、右の借
入れおよび支払いは、その形式上の名義にかかわりなく、いずれも国立町の機関で
ある被告らの職務執行として同町のために行なわれたものと認めるのが相当であ
る。
(二) そこで、以上の事実に基づき、まず、本件借入れとその利息の支払いの適
否について検討するのに、被告らは、前記議案第八八号の議決により、昭和三八年
度の予算外義務負担として、本件の買収代金を借入金によつて支払うことが承認さ
れたのであるから、右借入れおよび利息の支払いは適法であると主張する。しか
し、この主張は、次の理由により明らかに誤りである。
地方公共団体は、その主要な財源を住民の租税に依存するものであるから、一会計
年度の財政運営の基礎をなす歳入歳出予算について当該地方公共団体の議会の議決
を経べきことは当然であるが(旧地方自治法第九六条第一項第二号)、右予算は、
たんなる収入支出の見積表ではなく、歳入歳出の予定準則として執行機関を拘束す
るものであるから、歳出予算に計上されない支出がいかなる場合においても許され
ないことはもとより、右歳出予算内の支出であつても、歳入予算として計上されな
い収入をもつてこれを支弁することは法定の場合を除き許されない。そして、法
は、地方財政の健全性を確保するため、地方公共団体の行なう借入れについて、議
会の議決さえあれば無制限でよいとの態度はとらず、当該年度の予算内支出にあて
るための借入れとして一時借入金(旧地方自治法第二二七条)を、次年度以降にわ
たる歳入を補うための借入金として地方債(同法第二二六条)を認めるとともに、
借入れを例外的なものとする建前から、地方公共団体の歳出は、一定の場合を除
き、地方債以外の歳入をもつてその財源としなければならないと定めているのであ
る(地方財政法第五条)。ところで、旧地方自治法第九六条第一項第八号に定める
予算外義務負担とは、歳出予算の金額、継続費または繰越明許費の金額に含まれて
いるもの以外に、将来において財政支出の原因となる行為をいうものであり、これ
を議会の議決事項としたのは、将来の財政負担を伴う行為そのものについてあらか
じめ議会の監督を経させることにより、財政運営を慎重ならしめるためである。し
たがつて、予算外義務負担についての議会の議決は、執行機関が財政支出の原因と
なる行為をなすことを承認するにすぎないものであつて、右行為に基づく債務を履
行するためには、あらためて支出すべき当該年度の歳出予算に計上して議会の議決
を経なければならず、まして右債務の履行のために他から借入れをすることなどは
まつたくこれに含まれていないのである。かようにみてくると、地方公共団体が、
歳出予算に計上すべき支出にあてるため、予算外義務負担として、一時借入金でも
地方債でもない歳入予算外の借入れをするというようなことは、法律の予想しない
違法な財政運営というべきであり、たとえそれが一部の地方公共団体において慣行
的に行なわれてきたとしても、是認することはできない。
これを本件についてみると、本件借入れが旧地方自治法の定める地方債および一時
借入金のいずれでもないことは被告らも認めるところであり、また、被告らのいう
議案第八八号は、その形式から明らかなとおり、国立町が昭和三八年度において本
件土地につき総額一四八、〇〇〇、〇〇〇円の限度で請負および売買契約を締結
し、その代金の支払いは昭和三九年度に一般歳入を引当財源として履行するという
予算外義務負担についての承認を内容とするものであつて、これを議案第八六号お
よび第八七号と合わせてみても、右代金の支払資金を昭和三八年度中に他から借り
入れることを承認したものとはとうてい解されない。してみると、右議案の議決に
よつて執行機関がなしうる事柄は、昭和三八年度に右議決にかかる請負および売買
契約を締結することだけであり、それ以外に、右契約代金の支払いのための金員を
同年度中に借り入れるというようなことが許されないことは前記のとおりである。
もつとも、成立に争いのない乙第八、第二三、第二四号証の各一、二、鑑定証人k
の証言および被告d、同c各本人尋問の結果によれば、国立町においては昭和三九
年度から昭和四一年度まで毎年度の一般会計予算書に、本件土地買収のための借入
金に対する当該年度分の利息(ただし、右予算書には教育施設等取得資金に対する
借入利子と記載されている。)を歳出として計上するとともに、昭和三八年法律第
九九号による改正後の地方自治法第二一四条、第二一五条第四号の規定により、公
共用地取得および埋立工事として一四八、〇〇〇、〇〇〇円の債務負担行為に関す
る事項を記載し、それぞれにつき同町議会の議決を経ていることが認められるけれ
ども、基本たる借入れそのものが前記のとおり違法である以上、その利息の支払い
についてのみ予算上の措置を講じたとしても、これによつて右利息の支払いが適法
となるものではないし、また、右各予算書に記載された債務負担行為は、旧地方自
治法上の予算外義務負担にあたるものを前記改正法の規定に従い予算の内容として
掲げたものにすぎないから、本件借入れの適否とはかかわりがない。
以上により、本件借入れは違法と解するはかなく、これに対する利息の支払いも違
法な公金の支出というべきである。
(三) ところで、被告らが右利息の支払いを含め本件買収代金の決済について終
始相はかりながら関与したことは前記のとおりであり、他に反証のないかぎり、被
告dは町長としてすくなくとも過失により右利息の違法支出を命令したもの、被告
bは助役として町長を補佐し収入役の事務を監督すべき職責があるのに(旧地方自
治法第一六七条)、右違法支出につきすくなくとも過失によつてその職責を尽さな
かつたもの、被告cは収入役として町長の違法な支出命令に従つてはならないのに
(同法第二三二条第二項)、すくなくとも過失により右命令に応じてその支払いを
したものと推認される。
したがつて、被告らは、右利息の違法支出により国立町の被つた損害を連帯して賠
償すべき義務を免れないところ、右支払利息額が三四、六五七、四七七円であるこ
とは前記のとおりであるから、これをもつて同町の損害と認めるべきである。
(四) そして、原告らが昭和三九年九月三〇日国立町監査委員に対し、同町の被
つた右損害を補填するため必要な措置を講ずベきことを請求したが、同年一一月二
八日同監査委員から右請求は理由がない旨の通知を受けたことは、当事者間に争い
がない。
そうすると、右損害のうち一五、〇〇〇、〇〇〇円につき、前記改正後の地方自治
法第二四二条の二第一項四号の規定に基づき、国立町に代位して、被告に対しその
賠償を求める原告らの請求は理由があるというべきである。
四 よつて、原告らの本件請求のうち、被告らに対し右一五、〇〇〇、〇〇〇円を
連帯して国立町に支払うべきことを求める部分は正当として認容するが、その余を
棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九二条本文、第九三条第一
項本文を適用し、なお、仮執行の宣言は相当でないと認めてこれを付さないことと
して、主文のとおり判決する。
別紙(省略)

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