弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を大分簡易裁判所に移送する。
         理    由
 被告人Aの弁護人斎藤孝知及び被告人Bの控訴趣意は、末尾に添附する控訴趣意
書に記載するとおりである。
 弁護人斎藤孝知の控訴趣意第一点について。
 記録によれば、原審は被告人両名から国選弁護人選任の申請があつたので、第一
回公判期日前弁護士巽圭三郎を被告人両名の弁護人に選任した。しかるに被告人両
名はもともと本件窃盗の共犯として同一起訴状によつて起訴されたものであるが、
第一回公判期日において右弁護人立会いの下に審理を進めたところ、被告人Bは事
実について相違することはないから別に陳述することはない旨を述べ公訴事実を無
条件に承認したに反し被告人Aは起訴状記載の日時頃田舎より帰る途中被告人Bと
出会つた際同被告人の持つていた白米一斗と自分の持つていた煎子を交換したこと
はあるが、同被告人と共謀して本件白米を窃盗したことは全然ない旨を述べ、公訴
事実を全面的に否認したのである。従つて国選弁護人を選任する当時は、被告人両
名が窃盗の共犯として起訴されていること以外の事情は原審としては一切不明であ
つて、共犯者間の利害は必ずしも相反するとは限らないから、原審が同一弁護士を
被告人両名の弁護人に選任したことは、当時の事情として已むを得ないことであつ
た。しかしながら第一回公判期日において両被告人は前記のような互に相反する供
述をするに至つたのであるから、被告人両名は本件について利害相反する立場にあ
ることが明になつたわけである。しかるに原審はその後もなお先の弁護人選任の決
定を維持し、第六回公判期日まで毎回前記弁護人を立会はせて審理をなした上判決
したことが明である。もつとも原審は第一回公判期日において被告人両名が相反す
る供述をしたので、検察官の請求によつて被告人両名の審理を分離する決定をな
し、その後は毎回日を同じくして被告人両名各別に審理を進め、最終公判期日にお
いて再び両名の審理を併合して結審したことも亦明である。この最終公判期日は併
合審理といつてもその実は併合審理ではなく、単に弁論終結の旨を告げて直ちに判
決を宣告しただけであるから、同期日における併合審理はしばらく論外に措き、被
告人両名の審理を分離したことによつて、同一弁護人が利害相反する各被告人の弁
護をすることが、果して刑事訴訟規則第二十九条第二項の規定に違反しないことに
なるであろうか。説明の便宜上一つの設例として、甲乙両名共謀の上窃盗をしたと
いう事件において、甲はその犯罪を乙単独の犯行と主張し、乙は反対に甲単独の犯
行と主張したとしよう。両者の審理が分離され甲の審理において弁護人は甲の主張
を支持すべき反証の提出その他の弁護行為をしたとすれば、弁護人は乙の主張と相
反する行動をとつたわけであつて、この場合審理が分離されていることは、その弁
護行為が乙の事件に訴訟上直接の影響を及ぼさないというに過ぎない。同じその弁
護人は乙の審理においていかなる弁護をするであろうか。乙の主張と相反した甲の
主張を支持するような弁護は、乙の弁護人としては許されないことであるから、甲
の審理における態度を一変して、甲の主張と相反する乙の主張を支持するような弁
護行為に出るか、さもなければたかだか、乙の犯行ではないという程度の消極的弁
護に止める外はなかろう。かようなことは甲乙いづれとの関係においても起り得る
ことであつて、いづれにしても弁護人に良心的で熱意のある積極的な弁護を期待す
ることは困難といわなければならない。もともと利害相反する数名の被告人を同一
弁護人が弁護しようとする双方弁護を禁止するのは、私法上の双方代理を禁止する
のと同様の理由によるものであつて、本人又は被告人間の利害の対立が往々にして
代理権又は弁護権の行使に累を及ぼすことを顧慮し、その権利の行使を十全ならし
めて本人又は被告人の権利の保護に支障を来さしめないためである。訴訟審理の併
合分離は本来これらの禁止規定と殆んど没交渉であつて審理の併合分離と全く無関
係な私法上の行為について双方代理の弊害が伴うと同様、訴訟上の行為である弁護
行為についても審理の併合分離の如何にかかわらず双方弁護の弊害が伴うことは明
瞭である。従つて利害相反する各被告人の審理を分離しても、なお且つ双方弁<要
旨>護は違法といわなければならない。しかるに原審が被告人両名の利害が相反する
にかかわらず、単に両者の審理を分離しただけで同一弁護人に被告人両名の
弁護をさせたことは、前示刑事訴訟規則の規定に違反すること勿論であつて、その
違法は判決に影響を及ぼすことが明であるから原判決は破棄を免れない。論旨はす
なわち理由がある。そうして右の破棄理由は共同被告人Bにも共通であるから、原
判決は同被告人のためにもこれを破棄しなければならない。
 そこでその他の論旨に対する判断を省略し、刑事訴訟法第三百九十七条第三百七
十九条第四百一条及び第四百条本文に則つて主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 谷本寛 判事 竹下利之右衛門 判事 佐藤秀)

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