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令和2年11月20日宣告裁判所書記官
令和2年(わ)第477号傷害,建造物侵入,人質による強要行為等の処罰に関
する法律違反,逮捕監禁致傷,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
判決
主文
被告人を懲役7年に処する。
未決勾留日数中120日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1令和2年4月21日午前8時26分頃,福岡市(住所省略)の飲食店「A」
店舗兼居宅建物1階出入口付近において,B(当時36歳)に対し,その顔面
を拳で殴打するなどの暴行を加え,よって,同人に全治約14日間を要する顔
面挫傷等の傷害を負わせた。
第2正当な理由がないのに,令和2年4月21日午前8時28分頃,前記店店長
Cが看守する前記建物に1階店舗部分出入口から侵入し,同日午前8時31分
頃から同日午後2時26分頃までの間,同建物3階居宅部分において,D(当
時6歳)の身体を背後から抱え込みながら持っていた柳刃包丁(刃体の長さ約
28.5センチメートル)及び出刃包丁(刃体の長さ約18.3センチメート
ル)を同人に突き付け,同人及びE(当時3歳)の動静を監視するなどして同
人らを不法に逮捕監禁し,その間,福岡県a警察署警察官Fらに対し,「あい
つを呼べ。呼ばんと子供を殺すぞ。」「いいから,あいつを呼んでこい。呼ば
んと本当に殺すぞ。1人刺し殺されても,もう1人は助けられるかもな。」な
どと言い,D及びEを人質にして同人らの父であるBを同建物3階居宅部分に
連れて来ることなど義務のない行為をすることを要求し,前記逮捕監禁の際,
柳刃包丁及び出刃包丁を突き付けたことによりDに加療約10日間を要する右
手指(第3指・第4指)切創,左手部切創,後頚部切創の傷害を負わせた。
第3業務その他正当な理由による場合でないのに,令和2年4月21日午前8時
31分頃,前記建物3階居宅部分において,前記柳刃包丁及び出刃包丁を携帯
した。
(事実認定の補足説明)
弁護人は,判示第2の事実について,被告人が「1人刺し殺されても,もう1人
は助けられるかもな。」と発言した事実はないと主張し,被告人は同発言について
は記憶になく,言っていないと供述するが,事件当時被告人の説得にあたった警察
官(証人F)の供述によれば,当該事実が認められる。
(法令の適用)
罰条
判示第1の行為刑法204条
判示第2の行為のうち
建造物侵入の点
刑法130条前段
人質による強要等の点
人質ごとに,人質による強要行為等の処罰に関する法律1条
1項
逮捕監禁致傷の点
刑法221条,220条
判示第3の行為銃砲刀剣類所持等取締法31条の18第3号,22条
科刑上一罪の処理判示第2の罪につき刑法54条前段,後段,10条(判示第
2の各罪のうち,各人質による強要等と逮捕監禁致傷は1個
の行為が3個の罪名に触れる場合であり,建造物侵入と逮捕
監禁致傷,建造物侵入と各人質による強要等との間にはそれ
ぞれ手段結果の関係があるので,結局以上を1罪として,最
も重い逮捕監禁致傷の罪(刑法220条所定の刑と同法20
4条所定の刑とを比較し,重い傷害罪について定めた懲役刑。
ただし,短期は人質による強要等の罪の刑のそれによる)に
より処断)
刑種の選択判示第1,第3の罪についていずれも懲役刑を選択
併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(最も重い判示第2の
罪の刑に法定の加重)
未決勾留日数の算入刑法21条
訴訟費用(不負担)刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
被告人は,元勤務先の店員である第1事実被害者に対しかねて不満を募らせてい
たところ,犯行当日,元勤務先に押し掛け,同人の顔面をいきなり殴打し,そのま
ま店舗兼居宅内に侵入し,居宅部分で,同人の娘である6歳の女児に包丁2本を突
き付け,約5時間55分にわたって,同児と3歳の妹を人質に取って立てこもり,
同児らを殺すなどと言って第1事実被害者を連れて来るよう警察官らに要求し,6
歳の女児に包丁で切創を負わせた。
経緯及び動機に酌むべき点はなく,とりわけ6歳と3歳の幼い女児を人質に取り,
自らの要求を貫徹しようとした卑劣な行為に弁解の余地はない。
犯行態様は,女児の首及び腹部に殺傷能力の高い柳刃包丁及び出刃包丁を突き付
け,長時間人質に取り続けるというもので,状況次第で更に重大な結果を生じさせ
かねない,極めて危険なものと認められる。
女児2名は,何の落ち度もないのに,最も安心できるはずの自宅内で,両親と引
き離され,自分たちを殺すと叫び包丁を突き付けていた被告人の傍らで,長時間に
わたり人質となることを強いられ,6歳の女児は手や首に切創の傷害まで負わされ
たのであり,幼い同児らの恐怖,被った精神的被害は甚大である。
弁護人は,被告人には怪我を負わせる意図はなかったと主張するが,6歳の女児
が驚いて包丁をつかみ手に怪我を負ったのは犯行態様によれば当然であるし,後頚
部の切創はまさに被告人が突き付けた包丁が首に接触したことにより生じたもので
あり,これらの結果は,いずれも包丁を首に突き付けるという被告人の極めて危険
な行為から生じたものにほかならず,弁護人の指摘は量刑において特段酌むべき事
情に当たらない。
自ら受けた暴行もさることながら,愛する娘らを長時間にわたり人質に取られた
第1事件被害者の精神的苦痛は大きく,家族の心痛も計り知れない。
これまで傷害や暴行等の粗暴犯で複数回服役しながら,その反省を生かすことな
く,本件のように粗暴で重大な犯行に短絡的に及んだことも,被告人への非難を強
めるものである。
以上のとおり,本件は誠に卑劣な犯行であり,被告人の刑事責任は重大である。
これらの犯情に照らし,被告人が事実を認め,反省の弁を述べていることを考慮
しても,長期間の懲役刑は免れない。
他方で,被告人が最終的に任意に人質を解放した点は,本件犯行の性質に鑑みる
と,量刑上,特に被告人に有利に考慮できる。
以上の事情を考慮し,被告人に対しては主文の刑が相当だと判断した。
(求刑:懲役8年)
令和2年11月24日
福岡地方裁判所第3刑事部
裁判長裁判官神原浩
裁判官川口洋平
裁判官池上恒太

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