弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告人ら代理人弁護士平野安兵衛の上告理由について。
 本件記録殊に原審における上告人ら提出の昭和三三年四月七日付準備書面に徴す
れば、本件の訴旨は概ね次のとおりである。すなわち、被上告人B1の本件財団法
人D文庫の理事長たる資格は同文庫の寄附行為一五条(二)に「理事長は設立者累
代の家督相続人これに任ず、云々」とある規定に由来するものであるが、右寄附行
為は右規定に関する限り憲法違反であり、また民法違反でもあつて、無効のもので
ある。されば被上告人B1は右理事長たる権限を有しないものであり、従つて右寄
附行為一五条(一)に基き理事長によつて理事に任命された被上告人B2、同B3
も理事の権限を有しないものである。そして右のような理由で理事長及び理事が欠
員となつた以上は、右財団としては憲法並びに民法の精神に従い右寄附行為二四条
の定款変更の規定に則り、右一五条(二)を変更の上、新に理事長及び理事を選任
しなければならない筋合であるが、右財団の設立者はその相続人の中から理事長を
選定する意思であつたから、右定款の変更に当つては当然に設立者の相続人の中か
ら民主的に理事長を選定する方法を規定すべきである。然るに、上告人らは昭和二
四年三月二二日死亡した前理事長Eの相続人であるから被上告人らが前示の如く理
事長又は理事たる権限を有しないことの確認判決を求めるについて法律上の利害関
係を有する次第である、というのである。
 しかしながら、右訴旨によつて明らかなように上告人らは所論定款変更の場合に
おいて、前示Eの相続人であるとの理由を以て必ずしも当然に本財団の理事長又は
理事に選任されるというわけのものではないから、前示寄附行為一五条(二)の規
定が所論の理由によつて無効のものであり、延いて被上告人らが理事長或は理事の
権限を有しないものと仮定しても、上告人らは被上告人らに右権限のないことの確
認判決を求めるについて、法律上直接の利害関係を有するものと即断し得ないもの
といわざるを得ない。(尤も、上告人らが被上告人B1と前示前理事長に対し共同
相続人の地位にあるものであるから、上告人らは当然に右理事長たり得べき資格を
有するものであるとの主張を前提とするならば、問題は自ら別である。)されば結
局叙上と同趣旨に帰する原判決究極の判断は当裁判所もこれを正当として是認する。
 論旨は、本訴確認判決を求めるについて、利害関係ありという点には関係なく、
専ら前示寄附行為一五条(二)が憲法ないし民法に違背し無効のものであるという
趣意をる述しているに過ぎないものであるから叙上判断に影響ある上告理由として
は採用に値しないものである。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    高   木   常   七

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