弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人森井孫市の上告理由第一点について。
 所論は、原判決が伝聞証言を採用して上告人の主張を排斥したのは証拠法則に違
背し重要な事実を誤認した違法があると主張する。しかし民事訴訟において、伝聞
証言の証拠能力は必しも当然に制限されるものではなく、裁判官の自由な心証によ
る判断に委されていると解すべきことは、すでに当裁判所の判例とするところであ
り、(昭和二五年(オ)、第一八一号同二七年一二月五日第二小法廷判決、集六巻
一一号一一一七頁参照)。原判決に所論のような違法があるとはいえない。従つて
所論は原審の証拠の採否、事実認定を非難するに帰し採用できない。
 同第二点について。
 所論は、原判決の審理不尽事実誤認を主張し、かつ大審院判例に違反すると主張
する。しかし所論は判例を具体的に摘示していないから、判例違反の主張と認めら
れないのみならず、原審の判示する証拠と説明とを照合すれば、その認定は相当で
あつて、所論のような違法は認められない。
 同第三点について。
 所論は、原判決は被上告人の法律上の責任の有無について判断を遺脱し審理不尽
理由不備の違法があると主張する。しかし原判決は、所論の点について直接判示す
るところはないが、全文を通読すれば、被上告会社の営業使用人Dが本件売買の斡
旋につき代理権を有しており、同会社は上告人から本件中古レールの引渡を受けた
が、売買の斡旋が不成功に終つたことを認定した趣旨であること明らかである。そ
してまた原審は右中古レールを「その後被上告会社を退職した右Dが個人として他
に転売してしまつた」事実を認定しているところ、所論が「法律上の責任」云々と
主張するのは、被上告会社が右中古レールを上告人に返還すべき義務ないしその不
履行に基く損害賠償義務について、原審が判示していないことを非難する趣旨と解
せられるが、上告人は本件において当初から売買契約の存在を前提として売掛代金
を請求することに終始し、なんら所論のような請求を主張した形跡が認められない。
してみれば原審が所論の点について判示しなかつたからといつて違法のかどはなく、
所論はひつきよう単なる事実誤認又は原審で主張しなかつた事項に基き新たな主張
をするにすぎないから採用できない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    本   村   善 太 郎
            裁判官    垂   水   克   己

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