弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1被告人Aを懲役2年及び罰金100万円に処する。
2同被告人に対し,未決勾留日数中40日をその懲役刑に算入する。
3同被告人がその罰金を完納することができないときは,金5000円を1
日に換算した期間,同被告人を労役場に留置する。
4同被告人に対し,この裁判が確定した日から3年間その懲役刑の執行を猶
予する。
5被告人Bを懲役1年6月に処する。
6同被告人に対し,未決勾留日数中50日をその刑に算入する。
7同被告人に対し,この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予す
る。
理由
(罪となるべき事実)
被告人両名は,C,D,E及び氏名不詳者らと共謀の上,シンガポール共和国か
ら金地金を不正に輸入し,これに対する消費税及び地方消費税を免れようと考え,
平成29年7月23日,Cが,シンガポール共和国所在のa国際空港において,b
航空c便に搭乗する際,金地金5個(合計5キログラム)を携行し,同日,台湾所
在のd国際空港において,e国際空港到着後に非外国貿易機に資格変更する予定の
f航空g便に乗り換えた上,同航空機内において,携行していた前記金地金5個を
同航空機左尾翼部後方トイレ内の便座一体型壁パネルの裏側に隠匿し,同航空機に
より,同日午後7時27分頃,愛知県常滑市所在のe国際空港に到着し,同日午後
7時44分頃,同空港内の名古屋税関e空港税関支署旅具検査場において,法令に
より通関に関する税関長の権限の委託を受けた同税関支署長に対し,金地金を輸入
する事実を秘し,申告すべきものはない旨の虚偽の輸入及び納税の申告を行い,非
外国貿易機への資格変更後の同航空機に前記金地金5個を積載させたまま,同航空
機を同空港からh国際空港に向けて出発させようとし,税関長の許可を受けないで,
前記金地金5個を輸入しようとするとともに,不正の行為により保税地域から引き
取られる課税貨物である前記金地金5個(課税価格2280万1031円相当)に
対する消費税143万6400円及び地方消費税38万7600円を免れようとし
たが,同支署職員によって前記金地金5個を発見されたため,その目的を遂げなか
ったものである。
(法令の適用)
1被告人Aにつき
罰条
無許可で金地金を輸入しようとしたが未遂に終わった点
刑法60条,関税法111条3項,1項1号,67条
不正の行為により消費税を免れようとした点
刑法60条,消費税法64条1項1号
不正の行為により地方消費税を免れようとした点
刑法60条,地方税法72条の109第1項
科刑上一罪の処理
刑法54条1項前段,10条
(刑及び犯情の最も重い消費税法違反の罪の刑で処断)
刑種の選択
懲役刑及び罰金刑
未決勾留日数の懲役刑への算入
刑法21条
労役場留置
刑法18条(金5000円を1日に換算)
懲役刑の執行猶予
刑法25条1項
訴訟費用の不負担
刑事訴訟法181条1項ただし書
2被告人Bにつき
罰条
科刑上一罪の処理
刑種の選択懲役刑
未決勾留日数の本刑算入
刑の執行猶予
訴訟費用の不負担
(量刑の理由)
本件は,被告人両名が,共犯者らと共謀の上,無許可で金地金を輸入するととも
に不正の行為により消費税及び地方消費税を免れようとしたが,税関職員に金地金
を発見されたために未遂に終わったという事案である。密輸入しようとした金地金
の重量は5kg(課税価格2280万1031円相当),免れようとした消費税及び
地方消費税の総額は182万4000円であり,公判請求がなされる密輸入ないし
脱税の事案としては高額なものといえないが,密輸入した金地金を国内において消
費税を上乗せして売りさばくことによって利益を得るために,実行犯として金地金
を携行して国際線航空機に搭乗し機内に金地金を隠匿する運搬役,その後国内線と
なった航空機に搭乗して隠匿された金地金を回収する回収役,回収された金地金を
売りさばく換金役,換金により得られた現金を国外へ持ち出す持ち出し役,経理を
担当する経理役等の役割を大勢で分担した上で,判示のとおり極めて巧妙な手口で
密輸入を図り,脱税しようとしたものであり,組織的かつ計画的に行われた悪質な
犯行である。
そして,被告人両名の個別の犯情を見ると,まず,被告人Aは,本件犯行におい
て,国外にいるとみられる首謀者から指示を受け,自己の経営する会社の従業員の
中から運搬役としてCを選定し,密輸入する金地金の購入資金を前記Cに託して国
外にいた氏名不詳の共犯者に渡すために,別の従業員らに現金等を用意させるなど
の重要な役割を果たしている上,平成28年10月頃に首謀者に近い人物から金地
金の密輸入を持ちかけられるや,報酬を得たいという気持ちなどから従業員らを誘
って繰り返し金地金の密輸入及びこれと一体となる脱税に関与していたものであっ
て常習性が認められ,また,組織内における地位も,配下の従業員らの取りまとめ
役を担っているのであるから低くない。他方,被告人Bは,本件犯行において前記
Cのために航空券を手配するなどの役割を果たしている上,平成28年10月頃に
被告人Aから話を持ちかけられるや,報酬目当てに繰り返し金地金の密輸入及びこ
れと一体となる脱税に関与していたものであって,常習性も認められるが,組織に
おける地位は低く,本件に関していえば報酬が得られるという確たる当てがあって
犯行に及んだわけでもない。
これらの事情に照らすと,被告人Aの刑事責任は重く,被告人Bの刑事責任も相
応には重く,それぞれ主文掲記の懲役刑は免れないが,被告人両名が事実を認めて
反省していることや,被告人両名には前科がないことなども併せ考慮すると,いず
れもその執行については猶予するのが相当である。また,被告人Aは,前記のとお
り利欲目的があって本件犯行に加担したものと認められるところ,そのような行為
が経済的にも割に合わないことを示すために罰金刑をも科すことが相当ではあるが,
マフィアと思しき氏名不詳者からの頼みを断りづらかったという面も
あったことや,これまで実際には僅かな報酬しか得ていないことなどの事情も考慮
すると,罰金300万円という検察官の求刑はいささか重過ぎるといわざるを得ず,
主文掲記の金額にとどめるのが相当である。
(求刑被告人Aにつき懲役2年6月及び罰金300万円,被告人Bにつき懲役1
年6月)
平成30年5月29日
名古屋地方裁判所刑事第5部
裁判官村瀬賢裕

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