弁護士法人ITJ法律事務所

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主文
1本件控訴及び本件附帯控訴をいずれも棄却する。
2控訴費用は控訴人の負担とし,附帯控訴費用は被控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1控訴の趣旨
原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。
上記の部分につき,被控訴人の請求をいずれも棄却する。
2附帯控訴の趣旨
原判決中,被控訴人敗訴部分を取り消す。
控訴人は,消費者との間で,控訴人が運営するポータルサイト「モバゲー」
のサービス利用契約を締結するに際し,原判決別紙契約条項目録記載2の契
約条項を含む契約の申込み又は承諾の意思表示を行ってはならない。
控訴人は,その従業員らに対し,控訴人が前項の意思表示を行うための事
務を行わないことを指示せよ。
第2事案の概要
1被控訴人(原告)は,消費者契約法(以下「法」といい,平成30年法律第
54号(以下「本件改正法」という。)による改正前の法を「改正前法」とい
う。)13条1項所定の認定を受けた適格消費者団体であり,控訴人(被告)
は,インターネットを使ったポータルサイト「モバゲー」を運営する株式会社
である。
本件は,被控訴人が,控訴人は消費者との間でモバゲーに関するサービス提
供契約(以下「本件契約」という。)を締結するに当たり,法8条1項の不当
条項を含む消費者契約の申込み又は承諾の意思表示を現に行い,又は行うおそ
れがあると主張し,法12条3項に基づいて,控訴人に対し,消費者との間で
本件契約を締結するに際し,原判決別紙契約条項目録記載1及び2の契約条項
を含む契約の申込み又は承諾の意思表示を行わないよう求めるとともに,控訴
人が同意思表示を行うための事務を行わないことを従業員らに指示するよう求
める事案である。
原審は,①原判決別紙契約条項目録記載1の契約条項に係る被控訴人の請求
を全部認容し,②同目録記載2の契約条項に係る被控訴人の請求を全部棄却し
たところ,控訴人は,上記①を不服として本件控訴を提起し,被控訴人は,上
記②を不服として本件附帯控訴を提起した。
2関係法令等の定め,前提事実並びに争点及び争点に関する当事者の主張は,
次の点を改めるほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」
の1から3までに記載のとおりであるから,これを引用する。
原判決3頁25行目の「第八条」から4頁1行目の「除く」までを「第八
条第一項第一号又は第二号に掲げる消費者契約の条項にあっては,同条第二
項の場合に該当するものを除く」に改める。
原判決5頁18行目の「存在する」の次に「(なお,後記とおり,
本件規約は改正された。)」を加える。
原判決8頁18行目の「同月26日付け」を「平成28年8月26日付け」
に改める。
原判決9頁17行目末尾に改行して以下のとおり加える。
原判決後の経緯
ア原審は,令和2年2月5日,①原判決別紙契約条項目録記載1の契
約条項に係る被控訴人の請求を全部認容し,②同目録記載2の契約条
項に係る被控訴人の請求を全部棄却する旨の判決を言い渡したところ,
控訴人は,同月14日,上記①を不服として本件控訴を提起した。
イ控訴人は,令和2年3月17日,本件規約の一部の条項を次のとお
り改正した(乙11。以下,本件規約の「7条1項」,「7条1項c
号」,「7条1項e号」などというときは,改正後のものを指す。)。
7条(モバゲー会員規約の違反等について)
1項モバゲー会員が以下の各号に該当した場合,当社は,当社
の定める期間,本サービスの利用を認めないこと,又は,モバ
ゲー会員の会員資格を取り消すことができるものとします。た
だし,この場合も当社が受領した料金を返還しません。
c他のモバゲー会員に不当に迷惑をかけたと当社が合理的に
判断した場合
eその他,モバゲー会員として不適切であると当社が合理的
に判断した場合
ウ被控訴人は,令和2年6月16日,前記アの②を不服として本件附
帯控訴を提起した。」
原判決10頁7行目の「判断した」を「合理的に判断した」に改める。
原判決10頁15行目の「判断」を「合理的な判断」に改める。
原判決13頁11行目の「判断した」を「合理的に判断した」に改める。
原判決13頁12行目の「判断」を「合理的な判断」に改める。
原判決14頁26行目の「制限的解釈」を「制限的解釈を」に改める。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,原判決別紙契約条項目録記載1の契約条項に係る被控訴人の請
求は全部理由があり,同目録記載2の契約条項に係る被控訴人の請求は全部理
由がないものと判断する。その理由は,次の点を改め,当審における控訴人の
主張に鑑み後記2を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第3
当裁判所の判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。
原判決17頁4行目の「紛争の」の次に「事後的な」を加える。
原判決18頁7行目,8行目及び17行目の各「判断した」をいずれも
「合理的に判断した」に改める。
原判決18頁10行目及び17行目の各「判断」をいずれも「合理的な判
断」に改める。
原判決18頁18行目の「すなわち」から22行目から23行目にかけて
の「言わざるを得ない」までを「すなわち,控訴人は,上記の「合理的な判
断」を行うに当たって極めて広い裁量を有し,客観的には合理性がなく会員
に対する不法行為又は債務不履行を構成するような会員資格取消措置等を
「合理的な判断」であるとして行う可能性が十分にあり得るが,会員である
消費者において,訴訟等において事後的に客観的な判断がされた場合は格別,
当該措置が「合理的な判断」に基づかないものであるか否かを明確に判断す
ることは著しく困難である」に改める。
原判決19頁5行目の「e号は,」を「e号の」に改める。
原判決19頁6行目及び9行目の各「判断した」をいずれも「合理的に判
断した」に改める。
原判決19頁12行目から26行目までを以下のとおり改める。
「この点に関し,控訴人は,他の企業の規約の中には「当社が判断した場
合」などの文言を含む条項がある(乙4の1から4の25)旨主張するが,
控訴人が指摘する規約の中には,上記条項に関する責任免除規定がないも
の,上記条項によって消費者が損害を被る蓋然性が低いものがあるほか,
現時点で差止請求がされていないことをもって法に違反していないとはい
えないから,「当社が判断した場合」などの文言を含む他の企業の条項が
あるからといって,控訴人の本件規約7条1項c号及びe号の内容が著し
く不明確であるとの上記判断を左右しない。」
原判決20頁26行目から21頁11行目までを以下のとおり改める。
「しかしながら,本件規約7条3項には,単に「当社の措置により」との
文言が用いられ,それ以上の限定が付されていないところ,前記説示した
とおり,会員において,同条1項c号及びe号該当性につき明確に判断す
ることは,極めて困難である。さらに,同条3項が「一切損害を賠償しま
せん。」と例外を認めていないことも併せ考慮すると,同項については,
契約当事者(控訴人及び会員)の行為規範として,控訴人が不法行為等に
基づく損害賠償責任を負わない場合について確認的に規定したものと解す
ることは困難である。」
原判決21頁16行目の「被告は」から18行目から19行目にかけての
「第5準備書面)」までを「控訴人は,改正前の本件規約7条1項c号及び
e号の「当社が判断した場合」とは「当社が合理的な根拠に基づき合理的に
判断した場合」を意味すると主張しながら,これを「当社が合理的に判断し
た場合」と改正したのみであり(乙11)」に改める。
原判決22頁1行目から2行目にかけての「認められるところ」を「認め
られ,また,会員資格取消措置等の判断根拠について会員に通知又説明をし
ていないところ」に改める。
原判決23頁2行目の「同項は」から4行目末尾までを「本件規約12条
4項は,本件規約7条3項を含む契約の申込み又は承諾の意思表示が差し止
められることにより,「本件契約において控訴人の責任について規定してい
ない場合」に該当する除外事由が存在しなくなったから,本件規約12条4
項は,責任の全部を免除する規定であると解することはできない。」に改め
る。
原判決23頁9行目の「3項」を「3号」に改める。
2当審における控訴人の主張について
控訴人は,本件規約7条3項は控訴人が損害賠償責任を負わない場合にこ
れを負わないことを確認的に規定したものであって,免責条項ではない旨主
張する。
しかし,イにおいて説示したとおり,本件規
約7条1項c号及びe号にいう「合理的に判断した」の意味内容は極めて不
明確であり,控訴人が「合理的な」判断をした結果会員資格取消措置等を行
ったつもりでいても,客観的には当該措置等が控訴人の債務不履行又は不法
行為を構成することは十分にあり得るところであり,控訴人は,そのような
場合であっても,本件規約7条3項により損害賠償義務が全部免除されると
主張し得る。
また,控訴人は,控訴人が客観的に損害賠償責任を負う場合は,そもそも
本件規約7条1項c号又はe号の要件を満たさず,したがって,本件規約7
条3項により免責されることもないと主張する。しかし,事業者と消費者と
の間に,その情報量,交渉力等において格段の差がある中,事業者がした客
観的には誤っている判断が,とりわけ契約の履行等の場面においてきちんと
是正されるのが通常であるとは考え難い。控訴人の主張は,最終的に訴訟に
おいて争われる場面には妥当するとしても,消費者契約法の不当条項の解釈
としては失当である。
以上のとおりであるから,控訴人の上記主張は採用できない。
控訴人は,①一般に合理的限定解釈は許されること,②本件規約7条1項
c号及びe号には多数の例示が示されていること,③他の企業においても
「合理的な判断」との条項の意味内容につきトラブルが生じていないことか
らすると,本件規約7条1項c号及びe号の意味内容は明確である旨主張す
る。
しかし,上記①については,事業者は,消費者契約の条項を定めるに当た
っては,消費者の権利義務その他の消費者契約の内容が,その解釈について
疑義が生じない明確なもので,かつ,消費者にとって平易なものになるよう
配慮すべき努力義務を負っているのであって(法3条1項1号),事業者を
救済する(不当条項性を否定する)との方向で,消費者契約の条項に文言を
補い限定解釈をするということは,同項の趣旨に照らし,極力控えるのが相
当である。また,上記②については,控訴人が主張する例示(乙10)によ
っても,本件規約7条1項c号及びe号該当性が明確になるものとは解し難
い。上記③についても,控訴人が主張するとおり,他の企業において,「判
断」,「合理的な判断」といった条項の意味内容につきトラブルが生じてい
ないとしても,そのことをもって,本件規約7条1項c号及びe号の「合理
的な判断」の意味内容が明確であることを意味するものではない。
以上のとおりであるから,控訴人の上記主張は採用できない。
3よって,被控訴人の請求を一部認容し,その余をいずれも棄却した原判決は
相当であり,本件控訴及び本件附帯控訴はいずれも理由がないからこれらを棄
却することとして,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第2民事部
裁判長裁判官白石史子
裁判官浅井憲
裁判官湯川克彦

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