弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     当審における訴訟費用は被告人Aの負担とする。
         理    由
 被告人Bの弁護人三宅清、同鈴木惣三郎の上告趣意第一点について。
 記録を調べても、所論告発状及び商業帳簿が公判に顕出された事跡の窺われない
ことは所論のとおりである。しかし憲法三七条二項は裁判所の有する証拠調の範囲
を自由に定め得る権能を制限し、または奪つた規定でないことは当裁判所の判例(
昭和二三年(れ)第八八号、同年六月二三日大法廷判決、集二巻七号七三四頁、昭
和二三年(れ)第二九九号、同年七月一七日第二小法廷判決、集二巻八号九一〇頁
参照)の趣旨とするところであるから、たとえ所論の証拠が公判に顕出されなくと
もそれが憲法の右条項に反するものとは云えない。故に所論は採用できない。
 同第二点について。
 所論は憲法前文違反をいうが、その実質は単なる法令(訴訟法を含む)違反の主
張をするかないしは公訴権の乱用を云為するに過ぎないものであつて、刑訴四〇五
条の上告理由に当らない。
 同第三点について。
 しかし、憲法三七条三項の弁護人を依頼する権利は被告人が自ら行使すべきもの
であつて、裁判所、検察官等は被告人のこの権利を行使する機会を与え、その行使
を妨げなければよいものであることは当裁判所の判例(昭和二四年(れ)第二三八
号、同年一一月三〇日大法廷判決、集三巻一一号一八五七頁)とするところである
から、所論のような事情があつたからといつて、被告人の右権利の行使を妨げたも
のとは云えないことは勿論、記録を調べても被告人の右権利の行使を妨げられた事
跡は窺われないから、所論は理由がない。
 同第四点、第五点はひつきょうするに事実誤認、単なる訴訟法違反を主張する以
外の何ものでもなく、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 右被告人の弁護人星野民雄の上告趣意は事実誤認の主張を出でないものであつて、
刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 右被告人の弁護人中川鼎の上告趣意第一点について。
 所論は憲法三七条違反をいう点もあるが、同条にいわゆる公平な裁判所の裁判と
は、構成その他において偏頗の惧れのない裁判所の裁判という意味であつて、個々
の事件において法律の誤解、または事実の誤認等によりたまたま被告人に不利益な
裁判がなされても、それが一々右法条に触れるものでないことは当裁判所の夙に判
例(昭和二二年(れ)第一七一号、同二三年五月五日大法廷判決、集二巻五号四四
七頁)とするところであるから、右所論は採用できない。所論はひつきょうするに
実質は原判決に単なる訴訟法違反、事実誤認のかきんがあるというに帰するもので
あつて、これらが刑訴四〇五条の上告理由に当らないことはいうまでもない。
 同第二点について。
 所論は単なる法令違反、事実誤認の主張を出でないものであつて、刑訴四〇五条
の上告理由に当らない。(所論いうところの前借金は被告人Bが単なる一私人とし
て借り入れたものでなく、市長として、しかも市長交際費として前借したものであ
ることが明らかであり、そうだとすれば名は前借金であつてもその実質は公金たる
市長交際費に外ならないとした原判決の判断は当裁判所もこれを正当として支持す
る。)
 右被告人の弁護人渡部利佐久の上告趣意第一点ないし第四点は事実誤認、単なる
訴訟法違反、量刑不当の主張を出でないものであつて、刑訴四〇五条の上告理由に
当らない。
 右被告人の弁護人河上丈太郎、同美村貞夫、同八巻忠蔵、同山下義則の上告趣意
第一点は単なる訴訟法違反、事実誤認の主張を出でないものであり、同第二点は判
例違反をいう点もあるがその判例を具体的に示していないばかりでなく、その実質
は単なる訴訟法違反、事実誤認の主張を出でないものであつて、刑訴四〇五条の上
告理由とするに足りない。同第三点は判例違反をいう点もあるが、所論判例は「証
拠の取捨選択および事実の認定は事実審裁判所の専権に属するが、それは経験則に
反してはならない」旨判示しているとともに、「証拠により認めた事実に基いてな
された推認を資料として事実を認定しても、採証の法則に違反するものでない」旨
判示しており、原判示に経験則違反のかどあるを発見できないし、原判決が所論の
ような推定をしたからといつて、右判例の趣旨に合致こそすれ、これに相反する判
断をしているものとは云えない。また所論中憲法三一条違反をいう点はひつきょう
するに実質は単なる訴訟法違反の主張に帰するものであり、その余も事実誤認、単
なる訴訟法違反の主張を出でないものであつて、いずれも刑訴四〇五条の上告理由
に当らない。
 同第四点ないし第八点は事実誤認、単なる訴訟法違反の主張を出でないものであ
つて刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 同第九点について。
 原判決は所論交際費が全く被告人Bの自由になる金員とは認定していないのであ
るから、所論は原判示に副わない事実を前提とする単なる法令違反の主張と云うの
外なく所論判例も本件と事案を異にするものに関し本件に適切のものとは云い難い。
故に所論も採用できない。
 右被告人の弁護人加藤真の上告趣意第一点は単なる訴訟法違反の主張を出でない
ものであり、同第二点は単なる法令違反、事実誤認の主張に帰するものであつて(
なお以上の各所論については前段弁護人中川鼎の上告趣意に対する説示を引用する
から参照されたい)、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 右被告人の弁護人吉田賢三、同鍛治利一(但し死亡)の上告趣意第一点は憲法三
一条違反をいうが、その実質は採証法則違反とこれに基づく事実誤認があるという
主張に帰し刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 同第二点ないし第八点は事実誤認、単なる法令(訴訟法を含む)違反の主張を出
でないものであつて、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 同第九点中判例違反を云う点は、原判示によれば、被告人Bは所論寄附金の業務
上の占有者であるというのであるから、所論判例は事案を異にするものであつて、
本件に適切でなく、従つて、所論はその前提を欠くに帰するものである。その余は
事実誤認、単なる法令(訴訟法を含む)違反の主張を出でないものであつて、いず
れも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 右被告人の弁護人小野清一郎の上告趣意第一点中憲法三七条違反を主張する点の
採用し難いことは前段弁護人中川鼎の上告趣意第一点に対する判断において示した
とおりであるから、ここにこれを引用する。そして本件において所論告発状が公判
に顕出されていないことは論旨の云うとおりであるが、これを目して違法というこ
とのできないことは、既に、前段弁護人三宅清及同鈴木惣三郎の上告趣意第一点及
び同第三点につき判断したとおりであつて、その採用し難いこと明らかであり、ま
た所論土木日記帳についての主張が失当なことは前段弁護人中川鼎の上告趣意第一
点について述べたとおりである。よつてそれらの説示をここに引用する。次に第一
審判決判示の第一の(二)の(2)及び(4)が刑法一九七条ノ三の罪を構成する
という主張は被告人に不利益な主張であり、これらが包括一罪であると主張するの
は右判示に副わない事実を前提とするものであり(右判示は買収の前後によつて二
罪と認めているのである)、その余は事実誤認、単なる訴訟法違反の主張を出でな
いものであつて、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 同第二点、第三点は事実誤認、単なる法令違反の主張に帰し、刑訴四〇五条の上
告理由に当らない。
 同第四点は事実誤認、単なる訴訟法違反の主張を出でないものであつて、刑訴四
〇五条の上告理由に当らない。
 同第五点について。
 論旨引用の最高裁判所、昭和二三年(れ)第七七号同二四年五月一八日大法廷判
決は「共同審理を受けた共同被告人の供述(自白)はそれだけでは完全な独立の証
拠能力を有しないが、被告人の供述(自白)を補強する場合には合わせて完全な独
立の証拠能力を形成するもので、共同被告人の供述自体を更に補強する他の証拠を
要するものではない」という趣旨を判示していることは所論のとおりである。しか
し、論旨もいうとおり、最高裁判所昭和二九年(あ)第一〇五六号同三三年五月二
八日大法廷判決は右のいわゆる「ハーフ、プルーフ」の判決をもつて、「被告人本
人が犯罪事実を自白した場合の補強証拠に関する判例であつて、被告人本人が犯罪
事実を否認している本件に適切でないばかりでなく、本判例と矛盾する限度におい
て、これを変更するを相当と認める」と云い、「共同審理を受けていない単なる共
犯者は勿論、共同審理を受けている共犯者(共同被告人)であつても、被告人本人
との関係においては、被告人以外の者であつて、かかる共犯者または共同被告人の
犯罪事実に関する供述は、憲法三八条二項の如き証拠能力を有しないものでない限
り、独立、完全な証明力を有し、憲法三八条三項にいわゆる「本人の自白」と同一
視し、またはこれに準ずるものではない」と判示している。第一審判決を見ると、
同判決は被告人Bの判示第三の事実を認定する証拠として、イ、第一審第二八回公
判における証人Cの供述、ロ、第一審第二八回公判における被告人Dの供述、ハ、
被告人Eの検察官に対する第一〇回供述調書、ニ、証第八二号(D名義の普通預金
元帳謄本)、ホ、第一審第二七回公判における証人Dの供述を挙示しており、所論
Dの供述のみで共謀の事実を認定したものでもないばかりでなく、仮りにそうであ
つたとしても、それが違憲違法のものでないことは前示昭和三三年五月二八日大法
廷判例の趣旨から明らかである。故に所論違憲の主張も判例違反の主張も採用でき
ない。その余の所論は単なる訴訟法違反、事実誤認の主張であつて、刑訴四〇五条
の上告理由に当らない。
 被告人B本人の上告趣意は縷々論述するが、要するに、事実誤認の主張以外の何
ものでもなく、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 被告人Eおよび同Aの弁護人馬場照男の上告趣意第二ないし第三は事実誤認の主
張であり、同第四は量刑の非難であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 被告人Fの弁護人星野民雄の上告趣意は事実誤認、単なる訴訟法違反の主張を出
でないものであつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 被告人Gの弁護人伊藤仁の上告趣意第一点、第二点は単なる訴訟法違反、事実誤
認の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 なお、記録を調べても同四一一条一号ないし三号を適用すべきものとは認められ
ない。
 よつて同四一四条、三九六条、一八一条一項本文(被告人Aにつき)により裁判
官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
 検察官平出禾公判に出席
  昭和三八年二月二八日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    高   木   常   七
            裁判官    斎   藤   朔   郎

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