弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1甲事件被告株式会社aは,消費者との間で,冠婚葬祭の互助会契約を締
結するに際し,消費者が冠婚葬祭の施行を請求するまでに解約する場合,
解約時に支払済金額から「所定の手数料」などの名目で,58円に第1回
目を除く払込の回数を掛けた金額を超える解約金を差し引いて消費者に対
し返金する旨を内容とする意思表示を行ってはならない。
2甲事件被告株式会社aは,前項記載の内容の条項が記載された契約書雛
形が印刷された契約書用紙を破棄せよ。
3甲事件被告株式会社aは,その従業員らに対し,同被告が1項記載の意
思表示を行うための事務を行わないこと及び前項記載の契約用紙を破棄す
べきことを指示せよ。
4甲事件被告株式会社bは,消費者との間で,b利用券取得加入申込契約
を締結するに際し,解約時に支払済金額から「所定の手数料」などの名目
で解約金を差し引いて消費者に対し返金する旨を内容とする意思表示を行
ってはならない。
5甲事件被告株式会社bは,前項記載の内容の条項が記載された契約書雛
形が印刷された契約書用紙を破棄せよ。
6甲事件被告株式会社bは,その従業員らに対し,同被告が4項記載の意
思表示を行うための事務を行わないこと及び前項記載の契約書用紙を破棄
すべきことを指示せよ。
7乙事件被告は,乙事件原告cに対し,3万3252円及びこれに対する
平成21年9月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
8乙事件被告は,乙事件原告dに対し,3万4020円及びこれに対する
平成21年9月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
9丙事件被告は,丙事件原告eに対し,3万3252円及びこれに対する
平成23年4月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
10丙事件被告は,丙事件原告fに対し,6万5396円及びこれに対す
る平成23年4月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払
え。
11丙事件被告は,丙事件原告gに対し,4万5580円及びこれに対す
る平成23年4月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払
え。
12丙事件被告は,丙事件原告hに対し,3万6708円及びこれに対す
る平成23年4月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払
え。
13丙事件被告は,丙事件原告iに対し,4万1408円及びこれに対す
る平成23年4月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払
え。
14丙事件被告は,丙事件原告jに対し,2万9796円及びこれに対す
る平成23年4月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払
え。
15丁事件被告は,丁事件原告に対し,3万4496円及びこれに対する
平成23年9月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
16原告らのその余の請求を棄却する。
17訴訟費用は被告らの負担とする。
18この判決は,7項ないし15項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
1甲事件
(1)主位的請求
ア甲事件被告株式会社aは,消費者との間で,冠婚葬祭の互助会契約を締
結するに際し,解約時に支払済金額から「所定の手数料」などの名目で解
約金を差し引いて消費者に対し返金する旨を内容とする意思表示を行って
はならない。
イ甲事件被告株式会社aは,前項記載の内容の条項が記載された契約書雛
形が印刷された契約書用紙を破棄せよ。
ウ甲事件被告株式会社aは,その従業員らに対し,同被告が上記ア記載の
意思表示を行うための事務を行わないこと及び前項記載の契約用紙を破棄
すべきことを指示せよ。
エ主文4項ないし6項同旨
(2)予備的請求
ア甲事件被告株式会社aは,消費者との間で,冠婚葬祭の互助契約(Pコ
ース又はRコース)を締結するに際し,別紙契約条項1記載の契約条項を
内容とする意思表示を行ってはならない。
イ甲事件被告株式会社aは,消費者との間で,冠婚葬祭の互助契約(Tコ
ース)を締結するに際し,別紙契約条項2記載の契約条項を内容とする意
思表示を行ってはならない。
ウ甲事件被告株式会社aは,前2項記載の内容の条項が記載された契約書
雛形が印刷された「互助契約約款」を破棄せよ。
エ甲事件被告株式会社aは,その従業員らに対し,同被告が上記ア及びイ
記載の意思表示を行うための事務を行わないこと及び前項記載の契約書用
紙を破棄すべきことを指示せよ。
オ甲事件被告株式会社aは,その従業員らに対し,別紙告知内容1の内容
を記載した書面を配付せよ。
カ甲事件被告株式会社bは,消費者との間で,b利用券取得加入申込契約
を締結するに際し,別紙契約条項3記載の契約条項を内容とする意思表示
を行ってはならない。
キ甲事件被告株式会社bは,前項記載の内容の条項が記載された契約書雛
形が印刷された契約書用紙を破棄せよ。
ク甲事件被告株式会社bは,その従業員らに対し,同被告が上記カ記載の
意思表示を行うための事務を行わないこと及び前項記載の契約書用紙を破
棄すべきことを指示せよ。
ケ甲事件被告株式会社bは,その従業員らに対し,別紙告知内容2の内容
を記載した書面を配付せよ。
2乙事件
(1)乙事件被告は,乙事件原告cに対し,3万7950円及びこれに対する平
成21年9月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)乙事件被告は,乙事件原告dに対し,3万8950円及びこれに対する平
成21年9月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3丙事件
(1)丙事件被告は,丙事件原告eに対し,3万7950円及びこれに対する平
成23年4月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)丙事件被告は,丙事件原告fに対し,6万8325円及びこれに対する平
成23年4月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3)丙事件被告は,丙事件原告gに対し,4万7175円及びこれに対する平
成23年4月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(4)丙事件被告は,丙事件原告hに対し,4万2450円及びこれに対する平
成23年4月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(5)丙事件被告は,丙事件原告iに対し,4万7150円及びこれに対する平
成23年4月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(6)丙事件被告は,丙事件原告jに対し,3万3450円及びこれに対する平
成23年4月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4丁事件
丁事件被告は,丁事件原告に対し,3万8150円及びこれに対する平成2
3年9月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
甲事件は,消費者契約法13条に基づき内閣総理大臣の認定を受けた適格消
費者団体である甲事件原告が,甲事件被告らが消費者との間で締結している互
助契約又は積立契約において,それぞれ契約解約時に払戻金から所定の手数料
が差し引かれるとの条項(解約金条項)を使用していることに関して,同条項
は,同法9条1号に定める平均的な損害の額を超える違約金を定めるものであ
り,また,同法10条に定める信義則に反して消費者の利益を一方的に害する
ものであるとして,同法12条3項本文に基づき,主位的に,解約金を差し引
くことを内容とする意思表示等の差止めを求め,予備的に,現実に使用してい
る約款等に基づく意思表示等の差止めを求める事案である。
乙・丙・丁事件は,同事件原告らが同事件被告に対し,上記解約金条項が消
費者契約法9条1号及び10条に反し無効であるとして,不当利得返還請求権
に基づく同被告により差し引かれた解約手数料相当額の返還及び同額に対する
各訴状送達日の翌日からの民法所定の遅延損害金の支払を求める事案である。
1前提事実(争いのない事実並びに各項掲記の各書証及び弁論の全趣旨によっ
て認められる事実)
(1)当事者
ア甲事件原告は,消費者契約法13条に基づき内閣総理大臣の認定を受け
た適格消費者団体である。
イ甲・乙・丙・丁事件被告株式会社a(以下「被告a」という。)は,各
個人団体を会員組織とし,その募集に関する冠婚葬祭の相互扶助をする業
務や冠婚葬祭の儀式設備の提供及び儀式全般の請負等を業とする株式会社
である。
ウ甲事件被告株式会社b(以下「被告b」という。)は,旅行業法に基づ
く旅行業や相互扶助的冠婚葬祭の儀式施行に関する個人及び団体を会員組
織とする募集業務等を業とする株式会社である。
エ被告a及び被告bは,消費者契約法2条2項にいう「事業者」である。
オ乙・丙・丁事件原告らはいずれも,消費者契約法2条1項にいう「消費
者」である。
(2)被告らと消費者との間の契約
ア被告aとの契約
被告aは,不特定かつ多数の消費者との間で,消費者が将来行う冠婚葬
祭に備え,所定の月掛金を前払いで積み立てることにより,当該消費者は,
冠婚葬祭に係る役務サービス等の提供を受ける権利を取得し,被告aは,
当該消費者の請求により,冠婚葬祭に係る役務サービス等を提供する義務
を負うことを目的とする契約(以下「本件互助契約」という。)を締結し
ている。ただし,被告aは月掛金を支払った会員以外に対しても,冠婚葬
祭を施行している。
被告aは現在,本件互助契約を締結する際に,「互助契約約款」と題す
る約款(以下「本件約款」という。)を用いて意思表示をしている。
本件約款には,契約期間中に消費者が本件互助契約を解約した場合,当
該消費者は,支払済み金額から所定の手数料(以下「a解約手数料」とい
う。)を差し引いた解約払戻金を被告aに対して請求することができると
の条項があるところ(以下「a解約金条項」という。),本件互助契約に
おけるa解約手数料は以下のとおりである。なお,Pコースは1口の契約
金額が50万円で毎月2500円を200回積み立てるものであり,Rコ
ースは1口の契約金額が30万円で毎月1500円を200回積み立てる
ものであり,Tコースは1口の契約金額が10万円で毎月1000円を1
00回積み立てるものである。(甲4,5)
(ア)Pコース
払込済回数9回目までは全額,10回目は2万4650円が差し引か
れ,11回目以上は払込済回数が1回増える毎に,差し引かれる金額が
250円ずつ増える。
(イ)Rコース
払込済回数13回までは全額,14回目は1万9650円が差し引か
れ,15回目以上は払込回数が1回増える毎に,差し引かれる額が15
0円ずつ増える。
(ウ)Tコース
払込済回数11回までは全額,12回目は1万1300円が差し引か
れ,13回目以上は払込回数が1回増える毎に,差し引かれる額が10
0円ずつ増える。
Tコース2口同時加入,同時解約の場合は,払込済回数7回までは全
額,8回目は1万5800円が差し引かれ,9回目以上は払込回数が1
回増える毎に,差し引かれる額が200円ずつ増える。
Tコース3口同時加入,同時解約の場合は,払込済回数6回までは全
額,7回目は1万9200円が差し引かれ,8回目以上は払込回数が1
回増える毎に,差し引かれる額が250円ずつ増える。
Tコース4口同時加入,同時解約の場合は,払込済回数5回までは全
額,6回目は2万0650円が差し引かれ,7回目以上は払込回数が1
回増える毎に,差し引かれる額が250円ずつ増える。
Tコース5口同時加入,同時解約の場合は,払込済回数4回までは全
額,5回目は2万3400円が差し引かれ,6回目以上は払込回数が1
回増える毎に,差し引かれる額が250円ずつ増える。
Tコース6口同時加入,同時解約の場合は,払込済回数3回までは全
額,4回目は2万3150円が差し引かれ,5回目以上は払込回数が1
回増える毎に,差し引かれる額が250円ずつ増える。
Tコース7口の同時加入,同時解約場合は,払込済回数3回までは全
額,4回目は2万3150円が差し引かれ,5回目以上は払込回数が1
回増える毎に,差し引かれる額が250円ずつ増える。
イ被告bとの契約
被告bは,不特定かつ多数の消費者との間で,代金分割前払方式による
b利用券取得契約(以下「本件積立契約」という。)を締結している。
被告bは現在,本件積立契約を締結する際に,「bクラブ会則」と題す
る会則(以下「本件会則」という。)を用いて意思表示をしている。
本件会則は,1口の契約金額が30万円で毎月1500円を200回積
み立てるものであり,契約期間中に消費者が本件取得契約を解約した場合,
当該消費者は,①支払済み金額相当の「b利用券」の交付を受けるか又は
②支払済み金額から所定の手数料(以下「b解約手数料」という。)を差
し引いた解約払戻金を受け取るか選択することができるとの条項が存する
ところ(このうち,上記②の条項を,以下「b解約金条項」という。),
b解約金条項における解約手数料は,払込回数が13回目までは全額,1
4回目は1万9650円が差し引かれ,15回目以上は払込済回数が1回
増える毎に,差し引かれる額が150円ずつ増えるとされている。
(3)被告aと原告らとの間の契約
ア乙事件原告c(以下「原告c」という。)は,平成13年11月25日,
被告aとの間で,以下の内容の冠婚葬祭互助契約を締結した。
(ア)種別Tコース(ただし,3口同時加入,同時解約)
(イ)月掛金3000円
(ウ)払込回数100回
(エ)総払込額30万円
原告cは,上記契約に基づき,同日から平成20年8月26日まで,入
会金500円のほかに,月掛金として合計24万6000円(82回分)
を払い込んだ。
原告cは,契約期間中である平成20年9月12日ころ,被告aとの間
の上記契約を解約した。
被告aは,原告cに対し,払込済み金額から解約手数料として3万79
50円及び振込手数料630円を差し引いた20万7420円を返金した。
なお,原告cに対する上記解約返戻金の算定に際しては,本来ならば平成
17年4月1日に改訂される前の約款が適用されるはずであったが,改訂
後の約款が適用された(以下,乙・丙・丁事件原告らについて同じ。)。
イ乙事件原告d(以下「原告d」という。)は,平成13年12月10日,
被告aとの間で,上記アと同じ内容の冠婚葬祭互助契約を締結した。
原告dは,上記契約に基づき,同日から平成21年1月26日まで,
入会金500円のほかに,月掛金として合計25万8000円(86回分)
を払い込んだ。
原告dは,契約期間中である平成21年4月7日ころ,被告aとの間の
上記契約を解約した。
被告aは,原告dに対し,払込済み金額から解約手数料として3万89
50円及び振込手数料630円を差し引いた21万8420円を返金した。
ウ丙事件原告e(以下「原告e」という。)の実母であるkは,平成13
年12月7日,被告aとの間で,上記アと同じ内容の冠婚葬祭互助契約を
締結した。
kは,上記契約に基づき,同日から平成20年9月ころまで,月掛金と
して合計24万6000円(82回分)を払い込んだ。
kは,平成21年5月10日に死亡し,原告eは,kの上記契約上の権
利を相続した。
原告eは,丙事件に係る訴えを提起するまでの間に,被告aとの間の上
記契約を解約した。
被告aは,原告eに対し,払込済み金額から解約手数料として3万79
50円及び振込手数料630円を差し引いた20万7420円を返金した。
エ(ア)丙事件原告g(以下「原告g」という。)の夫であり同f(以下
「原告f」という。)の実父であるlは,平成13年6月23日,被告
aとの間で,上記アと同じ内容の冠婚葬祭互助契約を締結した。
(イ)また,原告fは,平成15年6月28日,被告aとの間で,以下の
内容の冠婚葬祭互助契約を締結した。
a種別RKコース
b月掛金1500円
c払込回数100回
d総払込額15万円
(ウ)lは,上記(ア)の契約に基づき,平成13年6月28日から平成1
8年1月27日まで,月掛金として合計50万4000円(56回分)
を払い込んだ。
(エ)原告fは,上記(イ)の契約に基づき,平成15年6月28日から平
成17年5月26日までに,月掛金として3万6000円(24回分)
を払い込んだ。
(オ)lは,平成19年3月17日に死亡し,原告gと原告fは,lの上
記(ア)の契約上の権利を各2分の1ずつ相続した。(甲D6)
(カ)丙事件に係る訴えを提起するまでの間に,原告gと原告fは,被告
aとの間の上記(ア)の契約を解約し,原告fは,上記(イ)の契約を解約
した。
被告aは,原告g及び原告fに対し,上記(ア)の契約に基づく払込済
み金額から解約手数料として9万4350円及び振込手数料630円を
差し引いた40万9020円を返金した。
また,被告aは,原告fに対し,上記(イ)の契約に基づく払込済み金額
から解約手数料として2万1150円及び振込手数料630円を差し引
いた1万4220円を返金した。
オ丙事件原告h(以下「原告h」という。)は,平成14年6月14日,
被告aとの間で,上記アと同じ内容の冠婚葬祭互助契約を締結した。
原告hは,上記契約に基づき,同日から平成22年9月27日まで,月
掛金として合計30万円(100回分)を払い込んだ。
原告hは,平成23年2月8日,被告aとの間の上記契約を解約した。
被告aは,原告hに対し,払込済み金額から解約手数料として4万24
50円及び振込手数料630円を差し引いた25万6920円を返金した。
カ丙事件原告i(以下「原告i」という。)は,平成13年10月27日,
被告aとの間で,以下の内容の冠婚葬祭互助契約を締結した。
(ア)種別Tコース(ただし,5口同時加入,同時解約)
(イ)月掛金5000円
(ウ)払込回数100回
(エ)総払込額50万円
原告iは,上記契約に基づき,同日から平成22年1月26日まで,入
会金500円のほかに,月掛金として合計50万円(100回分)を払い
込んだ。
原告iは,平成23年1月末ころ,被告aとの間の上記契約を解約した。
被告aは,原告iに対し,払込済み金額から解約手数料として4万71
50円及び振込手数料630円を差し引いた45万2220円を返金した。
キ丙事件原告j(以下「原告j」という。)は,平成16年2月17日,
被告aとの間で,上記アと同じ内容の冠婚葬祭互助契約を締結した。
原告jは,上記契約に基づき,同日から平成22年8月ころまで,入会
金500円のほかに,月掛金として合計19万2000円(64回分)を
払い込んだ。
原告jは,平成22年8月ころ,被告aとの間の上記契約を解約した。
被告aは,原告jに対し,払込済み金額から解約手数料として3万34
50円及び振込手数料630円を差し引いた15万7920円を返金した。
ク丁事件原告は,平成15年7月28日,被告aとの間で,上記カと同じ
内容の冠婚葬祭互助契約を締結した。
丁事件原告は,上記契約に基づき,同日から平成20年11月26日ま
で,入会金500円のほかに,月掛金として合計32万円(64回分)を
払い込んだ。
丁事件原告は,平成23年5月中旬ころ,被告aとの間の上記契約を解
約した。
被告aは,丁事件原告に対し,払込済み金額から解約手数料として3万
8150円及び振込手数料630円を差し引いた28万1220円を返金
した。
(4)消費者契約法41条の書面による事前の請求及び訴えの提起
甲事件原告は,平成20年9月26日,被告aに対し,上記a解約手数料
に関し,消費者契約法41条所定の事項を記載した書面による差止請求をし
た。
甲事件原告は,平成20年9月26日,被告bに対し,上記b解約手数料
に関し,消費者契約法41条所定の事項を記載した書面による差止請求した。
甲事件原告は,平成20年12月3日,甲事件に係る訴えを提起した。
2争点及び当事者の主張
(1)甲事件原告の被告aに対する差止請求の可否(同法12条3項ただし書)
及び本件互助契約に対する消費者契約法適用の有無(同法11条2項)
(被告aの主張)
ア本件互助契約には割賦販売法6条1項3号が適用される。
イ仮に,本件互助契約に同号が直接適用されないとしても,以下の理由に
より類推適用される。
(ア)損害賠償額の予定につき,割賦販売法6条1項3号は,消費者契約
法9条1号より厳しい基準を定めて消費者の保護を図っている。
すなわち,a解約金条項の効力が無効となるのは,割賦販売法6条1
項3号によれば,契約締結及び履行のために通常要する費用の額を超え
る場合とされるのに対し,消費者契約法9条1号によれば,契約の締結
及び履行の費用に加え,得べかりし利益を含む全損害を超える場合とさ
れる。
よって,割賦販売法6条1項3号類推適用の必要性がある。
(イ)本件互助契約は割賦販売法2条6の「前払式特定取引」にあたると
ころ,前払式特定取引には,損害賠償額の制限について割賦販売法6条
1項3号に沿う形になるよう経済産業省の監督下にある。
すなわち,前払式特定取引業を行うには経済産業大臣の許可を受ける
必要があるところ(同法35条の3の61),契約約款が経済産業省令
で定める基準に適合していない場合にはこの許可が受けられない(同法
35条の3の62,15条1項5号)。そして,この基準を定める同法
施行規則123条1項2号表8欄は,同法6条1項3号と同一内容を規
定する。また,契約約款を変更する際は経済産業大臣へ届出をする必要
があるが(同法35条の3の62,19条2項),変更約款が上記基準
に適合しない場合には,経済産業大臣はその変更を命ずることができる
(同法35条の3の62,19条3項)。
よって,割賦販売法6条1項3号を類推適用する基礎がある。
ウそして,a解約手数料は,以下の理由により,割賦販売法6条1項3号
の「契約の締結又は履行のために通常要する費用の額」を超えない。
割賦販売法6条1項3号の「通常要する費用」とは,現実にかかった費
用ではなく,業界の平均費用が標準となるとされているところ,割賦販売
法に基づく前払式特定取引の許可を受けた全国の冠婚葬祭互助会321社
のうち253社(平成20年5月末現在)が加盟している全国団体である
社団法人全日本冠婚葬祭互助協会(以下「全互協」という。)は,昭和5
9年に実態調査に基づいて標準約款を作成し,同約款は,同年2月13日,
旧通商産業省から,現在の割賦販売法35条の3の62,15条1項5号
及び同法施行規則123条1項2号表8欄の基準に沿うものとして認めら
れた。
被告aは,上記標準約款の基準に従ってa解約金条項を定め,旧通商産
業省及び経済産業省の監督の下,割賦販売法6条1項3号に沿う形で長年
にわたり運用してきた。
したがって,a解約手数料は,割賦販売法6条1項3号の「契約締結又
は履行のために通常要する費用の額」を超えない。
エ以上によれば,本件互助契約には割賦販売法6条1項3号が直接適用又
は類推適用され,しかも割賦販売法6条1項3号により無効とならない場
合であるから,消費者契約法12条3項ただし書により甲事件原告は被告
aに対し差止めを請求することができない。
オ上述したとおり,本件互助契約には割賦販売法6条1項3号が直接適用
又は類推適用されるのであるから,消費者契約法11条2項の「別段の定
めがあるとき」にあたり,消費者契約法の適用はない。
(原告らの主張)
ア割賦販売法6条1項3号は前払式割賦販売に適用され,前払式特定取引
に適用はない。
イまた,前払式特定取引については,被告aが主張するように契約条項を
行政が事前に審査する方式で規制しているのであるから,同法がこのよう
な規制の構造をとっていることからも,同法6条1項3号の類推適用がさ
れる余地はない。
ウ仮に割賦販売法6条1項3号が類推適用されるとしても,消費者契約法
が差止対象について「消費者契約法8条ないし10条により無効とされる
条項」と規定せずに同法12条3項本文のように規定している趣旨は,同
法11条2項の「別段の定め」がある場合でも,同法8条ないし10条に
規定する条項に該当すれば差止請求できるとするものであり,ただ,同法
11条2項の「別段の定め」がある場合に,同法12条3項ただし書によ
り当該別段の定めによれば当該条項が無効とされないときには差止請求で
きないとするものである。
よって,消費者契約法9条1号,10条に該当し,かつ,割賦販売法6
条1項3号にも該当する条項であれば,差止請求の対象となる。
エa解約金条項は,後記⑵のとおり,同法9条1号及び10条に該当する。
また,旧通商産業大臣の許可を受けているからといって割賦販売法に適
合しているとは限らないうえ,全互協がどのような実態調査を行いどのよ
うな算出根拠で上記標準約款の基準を定めたのか明らかではないし,全互
協自体業界団体であるから,解約手数料を高額に設定する動機がある団体
なのであって,その信用性は極めて疑わしい。
よって,a解約金条項を含む契約の意思表示について,甲事件原告は差
止請求をすることができる。
(2)a解約金条項の消費者契約法9条1号又は同法10条該当性
(原告らの主張)
ア本件互助契約に基づく役務提供は,結婚式挙行の予約や死亡という事情
によってはじめて決定されるものであって,本件互助契約を締結した時点
においては,役務提供の具体的日時が特定されていないばかりか,内容さ
えも特定されていないのであるから,被告aは個々の契約履行のためには
何ら具体的な準備行為をしておらず,経済的出捐もしていないのであって,
消費者契約法9条1号にいう平均的な損害は生じていない。
仮に被告aが何らかの費用を負担したとしても,会員募集費のうちの互
助契約約款,加入申込書等の書面費や印紙代であり,解約までの間に受け
る月掛金の運用益及び入会金500円でまかなわれている。会員管理費の
うちの会費の口座振替にかかる費用が損害となるとしても,本件互助契約
によって積立をさせて儀式を施行させる顧客を囲い込むという被告aの営
業活動費用といえるし,1回約58円にすぎず,これだけでa解約金条項
が無効であることへの影響はない。
イ本件互助契約は会員が限定されず,人数を区切らずに新会員の募集が随
時行われており,会員が一人加入したとしてもそのために新たな顧客の獲
得を断念するという関係になく,また,被告aの会員数は約80万人にも
及ぶのであり,被告aはこのような不特定多数の顧客に対し,機械的・組
織的に役務提供を行っているにすぎず,その人的物的設備は個々の会員ご
とに準備される性質のものではない。また,被告aが主張する会員募集費,
会員管理費,物的設備準備費は,いずれも,冠婚葬祭業を行う業者として
あらかじめ備えておくべき営業用資産にかかる費用にすぎない。さらに,
会員募集費には新規加入しなかった消費者に対する募集費用が含まれてい
るが,これは互助会員の解約とは因果関係がない。
ウまた,本件互助契約においては,一人の会員が中途解約しても,それに
より被告aは,中途解約をした者に対する役務を免れ,他の会員に対する
役務提供が可能となるのであるから,それが当該会員による儀式施行の具
体的内容の確定前であれば,他の加入者を勧誘して役務提供をすることに
より利益が確保され,当該会員が解約したことによる逸失利益が生じたと
もいえない。
エ以上からすれば,本件互助契約において中途解約時に差し引かれる手数
料は著しく高額であって,同手数料を定める条項は,事業者において中途
解約により生ずべき平均的な損害の額を超える違約金を定めるものであり,
また,信義則に反し消費者の利益を一方的に害する契約条項であるから,
消費者契約法9条1号及び同法10条に基づき無効である。
(被告aの主張)
ア本件互助契約は,被告aが冠婚葬祭の施行をする義務を負い,加入者が
対価である月掛金を前払方式で支払う契約である。
被告aにおいては,月掛金を支払っていない非会員であっても冠婚葬祭
の施行を受けることができるが,被告aの葬祭施行における会員施行と一
般施行の比率は,88.356対11.644である。また,被告aの会
員は,物価上昇にかかわらず加入時に契約した役務内容と同等のものを追
加負担なく受けることができ,寝台車,控室,受付設備などのサービスを
セット価格で受けたり,葬儀祭壇価格が約2割引になったりする付加サー
ビスを受けることができるが,非会員の場合にはこのようなサービスはな
い。
イ(ア)被告aは,費用をかけて会員を募集した後,第1回の月掛金の支払
を受けたときから契約上の責任を負い,しかも契約金額完納前でも残額
一括払により冠婚葬祭の施行を求められれば直ちにこれを行う義務を負
っているのであるから,被告aは常時,会員一人一人を管理し,人的物
的設備を整えて施行に備え続けなければならない。被告aが支出する1
口あたりの費用は,会員の支払回数(支払期間)の増加につれて増えて
いくのである。
(イ)冠婚葬祭は一生のうちに限られた事態に生じ,被告aは会員一人一
人を管理してその事態に対処する義務を負うのであり,一人が抜ければ
他の人を勧誘して役務提供をすればよいという軽々しいものではないか
ら,被告aの本件互助契約上の募集,儀式施行のための支出費用には代
替性はない。
(ウ)最終的には,被告aは,儀式を施行することによって,月掛金総額
とそれまでに増え続けた会員募集費,会員管理費及び物的設備準備費の
合計との差額について利益を得る。
(エ)したがって,本件互助契約を中途解約した場合,以下のとおり,会
員募集費,会員管理費,物的設備準備費及び逸失利益が被告aに生じた
「平均的な損害」(消費者契約法9条1号)であり,a解約手数料はこ
れを超えるものではない。
a会員募集費
訪問販売員に対して支払う基本給及び契約ができたときの出来高給,
約款印刷費,パンフレット印刷費,入会書類作成費等が会員募集費に
当たるが,これを被告aの第42期損益計算書(平成19年8月1日
から平成20年7月31日まで。乙23)でいうと,①給与手当4億
0176万6593円,②歩合給2億6482万3504円,③賞与
手当7016万9135円,④賞与引当金繰入額1999万1568
円,⑤法定福利費5224万7254円,⑥通勤交通費1952万7
160円,⑦車両費4456万0407円,⑧燃料費4151万02
84円,⑨支払手数料33億0827万2141円のうち23億89
95万8379円,⑩家賃・地代1億2016万0646円,⑪保険
料1626万9828円,⑫水道光熱費4857万7679円,⑬消
耗品費5893万4529円,⑭広告宣伝費2億5238万2016
円の半分である1億2619万1008円,⑮販売促進費7873万
9878円,⑯リース料724万8202円の合計額37億6067
万6054円に当たる。この合計額を,上記期間の新規加入口数3万
9655口で割った1口あたりの単価は,9万4835円である。
b被告aは訪問販売員等を採用して消費者のもとに出向いて会員の募
集等の活動をしているため,そのための人件費等も平均的な損害に含
まれる。
被告aの新規契約口数の約9割は代理店による契約で,被告aは代
理店に対し,歩合制による募集委託手数料を支払っている。1口あた
りの手数料は,契約コースの種別,新規契約の態様,募集代理店の実
績をもとに個別に設定され,その種類は数十種類にも及び,また,新
規契約の全口数に対して,新規加入口数の割合は年度により異なり,
その他の諸類型の口数の各割合も年度ごとに変化する。したがって,
募集代理店に支払われる各募集委託手数料に着目して1口あたりの会
員募集費を正確に算出することは困難である。
また,被告aは,各募集代理店に募集委託手数料を支払い,会員の
中途解約が生じた場合には募集委託手数料の返金を受けている。しか
し,被告aの募集代理店は2~3か月に1店舗のペースで廃業するた
め,被告aは,廃業した募集代理店からは返金は受けていない。しか
も,存続している募集代理店に対しても,経営支援の目的で募集委託
手数料の返金分以上の各種名目の手数料を支払っている。したがって,
被告aが募集代理店から中途解約の場合に募集委託手数料の返金を受
けていることは,上記募集費の計算に影響を及ぼさない。
c会員管理費
会員管理用コンピュータ導入費,同維持管理費,会員情報システム
登録費,加入者証作成費,加入者証郵送費,口座振替依頼書郵送費,
口座振替手数料,振替済みお知らせ作成費及び郵送費等が会員管理費
に当たるが,上記損益計算書のうち,①業務委託手数料6億9123
万9493円,②通信費1億3670万1291円,③修繕費241
7万1355円,④支払手数料33億0827万2141円のうち9
億1831万3762円,⑤減価償却費8105万1033円,⑥事
務用品費1億1742万5150円,⑦維持管理費3673万858
3円,⑧公租公課7億0198万5716円,⑨ソフトウエア償却費
1632万9872円の合計額27億2395万6255円に当たる。
この合計額を,平成21年8月13日現在の有効な契約口数71万5
722口で割った1口あたりの単価は3806円であり,月掛金1回
あたりでは317円となる。被告aの平均的な損害は払込1回あたり
317円ずつ増加することになる。
d物的設備準備費
被告aは,本件互助契約に基づく義務を履行するため常に不動産及
び動産類を所有しなければならないため,上記損益計算書のうち,①
修繕費3億2245万3926円,②減価償却費13億4430万0
439円,③維持管理費2億8982万0619円,④公租公課5億
6413万7339円の合計額25億2071万2323円を,有効
な契約口数約80万口(上記cとは齟齬)で割った1口あたりの年間
の物的設備準備費は3150円であり,1月あたりでは262円とな
る。
e逸失利益(準備書面での誤算を訂正済み)
被告所有の会館でPコース又はRコースの葬儀を施行した場合に要
する費用は,①寝台車1万2840円,②棺7300円,③祭壇Pコ
ース3万2021円,Rコース1万3720円,④控室,⑤寺院控室,
⑥受付設備,⑦後飾りセット4300円,⑧棺付樒3500円,⑨骨
箱1000円,⑩献茶,儀式総合プロデュース,奉仕員,ホールサー
ビス,火葬場手配,寺院紹介等の諸手続の委託手数料4万1571円,
⑪音響照明設備,⑫スナップ写真7000円,⑬案内看板,⑭霊柩車
2万3800円,⑮記帳類250円,⑯枕飾りセット8400円,⑰
焼香所設備,⑱納棺具1152円,⑲霊安室,⑳式場案内であり(金
額記載のないものは,上記dの物的設備準備費に含まれるか,極めて
軽微であるかなので,独立の金額としては計上しない。),その合計
金額は,Pコースで14万3134円,Rコースで12万4833円
となる。これに,上記aの9万4835円,cの317円,dの26
2円の各金額を加えたもの(c,dは199回分)を,月掛金合計額
であるPコース50万円,Rコース30万円から控除すると,逸失利
益はPコースが14万6810円,Rコースがマイナス3万4889
円となる(Rコースの逸失利益マイナス分は,結果的に他コースの利
益で補填されている。)。
(オ)前記(1)のとおり,本件約款は旧通商産業省及び経済産業省の監督下
で長年にわたり運用されてきた。このような事情は,a解約金条項の消
費者契約法上の有効性を十分に基礎づける事情となる。
(カ)原告の主張する入会金500円は,親睦会の1回限りの会費であり,
親睦会員には冠婚葬祭の施行の500円分割引券や,冠婚葬祭の一般的
な内容やマナー等を説明する資料を配布するために使用され,預かり金
とは無関係である。
(キ)被告aは,会員が支払った月掛金のうち半分は割賦販売法の定めに
より儀式施行まで保全しなければならず,残り半分で儀式施行に備え,
物的人的設備を充実することのみに利用するのであり,月掛金の運用と
いうにはほど遠い。
ウ以上によれば,a解約金条項は,平均的な損害の額を超える部分がなく,
消費者契約法9条1号によって無効とされない。
エ上記の冠婚葬祭互助契約約款の性質及び内容に照らすと,消費者契約法
9条1号によって無効とならない本件約款が,同法10条にいう「民法第
1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するも
の」に該当しないことは明らかである。
したがって,本件約款は,消費者契約法10条に反せず,有効である。
(3)b解約金条項の消費者契約法9条1号又は同法10条該当性
(甲事件原告の主張)
ア本件積立契約の目的はb利用券の取得とされているものの,b利用券は,
被告bが企画した旅行及び被告b指定の冠婚葬祭施行時の送迎バス・タク
シー・ハイヤーにのみ利用可能なのであるから,本件積立契約の実質は,
被告bにおける旅行等サービスの提供にある。
そして,被告bにおける旅行等サービスの提供は,被告bが企画した旅
行等に会員が申込みをした時点ではじめて決定されるものであり,積立契
約を締結した時点では,役務提供の具体的日時及び内容は特定されておら
ず,被告bにおいて契約履行のための準備行為をする必要はなく,経済的
出捐は生じていない。
仮に被告bが何らかの費用を負担しているとしても,会員から徴収した
掛金の運用益や月額150円の事務手数料によってまかなわれている。
イbクラブの会員は限定されておらず,定員を定めないで新会員の募集を
随時行っているため,会員一人が加入したとしても,そのために新たな顧
客の獲得を断念するという関係にない。
よって,一人の会員が本件積立契約を解約したとしても代替の契約を締
結する可能性が高いので,損害が発生したとはいえない。
ウbクラブの会員は相当多数であることが推察されるが,会員が多数であ
ればあるほど,その管理に多額の費用がかかる一方,一人の解約によって
その管理に必要な人的物的設備の内容が変わるとは考えられず,一人の解
約が全体に及ぼす影響はないというべきである。
エ被告bが主張する正会員の者に対する旅行プラン等の案内や紹介につい
ては,顧客は旅行サービスの提供を受けるために本件積立契約をしている
のであって,それらの案内や紹介を受けるために本件積立契約をしている
のではなく,債務の内容となっていない。したがって,旅行プラン等の案
内や紹介は,特典か又は被告bが参加者を募るための広告宣伝活動にすぎ
ないのであって,これをもって本件積立契約における被告bの債務履行で
あるとするのは相当でない。
オ以上からすれば,本件積立契約において中途解約時に差し引かれる手数
料は著しく高額であって,b解約金条項は消費者契約法9条1号に定める
平均的な損害を超える違約金を定めるものであり,また,信義則に反し消
費者の利益を一方的に害するものであるため,同法10条に基づき無効で
ある。
(被告bの主張)
ア本件積立契約は,被告bが企画した国内旅行及び特別企画旅行,被告b
が指定する式場にて挙式・披露宴を申し込んだ場合の指定ハネムーン旅行
及び指定の冠婚葬祭施行時の送迎バス・タクシー・ハイヤーに利用できる
b利用券を代金分割払方式により取得する契約である。
被告bは,bクラブ加入の申込みを受けて,第1回支払金を受領した日
から加入上の責任を持つ。また,加入者は,1年間継続して支払金を入金
した場合に,「bクラブ正会員」になり,被告bが企画する旅行プラン及
び人間ドックの案内,紹介を受けることができる。
イ被告bは,会員募集費,会員管理費として,訪問販売員に対して支払う
基本給及び契約ができたときの出来高給,約款印刷費,パンフレット印刷
費,入会書類作成費,会員管理用コンピュータ導入費,同維持管理費,会
員情報システム登録費,加入者証作成費,加入者証郵送費,口座振替依頼
書郵送費,口座振替手数料,振替済みお知らせ作成費及び郵送費等を負担
している。
さらに,被告bは,bクラブ正会員に特別安価な旅行プラン及び人間ド
ックの案内,紹介するために,健康診断のパス維持費,健康診断における
検査機器の管理費,検査員の人件費等を負担している。
このように,被告bには,募集,会員管理その他に多くのコストがかか
っている。bクラブ入会にかかる費用の1口単位だけをみても,互助会募
集給与,社員給与・雑給,外交員報酬及び代理店手数料の合計1億423
5万4556円を,被告bの1年間の入会総本数6789本で割った,2
万0994円となる。
ウよって,被告bが,中途解約時に解約返戻金から控除する募集費用の額
として設定している1万7700円は,契約の類型ごとに合理的な算定根
拠に基づき算定された平均値である2万0994円を下回り,明らかに合
理的な金額である。
また,1回の支払につき解約返戻金から控除される150円は,上記会
員管理用コンピュータ導入費及び維持管理費,会員情報システム登録費,
加入者証作成費,加入者証郵送費,口座振替依頼書郵送費,振替済みのお
知らせ作成費及び郵送費等に照らせば,明らかに合理的な金額である。
エ以上より,本件取得契約の控除額が消費者契約法9条1号にいう平均的
な損害の範囲内にあり,また,消費者の利益を一方的に害するものでもな
いため,消費者契約法10条にもあたらない。
第3争点に対する判断
1争点(1)について
(1)割賦販売法2条6項2号,同法施行令1条4項,別表第二によれば,被告
aが取り扱う本件互助契約は,同法2条6項にいう「前払式特定取引」であ
るといえる。
契約の解除に伴う損害賠償等の制限について定める同法6条1項3号は,
前払式割賦販売に適用されるものであり,前払式特定取引には適用されない。
また,割賦販売法35条の3の62,15条1項5号,割賦販売法施行規
則123条1項2号表8欄,同法19条2項,3項は,経済産業大臣による
解約金条項への規制を定めるものであるが,これらの規定は取締規定にすぎ
ず,上記各条に違反した条項の効力を定めるものではない。割賦販売法が,
前払式特定取引について同法6条1項3号のような規定を設けることが可能
であったにもかかわらずそのような規制の仕方をしなかったことにかんがみ
ると,同法は,前払式特定取引における損害賠償額等の請求につき,同法6
条1項3号のような制限をあえて定めなかったものと解すべきであり,同号
を類推適用する基礎を欠く。
(2)よって,a解約金条項について割賦販売法6条1項3号の直接適用及び類
推適用はないのであるから,消費者契約法11条2項及び12条3項ただし
書は適用されず,甲事件原告は被告aに対し同法12条3項本文に基づく差
止請求をすることができる。
2争点(2)について
(1)消費者契約法9条1号にいう「平均的な損害」とは,契約の解除の事由,
時期等により同一の区分に分類される複数の同種の契約の解除に伴い,当該
事業者に生じる損害の額の平均値をいうと解される。
本件互助契約は,一人の消費者と被告aとの間で締結される消費者契約で
あるから,同号にいう平均的な損害の解釈にあたっても,一人の消費者が本
件互助契約を解約することによって被告aに生じる損害を検討する必要があ
る。
(2)本件互助契約は,消費者が将来行う冠婚葬祭に先立って,所定の月掛金を
前払いで積み立てることにより,消費者は冠婚葬祭の施行を受ける権利を取
得し,被告aは,消費者の請求により冠婚葬祭の施行をする義務を負うもの
である。そして,被告aは,会員が上記月掛金を所定の回数支払い終わるか
又は契約金額から支払済み月掛金総額を除いた残額を一括払いすると,当該
会員の請求によって直ちに冠婚葬祭を行う義務を負う。(甲4,5)
そうすると,被告aは,本件互助契約の締結により冠婚葬祭にかかる抽象
的な役務提供義務を負うものの,消費者から請求があってはじめて,当該消
費者のために冠婚葬祭の施行に向けた具体的な施行準備を始めるものといえ
る。
(3)被告aは,本件互助契約の解約により,①会員募集費,②会員管理費,③
物的設備準備費,④逸失利益に相当する損害が生じたと主張する。
アまず,③物的設備準備費についてみると,被告aは本件互助契約を締結
した会員以外の顧客との間でも冠婚葬祭にかかる役務提供契約を締結して
おり,被告aが主張する不動産や動産等は,本件互助契約を解約した一人
の消費者のためのみならず,その他の会員や会員以外の顧客に対しても提
供されるため,上記不動産等の管理等にかかる費用は上記消費者が解約し
たか否かにかかわらず生じるものであるといえそうである。
また,被告aの主張する①会員募集費及び②会員管理費のうち,訪問販
売員に対して支払う基本給及び会員管理用コンピュータ導入費,同維持管
理費についても,不特定多数の消費者との関係での被告aの業務維持及び
販売促進のための費用であり,一人の消費者による契約の解約にかかわら
ず常に生じるものといえそうである。
よって,上記各費用が一人の消費者が解約したことによって生じるとい
う個別的な因果関係があるとはいえないため,消費者契約法9条1項の平
均的な損害には含まれないとも考えられる。
イ次に,④逸失利益については,上記⑵のとおり,被告aは会員の請求が
あってはじめて当該会員のための冠婚葬祭に向けた具体的準備を始めるこ
と,また,被告aの冠婚葬祭の施行を受けるのは月掛金を支払った会員に
限定されないことからすれば,上記の具体的準備を始める前に本件互助契
約を解約する会員がいても他の消費者を勧誘することで解約にかかる契約
分の利益を図ることができるといえそうである。よって,当該消費者によ
る冠婚葬祭の施行に関する収入は被告aが合理的に期待しうる収入という
ことはできず,消費者契約法9条1号にいう平均的な損害には含まれない
とも考えられる。
ウその他の費用については,一人の消費者が解約したことによって生じる
個別的な損害であって,平均的な損害には含まれると考えられる。
また,会員による冠婚葬祭の施行の請求があった後については,他の消
費者を勧誘することで解約にかかる契約分の利益を図ることができるとは
いえず,現実に儀式を施行しなかったために免れた実費を除いて平均的な
損害に当たるといえる。
(4)被告aは,冠婚葬祭互助契約については,一人が抜ければ他の人を勧誘し
て役務提供をすればよいという軽々しいものではなく,本件互助契約上の募
集,儀式施行のための支出費用に代替性はなく,上記⑶ア,イ記載の費用で
あっても,消費者契約法9条1号にいう平均的な損害に含まれる旨主張する。
ア葬儀場は,誰にでも1回だけ利用の必要があるが,同一人につき複数回
利用されることはなく,また,高額の資金を要するといえるため,必要な
資金を,個々人で負担するのではなく,多数人が少額ずつを,一括でなく
延払いで積み立てていくというのは合理的であり,その仕組みを互助会と
いう形式で運営することにも一定の合理性がある。
そして,契約締結に至った人にかかった費用も,勧誘はしたが契約締結
に至らなった人にかかった費用も,最終的には,契約締結をしたうえ解約
せずに最終的に儀式を施行した人から得られる事業収入から経費を控除し
た利益でまかなわなければ,企業経営として成り立たないはずである。そ
のような仕組みで,一部の者が月掛けを止めると,全体の資金が不足し,
運営ができなくなるから,月掛けを止めさせないのが望ましいが,そうで
なくとも,月掛けを止める際には,その仕組みにマイナスとならないよう
にさせることにも一定の合理性があるといえる。
もとより,本件互助契約の会員は閉じられた会員ではなく,新規に獲得
が可能であるという面はあるが,被告aの各コースの月掛金額からすると,
資金に余裕のある層を顧客としているのではなく,資金に余裕のない層を
顧客としているとみられ,葬儀用として積み立てておく方法をとらなけれ
ば,貯蓄として残らず他の用途に費消されてしまうとみるのが一般的であ
ろう。すなわち,本件互助契約の会員は,月掛方式をとることを勧誘して
漸く顧客となった者が多いものと思われる。月掛方式をとるには,かなり
コストがかかり,結局は,最終的に儀式を施行した人から得られる事業収
入によってまかなわれるところ,解約した人にかかったコストも,勧誘は
したが契約締結に至らなった人にかかったコストと同様,すべて最終的に
儀式を施行した人から得られる事業収入から負担することとするなら,そ
の分儀式を施行する代金が高額になるということになろう。営業というも
のが,一般的にそういう面を持つことは確かであるが,本件互助契約の会
員層を考えたときの妥当性が問題である。
イまた,葬儀の場合,役務提供の具体的日時が決まるのは,会員が死亡し
た後であり,長期的には予定の立たないものである。したがって,会員の
死亡よりも前の段階で解約しても,具体的に特定した会場や設備が使用で
きなくなる損害は発生しないといえるものの,特定しない分,一定の確率
で常に需要が生じるという関係にあるから,契約時に具体的な日時が特定
する性質の会場や設備よりは,会員の死亡により特定した具体的な利用に
かかるコストは割高になるはずである。また,葬儀の場合,具体的日時が
決まったらすぐに寝台車,棺,枕飾り,霊安室といった設備が必要となり,
葬儀自体も数日内に施行されるのが通常であるから,時間的余裕がないと
いう特性がある。この点からも,本件互助契約を解約する人がいたときに,
その人にかかったコストを最終的に儀式を施行した人から得られる事業収
入によってまかなうことの妥当性が問題となる。
ウ以上のような本件互助契約の特殊性を考慮することが相当といえるなら,
上記被告aの主張にも理由があるといえる。
(5)上記⑷の点をふまえて,被告aが本件互助契約の解約により生ずると主張
する損害の内容を検討する。
ア前記第2の2⑵における被告aの主張をみるに,会員募集費,会員管理
費,物的設備準備費の積算を損益計算書記載の包括的な項目を根拠にして
しか主張できなかったり,PコースとRコースとでは20万円も月掛金総
額が違うのに,葬儀施行原価の違いは祭壇についての1万8000円余の
違いだけであるという結果であったり,その結果Rコースでは葬儀を施行
した場合に赤字となる計算であったりなど,各コース別に十分な原価計算
が行われていないか,行われているとすれば別の情報を開示していないか
であることになる。したがって,被告aが主張する会員募集費,会員管理
費,物的設備準備費,逸失利益の金額をそのまま採用するのは,必ずしも
合理的とはいえない。
イそこでさらに検討するに,証拠(乙20~23,32)によれば,第4
2期(平成19年8月1日から平成20年7月31日まで)の事業収入が
381億6991万1000円で,葬儀の施行件数が会員の1万1701
件と会員以外の1542件(自治体や警察の依頼による141件を除
く。)を併せた1万3243件で,他に婚礼の施行もあるところ,平成2
1年8月1日から平成22年7月31日までの期間では,婚礼が966件
で,葬儀は1万4259件(自治体や警察の依頼によるものを含む。)施
行されたことが認められる。同期間の婚礼は葬儀の10分の1以下の件数
であり,この割合が第42期も同程度であるとし,婚礼の方が葬儀よりも
費用を要するとしても,第42期の事業収入中少なくとも300億円は葬
儀によるものとみられ,それを施行件数である1万3243件で割ると1
件当たり220万円以上となっていることがわかる。
これは,Rコースの30万円はもとより,Pコースの50万円やTコー
スの10~70万円という月掛金総額の何倍もの金額であり,1人で複数
口積み立てている者がいることを考慮しても,被告aの葬儀が各コースの
セット金額以外に何倍もの追加代金をとって収入としていることが強く窺
われる。
第42期の施行費(乙23)でみても,260億2663万2760円
のうち婚礼分を除いた葬儀の分が200億円として,1万3243件で割
ると1件当たり150万円程度となり,被告a主張の葬儀施行の費用であ
るPコースの14万3134円,Rコースの12万4833円の何倍にも
なっており,収入に対応しているといえる。
以上の点からすると,被告aの主たる収入源は,本件互助契約の月掛金
総額ではなく,実際に葬儀が施行される際の追加代金によっていることが
強く窺われる。そうすると,結局は本件互助契約の会員募集,会員管理,
物的設備準備といった作業も,葬儀が施行される際の追加役務の注文獲得
を主たる目的に行われる営業活動の一環と位置づけるのが合理的であると
もいえる。
そうなると,a解約手数料の定めも,将来の葬儀施行時の注文を減らさ
ないようにするためにできるだけ解約を阻止しようとする目的で,割高に
定められている可能性が窺えてくるところである。
(6)上記⑸の点からすると,上記⑷記載の本件互助契約の特殊性を考慮するの
は相当とはいえず,上記⑶の観点から消費者契約法9条1号にいう平均的な
損害について判断すれば足りるといえる。
ア消費者と契約を締結したことにより訪問販売員に対して支払われる出来
高給については,一人の消費者による契約解約と個別の因果関係が認めら
れるため,平均的な損害に含まれうる。そこで,前記第2の2⑵における
被告aの主張イ(エ)bををふまえ,代理店に支払われた支払手数料からこ
れを算出することが考えられるが,本件互助契約の関係では,代理店に支
払われた手数料は契約の中途解約により返金されることからすれば,上記
手数料は平均的な損害の認定に際し算入することはできない。なお,被告
aが主張する代理店廃業や経済的援助による不返還の点は,解約をした一
人の消費者との間での損害であるとはいえない。
イ上記⑶ア,イ及び上記ア記載の各費用以外の費用については,一人の消
費者が契約し解約することがなければ被告aが支出することがなかった費
用といえるのであるから,平均的な損害に含まれうる。しかしながら,上
記各費用の算定につき,被告aは,契約締結に至らなかった者に対する費
用を含む損益計算書をもとに契約口数で割るという算定方法を採っており,
契約締結に至らなかった者の数が想定できない以上,この算定方法をもっ
て会員募集費,会員管理費を認定することはできない。
その他に被告aが具体的に主張するものとして,月掛金の振替費用額は
約58円,自動振替システム利用料は月15円,外交員の集金手当は月8
0円から120円であるというものがあり,その仕組みは必ずしも明らか
でないものの,本件互助契約締結時の支払を除き月掛金を1回支払う毎に
一定の費用を被告aが負担するものと考えられ,原告もそのような費用が
発生すること自体は積極的に争っておらず,また,被告aが会員から少額
の月掛金を100回又は200回という多数回徴収していることからすれ
ば,その月掛金を外交員の集金により徴収することが被告aにおいて通常
の方法であるとは考えにくいため,月掛金の徴収に被告aが通常要する費
用は,平均すると1回当たり58円の振替費用であるとみることができる。
その他にも,入会書類作成,会員情報システム登録,加入者証作成などの
実費もかかると考えられるが,これらは本件互助契約毎に1回だけかかる
費用であり,証拠(甲A4,甲B1,2,E1,F2,G2,H2)によ
れば,本件互助契約においては,入会金として500円が被告aに支払わ
れていると推認でき,この入会金をもって上記実費程度はまかなわれてい
るとみることができる。被告aは,この入会金を親睦会費等であると主張
するが,上記各証拠に「入会金」と明記してあることからすれば,この費
用を親睦会等のためだけに使用できる費用と解することは困難である。
そうすると,月掛金を1回振替える毎に被告aが負担した58円の振替
費用をもって,消費者契約法9条1号の平均的な損害に当たるということ
ができる。
ウ次に,会員により冠婚葬祭の施行の請求があった場合には,被告aは,
冠婚葬祭に向けて当該会員のために会場を排他的に確保するなどの具体的
な準備を始めることになり,特に会員による施行の請求と施行日との間隔
が一般的に短いといえる葬儀の場合には,他の消費者の勧誘による代替利
益の確保はほぼ不可能に近いといえるから,消費者が上記施行の請求をし
た後に解約する場合は,その施行を前提にした収入は被告aにとって合理
的に期待しうる収入といえ,消費者契約法9条1号の平均的な損害に含ま
れ,その金額は,現実に儀式を施行しなかったために免れた実費を除いて
も,明らかにa解約手数料を超えているとみるのが合理的である(なお,
婚礼については例外的な場合もあろうが,限られた場合であろうし,その
場合を示す具体的な証拠もない。)。
(7)被告aは,本件約款が全互協の標準約款に則っており,当該標準約款は監
督官庁の監督下で長年にわたり適正なものとして運用されてきたことをもっ
て,本件約款の適法性を主張する。
証拠(乙16)によれば,上記標準約款は,募集に関わる費用のうち募集
人件費,会員管理に関わる費用のうち集金・集金管理人人件費を考慮し,昭
和58年当時の標準的な契約金額が12万円であるとの実態調査の結果を踏
まえて行政機関と協議した結果決定したものと認められる。
業界団体が作成した標準約款については,その内容が合理的である場合に
は平均的損害の算定にあたって考慮する余地もあるものの,上記⑶アのとお
り,人件費のうち,不特定多数の消費者との関係での費用で一人の消費者に
よる契約の解約にかかわらず常に生じるものはそもそも平均的な損害に含ま
れないというべきであるし,契約金額から解約手数料を算定するに至った根
拠について具体的に明らかとなっていない上記標準約款をもって直ちに合理
的な規定として考慮することはできない。
よって,被告aの上記主張は認められない。
(8)以上によれば,本件互助契約に関して消費者から冠婚葬祭の施行の請求が
あるまでにされた解約によって,月掛金を1回振替える毎に被告aが負担し
た58円の振替費用をもって被告aに損害が生じているというべきであり,
上記の限度で,a解約手数料を定めるa解約金条項は,消費者契約法9条1
号により無効である。
3争点⑶について
(1)本件積立契約は,被告bが企画した国内旅行や特別企画旅行,被告bが指
定した式場で挙式・披露宴を申し込んだ場合の指定ハネムーン旅行や指定の
冠婚葬祭施行時の送迎バス・タクシー・ハイヤーに利用できるb利用券を代
金分割払方式により取得する契約である(甲9)。
また,加入者は,本件積立契約に基づき1年間継続して支払金を入金した
場合には,「bクラブ正会員」となり,被告bが企画する特別安価な旅行プ
ラン及び人間ドックの案内,紹介を受けることができる(甲9)。
そうすると,本件積立契約は,被告aの互助契約と連携しているようにも
みえるが,結局は旅行,交通,医療という一般的な役務の利用にすぎないと
いえる。
(2)被告bが主張する,会員募集費,会員管理費のうち,訪問販売員に対して
支払う基本給,会員管理用コンピュータ導入費,同維持管理費については,
不特定多数の消費者との関係での被告bの業務維持及び販売促進のための費
用であり,一人の消費者による契約の解約にかかわらず常に生じるものとい
えるため,平均的な損害には含まれない。
(3)また,「bクラブ正会員」により顧客が得ることのできる利益は必ずしも
明らかではないが,仮に被告bが主張するような内容の案内,紹介であると
しても,それらに通常要する費用として考えられるのは,上記案内,紹介に
かかる事務手数料であり,健康診断における管理費等は一人の会員が本件積
立契約を解約するか否かにかかわらず生じるものであり,個別の消費者との
関係で因果関係を有するものとはいえない。
(4)その他の費用については,当該一人の消費者が契約し,又は当該契約を解
約することがなければ被告bが支出することがなかった費用といえるのであ
るから,平均的な損害に含まれうる。しかしながら,被告bは上記費用の算
定につき,損益計算書記載の額をbクラブの1年間の入会総本数で割る算定
方法を採っており,契約締結に至らなかった者の数が想定できない以上,こ
の算定方法をもって会員募集費及び会員管理費を認定することはできない。
被告bは,積立金の振替費用額は約58円,自動振替システム利用料は月
15円,外交員の集金手当は月80円から120円であると主張するが,証
拠(甲9)によれば本件積立契約においては事務手数料として月額150円
が被告bに支払われていることが認められ,上記事務手数料をもって上記費
用はまかなわれているとみるべきである(甲9によれば,本件互助契約Pコ
ース,Rコースの会員は事務手数料を免除されていると認められるが,その
場合は前記2⑹イ記載の被告aの平均的損害でまかなわれているといえる)。
(5)以上によれば,解約手数料を徴収すると定めるb解約金条項は,消費者契
約法9条1号により無効である。
4結論
そうすると,甲事件原告の被告aに対する主位的及び予備的請求は,消費者
が被告aに対し冠婚葬祭の施行を請求する前の解約の場合に,58円に第1回
目を除く払込の回数を掛けた金額を超える解約金を差し引いて消費者に対し返
金する旨を内容とする限度での差止めに理由があるから認容し,その余は理由
がないから棄却し,甲事件原告の被告bに対する主位的請求は理由があるから
認容する。
また,乙・丙・丁事件原告らの請求は,同原告らが被告aに対し冠婚葬祭の
施行を請求する前にしたものであり,58円に第1回目を除く払込の回数を掛
けた金額を差し引いた金額及びこれに対する遅延損害金の支払を求める範囲で
理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却する。
京都地方裁判所第3民事部
裁判長裁判官瀧華聡之
裁判官奥野寿則
裁判官堀田喜公衣

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