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平成14年(行ケ)第556号 審決取消請求事件(平成15年7月9日口頭弁論
終結)
          判          決
       原      告   日本板硝子株式会社
       訴訟代理人弁理士   大   島   正   孝
被      告   特許庁長官 今井康夫
指定代理人   矢   澤   清   純
同          大   野   克   人
同          鹿   股   俊   雄
同          伊   藤   三   男
          主          文
      原告の請求を棄却する。
      訴訟費用は原告の負担とする。
          事実及び理由
第1 請求
   特許庁が不服2001―3355号事件について平成14年9月9日に
  した審決を取り消す。
第2 当事者間に争いのない事実
 1 特許庁における手続の経緯
原告は,平成3年6月13日にした特許出願(特願平3-141699
号)に基づく優先権を主張して平成4年4月22日にした特許出願(特願平4-1
03021号)の一部について,平成10年12月24日,発明の名称を「プラス
チックレンズの干渉縞を防止する方法」として新たに特許出願(特願平10-36
6138号)をしたところ,平成13年2月6日に拒絶査定を受けたので,同年3
月7日,不服審判の請求をし,不服2001-3355号事件として特許庁に係属
した。
特許庁は,同事件について審理した上,平成14年9月9日,「本件審
判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は,同年10月2日,原告
に送達された。
 2 平成13年4月4日付け手続補正書により補正された明細書(甲3,以
下「本件明細書」という。)の特許請求の範囲【請求項1】記載の発明(以下「本
願発明」という。)の要旨
   1.50から1.70の範囲の屈折率nSを有するプラスチックレンズ基
材の表面上に,1.45~1.60の範囲の屈折率nPを有し,かつ
  Al,Ti,Zr,SnおよびSbから選ばれるすくなくとも1種の金属
の酸化物の微粒子を20~60重量%含有するプライマー層と,シリコン系樹脂よ
りなり1.40~1.50の屈折率nHを有するハードコート層と,無機物質の蒸
着による単層または多層の反射防止層をこの順に積層してなるプラスチックレンズ
の前記プライマー層の屈折率nPおよび膜厚dとしてそれぞれ下記条件1および条件
2を満足させることによりプラスチックレンズの干渉縞を防止する方法であって,
前記プライマー層は,
  (1)イソシアネート基をβジケトンでブロックした,芳香環を有しない
ブロック型ポリイソシアネート,
  (2)芳香環を有しないポリエステルポリオール,
  (3)前記金属酸化物微粒子,および
  (4)溶媒
  を含有する塗料を前記レンズ基材に浸せき法により塗布し,その後溶媒を
揮発させながら前記ポリイソシアネートと前記ポリエステルポリオールを反応させ
て得られる熱硬化性ポリウレタンの耐衝撃性のプライマー層であることを特徴とす
る,プラスチックレンズに28.20g以上の耐衝撃性を有せしめつつプラスチッ
クレンズの干渉縞を防止する方法。
  条件1 プライマー層の屈折率nPが,
  【数1】(nS・nH)1/2
+|nS-nH|/4≧nP
            ≧(nS・nH)1/2
-|nS-nH|/4
  (nSはプラスチックレンズ基材の屈折率,nHはハードコート層の屈折 
率)で表わされる式を満足すること。
  条件2 プライマー層の膜厚dが,
    d=λ/4nP
   (λは可視光の波長で450~650nmの範囲のいずれかの値)
  で表わされる式を満足すること。
 3 審決の理由
   審決は,別添審決謄本写し記載のとおり,本願発明は,特開平1-21
7402号公報(甲4,以下「引用例1」という。)及び特開平3-109502
号公報(甲5,以下「引用例2」という。)に基づいて当業者が容易に発明をする
ことができたものであるから,特許法29条2項により特許を受けることができな
いとした。
第3 原告主張の審決取消事由
   審決は,本願発明と引用例1に記載された発明(以下「引用例発明1」
という。)との一致点の認定を誤り(取消事由1),相違点(1),(2)及び(4)につい
ての判断を誤った(取消事由2~4)結果,本願発明の容易想到性を誤って肯定し
たものであるから,違法として取り消されるべきである。
   1 取消事由1(一致点の認定の誤り)
 審決は,本願発明と引用例発明1との対比において,本願発明の条件1
及び2を一致点として認定しているが,誤りである。すなわち,条件1は,本願発
明では,上記第2の2の【数1】のとおり,
    (nS・nH)1/2
+|nS-nH|/4≧nP
     ≧(nS・nH)1/2
-|nS-nH|/4
であるのに対し,引用例1ではnP=(nS・nH)1/2
であるから,本願発
明の条件1の左辺と右辺における「|nS-nH|/4」は引用例1には開示されて
いない。したがって,本願発明と引用例発明1とが条件1で一致するのは,プライ
マー層の屈折率nP が引用例1に記載された条件と同じ
nP=(nS・nH)1/2
を満足することである。また,条件2は,引用例発
明1ではλが450~600nmの波長の範囲であり,本願発明ではλが450~
650nmの波長の範囲であるから,本願発明と引用例発明1とが条件2で一致す
るのは,プライマー層の膜厚d=λ/4nPのλが450~600nmの波長範囲
に限定されることは明らかである。
   2 取消事由2(相違点(1)の判断の誤り)
(1) 審決は,本願発明と引用例発明1との相違点(1)として,「熱硬化性
ポリウレタンの製造に使用される芳香環を有しないポリイソシアネートが,本願発
明は『イソシアネート基をβ-ジケトン(注,「β?ジケトン」とあるのは誤記と
認める。)でブロックしたブロック型ポリイソシアネート』であるのに対して,引
用例1には,芳香環を有しないポリイソシアネートとしてブロック型ポリイソシア
ネートを使用する記載がない点」(審決謄本7頁<相違点(1)>)を認定した上,同
相違点について,「引用例1の『熱硬化性ポリウレタンの製造に使用される芳香環
を有しないポリイソシアネート』を,常温でのポットライフが非常に長いものとす
るために,イソシアネート基をβ-ジケトンでブロックした芳香環を有しないブロ
ック型ポリイソシアネートに換えて使用することは当業者にとって格別の困難性は
ない」(同8頁第2段落)と判断したが,誤りである。
(2) 引用例2には,ブロック型ポリイソシアネートは常温でのポットライ
フが長いこと及びアセト酢酸等のβ-ジケトンでブロックしたものがその一つの例
として開示されているが,ブロック型ポリイソシアネートとしてβ-ジケトンでブ
ロックしたブロック型ポリイソシアネートが,その他のブロック型ポリイソシアネ
ートに比しプライマー層の白化防止効果を有することは,何ら記載されていない。
本件特許出願の願書に最初に添付した明細書(甲2,以下「当初明細書」とい
う。)の実施例1~8には,本願発明のプライマー層を有するプラスチックレンズ
が良好な外観,すなわち,暗室においてレンズに蛍光灯の光を当てて目視で透明度
を観察したときに透明性が良好であることが開示されており(段落【0037】及
び【表2】),β-ジケトンでブロックしたブロック型ポリイソシアネートを用い
た本願発明のプラスチックレンズでは,プライマー層の白化がなく,良好な透明性
を示している。これに対し,引用例2に開示された,オキシムでブロックされたブ
ロック型ポリイソシアネートあるいはカプロラクタムでブロック化されたブロック
型ポリイソシアネートでは,プライマー層は白化し,白化したプラスチッ
クレンズが得られることは,平成13年4月4日付け手続補正書(方式)(甲6)
添付の実験成績証明書(以下「甲6の実験成績証明書」という。)から明らかであ
る。このように,引用例2は,β-ジケトンでブロックした芳香環を有しないブロ
ック型ポリイソシアネートを使用することにより,白化を防止して透明性の良好な
プラスチックレンズが得られることを示唆するところがないから,引用例1の芳香
環ポリイソシアネートに換えて,良好な透明性を有するプラスチックレンズを得る
ために,β-ジケトンでブロックしたブロック型ポリイソシアネートを使用するこ
とは,当業者にとって容易想到であるとはいえない。
(3) 当初明細書(甲2)に記載の実施例2,3及び甲6の実験成績証明書
の比較例Aは,いずれもオキシムによってブロックしたブロック型ポリイソシアネ
ートを用いており,実施例2,3ではプライマー塗布後の加熱硬化を120℃で,
比較例Aではこの加熱硬化を90℃と100℃で行った結果,実施例2,3では白
化がなく良好な透明性が得られたのに対し,比較例Aではプライマー層が白化した
プラスチックレンズが得られたところ,後者の結果は,プライマー塗布後の加熱硬
化の温度の違いが大きく影響している。甲6の実験成績証明書は,被告が主張する
ように当初明細書の記載と矛盾するものではない。また,甲6の比較例Aにおける
加熱硬化の温度90℃は,当初明細書に記載の実施例1,4~8における加熱硬化
の温度90℃と同じであるから,同じ加熱硬化温度において比較すれば,β-ジケ
トンでブロックしたブロック型ポリイソシアネートを用いた本願発明のプラスチッ
クレンズは白化がなく(実施例1,4~8),オキシムでブロックしたブロック型
ポリイソシアネートを用いた引用例2のプラスチックレンズ(甲6の比較例A)は
白化するということができる。耐熱性がそれほど良くないプラスチッ
クレンズ基材,例えばガラス転移温度が110℃以下の基材にもプライマー層を設
けるにはプラスチックレンズ基材の熱変形を防止するために,プライマー組成物塗
布後の加熱温度を90~100℃と低くできることは望ましいことである。本願発
明によれば,β-ジケトンでブロックしたブロック型ポリイソシアネートを使用す
ることにより,耐熱性がさほど良くないプラスチックレンズ基材にも,白化を生じ
させることなく,干渉縞が見えず耐衝撃性,耐摩耗性を付与することができ,この
白化防止効果は明らかに本願発明の効果の一つであるから,このような効果を示唆
していない引用例2から当業者が本願発明を容易に想到することはできない。
   3 取消事由3(相違点(2)の判断の誤り)
(1) 審決は,本願発明と引用例発明1との相違点(2)として,「熱硬化性
ポリウレタンのプライマー層が,本願発明は耐衝撃性であり,かつ,本願発明は
『プラスチックレンズに28.20g以上の耐衝撃性を有せしめつつプラスチック
レンズの干渉縞を防止する方法』であるのに対して,引用例1の熱硬化性ポリウレ
タンのプライマー層は耐衝撃性であるかどうか明確でなく,かつ,引用例1の『プ
ラスチックレンズの干渉縞を防止する方法』が『プラスチックレンズに28.20
g以上の耐衝撃性を有せしめつつプラスチックレンズの干渉縞を防止する方法』で
あるのかどうか明確でない点」(審決謄本7頁<相違点(2)>)を認定した上,同相
違点は,「引用例2の記載に基づいて当業者が容易になし得ることである」(同9
頁第1段落)と判断したが,誤りである。
(2) 本願発明は,プライマー層の熱硬化性ポリウレタンに,「Al,T
i,Zr,SnおよびSbから選ばれるすくなくとも1種の金属の酸化物の微粒子
を20~60重量%を含有」(特許請求の範囲【請求項1】)させ,該微粒子によ
ってプライマー層の屈折率を制御してプラスチックレンズの干渉縞を防止し,耐衝
撃性を向上させるものである。これに対し,引用例2は,熱硬化性ポリウレタンか
らなるプライマー層を設けたプラスチックレンズが28.20g以上の耐衝撃性を
示すことを開示するのみで,プラスチックレンズの干渉縞を防止するという課題
も,それを金属酸化物微粒子の添加によって解決する手段も何ら記載していないか
ら,熱硬化性ポリウレタン中に金属酸化物微粒子を20~60重量%添加すること
によって,耐衝撃性の向上とともに干渉縞を防止できることを示唆するものではな
い。引用例1には,金属酸化物の微粒子の添加によって干渉縞の防止を図れること
は記載されていないから,上記相違点について引用例2に基づく容易想到性を肯定
した審決の判断は,誤りである。
   4 取消事由4(相違点(4)の判断の誤り)
  (1) 審決は,本願発明と引用例発明1との相違点(4)として,「前記プラ
イマー層に含有されるSb金属の酸化物微粒子が,本願発明では20~60重量%
含有されるのに対して,引用例1には含有重量%について具体的に記載されていな
い点」(審決謄本7頁<相違点(4)>)を認定した上,同相違点について,「プライ
マー層に含有させるSb金属の酸化物微粒子について,実用的な使用に適する重量
%の上限,下限の範囲を定めることは当業者が容易になし得る技術的事項である」
(同9頁第3段落)と判断し,さらに,その前提として,一致点の認定の箇所にお
いて,「引用例1の実施例7の中間膜用塗布液の含有させる『酸化アンチモンゾ
ル』は,本願発明の『Sb金属の酸化物微粒子』に相当する」(同6頁第5段落)
と判断したが,いずれも誤りである。
(2) 引用例1(甲4)の実施例7に関する記載(9頁右上欄最終段落~右
下欄第2段落)においては,中間膜に酸化アンチモンゾルを含有させることと,中
間膜の屈折率,あるいは得られるプラスチックレンズの干渉縞との関連性について
記載されていない。また,引用例1には,「屈折率調整剤,例えばテトラ-n-ブ
トキシチタンのようなチタンアルコキシド(一般に加水分解して用いる)」(5頁
右上欄第2段落)が用いられることは開示されているが,実施例7の「酸化アンチ
モンゾル」は,チタンアルコキシドではないから,屈折率調整剤として用いられた
ものでない。さらに,実施例7では,「酸化アンチモンゾル」と一緒に「イソプロ
ピルアルコール分散コロイダルシリカ」が用いられている。シリカの屈折率は約
1.4,酸化アンチモンゾルの屈折率は約1.7であるから,中間膜が酸化アンチ
モンゾルを含有することによる屈折率向上効果は,シリカを含有することによって
相殺され,低下する傾向となることが明らかであって,酸化アンチモンゾルの添加
によって中間膜の屈折率を向上させ,それによって干渉縞を防止しようとしたもの
ではない。これに対し,本願発明は,プライマー層の熱硬化性ポリウレ
タン中に「Al,Ti,Zr,SnおよびSbから選ばれるすくなくとも1種の金
属の酸化物の微粒子20~60重量%」を含有させて,プライマー層の屈折率を制
御してプラスチックレンズの干渉縞を防止し,同時にプライマー層の耐衝撃性を向
上させてプラスチックレンズの耐衝撃性を向上させようとするものである。そうす
ると,審決が,実施例7の「酸化アンチモンゾル」は本願発明の「Sb金属の酸化
物微粒子」に相当するとした判断は誤りというべきである。
(3) 特公昭63-37142号公報(乙1)には,引用例1(甲4)に屈
折率調整剤として記載されたテトラ-n-ブトキシチタンのようなチタンアルコキ
シドは記載されておらず,酸化アンチモンが屈折率向上効果を持つことが記載され
ているにすぎないから,乙1は,引用例1に記載された酸化アンチモンが屈折率調
整剤として使用されていることを示唆するものではない。また,引用例1の実施例
7の中間膜用塗布液は,酸化アンチモンゾルを含有し,屈折率1.547(λ=5
10nm)を得ている(9頁左下欄末行)が,実施例1の中間膜用塗布液は,酸化
アンチモンゾルもチタンアルコキシドも含まないのに,同様に屈折率1.547
(λ=510nm)を得ている(7頁左下欄下から第2段落)。そして,引用例1
には,酸化アンチモンゾルと屈折率のみならず,干渉縞との関連性についても何ら
記載されていないから,酸化アンチモンゾルは,中間膜の屈折率を向上させるため
に含有されているとはいえない。
(4) 以上のとおり,引用例1には,プライマー層中に酸化アンチモンを含
有させることによって屈折率を調整できること,干渉縞を防止できることについて
は記載されておらず,また,引用例2にも,プライマー層中にAl,Ti等の金属
の酸化物の微粒子を添加することは何ら記載されていないし,金属酸化物微粒子を
20~60重量%と多量に含有することによって優れた耐衝撃性が得られること
は,何ら示唆するところがない。そうすると,引用例1に引用例2を組み合わせて
も,本願発明の要旨に規定する「プラスチックレンズに28.20g以上の耐衝撃
性を有せしめつつ干渉縞を防止する」作用効果を有する,プライマー層中の金属酸
化物微粒子の含有率を想到することは,当業者にとって容易ということはできな
い。
  第4 被告の反論
     審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がな
    い。
   1 取消事由1(一致点の認定の誤り)について
 本願発明において,条件1と条件2とをそれぞれ満足することという構
成要件は,これらを満足することにより干渉縞をほとんど見えなくするための要件
であり,一方,引用例1に開示された条件1と条件2とに対応する構成も,干渉縞
を解消するための構成であって,しかも,それぞれが本願発明の条件1,2の範囲
内に包含されて条件1,2をそれぞれ満足し,そのことによって干渉縞を解消して
いるものである。したがって,本願発明と引用例発明1とは,本願発明の構成要件
である条件1と条件2とをそれぞれ満足することという点において一致しており,
審決の一致点の認定に誤りはない。
   2 取消事由2(相違点(1)の判断の誤り)について
  (1) 当初明細書(甲2)には,β-ジケトンでブロックしたブロック型ポ
リイソシアネートが,その他のブロック型ポリイソシアネートに比しプライマー層
の白化防止効果を有することについては,何ら記載されていないし,また,本件明
細書(甲3)にも,白化防止については何ら記載するところがない。
  (2) 当初明細書(甲2)に記載された実施例1~8のうち,実施例2,3
は,オキシムでブロックされたブロック型ポリイソシアネートを用いたものであ
り,良好な外観,すなわち,暗室においてレンズに蛍光灯の光を当てて目視で透明
度を観察したときに透明性が良好であることが【表2】により開示されており,比
較例1~3も同様である。そうすると,オキシムでブロックしたブロック型ポリイ
ソシアネートを用いたプラスチックレンズも,プライマー層の白化がなく,良好な
透明性を示していることになり,甲6の実験成績証明書における結論とは矛盾する
から,β-ジケトンでブロックしたブロック型ポリイソシアネートを使用すること
によるプライマー層の白化防止効果は,本願発明の効果として主張することはでき
ない。
(3) 引用例2(甲5)には,ブロック型ポリイソシアネートの例として,
「アセト酢酸,マロン酸,メチルエチルケトオキシム等でブロックしたもの」(3
頁左上欄第1段落)と記載されており,これに接した当業者は,例えば,「アセト
酢酸エステル(アセト酢酸エチルなど),マロン酸ジエステルのようなβ-ジケト
ン,メチルエチルケトオキシムなどのオキシム等でブロックしたもの」(例えば,
特開平1-266172号公報〔乙2〕2頁右下欄第3段落)と理解することがで
きる。したがって,引用例2にはβ-ジケトンでブロックしたブロック型ポリイソ
シアネートが開示されていることを前提として,引用例1の「熱硬化性ポリウレタ
ンの製造に使用される芳香環を有しないポリイソシアネート」を,イソシアネート
基をβ-ジケトンでブロックした芳香環を有しないブロック型ポリイソシアネート
に換えて使用することの容易想到性を肯定した審決の相違点(1)の判断に誤りはな
い。
   3 取消事由3(相違点(2)の判断の誤り)について
 プラスチックレンズの干渉縞を防止すること,プライマー層中に金属酸
化物微粒子を含有させること等は,引用例1に記載されており,引用例1及び引用
例2は,ともにレンズ基材表面にプライマー層とハードコート層を積層して成るプ
ラスチックレンズであることからすれば,引用例1に記載の技術と,引用例2に記
載の熱硬化性ポリウレタンから成るプライマー層を設けることによりプラスチック
レンズの耐衝撃性を向上させる技術とを組み合わせることには,特に困難性はな
い。本願発明による干渉縞防止と耐衝撃性の効果は,引用例発明1及び引用例2に
記載された発明(以下「引用例発明2」という。)のそれぞれの技術による効果が
ともに発揮されているにすぎない。
   4 取消事由4(相違点(4)の判断の誤り)について
(1) 引用例1(甲4)には,「合成樹脂レンズ基板上に中間膜を形成する
に当たっては,上記のような有機物質の1種以上の他に,屈折率調整剤,例えばテ
トラ-n-ブトキシチタンのようなチタンアルコキシド(一般に加水分解して用い
る),溶媒,界面活性剤,硬化剤等を混合し,これを前記の式②(注,t=λ/4
×Ni[tは膜厚,Nfはシリコーン樹脂を主成分とする硬化膜の屈折率,λは45
0~600nm])から算出される膜厚tとなるように塗布する」(5頁右上欄第
2段落)と記載されており,中間膜に屈折率調整剤を混合することが開示されてい
る。引用例1の実施例7では,酸化アンチモンゾルは高屈折率のものであるから,
屈折率調整剤として混合されていると考えるのが相当である。酸化アンチモンゾル
は,中間膜の屈折率を向上させるよう調整するために含有されているものであり,
そのことにより干渉縞を解消するものであることは,引用例1の第1表(10頁右
上欄)の記載からも明らかであって,酸化アンチモンの屈折率向上効果は周知の事
項である。
(2) また,プライマー層に熱硬化性ポリウレタンを用いることによって,
優れた耐衝撃性が得られることは,引用例2に記載されている。引用例1にはプラ
イマー層中に酸化アンチモンゾル,すなわち,Sb金属の酸化物微粒子が添加され
ていることで,屈折率が向上し干渉縞の防止がされることが記載されているから,
引用例2に記載されている熱硬化性ポリウレタンから成るプライマー層を設けるこ
とによりプラスチックレンズの耐衝撃性を向上させる技術においても,干渉縞を防
止するためのプライマー層の適切な屈折率を得るために,プライマー層に例えばS
b金属の酸化物微粒子のような屈折率調整剤の適当量を添加するようにすること
は,当業者が適宜し得ることであり,プライマー層中に金属酸化物の微粒子を20
~60重量%添加することは,適切な屈折率を得るための適当量として実験的に定
めることができる程度のことである。
第5 当裁判所の判断
   1 取消事由1(一致点の認定の誤り)について
 原告は,本願発明と引用例発明1との一致点は,
 条件1 nP=(nS・nH)1/2
 条件2 d=λ/4nP(λは可視光の波長で450~600nmの範
囲のいずれかの値)
であると主張するが,引用例発明1における上記条件1及び条件2が,本
願発明の条件1及び条件2に包含されることは明らかであるから,審決が一致点と
して本願発明の条件1及び条件2を認定したことに誤りはなく,原告の取消事由1
の主張は理由がない。
   2 取消事由2(相違点(1)の判断の誤り)について
(1) 原告は,引用例2には,ブロック型ポリイソシアネートは常温でのポ
ットライフが長いこと及びアセト酢酸等のβ-ジケトンでブロックしたものがその
一つの例として開示されているが,ブロック型ポリイソシアネートとしてβ-ジケ
トンでブロックしたブロック型ポリイソシアネートがその他のブロック型ポリイソ
シアネートに比しプライマー層の白化防止効果を有することは記載されていないか
ら,引用例1の芳香環を有しないポリイソシアネートに換えて,良好な透明性を有
するプラスチックレンズを得るために,β-ジケトンでブロックしたブロック型ポ
リイソシアネートを使用することは,当業者にとって容易想到であるとはいえない
と主張する。
(2) しかしながら,引用例発明1と引用例発明2とは,芳香環を有しない
ブロック型ポリイソシアネートと,芳香環を有しないポリエステルポリオールとを
反応させて得られる熱硬化性ポリウレタンのプライマー層を有するプラスチックレ
ンズに関する発明である点で共通している。加えて,引用例2(甲5)の「本発明
は,耐摩耗性,耐衝撃性,反射防止性,耐候性,耐薬品性,被覆膜の付着性の優れ
たプラスチックレンズの製造法に関する」(1頁右下欄[産業上の利用分野]),
「ポリイソシアネートにはブロック型と非ブロック型があるが,本発明ではブロッ
ク型に限定される。・・・このブロック型に限定される理由は,非ブロック型ポリ
イソシアネートを用いるとポリオールの活性水素とイソシアネート基の反応が常温
で進行するため,塗料のポットライフが非常に短くなってしまうためである。これ
に対してブロック型ポリイソシアネートは,加熱してブロッキング剤が遊離するこ
とにより初めて活性水素と反応し得るため,常温でのポットライフは非常に長い」
(2頁右下欄第1段落)との記載にかんがみると,引用例発明2の課題である,常
温でのポットライフを長くすることは,引用例発明1においても必要
な課題であると認められるから,プライマー層の白化防止という課題の有無にかか
わらず,引用例1の芳香環を有しないポリイソシアネートに換えて,引用例2に開
示されていることに当事者間で争いのないβ-ジケトンでブロックした芳香環を有
しないブロック型ポリイソシアネートとすることに格別の困難性があるということ
はできない。
(3) また,原告の主張するプライマー層の白化防止効果について検討する
に,その主張するところは,甲6の実験成績証明書において,オキシムによってブ
ロックしたブロック型ポリイソシアネートを用いて,プライマー塗布後の加熱硬化
を90℃又は100℃とすると,同一の加熱硬化温度のβ-ジケトンでブロックし
たブロック型ポリイソシアネートを用いたプライマー層を有するものと比較して,
白化したプラスチックレンズが得られた,β-ジケトンでブロックしたブロック型
ポリイソシアネートを使用することにより,耐熱性がさほど良くないプラスチック
レンズ基材にも,白化しないプライマー層が形成できる,というものである。しか
しながら,当初明細書(甲2)の実施例1,2及び【表2】には,オキシムによっ
てブロックしたブロック型ポリイソシアネートを用いても,プライマー塗布後の加
熱硬化温度を120℃とすると,外観は良好であり,プライマー層は白化しないこ
とが記載され,同記載によれば,プライマー塗布後の加熱硬化温度が特定されてい
ない本願発明は120℃で硬化するものを含むから,β-ジケトンでブロックした
ブロック型ポリイソシアネートを使用することにより白化防止効果が
あるいうことはできない。また,加熱硬化温度が特定されていなくても,プラスチ
ックレンズ基材のガラス転移温度が規定されていれば,加熱硬化はそれ以下の温度
で行うことは自明であるから,β-ジケトンでブロックしたブロック型ポリイソシ
アネートを使用すると白化防止効果があるともいえるが,本願発明は,プラスチッ
クレンズ基材のガラス転移温度も規定されていないから,上記効果の主張はできな
い。
(4) したがって,原告の取消事由2の主張は,採用することができない。
   3 取消事由3(相違点(2)の判断の誤り)について
(1) 原告は,本願発明は,熱硬化性ポリウレタンに金属酸化物の微粒子を
含有させることによってプライマー層の屈折率を制御してプラスチックレンズの干
渉縞を防止し,耐衝撃性を向上させるものであるが,引用例2は,熱硬化性ポリウ
レタンから成るプライマー層を設けたプラスチックレンズが28.20g以上の耐
衝撃性を示すことを開示するのみで,干渉縞を防止するという課題も,それを金属
酸化物微粒子の添加によって解決する手段も何ら記載されていないから,相違点(2)
について引用例2に基づく容易想到性を肯定した審決の判断は誤りであると主張す
る。
(2) しかしながら,引用例2(甲5)には,[発明が解決しようとする課
題]中に,「熱可塑性のポリウレタン層では,耐衝撃性は米国のFDA規格は満足
するものの,それ以上の衝撃については必ずしも強いとは言えない」(2頁右上欄
第2段落)と記載され,[課題を解決するための手段]中に,「プラスチックレン
ズ基材表面上に熱硬化性ポリウレタンから成るプライマー層を設け,・・・熱可塑
性のポリウレタン層を有するレンズよりも耐衝撃性に優れ」(同欄第3段落)てい
ることが記載されている。このように,引用例2に,米国FDA規格に耐衝撃性の
項目があることが記載されていることからも,プラスチックレンズは耐衝撃性に優
れている必要があることは当然であり,引用例2には,熱硬化性ポリウレタンが熱
可塑性のポリウレタン層よりも耐衝撃性に優れていることが記載されているとこ
ろ,引用例発明1のプライマー層は熱硬化性ポリウレタンから成ることが記載され
ているのであるから,引用例発明1のプラスチックレンズは,干渉縞の防止ととも
に耐衝撃性を考慮したものであることは明らかである。また,本願発明の要旨に規
定する耐衝撃性の数値「28.20g以上」に臨界的な意義があるとは
認められないから,引用例2には耐衝撃性の数値28.20g以上のプラスチック
レンズが開示されていると認めて妨げはなく,引用例発明1に引用例発明2を適用
することに格別の困難性がないことは前示のとおりである。そうすると,引用例1
のプラスチックレンズに28.20g以上の耐衝撃性を持たせることは,引用例2
の記載に基づいて当業者が容易に想到し得るとした審決の判断に誤りはないという
べきである。
(3) 原告は,本願発明において,熱硬化性ポリウレタンに金属酸化物の微
粒子を含有させることが,干渉縞の防止と耐衝撃性を向上させることに関係がある
かのような主張もするが,本件明細書の特許請求の範囲【請求項1】には,プライ
マー層に金属酸化物微粒子を含有することが記載されているにとどまり,上記主張
に係る事項は何ら記載されていない上,その主張を前提にするとしても,引用例1
(甲4)には,実施例7として,酸化アンチモンゾルを含有するプライマー層が開
示されている(9頁左下欄第2段落)のであるから,原告の上記主張は,相違点(2)
の判断を左右するものではない。
(4) したがって,原告の取消事由3の主張は,理由がない。
   4 取消事由4(相違点(4)の判断の誤り)について
(1) 原告は,引用例1の実施例7に記載された酸化アンチモンゾルは,本
願発明のSb金属の酸化物微粒子には相当しないから,これが相当することを前提
として,「プライマー層に含有させるSb金属の酸化物微粒子について,実用的な
使用に適する重量%の上限,下限の範囲を定めることは当業者が容易になし得る技
術的事項である」(審決謄本9頁第3段落)とした審決の判断は誤りであると主張
する。
(2) 原告が,引用例1の実施例7に記載された酸化アンチモンゾルが本願
発明のSb金属の酸化物微粒子には相当しないとする理由は,(ア)引用例1の実
施例7に関する記載においては,中間膜に酸化アンチモンゾルを含有させることと
中間膜の屈折率あるいは得られるプラスチックレンズの干渉縞との関連性について
記載されていないこと,(イ)引用例1には,屈折率調整剤としてチタンアルコキ
シドは例示されているが,酸化アンチモンゾルは,チタンアルコキシドではないこ
と,(ウ)実施例7では,酸化アンチモンゾルと一緒にイソプロピルアルコール分
散コロイダルシリカが用いられており,シリカの屈折率は約1.4であるから,酸
化アンチモンゾルの添加によって中間膜の屈折率を向上させ,それによって干渉縞
を防止しようとしたものではないこと,以上の3点である。そして,酸化アンチモ
ンゾルとはSb金属の酸化物微粒子の懸濁液であるから,原告主張の根拠とすると
ころは,要するに,引用例1の酸化アンチモンゾルは屈折率調整剤ではないという
ことに帰する。
(3) そこで,引用例1の酸化アンチモンゾルが屈折率調整剤であるか否か
について検討するに,引用例1(甲4)には,「屈折率が1.57~1.65の範
囲の合成樹脂レンズ基板の表面にシリコーン樹脂を主成分とする硬化膜と反射防止
膜とが形成された反射防止膜付き合成樹脂レンズにおいて,前記合成樹脂レンズ基
板と前記硬化膜との間に,下記の式①及び②を満足する屈折率Niを有する有機物質
から成る膜厚tの中間膜が設けられていることを特徴とする反射防止膜付き合成樹
脂レンズ。
 Ni=(Nf×NS)1/2
 ・・・①
 t=λ/4×Ni   ・・・②
[ただし,Nfはシリコーン樹脂を主成分とする硬化膜の屈折率,NSは
合成樹脂レンズ基板の屈折率,λは450~600nmである。]」(「特許請求
の範囲」の請求項1),「本発明の目的は,上記従来の合成樹脂レンズの問題点に
鑑み,比較的高い屈折率を有する合成樹脂を用いてレンズ基板を形成し,その上に
硬化膜と反射防止膜とを形成した際,クラックが発生せず,密着性が良く,分光反
射率特性におけるリップルを解消できるようにした反射防止膜付き合成樹脂レンズ
を提供することにある」(2頁左下欄「発明の目的」),「合成樹脂レンズ基板上
に中間膜を形成するに当たっては,上記のような有機物質の1種以上の他に,屈折
率調整剤,例えばテトラ-n-ブトキシチタンのようなチタンアルコキシド(一般
に加水分解して用いる),溶媒,界面活性剤,硬化剤等を混合し,これを前記の式
②から算出される膜厚tとなるように塗布する」(5頁右上欄第2段落),「本発
明は,高屈折率を有する合成樹脂レンズ基板に対して特定の中間膜を設けることに
より,耐擦傷性,密着性及び染色性において優れた性能を達成することができた。
更に,本発明により,分光反射率特性のリップル発生による干渉縞
をなくすことができた。すなわち,基板や硬化膜の屈折率が変化しても,中間膜の
屈折率を調整することにより,干渉縞等を解消することができ」(10頁右上欄~
左下欄「発明の効果」)との記載がある。
 これらの記載によれば,引用例発明1は,高屈折率合成樹脂レンズ基
板の上に硬化膜と反射防止膜とを形成した際,クラックが発生せず,密着性が良
く,分光反射率特性におけるリップルを解消できるようにするため,有機物質から
なる中間膜に屈折率調整剤を混合するなどして,中間膜の屈折率を上記の式①及び
②の条件を満足するように調整することにより,干渉縞を解消し,耐擦傷性,密着
性などにおいて優れた性能を達成する作用効果を奏するものと認められる。
 また,特公昭63-37142号公報(乙1)には,「微粒子状無機
物としては,酸化アルミニウム,酸化チタニウム,酸化ジルコニウム,酸化スズ,
酸化アンチモンの微粒子状物から選ばれる1種以上が用いられる。透明性と表面硬
度に優れ,さらに高い屈折率を与えるという点で特に好ましい。すなわち屈折率が
高いと,高い屈折率を有する矯正レンズ等においてはコーティング被覆層に干渉縞
による外観不良を発生させないからである」(4欄31行目~39行目)と記載さ
れており,これによれば,酸化アンチモンゾルが屈折率を高くし,干渉縞の発生を
防止する調整剤として用いられることが開示されている。
 そうすると,引用例1の実施例7には,酸化アンチモンゾルが屈折率
調整剤とは記載されていないが,他に屈折率向上効果を持つチタンアルコキシドな
どを混合させることは記載されていないから,酸化アンチモンゾルが,実施例7の
中間膜の屈折率を上記の式①及び②の条件を満足するまで向上させているものと解
される。
 (4) この点について,原告は,引用例1の実施例7の中間膜は,酸化アン
チモンゾルを含有し,屈折率1.547を得ているが,実施例1の中間膜は,酸化
アンチモンゾルもチタンアルコキシドも含まないのに,同様に屈折率1.547を
得ており,また,乙1には,引用例1に屈折率調整剤として記載されたテトラ-n
-ブトキシチタンのようなチタンアルコキシドは記載されておらず,酸化アンチモ
ンが屈折率向上効果を持つことが記載されているにすぎないし,酸化アンチモンゾ
ルと屈折率のみならず,干渉縞との関連性についても何ら記載されていないから,
酸化アンチモンが屈折率調整剤として使用されていることを示唆するものではない
と主張する。
 しかしながら,実施例1と実施例7とでは中間膜の有機物の組成が全
く異なっており,中間膜の屈折率は,有機物の屈折率及び屈折率調整剤,溶媒,界
面活性剤,硬化剤等の混合物の屈折率により決定されるものであるから,実施例7
においては,酸化アンチモンゾルを含有させることにより,実施例1と同じ屈折率
まで向上させ,その結果,上記の式①及び②の条件を満足し,干渉縞の発生が防止
されたものと解するのが相当であり,原告の上記主張は採用の限りではない。
(5) 以上の検討によれば,引用例1の実施例7に記載された酸化アンチモ
ンゾルは屈折率調整剤であり,本願発明のSb金属の酸化物微粒子に相当するとい
うべきであって,そうである以上,中間膜の屈折率が上記の式①及び②の条件を満
足するように,酸化アンチモンゾルの含有比率を設定すべきことは当然である。乙
1には,実施例6において,塗膜中におけるSb2O5ゾルの添加量を変化させ,そ
の存在量(%)が30~68%の範囲では,硬度,外観,干渉縞,総合判定がすべ
てA,良好と評価される(6頁第2表,実験番号3~5)ことが記載されており,
Sb金属の酸化物微粒子の含有率を20~60重量%に規定することは,このよう
な実験を行うことにより,当業者が容易に想到し得るものと認められる。そうする
と,「プライマー層に含有させるSb金属の酸化物微粒子について,実用的な使用
に適する重量%の上限,下限の範囲を定めることは当業者が容易になし得る技術的
事項である」(審決謄本9頁第3段落)とした審決の判断に誤りはなく,原告の取
消事由4の主張は,採用することができない。
5 以上のとおり,原告主張の審決取消事由はいずれも理由がなく,他に審
 決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
   よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり
判決する。
     東京高等裁判所第13民事部
         裁判長裁判官 篠  原  勝  美
    裁判官 岡  本     岳
    裁判官 早  田  尚  貴

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