弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人椎木緑司、同小中貞夫の上告理由第一点について。
 論旨は、原判決は被上告人B1、同B2が原審において抗弁として主張しない事
実を認めて、同上告人らを勝訴させたのは民訴法一八六条に違背するという。
 原判決は、被上告人B1は昭和二〇年一二月一五日頃上告人より第一審判決添附
第二目録第一記載の家屋のうち(ロ)の部分を期間の定めなく家賃は後日協定する
約束にて賃借し、同二二年四月頃上告人の代理人としてその所有財産を管理してい
た訴外D(上告人の叔父)との間に右賃料を一ヶ月金一三円と協定したこと、並び
に被上告人B2の夫Eは同二二年七月頃右Dから右第一目録第一記載の土地のうち
(ロ)の部分を建物所有の目的で賃借し、その地上に右第二目録第三記載(イ)(
ロ)の家屋を建築所有し、右Eが昭和二六年二月一七日死亡後は被上告人B2にお
いてその相続人として右土地賃借人の地位を承継した旨認定判示している。
 しかし、記録によれば、被上告代理人は原審において、被上告人福本については、
同被上告人が上告人から本件建物を借り受けたことの立証として、乙六号証(昭和
二一年一月より同二二年三月まで一五ヶ月分家賃一九五円を領収した旨の隅田より
福本宛領収書)を提出して、採用され(記録三二七丁参照)、同趣旨立証のため「
被上告人福本は本件家屋を直接上告人より賃借したこと、隅田男三に家賃を支払い
右乙六号証を受取つたこと」を訊問事項とする被上告人福本の本人尋問の証拠申出
書を提出して採用され、本人尋問が施行されたこと(記録四〇二丁参照)、また、
被上告人小林については、同被上告人の夫小林義男が本件土地を賃借するにつき、
隅田男三の承認を受けたことを立証するため、その趣旨を尋問事項とする被上告人
小林しなの本人尋問を求める証拠申請書を提出して採用され、その尋問取調を経た
こと(記録三九七丁乃至四〇一丁参照)、同趣旨立証のため乙一〇号証(昭和二二
年頃口頭にて賃貸の約束をした本件土地につき地代の納付なきため契約を解除する
旨の隅田男三より小林しな宛昭和二八年附契約解除通知並びに土地返還要求書)を
提出して採用されたこと(記録三九七丁乃至四〇一丁および四〇八丁参照)が明ら
かである。してみれば、同被上告人らにおいて原審判示事実の主張がなかつたとは
いえないのであつて、原判決には所論の違法は認められず、論旨は採用できない。
 同第二点について。
 論旨は、被上告人らは賃貸借成立の抗弁を提出するにつき、賃貸借契約の具体的
な内容を主張立証しないので、その抗弁自体理由がないとすべきであるのに、原判
決が進んで証拠によりその内容を認定したのは、主張責任の原則を誤つた違法があ
るという。しかし、記録によれば、被上告人らは本件土地家屋の賃貸借につき、そ
の契約当事者、賃貸借の目的物たる土地家屋、賃貸借契約日を具体的に主張してい
るのであるから、その賃料、賃貸借期間などにつき具体的主張がなくとも、裁判所
は証拠によりその賃貸借契約成立の有無につき認定しうることは当然である。論旨
は独自の見解であつて、採るを得ない。
 同第三点について。
 論旨は、昭和二〇年当時上告人は一六才であつたから、被上告人B1に賃貸した
行為は民法四条、九〇条に違反して無効であると主張する。しかし、未成年者の行
為であつても意思能力がある限り当然には無効になるものではないし、所論の事情
だけでは民法九〇条に当るとは認められない。論旨はいずれも採用できない。
 同第四点について。
 所論は、被上告人B1、同B2と上告人間の本件土地家屋賃貸借契約の成立を認
めた原判決の事実認定を非難するものであるが、原判決の右認定は挙示の証拠によ
り首肯できないわけではなく、所論経験則、採証法則の違反は認められないから、
論旨は採用の限りではない。
 同第五点について。
 論旨は、原審が上告人の賃料不払による契約解除を催告がないとの理由で排斥し
たのは判例に違反すると主張する。しかし、原判決認定の事実によれば、本件賃料
不払の理由は、賃料額や賃貸借の存続について紛争を生じた結果によるものであり、
賃借人の義務違反があつたとしても未だ信頼関係を裏切り賃貸借関係の継続を困難
ならしめるような不信行為とはいえないから、履行の催告をせずにした上告人の解
除の意思表示を無効とした原判決の判断は相当であり、引用の判例は本件に適切で
なく、論旨は理由がない。
 同第六点について。
 論旨は、被上告人B3同B4が原審において、第一審の自白に反し占有の始期に
ついて異なる主張をしたけれども、いずれも事実に反し錯誤に基づいたから自白を
撤回する旨の主張をしていないのに、原審が自白の撤回を認めたのは民訴法一八六
条に違反するという。しかし、先の自白に反する事実の主張をしたときは、即ち自
白の撤回であるから、その要件が備わるときはこれを許すべきであつて、錯誤に基
づき真実に反した旨の主張の有無にかかわらないというべきである。従つて所論は
独自の見解であつて、採用できない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    長   部   謹   吾
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    斎   藤   朔   郎

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