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裁判例


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主文
1被告は,原告に対し,別紙物件目録記載の自動車を引き渡せ。
2訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1主文第1項同旨
2仮執行宣言
第2事案の概要
本件は,訴外札幌トヨタ自動車株式会社(以下「販売会社」という。
)が,
訴外A(以下「本件破産者」という。
)に対し,別紙物件目録記載の自動車(以
下「本件自動車」という。
)を割賦販売した際に,その割賦金等債権の担保と
して本件自動車の所有権を留保したところ
(以下
「本件留保所有権」
という。


本件破産者が割賦金等の支払を遅滞したため,本件破産者の委託を受けて販売
会社との間で前記割賦金等の支払債務を連帯保証した原告が,保証債務の履行
として販売会社に前記割賦金等の残額を弁済し,法定代位により本件留保所有
権を取得したと主張して,本件破産者の破産管財人である被告に対し,本件留
保所有権に基づき,破産法65条の別除権行使として本件自動車の引渡しを求
めた事案である。
1前提事実
(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨より容易に
認められる事実)
(1)当事者
ア原告は,東京都にあって,仕入先及び販売店並びに顧客に対する金銭の
貸付け及び債務保証等を目的とする株式会社であり,販売会社は,札幌市
にあって,自動車の販売等を目的とする株式会社であり,いずれも訴外ト
ヨタ自動車株式会社の系列会社であるが,原告と販売会社との間には,直
接の資本関係等は存しない。
イ被告は,後記(6)のとおり,本件破産者についての破産手続開始決定(以
下「本件開始決定」という。
)により,破産管財人に選任された。
(2)本件売買契約(甲1,6)
本件破産者は,平成25年8月20日,販売会社との間で,以下の内容を
含む約定で,
本件自動車を割賦購入する旨の売買契約
(以下
「本件売買契約」
という。
)を締結した。
ア売買代金
割賦金等合計253万4868円(以下「本件割賦金等」という。

(内訳)
本体価格181万0500円
値引き-13万5196円
付属品27万9006円
諸費用14万5690円
(割賦元金210万0000円)
割賦手数料43万4868円
イ支払方法
本件破産者は,本件割賦金等を,平成25年10月から平成32年9月
まで,毎月2日限り3万0100円ずつ(合計84回払い。ただし,初回
の支払金額は3万6568円。

,販売会社に対して支払う。
ウ所有権留保
本件自動車の所有権は,販売会社の本件破産者に対する本件割賦金等債
権を担保するため,販売会社において留保する。
エ期限の利益喪失
本件破産者は,本件割賦金等の支払を怠り,販売会社又は原告から20
日以上の相当な期間を定めてその支払を書面で催告されたにもかかわらず,
当該期間内にその支払を行わないときには,本件割賦金等債務につき,当
然に期限の利益を失う。
(3)本件保証契約(甲1,6)
原告は,本件売買契約と同日,販売会社及び本件破産者との間の三者契約
の方式で,販売会社から本件割賦金等の取立て及び受領の委任を受けるとと
もに,本件破産者の委託を受け,以下の内容を含む約定で,本件破産者の販
売会社に対する本件割賦金等債務につき,連帯保証する旨の保証契約(以下
「本件保証契約」という。
)を書面により締結した。
ア保証債務の履行
本件破産者が本件割賦金等の支払を1回でも怠り,原告が本件割賦金等
の残額を一括で弁済する必要があると認めたときは,原告において,本件
破産者に通知・催告することなく,保証債務の履行として本件割賦金等の
残額を販売会社に弁済しても,本件破産者は異議のないものとする。
イ本件割賦金等債権及び本件留保所有権の行使
販売会社,本件破産者及び原告は,原告が,前記アに基づき販売会社に
対して弁済を行った場合,民法の規定に基づき,原告は,当然に販売会社
に代位し,販売会社の本件破産者に対する本件売買契約に基づく債権の効
力及び本件留保所有権として販売会社が有していた一切の権利を行使する
ことができることを確認する。
ウ本件自動車による弁済
本件破産者が期限の利益を喪失したときは,
原告からの催告がなくても,
前記イのとおり,原告が代位取得した債権の弁済のため,直ちに本件自動
車の保管場所を明らかにするとともに,本件自動車を原告に引き渡すもの
とする。
(4)本件自動車の登録等
販売会社は,平成25年8月20日,本件自動車につき,所有者を販売会
社,使用者を本件破産者とする自動車登録手続をし,同日ころ,本件破産者
に本件自動車を引き渡した(甲5)

(5)保証債務の履行及び期限の利益喪失等
ア本件破産者は,支払期日に遅れながら,平成26年8月26日までに,
初回から11回目までの本件割賦金等合計33万7568円を支払った
(甲4)

イ原告は,平成26年9月2日,本件保証契約の履行として,前記アを除
いた本件割賦金等の残額219万7300円を,販売会社に支払った(甲
4)

ウ原告は,平成26年12月15日,本件破産者の代理人であった弁護士
に対し,支払期日を経過している本件割賦金等6万0200円,遅延損害
金1852円及び督促費用等1123円の合計6万3175円を20日以
内に支払うよう書面で催告したが,本件破産者は,平成27年1月5日ま
でにこれを支払わなかった(甲7,8)

(6)本件開始決定
本件破産者は,平成27年5月13日午前11時,札幌地方裁判所におい
て本件開始決定を受け,被告が破産管財人に選任された(甲3)

2争点
本件開始決定の時点で,本件自動車の登録所有名義人ではなかった原告が,
破産管財人である被告に対し,本件留保所有権を別除権として行使することが
できるか。
3争点に対する当事者の主張
(原告の主張)
(1)基本主張
原告が本件保証契約に基づく保証債務の履行として本件割賦金等の残額を
販売会社に弁済したことにより,
弁済による代位
(法定代位,
民法500条)
が生じた結果,販売会社が本件割賦金等債権を担保するために留保していた
本件留保所有権は,販売会社の本件破産者に対する本件割賦金等債権ととも
に法律上当然に原告に移転し,原告は,本件破産者に対する求償権の範囲内
で本件割賦金等債権及び本件留保所有権を行使することができる。そして,
このことは,原告,販売会社及び本件破産者の三者間で,あらかじめ合意さ
れている。
よって,原告は,本件破産者の破産管財人である被告に対し,本件留保所
有権に基づき,別除権の行使として,本件自動車の引渡しを求める。
(2)平成22年最判について
ア最高裁平成22年6月4日第二小法廷判決・民集64巻4号1107頁
(以下「平成22年最判」という。
)は,自動車の売買に際し,販売会社,
信販会社及び購入者の三者間で,購入者が販売会社から自動車を買い受け
るとともに,その売買代金を自己に代わって販売会社に立替払いすること
を信販会社に委託すること,当該自動車の所有権が購入者に対する債権の
担保として留保されること,及び,登録所有名義のいかんを問わず,販売
会社に留保されている当該自動車の所有権が立替払いにより信販会社に移
転し,購入者が立替金等債務を完済するまで信販会社に留保されること等
を内容とする契約を締結したという事案につき,信販会社の取得する留保
所有権の被担保債権(立替金等債権)が,販売会社の有していた留保所有
権の被担保債権(売買代金債権)とは異なることから,信販会社が購入者
との間で独自の留保所有権を設定したと評価すべきことを理由に,信販会
社の留保所有権の取得につき,立替払の結果,販売会社が留保していた所
有権が代位により信販会社に移転するという構成を否定し,信販会社が独
自の留保所有権を行使するためには,信販会社の登録所有名義が必要であ
ると判断したものである。
イ本件では,自動車販売における保証方式として,平成22年最判の事案
で採用された立替払方式ではなく,信販会社が,購入者からの集金業務を
受託し,かつ,購入者の代金支払債務につき保証するという,いわゆる集
合保証方式を採用しているところ,同方式によれば,信販会社が,購入者
に対する独自の債権を取得することはないから,販売会社の留保所有権の
被担保債権と,信販会社の留保所有権の被担保債権の内容は同一となる。
また,本件保証契約の中では,原告,販売会社及び本件破産者の三者間
で,弁済による法定代位の効果として販売会社から原告に本件留保所有権
が移転する旨を確認する旨の合意がなされているから,原告が法定代位に
より本件留保所有権を取得することは,本件における「当事者の合理的意
思」に合致するものといえる。
ウ以上によれば,本件が,平成22年最判の射程外の事案であることは明
らかである。
(3)被告の主張に対する反論
ア被告は,原告が販売会社に対する弁済によって本件留保所有権を代位取
得したとしても,本件開始決定の時点で,本件自動車の登録所有名義人が
原告ではなかった以上,原告は,本件留保所有権を別除権として行使する
ことはできない旨を主張する。
しかし,法定代位によって取得することのできる債権及び担保権につい
ては,同債権及び担保権を有していた者において対抗要件が具備されてい
る限り,
自らの取得につき対抗要件を具備する必要はないから,
本件では,
販売会社において本件自動車の登録所有名義を有していた以上,本件開始
決定時に,原告が本件自動車の登録所有名義を具備していなくても,原告
は,本件留保所有権を行使することができるものといえる。
イまた,被告は,原告が本件留保所有権を別除権として行使することを認
めることは,個別の権利行使が禁止される一般債権者と別除権者との衡平
を図ることなどを趣旨とする破産法49条に反する旨を主張するが,本件
自動車の所有権は一度も本件破産者に帰属していないこと,他の破産債権
者は,もともと原債権者である販売会社による別除権としての留保所有権
の行使を甘受せざるを得ない立場にあったこと等を考慮すると,原告の別
除権行使を認めても,一般債権者との衡平を害することにはならない。
そして,自動車の登録所有名義の変更に要する費用は,終局的には購入
者の負担になると考えられることや,同変更には自動車検査証が必要であ
るところ,同変更のために購入者から自動車検査証を預かると,同変更手
続が完了するまで,購入者は当該自動車を使用できなくなるなどの事情が
あることからすれば,原告が,本件自動車の留保所有権を代位取得した後
も,本件自動車の登録所有者名義を原告に変更しなかったことには,相応
の合理性があるといえる。
ウ被告は,複数の保証人による保証債務の履行があった場合に生じる不都
合を指摘するが,それは,代位者間の分配の問題であり,代位取得した権
利行使の可否にかかわるものではない。加えて,本件売買契約及び本件保
証契約では,販売会社に対する保証債務についての原告の負担割合は0割
とされていることからすれば,本件では,原告以外の保証人による保証債
務の履行があった場合にも,原告が,他の保証人に優先し,本件自動車の
留保所有権を取得することになるものと解されるから,被告の指摘するよ
うな不都合は生じない。
エ以上により,被告の上記主張は,失当である。
(被告の主張)
(1)基本主張
破産法49条は,破産手続開始決定の時点で権利関係を明確にするこ
とにより破産手続の適正かつ公平な処理を実現すること,及び,破産手
続開始により個別の権利行使が禁止される一般債権者と別除権者との衡
平を図ることなどの趣旨から,特定の担保権につき別除権の行使をする
場合には,原則として,破産手続開始時に,同担保権につき対抗要件を
具備し,破産管財人や他の一般債権者に対して,同担保権の存在を明ら
かにすることを求める規定であると解される。
そのため,本件では,原告が販売会社に対する弁済によって本件留保
所有権を代位取得したものであるとしても,本件開始決定の時点で,本
件自動車の登録所有名義人が原告ではなかった以上,原告は,本件留保
所有権を別除権として行使することはできないというべきである。
(2)平成22年最判について
ア平成22年最判は,民事再生法45条を参照して,個別の権利行使
が禁止される一般債権者と再生手続によらないで別除権を行使するこ
とができる債権者との衡平を図るなどの趣旨から,原則として再生手
続開始の時点で登記,登録等を具備している必要があるとして,再生
手続開始の時点で信販会社を所有者とする登録がされていない限り,
販売会社を所有者とする登録がされていても,信販会社が,当該自動
車につき留保した所有権を別除権として行使することは許されない旨
を判示している。
そして,前記のとおり,破産法49条の趣旨は,平成22年最判が
判示する民事再生法45条の趣旨と同様のものであると解されるから,
平成22年最判の上記判示部分は,破産手続においても妥当するもの
といえる。
イまた,平成22年最判は,信販会社,販売会社及び購入者の三者間
で,弁済による法定代位の効果として販売会社から信販会社に自動車
の留保所有権が移転する旨を確認する旨の明確な合意がなされていれ
ば,当該自動車についての信販会社の所有者登録は不要であることを
明言はしていない。
(3)原告の主張に対する反論
ア原告は,本件では,弁済による法定代位の効果として,販売会社か
ら原告に本件割賦金等債権及び本件留保所有権が移転しており,原告,
販売会社及び本件破産者の三者間では,あらかじめ,その旨を確認す
る旨の合意もなされているところ,法定代位による移転については対
抗要件を具備する必要はないから,原告が,本件開始決定時に,本件
自動車につき所有権移転登録を具備していなくても,本件留保所有権
を別除権として行使できる旨を主張する。
イしかし,法定代位により取得した権利であるとしても,破産手続開
始の時点で権利関係を明確に固定するという破産手続開始決定の性質
や,個別の権利行使が禁止される一般債権者と別除権者との衡平を図
るという破産法49条の趣旨からすると,破産開始手続開始時に,同
権利につき対抗要件を具備していなければ,同権利を別除権として行
使することは認められないというべきである。
原告は,法定代位による留保所有権の取得から本件開始決定までの
間に,本件自動車の登録所有名義を販売会社から原告に変更すること
は可能であったにもかかわらず,これを怠っていたのであるから,本
件留保所有権を別除権として行使することはできない。なお,原告は,
本件留保所有権の取得後も,本件自動車の登録所有名義を販売会社のまま
としたことには相応の合理性がある旨主張するが,原告の主張する合理性
は,主に販売会社及び原告にとっての合理性に過ぎず,破産手続における
総債権者の公平な利益の確保の要請に優先すべきものであるとはいえな
い。
ウまた,留保所有権が実行方法等の法定されていない非典型担保物権であ
ることや,本件では,本件割賦金等の支払が完了するまでの間,本件自動
車の所有者として登録される者として,販売会社,原告及び原告の認めた
者の三者が挙げられるため,本件自動車の登録内容からは,代金決済の有
無や,未払債務を担保するために所有権が留保されているかなどの内部関
係は判然としないことなどを考慮すると,本件で,原告に,本件留保所有
権の別除権としての行使を認めることは,一般債権者等に不当な影響を及
ぼすことになるといえる。
加えて,実体的な権利関係に合致しない登録のままで,留保所有権を別
除権として行使することを認めてしまうと,複数の保証人による保証債務
の履行があった場合には,留保所有権を行使できる者が,登録内容から明
らかにならないという不都合が生じることとなる。
エ以上により,原告の上記主張は,失当といえる。
第3当裁判所の判断
1認定事実
前記前提事実,掲記の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認め
られる。
(1)本件基本契約の締結(甲10,11)
ア原告は,平成10年1月22日,販売会社との間で,自動車販売におけ
る保証方式に関する基本契約
(以下
「本件基本契約」
という。

を締結した。
本件基本契約では,①原告は,購入者の販売会社に対する自動車の割賦
金等債務を連帯保証するとともに,販売会社の委託により売買代金の集金
業務を行うこと,②販売会社の販売する自動車の所有権は,所有名義の如
何を問わず,販売会社と購入者の間の売買契約,販売会社と原告の間の保
証契約の締結後,販売会社から原告に移転し,原告が販売会社に保証債務
を履行した場合には,購入者が原告に求償債務を履行するまでは原告に留
保されることとした。
イまた,原告は,平成25年3月7日,販売会社との間で,本件基本契約
中の自動車の所有権の移転に関し,上記ア②の内容に替えて,販売会社の
販売する自動車の所有権は,販売会社の購入者に対する割賦金等債権を担
保するために販売会社が留保するが,原告が販売会社に保証債務を履行し
た場合には,民法の規定に基づき,原告が当然に販売会社に代位し,割賦
金等債権及び当該自動車の留保所有権を行使できることを確認する旨の合
意をした。
(2)本件売買契約及び本件保証契約の締結(甲1,6)
ア販売会社は,平成25年8月20日,本件破産者との間で,本件自動車
を,本体価格等の割賦元金210万円及び割賦手数料43万4868円の
合計253万4868円(本件割賦金等)で割賦販売する旨の本件売買契
約を締結し,
原告は,
販売会社及び本件破産者との間の三者契約の方式で,
本件割賦金等債務について連帯保証をする旨の本件保証契約を書面により
締結した。
イ本件売買契約及び本件保証契約においては,①本件破産者は,販売会社
が本件割賦金等の取立て及び受領を原告に委任したことを承諾すること,
②本件破産者は,原告に対し,本件割賦金等253万4868円を平成2
5年10月2日に3万6568円,同年11月から平成32年9月まで,
毎月2日限り3万0100円ずつ支払うこと,③本件自動車の登録所有名
義は原則として販売会社とし,原告の選択により原告とすることができる
が,原告が特に認めた場合はこの限りではないこと,④本件自動車の所有
権は,販売会社の本件破産者に対する本件割賦金等債権を担保するために
販売会社が留保すること,⑤販売会社,原告及び本件破産者の三者は,原
告が,保証債務の履行として販売会社に本件割賦金等の残額を弁済するこ
とにより,民法の規定に基づき,当然に販売会社に代位し,本件割賦金等
債権及び本件自動車の留保所有権を行使できる旨を確認すること,⑥本件
破産者が本件割賦金等の支払を怠り,販売会社又は原告から20日以上の
相当な期間を定めてその支払を書面で催告されたにもかかわらず,当該期
間内にその支払を行わないとき,又は破産の申立てをしたときは,本件割
賦金等債務につき当然に期限の利益を失うこと,⑦原告は,本件破産者が
期限の利益を喪失し,あるいは本件割賦金等の支払いを1回でも怠り,原
告が必要と認めた場合には,本件破産者に通知,催告することなく,本件
割賦金等の残額を販売会社に弁済できること,⑧本件破産者は,本件割賦
金等債務につき期限の利益を喪失したときは,
原告からの催告がなくても,
原告が代位取得した本件割賦金等債権の弁済のため,直ちに本件自動車を
原告に引き渡すものとすること,⑨原告は,上記⑧により引渡しを受けた
本件自動車について,公正な機関の評価・査定によるその評価額等(以下
「本件評価額等」という。
)をもって,本件割賦金等債権,同債権の回収費
用及び同債権から生じる遅延損害金の弁済に充てること等が合意された。
(3)訴外Bの連帯保証(甲1,6,乙8)
ア本件破産者の父親である訴外Bは,平成25年8月20日,本件破産者
が,本件売買契約及び本件保証契約によって販売会社又は原告に対して負
う一切の債務について連帯保証をする旨の保証契約を書面により締結した。
イ本件売買契約及び本件保証契約において,販売会社に対する保証債務に
ついての訴外Bの負担割合は10割,原告の負担割合は0割とされた。
(4)本件自動車の引渡し(甲5)
販売会社は,平成25年8月20日,本件自動車につき,所有者を販売会
社,使用者を本件破産者とする自動車登録手続をし,同日ころ,本件破産者
に本件自動車を引き渡した。
(5)原告による保証債務の履行及び本件破産者の期限の利益喪失等
ア本件破産者は,平成25年10月28日から平成26年8月26日まで
の間に,本件割賦金等のうち,平成25年10月分から平成26年8月分
(いずれも各月2日が支払期限)までの合計33万7568円(平成25
年10月分の3万6568円+3万0100円×10か月分)を,各期限
に遅れながら,支払った。
イ原告は,平成26年9月2日,前記(2)イ⑦の約定に基づいて,販売会社
に対し,本件保証契約の履行として,本件割賦金等の残額である219万
7300円を支払った(甲4)

ウ訴外Bは,原告からの催告を受け,平成26年11月10日,原告に対
し,保証債務の履行として,本件割賦金等の平成26年9月分及び同年1
0月分に相当する6万0200円を支払った(乙2,8)

エ原告は,平成26年12月15日,本件破産者の代理人であった弁護士
に対し,内容証明郵便をもって,20日以内に,本件割賦金等の平成26
年11月分及び同年12月分に相当する6万0200円,同年12月11
日時点の遅延損害金1852円及び督促費用等1123円の合計6万31
75円を支払うよう催告すると共に,その頃,本件留保所有権に基づき,
本件自動車の引渡しを求めた。
しかし,本件破産者は,上記催告期間内に上記金額を支払わなかったた
め,
前記(2)イ⑥の約定により,
本件割賦金等について期限の利益を喪失し
たが,前記代理人弁護士は,平成22年最判のあることを理由に,本件自
動車を原告に引き渡さなかった。
(6)本件開始決定(甲3)
本件破産者は,平成27年4月10日,札幌地方裁判所に対し,破産手続
開始の申立てを行ったが一旦取り下げ,同月30日に再度申立てを行って,
同年5月13日午前11時,本件開始決定を受け,被告が破産管財人に選任
された。
(7)原告の販売会社に対する前記(5)イの保証債務の履行後も,本件自動車の
登録所有名義は販売会社のままであり,本件破産者が本件自動車を使用して
いる。
2争点(本件開始決定の時点で,本件自動車の登録所有名義人ではなかった原
告が,本件留保所有権を別除権として行使することができるか。
)について
(1)ア前記認定事実によれば,本件売買契約及び本件保証契約の際に,原
告,販売会社及び本件破産者の三者間では,原告が,販売会社から,
本件割賦金等の取立て及び受領の委任を受けるとともに,本件破産者
の委託を受けて本件割賦金等債務につき連帯保証すること,本件自動
車の所有権は,販売会社の本件破産者に対する本件割賦金等債権を担
保するために販売会社が留保すること,原告が,保証債務の履行とし
て販売会社に本件割賦金等の残額を弁済した場合には,原告は,民法
の規定に基づき,販売会社に代位して,本件割賦金等債権及び本件留
保所有権を行使できることが合意されているものと認められる。
原告が,販売会社に対し,本件保証契約に基づいて本件割賦金等の
残額を弁済した場合,本件破産者に対しては受託保証人としての求償
権を取得すると共に,民法500条,501条により当然に販売会社
に代位して,前記求償権の限度で,販売会社が本件破産者に対して有
していた本件割賦金等債権及びその担保である本件留保所有権を行使
できるようになるが,上記三者間の合意は,これと同趣旨の内容を定
めたものと解され,原告が,前記弁済後に,販売会社が有する本件割
賦金等債権とは異なる債権を独自に取得して,本件破産者との間で,
これを被担保債権とする新たな担保権を設定するものではないと解さ
れる。
なお,前記1(2)イ⑨のとおり,前記三者間の合意では,本件破産者
が本件割賦金等債務につき期限の利益を失い,本件自動車を原告に引
き渡した場合には,原告は,本件評価額等をもって,本件割賦金債務
及び同債務の遅延損害金のみならず同債務の回収費用にも充当できる
とされているが,販売会社から取立て及び受領を委任された原告が負
担する回収費用は,元来,本件破産者が販売会社に対し負担すべきも
のであり(民法485条)
,原債権たる本件割賦金等債権に含まれると
解し得るものであるから,前記充当に関する合意について,原告が,
販売会社の有しない債権を別途取得し,これについて新たな担保権を
設定することを予定したものとは解されない。
イそして,本件自動車について販売会社の登録所有名義があることに
よって,
販売会社は,
本件留保所有権を第三者に対抗することができ,
前述のとおり,前記弁済によって,本件割賦金等債権及びその担保で
ある本件留保所有権は,法律上当然に原告に移転したものであるから,
少なくとも本件開始決定前の時点において,受託保証人である原告が,
これを委託した本件破産者に対し,本件自動車の登録所有名義を得な
い限り,本件留保所有権を行使し得ないと解すべき理由はないし,本
件自動車の登録名義が販売会社にある以上,本件破産者が本件自動車
の交換価値を把握するものでないことも公示されているから,原告は,
本件自動車の登録所有名義を得ることなく,法定代位による本件留保
所有権の取得を,本件破産者の一般債権者にも対抗することができた
というべきである。
そうすると,破産管財人である被告は,本件開始決定により,本件
破産者の法的地位を承継すると共に,本件破産者の一般債権者全体の
ために,本件破産者の財産を管理処分すべき立場に立つということが
できるが,そのいずれの面を考慮しても,原告は,本件自動車の登録
所有名義を得ることなく,本件留保所有権の取得を被告に対抗するこ
とができるというべきであるし,破産法49条2項の要請については,
本件開始決定前に,本件自動車につき販売会社名義の所有登録がされ
たことにより,充たされているというべきである。
(2)ア被告は,原告が,法定代位による本件留保所有権の取得を第三者に
対抗し得るとしても,いわば手続的要件として,本件開始決定前に,
本件自動車の登録所有名義を得ない限り,破産管財人である被告に対
し,本件留保所有権に基づく別除権の行使をすることができず,破産
法49条2項はこの趣旨を定めたものである旨主張するものと解され,
その理由として,①破産手続の適正かつ効率的な処理のためには,破
産手続開始の時点で,権利関係は明確である必要があること,②一般
債権者と別除権者の衡平を図る必要があること,③本件自動車の登録
所有名義を販売会社のままとすることに合理性はなく,弁済後,本件
開始決定までに,登録所有名義を変更することは可能であったのに,
原告はこれを怠ったものであること,④販売会社,原告,本件破産者
の三者の内部関係は被告には不明であり,権利の所在が判然としない
こと,⑤複数の保証人が履行した場合に,権利を行使し得る者が明ら
かでないことを主張する。
この点について,これまで認定及び検討したところによれば,以下
のイないしカの点を指摘することができる。
イ破産法49条の趣旨は,①破産手続開始時を基準として法律関係を
整理するという点で効率的な破産手続の実現を図ること,及び②破産
手続開始により個別の権利行使が禁止される一般債権者と破産手続に
よらないで別除権を行使することができる債権者との衡平を図ること
にあるものと解される。
しかしながら,
本件においては,
前記(1)で検討したとおり,
原告は,
本件自動車の登録所有名義を得ることなく,破産管財人である被告に
対し,本件留保所有権をもって対抗し得ると解されるところ,破産法
49条2項が,実体法上の権利が認められるものについて,手続的理
由でこれを制限する趣旨を定めたものとは解されず,前述のとおり,
本件の場合,本件開始決定の前に,販売会社の所有名義で登録された
ことによって,同条の要件は充たされているというべきである。
ウ一般債権者の関係については,前述のとおり,販売会社が登録所有
名義を有することで,本件破産者又はその一般債権者が本件自動車の
交換価値を把握するものでないことは公示されていると認められるか
ら,原告が,登録所有名義を得ずに,本件留保所有権を別除権として
行使したとしても,一般債権者との衡平を害することにはならないと
解される。
逆に,本件の場合,本件破産者は,本件割賦金等を7分の1程度弁
済したにすぎず,本件自動車の交換価値を把握するに至っていないこ
とは明らかであるが,原告が本件自動車の登録所有名義を得ていない
ことを理由にその別除権行使を否定するとすれば,いわば反射的に,
本件自動車を本件破産者の一般財産に属するものとして扱わざるを得
ないことになるが,その結果はかえって不合理である。
エ本件売買契約及び本件保証契約によれば,本件自動車の登録所有名
義は,原則として販売会社とされる一方で,当初から原告とすること
も可能であったとされる。
しかしながら,販売会社が契約成立と同時に全額の立替払いを受け
るような事案とは異なり,本件においては,本件割賦金等が完済され
るまでの間,その債権者は販売会社であって,本件自動車の所有権は
実際に販売会社に留保されるべきこと,本件割賦金等については順調
に弁済されるのが本来であり,保証人である原告が弁済して法定代位
が生じるのは,いわば例外であること,完済時や転売時の本件自動車
の登録名義の変更についても,東京都にある原告ではなく,札幌市に
ある販売会社と本件破産者との間で行うのが便宜であること等の事情
を総合すると,本件自動車を販売会社の名義で登録したことには,一
定の合理性が認められるというべきである。
また,原告の弁済後,本件自動車の登録所有名義を原告に変更する
ことが可能であったことは被告が主張するとおりであるが,前述のと
おり,原告が,少なくとも本件開始決定前に,本件破産者に対し本件
留保所有権を行使するために,本件自動車の登録所有名義を得る必要
はないと解されること,購入者の債務不履行により保証人が弁済する
に至った場合であっても,その後,当該購入者について必ず破産手続
が開始されるわけではないこと,登録所有名義の変更については,費
用を要する以外に,手続に自動車検査証が必要であり,その備付けが
なければ自動車を使用することができないなど,購入者に負担がかか
ること等を考慮すると,原告が保証人として弁済した以上,当然に本
件自動車の登録所有名義の変更をすべきであったとまではいえない。
オ本件自動車の登録所有名義が販売会社のままである場合,本件割賦
金等が弁済中であり,本件留保所有権はなお販売会社にあるのか,完
済により権利は実質的に購入者に帰属しているが,名義変更の手続が
行われていないに過ぎないのか,保証人により弁済が行われ,法定代
位により権利が移転しているのかの区別が困難であることは,被告の
主張するとおりである。
しかしながら,少なくとも,本件自動車が販売会社の名義で登録さ
れている以上,被告において直ちにこれを本件破産者の一般財産に属
するものとして扱えないことについては,公示がされているというべ
きであるし,本件割賦金等の弁済の程度,本件破産者の期限の利益喪
失の有無,受託保証人である原告の弁済の有無については,破産管財
人である被告において調査可能な事項と解されるから,上述した問題
点があることを理由に,画一的処理の要請から,本件開始決定前に原
告が登録所有名義を得ない限り,別除権を行使することができないと
解する理由はないというべきである。
カ複数の保証人による保証債務の履行があった場合に,留保所有権を
行使できる者が直ちに明らかにならないことも,被告の主張するとお
りであり,前記1(3)イの合意によっても,この点が明らかになるとは
解されない。
しかしながら,この点も実体法に従って処理する以外にないと考え
られ,複数の保証人による弁済があり得ることを理由に,本件留保所
有権の行使に登録所有名義が必要と解することはできない。
キ以上イないしカで検討したところによれば,破産法49条の解釈又
は趣旨として,本件開始決定前に本件自動車の登録所有名義を得ない
限り,原告が別除権として本件留保所有権を行使することができない
ということはできず,この点についての被告の主張は採用できない。
(3)以上によれば,原告は,本件開始決定の時点で本件自動車の登録所有
名義を有していなかったが,破産管財人である被告に対し,本件留保所
有権を,別除権として行使することができると解するのが相当である。
第4結論
よって,原告の請求には理由があるからこれを認容し,仮執行の宣言は
相当でないからこれを付さないこととして,主文のとおり判決する。
札幌地方裁判所民事第2部
裁判長裁判官谷有恒
裁判官荒井格
裁判官八屋敦子
(別紙物件目録省略)

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