弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
被告人を懲役7年に処する。
未決勾留日数中100日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
 被告人は,
第1 平成13年4月24日午前8時20分ころ,東京都江戸川区ab丁目c番d
号付近路上において,歩行中のA(当時7歳)を認めるや,強いて同児にわいせつ
な行為をする目的で自動車内に連れ込んで略取しようと企て,所携のはさみ(刃体
の長さ約7.7センチメートル)を開き,同児の背後から近付いてやにわにその刃
をその頸部付近に突き付け,「殺すぞ。」などと申し向ける暴行・脅迫を加え,同
児をあらかじめ同所付近に駐車させた普通乗用自動車内に連れ込もうとしたが,被
告人が人目を気にしている間に同児が隙を見てその場から逃走したため,略取等の
目的を遂げなかった。
第2 同月26日午後1時40分ころ,同区ef丁目g番h号株式会社B1階作業
所運転手控室において,C所有のケース入りの携帯電話1台(時価合計4000円
相当)を窃取した。
第3 同日午後2時過ぎころ,同区ij丁目k番付近路上において,歩行中のD
(当時7歳)を認めるや,前記第1同様に強制わいせつ目的で略取することを企
て,同児をあらかじめ同所付近に駐車させた普通乗用自動車後部座席に背後から押
し込め,同車両内において,泣き続けるその顔面を平手で殴打する暴行を加えた
上,同車両を運転して発進,疾走させるなどし,そのころから翌27日午後5時4
0分ころまでの間,同所から千葉県船橋市lm丁目n番o号被告人方前路上に至る
まで,同児を同車両内から脱出困難にするなどし,もって,わいせつの目的で同児
を略取して,上記の間,同児を不法に監禁し,同月26日午後8時ころから翌27
日午後3時ころまでの間,数回にわたり,同県市川市pq丁目r番地付近路上に駐
車中の同車両内において,上記暴行により畏怖している同児に対し,下着を脱がせ
た上,その陰部をなめたり手指でもてあそんだりしたほか,「言うことを聞かない
と,帰さないぞ。」などと脅して陰部に異物を挿入したり,被告人の陰茎を口淫さ
せるなどし,もって,強いて同児にわいせつな行為をし,その際,同児に治癒まで
約1週間を要する外陰部擦過傷の傷害を負わせた。
(量刑の理由)
 被告人は,好意を抱いていたホステスに性交を申し込んだがこれを拒絶され,性
的欲求を解消できないことに不満をつのらせるうち,小学校低学年の女児であれば
自動車内に連れ込んで強制わいせつに及ぶことも容易であると考え,土地勘のある
小学校の通学路上に車両を駐車して待ち伏せし,一人で登校する判示第1の女児を
襲い,未遂に終わったものの,諦めずに女児の物色を続け,2日後,下校中の被害
女児を発見するや判示第3の犯行に及んだものであって,極めて強固な犯意の下に
連続的,計画的に敢行された事案である。
 このうち判示第3においては,被害女児を車両内に押し込めた後,自宅付近で張
り込み中の警察官に発見されるまで,丸一日以上十分な食事を与えることもなく車
内に閉じこめるなどした上,その間,泣き出した女児の顔面を殴打するなどし,恐
怖や疲労から抵抗することもできない同児に対し,性欲の赴くまま,陰部にレンチ
等の異物を挿入し,口淫させるなどの強制わいせつ行為を繰り返しているのであっ
て,女児の人間性を無視したその犯行態様は極めて悪質である。27時間以上にも
わたって家族の下から引き離されたばかりか,執ようなわいせつ行為にさらされ
て,被害女児は身体的,精神的に重大な苦痛を蒙ったものと認められ,事件の夢に
おびえたり,不安から自傷行為に出るなど心に残る爪痕も看過できない。また,犯
行当日夜になっても帰宅しない娘の安否を案じ続け,さらに,帰宅して喜んだのも
つかの間,同児が受けた被害を知るところとなった両親の衝撃,心痛も甚大であ
り,被害感情は峻厳である。
 判示第1の犯行についても,凶器を突き付けるなど極めて危険な行為に及んでお
り,被害女児及びその保護者の処罰感情は強い。
 そして,これらの連続的犯行が近隣小学校の児童,両親や学校関係者に与えた不
安等地域における社会的影響も軽視できない。
 加えて,被告人の前歴にも照らせば,この種事犯に対する犯罪傾向は相当根深
く,深刻なものがあるといわなければならない。
 このほか,判示第2の犯行についてみても,上記のとおり女児を探し回る一方で
ダイヤルQ2で女性と会話をしようとしたところ,自己の携帯電話が料金不払いで
通話不能になったのを知るや,ダイヤルQ2にこだわり敢行したものであって,犯
情はよくない。
以上の事情に照らすと,被告人の刑事責任は重大である。
 他方,判示第1の犯行は被害女児が隙を見て逃走したため幸い未遂に終わってい
ること,判示第2の被害品は既に被害者に返還されたと考えられること,被告人
は,捜査・公判段階を通じて本件各犯行を認め,判示第3の被害女児に宛てて謝罪
の手紙を書くなど相応の反省の態度を示していること,公判廷において祖父及び兄
が被告人の更生に助力する旨述べていること,未だ22歳と若年であり,前科がな
いこと等,被告人のために酌むべき事情も認められる。
 そこで,以上の事情を総合考慮し,主文の刑を相当と判断した。
(求刑 懲役10年)
東京地方裁判所刑事第16部
裁判長裁判官 大 谷 直 人
裁判官 早 川 幸 男
裁判官 吉 田 智 宏

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