弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件即時抗告を棄却する。
         理    由
 本件即時抗告の理由は
 第一点 一、 原決定は「刑事訴訟法第四百三十五条第六号に所謂「有罪の言渡
を受けた者に対して無罪若しくは免訴を言渡し云々認めらるべき明らかな証拠をあ
らたに発見したとき」とは言渡前にその存在を知らず又は提出不可能であつた証拠
を該判決言渡後新たに発見し又は提出可能になつた場合の謂であると解するのを相
当とする。本件について職権を以て調査するに右Aの書面は請求人に対する第一審
判決後に作成せられたものであつて、このことは右Aに対する当裁判所の尋問の結
果に徴し明かであるから、かくの如き証拠は同条の「あらたに発見した」場合に該
当しない。」と判示し本件再審請求を棄却した。
 二、 原審裁判官の見解は「あらたに発見した証拠」とは原判決言渡前に客観的
には存在していたに不拘、その当時その存在を知らず、又は提出不可能であつた証
拠でなければならぬというのであるが、この見解は法規の解釈をあやまつたか、又
は本件につき提出したAの書面の意義を誤解したものに外ならない
 三、 原審裁判官の新たに発見した証拠とは原判決言渡前に客観的に存在したも
のでなければならないということは、ある意味に於ては正当であるかも知れない。
判決言渡後に作成された文書は判決言渡前には存在していないのだから、たしかに
新たに「発見」したとは言えない。しかしこれはその文書が所謂証拠物であつた場
合に然るのであつて、その文書が報告的意義を有する所謂証拠書類たる性質を有す
る場合には同一に解するわけには行かない。
 四、 報告文書の本質は人の記憶である。本件Aの文書は同人が事件の現場に於
て目撃した事実を記載して本弁護人に報告したものであつて、その証拠としての意
義は文書の存在にあるのではなく、その内容の真実か否かにある。報告の内容の真
実なるか否かは、報告者の記憶の正確か否か、その表現にあやまりがあるか否かに
よつてきまるのであつて、そのことは結局報告者自身を証人として取調べることに
よつて明かにせられなければならない。本件再審請求について右Aの書面を証拠書
類として提出したのは、決して右文書自体を証拠とするものではなく、右文書の内
容たる事件の目撃者の証言を提出したものであることは、右文書の趣旨からいつて
明かだといわなければならぬ。従つて右文書の作成日時が何時かということは初め
から問題にならないのである。
 五、 本件について新たに発見された証拠とは即ち証人Aの存在をいうのであ
る。刑事訴訟規則に再審請求書には証憑書類及証拠物を添えなければならぬことを
命じているが新たに発見された証人として提出するのに当該証人の証言内容を記載
した書類を提出することが便宜であることは言うまでもないが、その場合その書類
の作成日時が判決書渡後であるという理由で新たに発見された証拠とはいえないと
判断されるというのは、まこと奇怪であると謂わなければならない。
 六、 右証人Aは原判決言渡以前に存在し、請求人はその存在を知つていたので
あるが、同人の偽証のために請求人に於て当時その真実の証言を提出不可能であつ
たことを、本件再審請求の理由として、請求人は主張するものであつて、前記原審
裁判官の見解によれば本件は正に再審請求の理由ある場合に該当するのであるか
ら、原決定は当然取消さるべきものである。
 第二点、 原審裁判官は本件再審理由について昭和二十七年二月五日Aを尋問
し、その尋問の結果を本決定の理由に援用している。右Aの尋問は再審請求の理由
の有無について事実の取調の必要を認め刑事訴訟法第四十三条第三項によつて行わ
れたものと解するのであるが、原審裁判官は右尋問に際し、被告人又は弁護人に立
会の機会を与えなかつた右事実の取調についても、証人の尋問の場合には当然刑事
訴訟法第百五十七条によつて被告人又は弁護人に於て立会権があることは言うまで
もないのに、右尋問につきその立会の機会を与えなかつたことは重大な違法であ
る。しかも本件の尋問調書を検するに、Aの尋問につき証人として尋問する旨を表
示せず、何ら正規の証人尋問の手続を履践していない。裁判所と雖も法律に定める
手続によるに非ざれば、人を尋問する権限はないのであつて、右の尋問はまことに
不法の甚だしきものがあるといわなければならぬ、右の如き不法の尋問の結果を理
由に援用した原決定は当然取消されなければならない。
 第三点 本件再審の請求は原判決言渡前に行われたAの証言が偽証なること明か
となつたので同人の真実の証言を裁判の基礎として、公正な裁判を受けんことを要
求しているものである。Aの証言は被告人の有罪無罪を決定するのに欠くことので
きない重要な証言である。同人は事件現場の目撃者であるのに、原判決前にはその
目撃者である事実を故ら秘匿していた、然るに原判決後にその偽証の事実が明かに
なり、同人は今や被告人以外に真犯人があるという事実を陳述せんとしているので
ある。証拠申請の取捨は裁判官の裁量にまかされているといつても、被告人の証人
尋問権は憲法第三十七条に規定する重要な権利であるから、これを拒絶するについ
ては、これを不必要とする特別顕著な事由がある場合に限られると解さなければな
らない。偽証した証人からあらためて真実の証言を求めようとする本件再審の請求
は、憲法上被告人に認められた基本的人権に基く要求であると解さなければならな
い。この要求を棄却した原判決は被告人の憲法上の権利を無視した違法あるものと
いうべきである
 と謂うにある。
 <要旨第一>仍つて案ずるに、刑事訴訟法第四三五条第六号に所謂「証拠をあらた
に発見したとき」とは、証拠の発見のあらたなることを謂い、その存在
が原判決の以前より継続すると、原判決以後新に発生したるとを問わないものと解
すべきを相当とする。然るに原判決によれば、右は原判決言渡前にその存在を知ら
ず又は提出不可能であつた証拠を該判決言渡後新に発見し又は提出可能となつた場
合を謂うものと解し、従つて本件再審請求人提出にかかるAより西ケ谷弁護人宛書
面が請求人に対する第一審判決言渡後作成せられたものであるから同条に所謂あら
たに発見した証拠に該当しないとの理由に基き、本件再審請求を理由なしとして棄
却したのは、前記法条の解釈を誤つた違法あるものであつて、弁護人の此の点の主
張は一応その理由があると謂うことができる。然し乍ら当裁判所において本件再審
請求事由として提出にかかるAの書面及び原審における同人に対する尋問調書の記
載を仔細に検討勘案すれば前記書面及びAの供述が刑事訴訟法第四三五条第六号に
所謂「明かな証拠」とは到底認めることができないから結局において本件再審請求
を棄却した原審決定は相当であつて、論旨第一点はその理由がないものと謂はねば
ならぬ。然らば論旨第三点も自らその理由がないの<要旨第二>であつて、原審決定
は毫も被告人の憲法上の権利を無視したと謂うが如き違法は存しない。又事実の取
調をする場合において必要があるときは、刑事訴訟法及び刑事訴訟規則
の規定により、証人を尋問できることは勿論であるが必ず証人尋問の手続によらな
ければならないと言う趣旨ではなく、適宜の方法によつて参考人を審訊すること
も、法の禁止するところでないものと解すべきであつて、原審がAを尋問するにつ
き証人として尋問する方式を履践しなかつたことを目して違法と謂うことはできな
いのは勿論、従つて亦右Aの尋問に際し、被告人及び弁護人に立会の機会を与えな
かつたとしても毫も違法の廉あるを見ない。論旨第二点も亦その理由がない。
 仍て主文のとおり決定する。
 (裁判長判事 中野保雄 判事 尾後貫莊太郎 判事 渡辺好人)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛