弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 被告人の上告趣意一について。
 論旨は単なる法令違反の主張であつて適法な上告理由とならない。(原判決は被
告人が婦女をして売淫に従事せしめる目的で職業紹介をしたものと認定している。
売淫が公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務であることは原判決の説示するとおりで
あるから、第一審判決が被告人を職業安定法六三条二号に問擬したのは相当であつ
て、所論のような違法はない。)
 同二及び七について。
 論旨はいずれも量刑不当の主張であつて適法な上告理由とならない。(なお所論
自首を認めるべき資料は記録に存しない。)
 同三について。
 憲法三七条二項は、被告人の申請にかかる証人をすべて喚問すべき義務を裁判所
に負わせる趣旨でないこと、しばしば当裁判所の判例(昭和二二年(れ)第二三〇
号、同二三年七月二九日大法廷判決等)に示されているとおりであるから、所論違
憲の主張は理由がない。
 同四について。
 論旨は、「調書」が強制脅迫によつて作られた任意性のないものであることを前
提として違意を主張する。しかし原判決にも判示されているとおり、第一審判決は
判示第一事実に対する証拠として被告人の検察官に対する供述調書を掲げているの
みであつて、司法警察員に対する供述調書はいずれの事実に対する証拠としても引
用していない。しかも右検察官に対する供述調書は原審において証拠とすることに
同意したものであるのみならず、右供述調書の内容が任意になされたものでないこ
とを疑うべき証跡は認められない。されば所論違憲の主張は前提を欠き採用するこ
とができない。
 同五及び六はいずれも独自の見解であつて、刑訴四〇五条の上告理由にあたらな
い。
 弁護人米村嘉一郎の上告趣意第一点について。
 論旨は単なる法令違反の主張であつて適法な上告理由とならない。(被告人本人
の上告趣意一についての説明参照)
 同第二点について。
 論旨は職業安定法六三条二号が憲法一四条に違反すると主張する。しかし職業安
定法六三条二号は職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給の適正を期するた
めに設けられた規定であつて、この目的に背き同法条に違反するものは何人といえ
どもひとしくこれによつて処罰せられ、その間何等の差別もなされない。されば所
論違憲の主張はその前提を欠き採用できない。
 同第三点について。
 論旨は量刑不当の主張に帰し適法な上告理由とならない。
 また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四〇八条、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決す
る。
  昭和三四年六月九日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    河   村   又   介
            裁判官    島           保
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    高   橋       潔
            裁判官    石   坂   修   一

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