弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1処分行政庁が原告P1に対し平成16年11月9日付けでした,被相続人
P2の平成▲年▲月▲日相続開始に係る同原告の相続税の更正処分及び過少
申告加算税の賦課決定処分(いずれも,平成17年4月6日付け異議決定及
び平成18年11月28日付け裁決による一部取消し後のもの)のうち,更
正については納付すべき税額1億5192万9700円を超える部分,賦課
決定については過少申告加算税6万8000円を超える部分を取り消す。
2処分行政庁が原告P3に対し平成16年11月9日付けでした,被相続人
P2の平成▲年▲月▲日相続開始に係る同原告の相続税の更正処分及び過少
申告加算税の賦課決定処分(いずれも,平成17年4月6日付け異議決定及
び平成18年11月28日付け裁決による一部取消し後のもの)のうち,更
正については納付すべき税額0円を超える部分,賦課決定については全部を
取り消す。
3処分行政庁が原告P4に対し平成16年11月9日付けでした,被相続人
P2の平成▲年▲月▲日相続開始に係る同原告の相続税の更正処分及び過少
申告加算税の賦課決定処分(いずれも,平成17年4月6日付け異議決定及
び平成18年11月28日付け裁決による一部取消し後のもの)のうち,更
正については納付すべき税額1億4388万3300円を超える部分,賦課
決定については過少申告加算税6万4000円を超える部分を取り消す。
4処分行政庁が原告P5に対し平成16年11月9日付けでした,被相続人
P2の平成▲年▲月▲日相続開始に係る同原告の相続税の更正処分及び過少
申告加算税の賦課決定処分(いずれも,平成17年4月6日付け異議決定及
び平成18年11月28日付け裁決による一部取消し後のもの)のうち,更
正については納付すべき税額1億1437万6500円を超える部分,賦課
決定については全部を取り消す。
5処分行政庁が原告P6に対し平成16年11月9日付けでした,被相続人
P2の平成▲年▲月▲日相続開始に係る同原告の相続税の更正処分(平成1
7年4月6日付け異議決定及び平成18年11月28日付け裁決による一部
取消し後のもの)及び過少申告加算税の賦課決定処分(上記異議決定による
一部取消し後のもの)のうち,更正については納付すべき税額399万63
00円を超える部分,賦課決定については全部を取り消す。
6処分行政庁が原告P7に対し平成16年11月9日付けでした,被相続人
P2の平成▲年▲月▲日相続開始に係る同原告の相続税の更正処分(平成1
7年4月6日付け異議決定及び平成18年11月28日付け裁決による一部
取消し後のもの)及び過少申告加算税の賦課決定処分(上記異議決定による
一部取消し後のもの)のうち,更正については納付すべき税額327万84
00円を超える部分,賦課決定については全部を取り消す。
7処分行政庁が原告P8に対し平成16年11月9日付けでした,被相続人
P2の平成▲年▲月▲日相続開始に係る同原告の相続税の更正処分(平成1
7年4月6日付け異議決定及び平成18年11月28日付け裁決による一部
取消し後のもの)及び過少申告加算税の賦課決定処分(上記異議決定による
一部取消し後のもの)のうち,更正については納付すべき税額327万84
00円を超える部分,賦課決定については全部を取り消す。
8処分行政庁が原告P9に対し平成16年11月9日付けでした,被相続人
P2の平成▲年▲月▲日相続開始に係る同原告の相続税の更正処分(平成1
7年4月6日付け異議決定及び平成18年11月28日付け裁決による一部
取消し後のもの)及び過少申告加算税の賦課決定処分(上記異議決定による
一部取消し後のもの)のうち,更正については納付すべき税額308万17
00円を超える部分,賦課決定については全部を取り消す。
9処分行政庁が原告P10に対し平成16年11月9日付けでした,被相続
人P2の平成▲年▲月▲日相続開始に係る同原告の相続税の更正処分(平成
17年4月6日付け異議決定及び平成18年11月28日付け裁決による一
部取消し後のもの)のうち,納付すべき税額190万4600円を超える部
分を取り消す。
10処分行政庁が原告P11に対し平成16年11月9日付けでした,被相続
人P2の平成▲年▲月▲日相続開始に係る同原告の相続税の更正処分(平成
17年4月6日付け異議決定及び平成18年11月28日付け裁決による一
部取消し後のもの)のうち,納付すべき税額228万8900円を超える部
分を取り消す。
11原告P1,原告P4,原告P5,原告P6,原告P9及び原告P11のそ
の余の請求をいずれも棄却する。
12訴訟費用は,被告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1処分行政庁が原告P1に対し平成16年11月9日付けでした,被相続人
P2の平成▲年▲月▲日相続開始に係る同原告の相続税の更正処分及び過少
申告加算税の賦課決定処分(いずれも,平成17年4月6日付け異議決定及
び平成18年11月28日付け裁決による一部取消し後のもの)のうち,更
正については納付すべき税額1億5124万5900円を超える部分,賦課
決定については過少申告加算税6万8000円を超える部分を取り消す。
2主文第2項と同旨
3処分行政庁が原告P4に対し平成16年11月9日付けでした,被相続人
P2の平成▲年▲月▲日相続開始に係る同原告の相続税の更正処分及び過少
申告加算税の賦課決定処分(いずれも,平成17年4月6日付け異議決定及
び平成18年11月28日付け裁決による一部取消し後のもの)のうち,更
正については納付すべき税額1億4323万7100円を超える部分,賦課
決定については全部を取り消す。
4処分行政庁が原告P5に対し平成16年11月9日付けでした,被相続人
P2の平成▲年▲月▲日相続開始に係る同原告の相続税の更正処分及び過少
申告加算税の賦課決定処分(いずれも,平成17年4月6日付け異議決定及
び平成18年11月28日付け裁決による一部取消し後のもの)のうち,更
正については納付すべき税額1億1382万3000円を超える部分,賦課
決定については全部を取り消す。
5処分行政庁が原告P6に対し平成16年11月9日付けでした,被相続人
P2の平成▲年▲月▲日相続開始に係る同原告の相続税の更正処分(平成1
7年4月6日付け異議決定及び平成18年11月28日付け裁決による一部
取消し後のもの)及び過少申告加算税の賦課決定処分(上記異議決定による
一部取消し後のもの)のうち,更正については納付すべき税額399万55
00円を超える部分,賦課決定については全部を取り消す。
6主文第6項と同旨
7主文第7項と同旨
8処分行政庁が原告P9に対し平成16年11月9日付けでした,被相続人
P2の平成▲年▲月▲日相続開始に係る同原告の相続税の更正処分(平成1
7年4月6日付け異議決定及び平成18年11月28日付け裁決による一部
取消し後のもの)及び過少申告加算税の賦課決定処分(上記異議決定による
一部取消し後のもの)のうち,更正については納付すべき税額307万35
00円を超える部分,賦課決定については全部を取り消す。
9主文第9項と同旨
10処分行政庁が原告P11に対し平成16年11月9日付けでした,被相続
人P2の平成▲年▲月▲日相続開始に係る同原告の相続税の更正処分(平成
17年4月6日付け異議決定及び平成18年11月28日付け裁決による一
部取消し後のもの)のうち,納付すべき税額228万0700円を超える部
分を取り消す。
第2事案の概要
,(「」。),1本件は被相続人を亡P2とする相続以下本件相続というに際し
妻及び子3名(以下これらの相続人4名を「相続人ら」という)並びに生命。
保険金等を取得した孫6名である原告ら10名が,妻が取得する同族会社の
株式の価額につき配当還元方式(後記2(3)ウ)による評価を前提として相続
人らがした当初の遺産分割の合意(以下「第1次遺産分割」という)に基づ。
き,相続税の各申告をしたが,通達に従い同族会社の発行済株式数につき議
決権のない株式数を除外して計算すると配当還元方式の適用を受けられず,
類似業種比準方式(後記2(3)イ)による高額の評価を前提として課税される
ことにつき錯誤があったので,配当還元方式の適用を受けられるように各相
続人が取得する株式数を調整した上でした新たな遺産分割の合意(以下「第
2次遺産分割」という)に基づき,法定申告期限後,更正請求期間内に更正。
請求又は修正申告をしたところ,処分行政庁から,上記株式の評価は第1次
遺産分割の内容に従い類似業種比準方式によるべきであるとして,当初の各
申告に係る各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分を受けたため,
異議決定及び審査裁決により取り消された部分を除き,各更正処分の一部及
び過少申告加算税の各賦課決定処分の一部又は全部の取消しを求めている事
案である。
なお,第1次遺産分割に基づく課税価格は,別表1「課税価格及び納付税
額の計算明細表」順号⑪の合計欄のとおり38億6750万2000円であ
り,第2次遺産分割に基づく課税価格は,別表1の2「課税価格及び納付税
額の計算明細表」順号⑪の合計欄のとおり20億0351万5000円であ
り,その差額は,P2の妻である原告P3が取得する同族会社の株式の評価
の差異から生じている。
2関係法令等の定め
(1)平成15年法律第8号による改正前の相続税法(以下「相続税法」とい
う)。
ア3条1項1号
被相続人の死亡により生命保険契約又は損害保険契約の保険金を取得
した保険金受取人が相続人以外の者であるときは,当該保険金のうち,
被相続人が負担した保険料の金額の,当該契約に係る保険料で被相続人
の死亡の時までに払い込まれたものの全額に対する割合に相当する部分
は,当該保険金受取人が遺贈により取得したものとみなす。
イ16条
相続税の総額は,同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得
したすべて者に係る相続税の課税価格に相当する金額の合計額から,そ
の遺産に係る基礎控除額(15条1項)を控除した金額を,当該被相続
人の同条2項に規定する相続人の数に応じた相続人が民法900条及び
901条の規定による相続分に応じて取得したものとした場合における
その各取得金額(当該相続人が,1人である場合又はない場合には,当
該控除した金額)につき,それぞれの金額を次の表の左欄に掲げる金額
に区分して,それぞれの金額に同表の右欄に掲げる率を乗じて計算した
金額を合計した金額とする。
800万円以下の金額100分の10
800万円を超え1600万円以下の金額100分の15
1600万円を超え3000万円以下の金額100分の20
3000万円を超え5000万円以下の金額100分の25
5000万円を超え1億円以下の金額100分の30
1億円を超え2億円以下の金額100分の40
2億円を超え4億円以下の金額100分の50
4億円を超え20億円以下の金額100分の60
20億円を超える金額100分の70
ウ19条1項
相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続の開始前3年以内に
当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合
においては,その者については,当該贈与により取得した財産の価額を
相続税の課税価格に加算した価額を相続税の課税価格とみなし,15条
から18条までの規定を適用して算出した金額をもって,その納付すべ
き相続税額とする。
エ22条
同法に特別の定めのあるものを除くほか,相続,遺贈又は贈与により
取得した財産の価額は,当該財産の取得の時における時価により,当該
財産の価額から控除すべき債務の金額は,その時の現況による。
オ32条1号
,相続税又は贈与税について申告書を提出した者又は決定を受けた者は
次の各号のいずれかに該当する事由により当該申告又は決定に係る課税
価格及び相続税額又は贈与税額(当該申告書を提出した後又は当該決定
を受けた後修正申告書の提出又は更正があった場合には,当該修正申告
又は更正に係る課税価格及び相続税額又は贈与税額)が過大となったと
きは,当該各号に規定する事由が生じたことを知った日の翌日から4月
以内に限り,納税地の所轄税務署長に対し,その課税価格及び相続税額
又は贈与税額につき国税通則法23条1項の規定による更正の請求をす
ることができる。
①55条の規定により分割されていない財産について民法(904条
の2を除く)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って課税価。
格が計算されていた場合において,その後当該財産の分割が行われ,
共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税
価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従って計算された課税価格と
異なることとなったこと(1号。)
②∼⑦(2号ないし7号(略))
カ55条
相続又は包括遺贈により取得した財産に係る相続税について申告書を
提出する場合又は当該財産に係る相続税について更正若しくは決定をす
る場合において,当該相続又は包括遺贈により取得した財産の全部又は
,一部が共同相続人又は包括受遺者によってまだ分割されていないときは
その分割されていない財産については,各共同相続人又は包括受遺者が
民法(904条の2を除く)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に。
従って当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算するものとす
る。ただし,その後において当該財産の分割があり,当該共同相続人又
は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続
分又は包括遺贈の割合に従って計算された課税価格と異なることとなっ
た場合においては,当該分割により取得した財産に係る課税価格を基礎
として,納税義務者において申告書を提出し,若しくは32条の更正の
請求をし,又は税務署長において更正若しくは決定をすることを妨げな
い。
(2)国税通則法及び同法施行令
ア国税通則法23条1項1号
,,納税申告書を提出した者は次の各号のいずれかに該当する場合には
当該申告書に係る国税の法定申告期限から1年以内に限り,税務署長に
対し,その申告に係る課税標準等又は税額等(当該課税標準等又は税額
等に関し更正があった場合には,当該更正後の課税標準等又は税額等)
につき更正をすべき旨の請求をすることができる(同条1項。)
①当該申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関
する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあった
ことにより,当該申告書の提出により納付すべき税額(当該税額に関
し更正があった場合には,当該更正後の税額)が過大であるとき(同
項1号。)
②,③(同項2号,3号(略))
イ国税通則法23条2項3号及び同法施行令6条1項2号
(ア)納税申告書を提出した者又は同法25条の規定による決定を受け
た者は,次の各号のいずれかに該当する場合(納税申告書を提出した
者については,当該各号に掲げる期間の満了する日が上記アに規定す
る期間の満了する日後に到来する場合に限る)には,上記アの規定に。
かかわらず,当該各号に掲げる期間において,その該当することを理
由として上記アの規定による更正の請求をすることができる(同法2
3条2項。)
①,②(同項1号,2号(略))
③その他当該国税の法定申告期限後に生じた前二号に類する政令で
定めるやむを得ない理由があるとき。当該理由が生じた日の翌日
から起算して2月以内(同項3号)
(イ)同法23条2項3号(更正の請求)に規定する政令で定めるやむ
を得ない理由は,次に掲げる理由とする(同法施行令6条1項。)
①(同項1号(略))
②その申告,更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基
礎となった事実に係る契約が,解除権の行使によって解除され,若
,しくは当該契約の成立後生じたやむを得ない事情によって解除され
又は取り消されたこと(同項2号。)
③∼⑤(同項3号ないし5号(略))
(3)財産評価基本通達(昭和39年4月25日付け直資56,直審(資)17
国税庁長官通達。ただし,平成15年5月15日付け課評2−6ほかによ
る改正前のもの。以下「評価通達」という。乙9)
ア評価通達178(取引相場のない株式の評価上の区分)
(ア)取引相場のない株式の価額は,評価しようとするその株式の発行
会社(以下「評価会社」という)の規模が後記(イ)の大会社,中会社。
又は小会社のいずれに該当するかに応じて評価する。ただし,同族株
主以外の株主等が取得した株式の価額は,後記ウ(ア)の評価通達18
()。8同族株主以外の株主等が取得した株式の定めによって評価する
(イ)「大会社」は,次の①又は②のいずれかの会社をいう。
①従業員数が100人以上の会社
②卸売業,小売・サービス業,その他の業種ごとに,(a)総資産価
額(帳簿価額によって計算した金額)及び従業員数並びに(b)直前
期末以前の1年間における取引金額が,評価通達178の表に定め
る金額・員数に該当する会社
イ評価通達179(取引相場のない株式の評価の原則。類似業種比準方
式の原則)
,,評価会社の規模が大会社に該当する場合の株式の価額は原則として
類似業種比準価額による評価(以下「類似業種比準方式」という)をす。
る。
ウ評価通達188,188−2及び188−4(同族株主以外の株主等
が取得した株式の評価。配当還元方式及びその適用の要件等)
(ア)後記(イ)の中心的な同族株主のいる会社の株主のうち,中心的な
同族株主以外の同族株主で,その者の取得後の株式数がその会社の発
行済株式数の5%未満であるものの取得した株式の価額は,同通達1
88−2(同族株主以外の株主等が取得した株式の評価)に定める下
記の計算式により計算した配当還元価額による評価(以下「配当還元
方式」という)とする(同通達188(2),188−2。。)

その株式に係る年配当金額その株式の1株当たりの資本金の額
×
10%50円
(イ)「同族株主」とは,課税時期における評価会社の株式のうち,株
主の1人及びその同族関係者(法人税法施行令4条に規定する特殊の
関係のある個人又は法人をいう。以下同じ)の有する株式の合計数が。
その会社の発行済株式数の30%以上である場合におけるその株主又
は同族関係者をいう。ただし,その評価会社の株式のうち,株主の1
人及びその同族関係者の有する株式の合計数が最も多いグループの有
する株式の合計数が,その会社の発行済株式数の50%以上である会
社にあっては,そのグループに属する株主又は同族関係者をいう(同
通達188(1)。)
「中心的な同族株主」とは,課税時期において同族株主の1人並び
にその株主の配偶者,直系血族,兄弟姉妹及び1親等の姻族(これら
の者の同族関係者である会社のうち,これらの者の有する株式の合計
数がその会社の発行済株式数の25%以上である会社を含む)の有す。
る株式の合計数がその会社の発行済株式数の25%以上である場合に
おけるその株主をいう(同通達188(2)。)
(ウ)議決権を有しないこととされる株式がある場合の発行済株式数等
上記(ア)及び(イ)における発行済株式数の算定に当たって,評価会
社の株式のうち商法(平成17年法律第87号による改正前のもの。
以下同じ)241条3項の規定により評価会社の株式につき議決権を。
有しないこととされる会社があるときは,当該会社の有する評価会社
の株式(以下「相互保有株式」という)の数は0とし,評価会社の発。
行済株式数から相互保有株式数を控除した数をもって評価会社の発行
済株式数とする。評価会社の株主の同族関係者に該当するかどうかを
判定するときにおいても,同様とする(同通達188−4。)
3前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易
に認められる事実)
(1)アP2は,平成▲年▲月▲日に死亡し,相続が開始した。
P2の妻である原告P3並びに両名の間の子である長男・原告P1,
二男・原告P4及び長女・原告P5の4名が,P2の共同相続人となっ
た。
イP2の相続に際し,P2の孫である原告P6は700万4788円の
生命保険金等を,同じくP2の孫である原告P7,原告P8,原告P9,
原告P10及び原告P11は各560万3823円の生命保険金等をそれ
ぞれ取得した(乙1)。
,(「」。)(2)ア被相続人の相続財産にはP12株式会社以下本件会社という
の株式155万4024株が含まれており,本件相続の開始前,原告P
3は,本件会社の株式25万8500株を有していた(甲1,3)。
本件相続の開始当時,本件会社の従業員数は729人であり,評価通
達178にいう大会社(従業員数が100人以上の会社)に該当するも
のであった(甲3)。
イ本件会社の株主のうち,P13株式会社(以下「P13」という)及。
びP14株式会社(以下「P14」という)については,本件会社が上。
記2社(以下「関連2社」という)の発行済株式の総数の4分の1を超。
える株式を保有していたため,商法241条3項の規定により本件会社
の株式につき議決権を有しないこととされる会社であった。
このため,評価通達188の適用上,本件会社における各株主の持株
割合の計算に当たっては,本件会社の株式のうち,P13の有する株式
11万7000株及びP14の有する株式43万9000株(合計55
万6000株)は,相互保有株式として発行済株式数から控除されるべ
きものであった(甲3,乙10,11)。
ウ相続人らは,本件相続に係る遺産分割の協議に際し,相続税の負担等
につき,P15税理士(以下「本件税理士」という)に相談し,同税理。
士の助言を受けていた(甲3)。
(3)ア相続人らは,平成15年5月,遺産分割の協議を行い,被相続人の相
続財産である本件会社の株式155万4024株については,原告P3
が71万8300株,原告P1及び原告P4が各35万株,原告P5が
13万5724株を取得する旨を約し,同月17日,この約定を内容と
する第1次遺産分割の合意をした。この株式の配分は,これにより配当
還元方式の適用を受けられる旨の本件税理士の助言に基づき,配当還元
,方式の適用を受けられる配分の方法として相続人らの間で協議した結果
合意に至ったものであった(甲1,3)。
イ上記アの株式の配分により,本件会社において,原告P3及び同族関
係者のグループの持株割合は50%以上となったが,原告P3並びに同
原告の直系血族,兄弟姉妹及び一親等の姻族の有する株式数の合計数の
持株割合は25%に満たなかったため,同原告は,評価通達188の適
,。()用上中心的な同族株主以外の同族株主に該当することとなった甲3
ウ上記アの株式の配分による場合,評価通達188等の適用上,本件会
社における原告P3の持株割合は,(a)本件会社の発行済株式数から,
上記(2)イの関連2社の保有に係る株式数を控除して計算すると,5%以
上(類似業種比準方式の適用対象)となるものの,(b)これを控除しな
いで計算すると,5%未満(配当還元方式の適用対象)となるところ,
相続人らは,その控除を要することの認識を欠いたまま,第1次遺産分
割の合意に至った(甲3,乙10,11)。
(4)ア原告らは,第1次遺産分割の合意の成立後,上記(3)アの株式の配分
の内容を前提として,原告P3が取得する株式を配当還元方式により評
価し,同年6月19日,別紙1「課税処分等の経緯」の申告欄記載のと
おり,本件相続に係る相続税の各申告をした(乙1)。
同月26日,本件相続に係る相続税の法定申告期限が経過した。
イ上記アの相続税の申告後,相続人らは,第1次遺産分割による株式の
配分を前提とする本来の評価としては,評価通達188等の適用上,本
件会社の発行済株式数から,上記(2)イの関連2社の保有に係る株式数を
相互保有株式として控除して計算すべきであり,これによると原告P3
の持株割合は5%以上となり,類似業種比準方式の適用による高額の評
価を前提とした相続税の課税を受けるべきことを認識するに至った(甲。
3,乙10,11)
(5)アそこで,相続人らは,同年10月,改めて遺産分割の再協議を行い,
原告P3の取得する本件会社の株式数を15万4024株減少させて5
6万4276株とし,その減少分を2分して,原告P1及び原告P4が
取得する株式を各7万7012株ずつ増加させて各42万7012株と
する旨を約し,同月28日,本件会社の株式の配分はこの約定を内容と
し,それ以外は第1次遺産分割と同じ内容とする旨の第2次遺産分割の
合意をした。この株式の配分は,関連2社の保有に係る株式数を控除し
て計算しても,原告P3の持株割合が5%未満となり,配当還元方式の
適用が受けられるように,相続人らの間で再協議した結果,合意に至っ
たものであった(甲2,3)。
イそして,原告らは,第2次遺産分割の分割内容を前提とした上で,原
告P3が取得する株式を配当還元方式により評価し,同年11月6日付
けで,次の(ア)ないし(エ)のとおり更正の請求又は修正申告をした(甲。
2,乙3及び4の各1・2,同5)
,()(ア)原告P3は株式の分割の錯誤本件会社の株式の配分数の錯誤
及び相続税法20条の規定による相続税額の控除(以下「相次相続控
」。),「」除というの適用漏れがあったとして別紙1課税処分等の経緯
の更正の請求欄記載のとおり,更正の請求をした(乙3の1)。
(イ)原告P5は,相次相続控除及び相続税法19条1項括弧書の規定
による控除(以下「贈与税額控除」という)の適用漏れがあったとし。
て,別紙1「課税処分等の経緯」の更正の請求欄記載のとおり,更正
の請求をした(乙3の2)。
(ウ)原告P10及び同P11は,贈与税額控除の適用漏れがあったと
して,別紙1「課税処分等の経緯」の更正の請求欄記載のとおり,更
正の請求をした(乙4の1・2)。
(エ)原告P1及び原告P4は,第2次遺産分割により本件会社の株式
の取得数が増加したとして,別紙1「課税処分等の経緯」の修正申告
欄記載のとおり,修正申告をした(乙5)。
(6)ア処分行政庁は,本件会社の株式の評価は第1次遺産分割の内容に従い
類似業種比準方式によるべきであるとして,いずれも平成16年11月
9日付けで,別紙1「課税処分等の経緯」の「更正処分等」欄及び「更
正すべき理由がない旨の通知」欄記載のとおり,原告らに対し,各更正
処分(ただし,原告P10及び同P11については,贈与税額控除の適
用漏れを理由とする減額更正処分)をし,原告P10及び原告P11を
除く原告らに対し,過少申告加算税の各賦課決定処分をするとともに,
原告P3及び原告P5による更正の請求に対し,更正をすべき理由がな
い旨の通知処分をした。
イなお,処分行政庁は,第2次遺産分割は,遺産の分割ではなく,新た
な取引行為であり,これによる原告P1及び原告P4の株式の取得は原
告P3からの贈与であるとして,原告P1及び原告P4に対し,同年1
2月15日付けで平成15年分の贈与税の決定処分及び無申告加算税の
賦課決定処分をしたが,平成18年11月28日,国税不服審判所の裁
決において,第1次遺産分割は要素の錯誤により無効であり,第2次遺
産分割における原告P1及び原告P4の株式の取得は贈与ではなく遺産
の分割によるものであるとして,上記贈与税の決定及び無申告加算税の
賦課決定はいずれも取り消された(甲4,5,7)。
(7)原告らは,上記(6)アの各更正処分及び各賦課決定処分を不服として,
処分行政庁に対し,平成17年1月7日,異議の申立てをし,処分行政庁
は,別紙1「課税処分等の経緯」の異議決定欄記載のとおり,原告らに対
し,同年4月6日付けで一部取消しを内容とする異議決定をした。原告ら
は,これを不服として,同年5月2日,国税不服審判所長に対し,審査請
求をし,国税不服審判所長は,別紙1「課税処分等の経緯」の裁決欄記載
のとおり,原告らに対し,平成18年11月28日付けで一部取消しを内
容とする裁決をした(以下,上記異議決定及び裁決により一部取消し後の
各更正処分及び各賦課決定処分をそれぞれ「本件各更正処分」及び「本件
各賦課決定処分」という(甲3)。)。
(8)被告の主張する税額等の計算根拠は,別紙2「課税の根拠及び計算(類
似業種比準方式」記載のとおりであり(本件会社の株式の類似業種比準)
方式による評価額は,別表10−1ないし10−3「P12株式(原告P
3所有分)の評価額の計算明細書」記載のとおりである,原告P3の取。)
得する本件会社の株式の評価額以外の点については,争いはない。
4争点及び争点に関する当事者の主張の要旨
本件の争点は,当初の遺産分割に基づく株式の配分を前提とする相続税の
申告がされ,法定申告期限後,課税価格の前提となる株式の評価方法の誤信
を原因とする当該遺産分割の錯誤による無効を理由として,株式の配分を変
,,,更する新たな遺産分割がされた場合に当該申告をした者は課税庁に対し
更正請求期間内に更正の請求をすることにより,当初の遺産分割の無効を主
張して新たな遺産分割に基づく株式の配分を前提とする相続税額の減額更正
,,を求めることができるか否かでありこの点に関する当事者の主張の要旨は
以下のとおりである。
(1)原告らの主張の要旨
ア更正の請求は,納税者が自らの申告により確定させた税額が過大であ
ることを法定申告期限後に気付いた場合に,納税者の側からその変更・
是正を求めることができるとする,納税者の権利を救済することを目的
とする制度である。
本件のように錯誤による無効の場合はもちろん,仮に法定申告期限後
の全員の合意による解除であるとしても,更正の請求が更正請求期間内
に行われており,国税通則法23条1項1号所定の更正の事由に該当す
る以上,処分行政庁は減額更正を認めるべき法的義務がある。
イ更正の請求においては,通常の錯誤と課税負担の錯誤を区別すること
なく,その無効を主張することができ,更正請求期間内であるにもかか
わらず,錯誤を主張することができないとは到底考えられない。特に,
本件は,法定申告期限の5か月後,更正請求期間内に自発的に誤りに気
付いて更正の請求をしている事例であり,原告らは,課税当局から調査
を受け,誤りの指摘を受けてから更正の請求をしたものではないのであ
って,当然に更正が認められるべき事例である。
,,ウ本件では第1次遺産分割が錯誤により無効であることを前提として
更正請求期間内に第2次遺産分割及びこれに基づく株式名簿の名義書換
えを経た上で更正の請求をしているので,遺産の未分割の状態で更正の
請求をしたものではないから,相続税法55条の適用を受ける事例では
なく,国税通則法23条1項1号に基づく更正の請求が可能である。
エ処分行政庁から増額更正処分と更正の請求に対する更正すべき理由が
ない旨の通知処分がされた場合,税額等を争う納税者は,増額更正処分
の取消訴訟を提起すれば足りる。増額更正処分の内容は,更正をすべき
理由がない旨の通知処分の内容を包摂する関係にあり,更正処分と別個
に通知処分を争う利益はない。増額更正処分に対する取消訴訟の中で,
通知処分における減額更正をしない旨の判断に存する違法を主張して,
,申告税額等を下回る額にまで増額更正処分の取消しを求めることができ
更正の請求の理由の有無についても,更正処分の取消訴訟において実質
的に審理すべきである。
(2)被告の主張の要旨
ア租税法規は,経済活動ないし経済現象を課税の対象としており,それ
らは第一次的には私法によって規律されていることから,その私法上の
法律関係が無効等であれば,その法律関係を前提に行われた申告は,原
則として「課税標準若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に,
従つていなかつたこと(国税通則法23条1項1号)に該当すると考え」
られる。
したがって,遺産分割が一般の要素の錯誤により無効である場合には,
そもそも遺産分割がされていない状態にあると解されるので,相続税法
55条により法定相続分等に従って遺産を取得したものとして計算され
,「()た相続税の税額よりも当該申告書の提出により納付すべき税額中略
が過大であるとき」は,国税通則法23条1項1号による更正の請求が
可能である(なお,その場合の手続につき,後記ウ参照。)
イしかしながら,通常の錯誤と課税負担の錯誤は同列には論じられない。
納税義務者は,納税義務の発生の原因となる私法上の法律行為を行った
場合,当該法律行為の際に予定していなかった納税義務が生じたり,当
該法律行為の際に予定していたものよりも重い納税義務が生じることが
判明した結果,この課税負担の錯誤が当該法律行為の要素の錯誤に当た
るとして,当該法律行為が無効であることを,法定申告期限を経過した
時点で主張することは許されない。
申告納税方式を採用し,申告義務の違反及び脱税に対しては加算税を
課している結果,安易に納税義務の発生の原因となる法律行為の錯誤無
効を認めて納税義務を免れさせたのでは,納税者間の公平を害し,租税
法律関係を不安定なものとし,ひいては申告納税方式の破壊につながる
からである。
そもそも,申告納税制度の下では,自己の課税標準・税額等に関わる
事情について最も精通した納税者自身が,自己の責任において,自己の
課税標準・税額などについて精査・検討を尽くした上で正確な申告を行
い,自己の納税義務を確定させることが期待されている。納税義務の成
立から法定申告期限までに相当の期間が設けられているのも,かかる精
査・検討を尽くすための時間的余裕を納税者に与える趣旨である。課税
庁は,納税者が,ある法律行為が有効であることを前提に申告をした場
合,当該法律行為が有効であることを信頼することが合理的であり,法
定申告期限後に,課税処分又は修正申告の勧奨を受けるや,にわかに課
税庁に対し,納税義務の発生原因となる法律行為に課税負担の錯誤があ
ったとして法律行為の無効を主張することは,課税庁の合理的な期待・
信頼を裏切るものである上,納税者自身が前提としていた当該法律行為
の有効性を自ら翻すものであり,納税者について法定申告期限までに自
己の課税標準や税額等について精査・検討をする機会が保障されている
ことにかんがみると,租税法上の信義則ないし禁反言の法理に反し,許
されないものというべきである。
ウまた,遺産分割が一般の要素の錯誤により無効であり,納税者がこれ
を主張し得る場合でも,上記アのとおり,その場合にはそもそも遺産分
割が行われていない状態にあるものと解されるので,更正の請求をする
には,まず,相続税法55条の規定による法定相続分等に従った計算に
基づき,修正申告,更正又は決定を経ることが必要であり,その上で,
新たな遺産分割が行われた場合には,相続税法32条1号による更正の
請求又は同法31条1項による修正申告をすることになるが,相続税法
55条の規定による法定相続分等に従った計算による修正申告,更正又
は決定を経ていないときは,相続税法32条1号所定の同法「第五十五
条の規定により民法(中略)の規定による相続分(中略)に従つて課税
価格が計算されていた場合において,その後当該財産の分割が行われ」
た場合に該当しないため,相続税法32条1号に基づく更正を請求する
ことはできない。
なお,国税通則法23条2項に基づく更正の請求は,いったん適法に
成立した課税関係がその後の後発的事情によってその課税の前提となっ
た経済的成果の基因たる私法上の事実関係に変動が生じた場合に,変動
後の事実関係に適合せしめるための納税者の救済措置制度であり,遺産
分割による錯誤無効は,後発的無効に当たらないので,国税通則法23
条2項及び国税通則法施行令6条に掲げる事由に当たらない。
エなお,増額更正処分と更正の請求に対する更正すべき理由がない旨の
通知処分がされた場合,増額更正処分の取消訴訟の中で,通知処分にお
ける減額更正をしない旨の判断の違法を主張して,申告税額等を下回る
額にまで増額更正処分の取消しを求めることができることは,一般論と
しては異論はない。しかし,そのことは,更正の請求の理由の有無につ
いて,更正処分の取消訴訟において実質的に審理されることと同義では
なく,原告らは,申告税額等を下回る額にまで増額更正処分の取消しを
求める方法として,端的に,本件各更正処分によって確定された税額が
処分時に客観的に存在した税額を上回るか否かを問題とすべきである。
第3当裁判所の判断
1原告は,第1次遺産分割における本件会社の株式の配分につき,課税負担
の前提事項(株式の評価方法)の錯誤があり,これが要素の錯誤に当たると
して,当該遺産分割が無効であると主張し,被告は,原告は課税負担の錯誤
による法律行為の無効を法定申告期限後に主張することは許されないと主張
するので,まず,前提問題として,第1次遺産分割の私法上の効力について
検討する。
(1)前記前提事実,証拠(甲3ないし5)及び弁論の全趣旨を総合すると,
第1次遺産分割及び第2次遺産分割の経緯として,前提事実のほか,次の
事実が認められる。
ア相続人らは,第1次遺産分割の協議に際し,相続税の負担等について
本件税理士に相談しながら,配当還元方式の適用を受けられる方法で本
件会社の株式を配分する方法を協議し,事前に,本件税理士から,当該
株式の配分につき前提事実(3)アの配分方法によれば配当還元方式の適用
を受けられるとの助言を受け,これに従い,当該株式の配分につき当該
配分方法を採用した第1次遺産分割の合意に至った。
イ本件税理士は,相続人らに上記助言をするに当たり,事前に,本件会
社の株式につき,配当還元方式の適用の可否について丸亀税務署の職員
に相談し,一般的な回答として,同方式を適用して差し支えない旨の回
答を受け,その旨を相続人らに伝えた(ただし,評価通達の基準を充足
する株式の配分をすればその適用を受け得る旨の一般的な回答の範囲を
超えて,具体的に前提事実(3)アの配分方法によってその適用を受けられ
ることまで回答を受けたことを認めるに足りる客観的な証拠はない。。)
,,ウところが第1次遺産分割に基づく相続税の申告及び法定申告期限後
相続人らは,評価通達に基づく相互保有株式の控除の必要性を看過して
いたため前提事実(3)アの配分方法では配当還元方式の適用を受けられな
いことに気付いた。これは,処分行政庁の調査時の指摘,修正申告の勧
奨,更正処分等を契機とするものではなく,税務調査の開始等の前に,
相続人らが自ら気付いたものであった。
エそこで,相続人らは,評価通達に基づく相互保有株式の控除をしても
配当還元方式の適用を受けられるように,本件会社の株式の配分の方法
を,前提事実(3)アから同(5)アの配分方法に変更し,これを採用した第
2次遺産分割の合意に至った(なお,この合意に基づく本件会社の株主
名簿の名義書換えも了した。相続人らが第2次遺産分割の合意(株主。)
名簿の名義書換えを含む)及びこれに基づく更正の請求又は修正申告を。
したのは,法定申告期限後,更正請求期間内であった。
(2)そこで,前提事実及び上記(1)の認定事実を踏まえ,本件における課税
負担の前提事項の錯誤が要素の錯誤に当たるか否か,その錯誤につき重大
な過失があったか否かについて,以下検討する。
ア前提事実及び上記(1)の認定事実によれば,第1次遺産分割の協議にお
いては,本件会社の株式の評価につき,配当還元方式によるか類似業種
比準方式によるかで合計約19億円の相違が生ずることとなることから
(別表3,別表3の2参照,配当還元方式の適用を受けられる株式の配)
分方法を採ることを分割の方針として明示した上で,その方法について
本件税理士に相談し,同税理士から所轄税務署との相談も踏まえた検討
結果に基づく助言を受け,その助言に従い,配当還元方式の適用を受け
られる株式の配分方法との誤信の下に,第1次遺産分割の合意に至って
いるものと認められることからすれば,原告P3が遺産分割により取得
する株式について,配当還元方式による評価によることが,第1次遺産
分割に当たっての重要な動機として明示的に表示され,第1次遺産分割
の意思表示の内容となっていたものと認められ,かつ,その評価方法に
ついての動機の錯誤がなかったならば相続人らはその意思表示をしなか
ったであろうと認められるから,第1次遺産分割のうち株式の配分に係
る部分には要素の錯誤があったと認めるのが相当である。
イ前提事実及び上記(1)の認定事実によれば,相続人らが本件会社の株式
の評価方法を誤信したのは,本件税理士が評価通達上控除を要する関連
会社の相互保有株式の存否の確認を怠って誤った助言をしたことに起因
するものであり,事柄の内容も税務の専門家でない相続人らにとって同
税理士の助言の誤りに直ちに気付くのが容易なものとはいえないと認め
られることからすれば,その誤信について,相続人らに過失があったこ
とは否めないものの,過失の程度は通常要求される義務を著しく欠いて
いるものとまでは認められず,相続人らに重大な過失があったというこ
とはできない。
ウしたがって,本件における遺産分割の私法上の効力については,第1
次遺産分割のうち,本件会社の株式の配分に係る部分は,要素の錯誤に
より無効であり,その余の部分は有効であって,当該株式の配分に係る
部分は,第2次遺産分割により補充されており,これらの遺産分割の効
力は相続開始時に遡及して生じている(民法909条)というべきであ
る(本件では,本件会社の株式以外の多数の不動産,他の有価証券,現
,,,金・預貯金動産貸付金債権等の相続財産の配分について錯誤はなく
前記認定の事実経過に徴すると,本件株式の配分に係る錯誤はそれ以外
の財産の配分に何ら影響を及ぼすものではないと認められる以上,合意
の内容としても対象財産の範囲で截然と区別し得る可分なものと評価で
,,きるので当事者の合理的意思解釈及び法律関係の安定性の観点からも
第1次遺産分割のうち,本件会社の株式の配分に係る部分のみが一部無
効となるものと解するのが相当である。。)
2そこで,第1次遺産分割のうち本件会社の株式の配分に係る部分が課税負
担の前提事項の錯誤により無効であることを前提として,第1次遺産分割に
基づく相続税の申告をした原告らが,法定申告期限後,更正請求期間内に,
処分行政庁に対し,更正の請求において当該遺産分割の一部の無効を主張す
ることの可否について検討する。
,,,(1)我が国の租税法制は相続税に関しその課税標準等の決定については
最も相続関係の事情に通じている納税義務者自身の申告に基づくものとす
る観点から,相続税法において申告納税制度を採用するとともに,相続税
額の減額更正については,租税法律関係の早期安定等の観点から,法定申
告期限後は法律が特に認めた手続である更正の請求による場合に限るもの
とし,国税通則法及び相続税法において更正の請求の事由を限定列挙した
上でその請求を所定の期間内に限定している。
したがって,納税義務の発生の原因となる遺産分割の効果を前提として
相続税の申告がされた後,法定申告期限後に,当該遺産分割の要素の錯誤
による無効を主張して相続税額の減額更正をするには,法定の更正の請求
の事由のいずれかに該当することを要するところ,例えば分割内容自体の
錯誤が要素の錯誤に該当することにより当該遺産分割が無効とされる場合
には,課税の根拠となる相続財産の取得を欠くことになるから,国税通則
法23条1項1号にいう「当該申告書に記載した課税標準等若しくは税額
等の計算が国税に関する法律の規定に従つていなかつたこと」との事由に
該当することとなり,その結果「当該申告書の提出により納付すべき税額,
(中略)が過大であるとき」に該当するときは,同号の規定による更正の
請求をすることができるものと解される。
なお,遺産分割による財産の移転を課税の根拠とする場合において,国
税通則法23条1項1号にいう「当該計算に誤りがあつたこと」とは,当
該遺産分割の効果を前提とした数額の計算に誤りがあることをいうもので
,,あるので遺産分割の錯誤無効の場合はこれには当たらないものと解され
また,国税通則法23条2項3号及び同法施行令6条1項2号の規定によ
る更正の請求は,当該法律行為が有効に成立した後に後発的事由によって
その効力の喪失その他の法律関係の変動が生じた場合に,課税の内容をそ
の変動後の法律関係に適合させるための更正の手続であるところ,遺産分
割の錯誤無効は,後発的事由ではなく,原始的事由であるから,国税通則
法23条2項3号及び同法施行令6条1項2号に掲げる事由には当たらな
いものと解される。
,,,(2)これに対し分割内容自体の錯誤と異なり課税負担の錯誤に関しては
それが要素の錯誤に該当する場合であっても,我が国の租税法制が,相続
税に関し,申告納税制度を採用し,申告義務の懈怠等に対し加算税等の制
裁を課していること,相続税の法定申告期限は相続の開始を知った日から
原則として10月以内とされており,申告者は,その間に取得財産の価値
の軽重と課税負担の軽重等を相応に検討し忖度した上で相続税の申告を行
い得ること等にかんがみると,法定申告期限を経過した後も,更なる課税
負担の軽減のみを目的とする課税負担の錯誤の主張を無制限に認め,当該
遺産分割が無効であるとして納税義務を免れさせたのでは,租税法律関係
が不安定となり,納税者間の公平を害し,申告納税制度の趣旨・構造に背
馳することとなり,このことは,(a)申告者が,法定申告期限後の課税庁
による申告内容の調査時の指摘,修正申告の勧奨,更正処分等を受けた後
に自らの申告内容を翻し,更正請求期間内に更正の請求の手続を執ること
なく,更正処分等の取消訴訟において錯誤無効を主張する場合,(b)新た
な遺産分割の合意による分割内容の変更をしていないため,当初の遺産分
割の経済的成果が実質的に残存し得る場合,(c)法定申告期限後に更なる
課税負担の軽減のみを目的とする錯誤無効の主張を安易に繰り返す場合等
には,税法上の信義則の観点からも,看過し難い。したがって,上記の申
告納税制度の趣旨・構造及び税法上の信義則に照らすと,申告者は,法定
申告期限後は,課税庁に対し,原則として,課税負担又はその前提事項の
,錯誤を理由として当該遺産分割が無効であることを主張することはできず
例外的にその主張が許されるのは,分割内容自体の錯誤との権衡等にも照
らし,①申告者が,更正請求期間内に,かつ,課税庁の調査時の指摘,修
正申告の勧奨,更正処分等を受ける前に,自ら誤信に気付いて,更正の請
求をし,②更正請求期間内に,新たな遺産分割の合意による分割内容の変
更をして,当初の遺産分割の経済的成果を完全に消失させており,かつ,
③その分割内容の変更がやむを得ない事情により誤信の内容を是正する一
回的なものであると認められる場合のように,更正請求期間内にされた更
正の請求においてその主張を認めても上記の弊害が生ずるおそれがなく,
申告納税制度の趣旨・構造及び租税法上の信義則に反するとはいえないと
認めるべき特段の事情がある場合に限られるものと解するのが相当である
なお被告の指摘に係る最高裁平成18年(行ツ)第127号同年(行ヒ)(,,
第149号同年10月6日第二小法廷決定・未公刊(乙13),同平成8年
(行ツ)第240号同10年1月27日第三小法廷決定・税務訴訟資料23
0号152頁及び同平成13年(行ツ)第31号,同(行ヒ)第32号同年4
月13日第二小法廷決定・税務訴訟資料250号順号8882頁は,いず
れも,申告者が,更正請求期間内(国税通則法23条1項所定の法定申告
期限から1年の期間内)に更正の請求の手続を執ることなく,上記期間の
経過後に課税庁の調査時の指摘,修正申告の勧奨,更正処分等を受けたこ
とを契機として課税負担の誤信に気付き,更正処分等の取消訴訟において
課税負担の錯誤による無効を主張した事案について,課税庁に対する当該
主張は許されないとした原審の判断を当該事案の事実関係の下において是
認したものであり,これらの事案とは異なり,上記の特段の事情がある場
合に限りその例外を認めることは,これらの判例に抵触するものではない
と解される。。)
なお,前記(1)のとおり,租税法制上,法定申告期限後も,更正請求期間
内は,法定の更正の請求の手続による限り,課税の根拠となった遺産分割
の要素の錯誤による無効を理由とする相続税額の減額更正が手続的に許容
されていることにかんがみると,法定申告期限までに課税庁に生じた申告
,,内容に対する信頼や租税法律関係の早期確定の要請等を勘案してもなお
その無効の主張の制限について,更正請求期間内にされた更正の請求にお
ける上記の限度での例外を許容し得ないとまでは解し難い。
(3)そこで,原告P3について,上記の特段の事情の有無を検討する。
アまず,上記(2)①についてみるに,(a)前提事実(4)ア及び(5)イ(ア)の
,,,,とおり原告P3は平成15年6月19日第1次遺産分割に基づき
相続税の申告をし,その約5か月後の同年11月6日に,株式の分割の
錯誤(本件会社の株式の配分数の錯誤)を理由として,更正の請求をし
,()ており更正請求期間内同年6月24日の法定申告期限から1年以内
に,第1次遺産分割のうち本件会社の株式の配分に係る部分の錯誤によ
る無効を理由として,国税通則法23条1項1号の規定による更正の請
求をしたものと認められ,また,(b)原告P3は,課税庁の調査時の指
摘,修正申告の勧奨,更正処分等を受ける前に,いまだ税務調査も始ま
っていない段階で,相続人らが自ら課税負担の前提事項の錯誤があるこ
とに気付いたため,上記更正の請求をしたのであり,更正処分がされた
のも,更正の請求の日から約1年後の平成16年11月19日であった
ことが認められるので,本件は上記(2)①に該当するものと認められる。
イ次に,上記(2)②についてみるに,原告P3が第1次遺産分割により取
得した経済的成果は,一定数の本件会社の株式の帰属であるが,第1次
遺産分割のうち本件会社の株式の配分に係る部分が無効であり,更正請
求期間内に,原告P3の取得する本件会社の株式数を減ずる内容の第2
次遺産分割がされたことにより(なお,同期間内に,これに基づく本件
会社の株式名簿の名義書換えもされた,更正の請求の時点では,その。)
,減少分の株式は原告P1及び原告P4に確定的に帰属するに至っており
当該減少分の株式(15万4024株)につき,第1次遺産分割による
原告P3の経済的成果は完全に消失しているものと認められるので,本
件は上記(2)②に該当するものと認められる。
ウさらに,上記(2)③についてみるに,前提事実及び上記1(1)の認定事
実によれば,(a)上記1(2)のとおり,本件会社の株式の評価に係る配当
還元方式の適用は,その適用の有無により評価額に合計約19億円の差
異が生ずることから,遺産分割における重要な条件として当初から相続
人らの間で明示的に協議されていた事項であり,相続人らが当該株式の
評価方法を誤信して第1次遺産分割の合意に至ったのは,本件税理士の
誤った助言に起因するもので,事柄の内容も税務の専門家でない相続人
らにとって同税理士の助言の誤りに直ちに気付くのが容易なものとはい
えないものであったこと,(b)遺産分割の協議に際して,相続人らは,
,,第1次遺産分割に基づく当初の申告を経て自らその誤信に気付いた後
速やかに,配当還元方式の適用を受けられる内容に当該株式の配分方法
を変更した第2次遺産分割の合意に至っていることが認められ,これら
の経緯に照らすと,第1次遺産分割から第2次遺産分割への分割内容の
変更は,やむを得ない事情により誤信の内容を是正する一回的なもので
あったと認められ,本件は上記(2)③に該当するものと認められる。
エ以上によれば,前記認定の事実関係の下では,本件は上記(2)①ないし
③のいずれにも該当し,更正の請求において課税負担の前提事項の錯誤
を理由とする遺産分割の無効の主張を認めても上記(2)の弊害が生ずるお
それがなく,申告納税制度の趣旨・構造及び租税法上の信義則に反する
とはいえないと認めるべき特段の事情がある場合に該当するものという
べきである。
,,,(4)アしたがって原告P3は更正請求期間内にした更正の請求において
処分行政庁に対し,第1次遺産分割のうち本件会社の株式の配分に係る
部分の錯誤による無効を主張することができたものというべきであり,
これにより当該株式の配分が無効とされる以上,課税の根拠となる相続
財産である当該株式の取得を欠くことになるから,その錯誤による無効
は,国税通則法23条1項1号にいう「当該申告書に記載した課税標準
等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従つていなかつた
こと」との事由に該当するものと解される。
そして,前記1(2)ウのとおり,第1次遺産分割の一部が要素の錯誤に
より無効であり,その余の部分は有効であって,更正請求期間内に当該
無効の部分が第2次遺産分割により補充され,これらの遺産分割の効力
は相続開始時に遡及している(民法909条)以上,申告書の記載に係
る第1次遺産分割の配分内容に従った計算による税額が,第2次遺産分
割(第1次遺産分割のうち有効である部分を含む)の配分内容に従った。
計算による税額を上回るときは,国税通則法23条1項1号所定の「当
該申告書の提出により納付すべき税額(中略)が過大であるとき」に該
当するものとして,その差額の減額更正につき,同号の規定による更正
の請求をすることができるものと解するのが相当である。
イ他方で,遺産分割が要素の錯誤により無効であり,納税者がこれを主
張し得る場合について,これをまだ遺産分割がされていない状態と同視
し得るとすれば,更正の請求の手続として,まず,相続税法55条の規
定による法定相続分等に従った計算に基づき,国税通則法23条1項1
号による更正の請求又は修正申告等を経た上で,新たな遺産分割の配分
内容に従った計算に基づき,改めて相続税法32条1号による更正の請
求をするという手続も考えられ,上記アの手続との関係について検討を
要する。
そこで検討するに,相続税法32条各号は,国税通則法23条1項各
,号及び2項各号所定の一般的な更正の事由に該当しない場合であっても
相続,遺贈又は贈与により財産を取得した者の間の租税負担の公平を図
るため,相続税に特有の更正の事由を定めるとともに,国税通則法23
条1項及び2項所定の一般的な更正請求期間とは別個に特有の更正請求
期間を定めており,このような相続税法32条各号の規定の趣旨・構造
等に照らすと,同条各号は,国税通則法の通則規定に対する特則規定と
して,国税通則法の定める更正の事由に該当する場合のほか,これらに
該当しない場合でも,同条各号所定の事由があれば同条所定の期間内に
更正の請求ができるとしたものであって,国税通則法の定める更正の事
由に該当する場合において,同条各号所定の更正の事由にも該当するこ
とがあるとしても,それによって,国税通則法の規定による更正の請求
,,について更なる要件を加重してその請求を制限するものではなくまた
国税通則法の規定による更正の請求を排除するものでもないと解するの
が相当である(なお,両者の関係に係る同趣旨の例規として,相続税法
基本通達(昭和34年1月28日付け直資10国税庁長官通達)32−
2参照。そして,相続税法55条は,相続により取得した財産に係る相)
続税について申告書の提出又は更正若しくは決定をする場合において,
当該相続により取得した財産の全部又は一部が共同相続人によってまだ
分割されておらず,その後に当該財産の分割がされた場合についての二
段階の処理方法を定める規定であり,まだ遺産分割がされていない場合
を本来の適用対象とするものであって,既にされた遺産分割の全部又は
一部が無効で新たな遺産分割がされている場合を同条の適用対象に含め
るか否かは個別事案の評価の問題と解されるところ,本件においては,
申告書の提出時を基準とすれば,第1次遺産分割の一部無効により相続
財産の一部が未分割である状態と同視し得るものの,更正請求期間内に
既に第2次遺産分割がされているため,更正の請求に基づく更正時を基
準とすれば,相続財産の全部が既に分割されている場合に当たる以上,
このような場合の更正の請求において同条に基づく二段階の処理が必須
,,の手続として義務付けられるものとは解されないのでいずれにしても
同条に基づく二段階の方法により相続税法32条1号の規定による更正
の請求をすることができると解し得ることをもって,上記アの直截的な
方法により国税通則法23条1項1号の規定による更正の請求をするこ
とが妨げられるものとは解されない。
ウそうすると,原告P3が更正請求期間内にした国税通則法23条1項
1号の規定による更正の請求により,処分行政庁は,第1次遺産分割の
うち本件会社の株式の配分に係る部分が無効であり,当該株式の配分に
ついては第2次遺産分割の内容に従って計算がされるべきことを前提と
して,相続税額の減額更正に応ずべき義務を負うに至ったものと解する
のが相当である。
エなお,更正をすべき理由がない旨の通知処分と同時にされた増額更正
処分の内容に更正をすべき理由がないとする趣旨が含まれている場合に
は,通知処分の取消しを求める利益はなく,更正処分の取消しを求めれ
ば足り,更正処分の取消訴訟において,更正の請求の事由の有無は,処
分時における客観的な納付すべき税額の判断の前提となる減額更正の可
否に係る手続要件として検討されることとなり,本件訴訟においても,
これと同様の観点から検討の対象とされるものである。
3(1)以上によれば,原告P3の更正の請求は理由があり,同原告の納付すべ
き税額は,同原告が取得する本件会社の株式について配当還元方式により
評価した価額を前提として,減額更正をすべきであったことになるので,
同原告を含む原告らの納付すべき税額は,同原告が取得する本件会社の株
式につき配当還元方式により評価した価額に基づいて原告らの本件相続に
係る課税価格を算出し,これを前提として算定すべきものと認められる。
そうすると,(ア)本件相続により相続人らが取得した有価証券の価額の
,「」,合計額は別表3の2有価証券の明細表順号⑧の金額欄記載のとおり
,,4億3135万0641円となりこれを前提とする課税価格の合計額は
別表1の2「課税価格及び納付税額の計算明細表」順号⑪の合計欄記載の
とおり,20億0351万5000円となり,相続税の総額は,別表2の
2「税額算出表」順号⑥記載のとおり,8億7163万2700円となる
ものと認められ,その結果,(イ)原告らが納付すべき税額は,別表1の2
順号⑳の各原告欄に記載の金額となり,原告P10及び原告P11を除く
原告らに賦課される過少申告加算税額は,別表11の2「過少申告加算税
の明細表」D欄の各原告欄に記載の金額となるものと認められ,(ウ)以上
,「()」。の詳細は別紙3課税の根拠及び計算配当還元方式のとおりである
(2)したがって,本件各更正処分及び本件各賦課決定のうち,納付すべき税
額及び過少申告加算税額につき上記(1)(イ)の各金額を超える部分は,いず
れも違法であるといわざるを得ず,その余の点について判断するまでもな
く,その限度で取消しを免れない。
4よって,原告らの請求は,上記3(2)の限度で理由があるから認容し,その
余の請求はいずれも理由がないから棄却し,訴訟費用の負担につき,行政事
件訴訟法7条,民事訴訟法61条,64条ただし書を適用して,主文のとお
り判決する。
東京地方裁判所民事第2部
岩井伸晃裁判長裁判官
本間健裕裁判官
倉澤守春裁判官
(別紙2)
課税の根拠及び計算(類似業種比準方式)
1本件各更正処分の根拠及び計算
(1)課税価格の合計額(別表1「課税価格及び納付税額の計算明細表(以下」
「別表1」という)順号⑪の合計欄の金額)。
38億6750万2000円
上記金額は,次のアの金額のうち原告らがそれぞれ相続により取得した財
産の価額(別表1順号⑦の各原告の金額。ただし,原告P1,原告P3,原
告P4及び原告P5については,各人が負担した次のイの債務等の金額を控
除した後のもの)に,次のウの3年以内の贈与加算額を加算し,算出した下
記の各原告の課税価額(ただし,国税通則法118条1項の規定により,各
原告ごとに課税価格の1000円未満の端数を切り捨てた後のもの。別表1
順号⑪の各原告欄の金額)の合計額

原告P13億3824万0000円
原告P329億0041万4000円
原告P43億1951万0000円
原告P52億7111万5000円
原告P6765万5000円
原告P7625万4000円
原告P8625万4000円
原告P9590万3000円
原告P10625万4000円
原告P11590万3000円
ア相続により取得した財産の価額(別表1順号⑦の合計欄の金額)
38億4887万4152円
内訳
(ア)土地の価額1億3232万2951円
内訳別紙4原告らの平成15年6月19日付け相続税の申告書以((
下「相続税申告書」という。乙1)の第11表)のとおり
(イ)家屋,構築物の価額3775万2716円
内訳別紙4(相続税申告書の第11表)のとおり
(ウ)有価証券の価額22億9533万9141円
内訳別表3「有価証券の明細表(以下「別表3」という)順号⑧」。
合計欄の金額のとおり
(エ)現金,預貯金等の価額8億7796万7941円
内訳別紙4(相続税申告書の第11表)のとおり
(オ)家庭用財産の価額100万0000円
内訳別紙4(相続税申告書の第11表)のとおり
(カ)その他の財産の価額5億0449万1403円
別表4「その他の財産の明細表(以下「別表4」という)順号⑦の」。
合計欄の金額のとおり
なお,別表4順号⑤「貸付金」は,本件各更正処分において,原告P
4が被相続人から借り入れた資金を原資として,原告P1が代表取締役
社長を務める有限会社P16に貸し付けた金員であり,また,別表4順
号⑥「未収入金」は,本件相続開始時における被相続人の身体障害者医
療及び身体障害者年金に係る未収入金5万7800円並びに社会保険事
務所からの未収入金98万円の合計額であって,いずれも,本件相続に
係る相続税の課税価格の計算上,相続財産の総額に加算すべき金額であ
る。
イ債務及び葬式費用の金額別表5債務及び葬式費用の明細表以下別(「」(「
表5」という)順号⑤の合計欄の金額)。
2588万4689円
内訳別表5のとおり
なお,別表5順号④「未納市民税」は,被相続人に係る県民税及び市
民税の未納額であり,本件相続人らの課税価格の計算上,それぞれ法定
相続分を負担するものとして控除した。
ウ3年以内の贈与加算額(別表6「3年以内の贈与加算額の明細表(以下」
「別表6」という)順号⑧の合計欄の金額)。
4452万0345円
内訳別表6のとおり
(2)納付すべき税額
本件相続に係る相続税の納付すべき相続額は,相続税法15条ないし17
条の各規定に基づき,次のとおり算定した。
ア課税遺産総額(別表2「税額算出表(以下「別表2」という)順号③」。
の金額)
37億7750万2000円
上記金額は,上記(1)の課税価格の合計額の金額から,相続税法15条の
規定により,5000万円と,1000万円に本件相続に係る相続人の数
である4を乗じた金額4000万円との合計額9000万円を控除した後
の金額である。
イ法定相続分に応ずる取得価額(別表2順号⑤「法定相続分に応ずる取得
価額」欄の各金額)
(ア)原告P3(法定相続分2分の1)18億8875万1000円
(イ)原告P1(法定相続分6分の1)6億2958万3000円
(ウ)原告P4(法定相続分6分の1)6億2958万3000円
(エ)原告P5(法定相続分6分の1)6億2958万3000円
(「」ウ相続税の総額別表1順号⑫の合計欄及び別表2順号⑥相続税の総額
欄の金額)
19億6570万0000円
エ相続税法18条の規定による加算額(別表1順号⑮の各原告欄の金額)
(ア)原告P677万8147円
(イ)原告P763万5732円
(ウ)原告P863万5732円
(エ)原告P960万0052円
(オ)原告P1063万5732円
(カ)原告P1160万0052円
オ贈与税額控除額(別表1順号⑯及び別表7「贈与税額控除の明細表(以」
下「別表7」という)順号⑦の各原告欄の金額)。
(ア)原告P31058万3500円
(イ)原告P5209万8700円
(ウ)原告P10137万3800円
(エ)原告P1179万2800円
内訳別表7のとおり
カ配偶者の税額軽減額(別表1順号⑰の原告P3欄及び別表8「配偶者の
税額軽減の計算(以下「別表8」という)順号⑩の金額)」。
9億8285万0000円
その計算過程は,別表8のとおり
キ相次相続控除額(別表1順号⑱及び別表9「相次相続控除の計算(以下」
「別表9」という)順号⑪ないし⑭「各相続人の相次相続控除額」欄の金。
額)
(ア)原告P194万2499円
(イ)原告P3799万5390円
(ウ)原告P489万0169円
(エ)原告P575万5235円
その計算過程は,別表9のとおり
ク原告らの納付すべき税額(別表1順号⑳の各原告欄の金額)
(ア)原告P11億7097万1600円
(イ)原告P34億7273万8100円
(ウ)原告P41億6150万4200円
(エ)原告P51億3494万3200円
(オ)原告P6466万8800円
(カ)原告P7381万4300円
(キ)原告P8381万4300円
(ク)原告P9360万0300円
(ケ)原告P10244万0500円
(コ)原告P11280万7500円
2本件各賦課決定処分の根拠及び計算
,,各原告に課される過少申告加算税の額は次の(1)ないし(8)のとおりであり
その計算過程は,別表11「過少申告加算税の明細表」D欄の各原告欄に記載
したとおりである。
(1)原告P1197万2000円
(2)原告P36932万1500円
(3)原告P4182万6000円
(4)原告P5175万5000円
(5)原告P66万7000円
(6)原告P75万3000円
(7)原告P85万3000円
(8)原告P95万2000円
(別紙3)
課税の根拠及び計算(配当還元方式)
1本件各更正処分の根拠及び計算
(1)課税価格の合計額別表1の2課税価格及び納付税額の計算明細表以(「」(
下「別表1の2」という)順号⑪の合計欄の金額)。
20億0351万5000円
上記金額は,次のアの金額のうち原告らがそれぞれ相続により取得した財
(。,,,産の価額別表1の2順号⑦の各原告の金額ただし原告P1原告P3
原告P4及び原告P5については,各人が負担した次のイの債務等の金額を
控除した後のもの)に,次のウの3年以内の贈与加算額を加算し,算出した
下記の各原告の課税価額(ただし,国税通則法118条1項の規定により,
各原告ごとに課税価格の1000円未満の端数を切り捨てた後のもの。別表
1の2順号⑪の各原告欄の金額)の合計額

原告P13億5364万3000円
原告P310億0562万1000円
原告P43億3491万3000円
原告P52億7111万5000円
原告P6765万5000円
原告P7625万4000円
原告P8625万4000円
原告P9590万3000円
原告P10625万4000円
原告P11590万3000円
ア相続により取得した財産の価額(別表1の2順号⑦の合計欄の金額)
19億8488万5652円
内訳
(ア)土地の価額1億3232万2951円
内訳別紙4原告らの平成15年6月19日付け相続税の申告書相((
続税申告書。乙1)の第11表)のとおり
(イ)家屋,構築物の価額3775万2716円
内訳別紙4(相続税申告書の第11表)のとおり
(ウ)有価証券の価額4億3135万0641円
「」(「」。)内訳別表3の2有価証券の明細表以下別表3の2という
順号⑧合計欄の金額のとおり
(エ)現金,預貯金等の価額8億7796万7941円
内訳別紙4(相続税申告書の第11表)のとおり
(オ)家庭用財産の価額100万0000円
内訳別紙4(相続税申告書の第11表)のとおり
(カ)その他の財産の価額5億0449万1403円
別表4「その他の財産の明細表(別表4)順号⑦の合計欄の金額のと」
おり
なお,別表4順号⑤「貸付金」は,本件各更正処分において,原告P
4が被相続人から借り入れた資金を原資として,原告P1が代表取締役
社長を務める有限会社P16に貸し付けた金員であり,また,別表4順
号⑥「未収入金」は,本件相続開始時における被相続人の身体障害者医
療及び身体障害者年金に係る未収入金5万7800円並びに社会保険事
務所からの未収入金98万円の合計額であって,いずれも,本件相続に
係る相続税の課税価格の計算上,相続財産の総額に加算すべき金額であ
る。
(「」()イ債務及び葬式費用の金額別表5債務及び葬式費用の明細表別表5
順号⑤の合計欄の金額)
2588万4689円
内訳別表5のとおり
なお,別表5順号④「未納市民税」は,被相続人に係る県民税及び市
民税の未納額であり,本件相続人らの課税価格の計算上,それぞれ法定
相続分を負担するものとして控除した。
ウ3年以内の贈与加算額(別表6「3年以内の贈与加算額の明細表(別表」
6)順号⑧の合計欄の金額)
4452万0345円
内訳別表6のとおり
(2)納付すべき税額
本件相続に係る相続税の納付すべき相続額は,相続税法15条ないし17
条の各規定に基づき,次のとおり算定した。
(「」(「」。)ア課税遺産総額別表2の2税額算出表以下別表2の2という
順号③の金額)
19億1351万5000円
上記金額は,上記(1)の課税価格の合計額の金額から,相続税法15条の
規定により,5000万円と,1000万円に本件相続に係る相続人の数
である4を乗じた金額4000万円との合計額9000万円を控除した後
の金額である。
イ法定相続分に応ずる取得価額(別表2の2順号⑤「法定相続分に応ずる
取得価額」欄の各金額)
(ア)原告P3(法定相続分2分の1)9億5675万7000円
(イ)原告P1(法定相続分6分の1)3億1891万9000円
(ウ)原告P4(法定相続分6分の1)3億1891万9000円
(エ)原告P5(法定相続分6分の1)3億1891万9000円
ウ相続税の総額(別表1の2順号⑫の合計欄及び別表2の2順号⑥「相続
税の総額」欄の金額)
8億7163万2700円
エ相続税法18条の規定による加算額(別表1の2順号⑮の各原告欄の金
額)
(ア)原告P666万6064円
(イ)原告P754万4162円
(ウ)原告P854万4162円
(エ)原告P951万3622円
(オ)原告P1054万4162円
(カ)原告P1151万3622円
(「」オ贈与税額控除額別表1の2順号⑯及び別表7贈与税額控除の明細表
(別表7)順号⑦の各原告欄の金額)
(ア)原告P31058万3500円
(イ)原告P5209万8700円
(ウ)原告P10137万3800円
(エ)原告P1179万2800円
内訳別表7のとおり
カ配偶者の税額軽減額別表1の2順号⑰の原告P3欄及び別表8の2配(「
偶者の税額軽減の計算(以下「別表8の2」という)順号⑩の金額)」。
4億2691万3672円
その計算過程は,別表8の2のとおり
キ相次相続控除額(別表1の2順号⑱及び別表9の2「相次相続控除の計
算(以下「別表9の2」という)順号⑪ないし⑭「各相続人の相次相続」。
控除額」欄の金額)
(ア)原告P1192万3267円
(イ)原告P3527万1933円
(ウ)原告P4182万1145円
(エ)原告P5147万3842円
その計算過程は,別表9の2のとおり
ク原告らの納付すべき税額(別表1の2順号⑳の各原告欄の金額)
(ア)原告P11億5192万9700円
(イ)原告P30円
(ウ)原告P41億4388万3300円
(エ)原告P51億1437万6500円
(オ)原告P6399万6300円
(カ)原告P7326万4900円
(キ)原告P8326万4900円
(ク)原告P9308万1700円
(ケ)原告P10189万1100円
(コ)原告P11228万8900円
2本件各賦課決定処分の根拠及び計算
,,各原告に課される過少申告加算税の額は次の(1)ないし(8)のとおりであり
その計算過程は,別表11の2「過少申告加算税の明細表」D欄の各原告欄に
記載したとおりである。
(1)原告P16万8000円
(2)原告P30円
(3)原告P46万4000円
(4)原告P50円
(5)原告P60円
(6)原告P70円
(7)原告P80円
(8)原告P90円

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