弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人向江璋悦の上告趣意第一点について。
 原審第一回公判調書によれば「裁判長は本件証拠として各原審公判調書各訊問調
書各聴取書各領置書各顛末書被告人の履歴書その他関係書類一切の要旨を告げ」証
拠調をした旨の記載のあることは所論指摘のとおりである。そして右の内の「その
他関係書類一切」という部分の記載は、この場合の表現として正確を缺く憾みはな
いではないが、右は証拠調に関する記載である点及びその前段の各種の証拠書類の
記載を受けている点から考案すれば、右部分の記載は証拠能力ある「各原審公判調
書各訊問調書各聴取書」の内に引用されている逮捕状強制処分請求書及び公判請求
書等を指す趣旨の記載であることはこれを了解するに十分であつて、所論のように、
証拠関係の有無に拘わらず「一件記録中の一切の書類」につき証拠調手続としての
各要旨を告げた趣旨の記載とは、到底解することはできないのである。それ故論旨
は理由がない。
 同第二点について。
 供述を録取した証拠書類の供述記載又は公判廷における供述を判決の証拠として
挙示する場合、その供述の内容中に他の書類が引用れているときでも、その引用書
類を併せて証拠として示す必要はないとすることは、当裁判所の判例とするところ
である(昭和二三年(れ)第一四五九号、同二四年二月八日第三小法廷判決、判例
集三巻二号九〇頁以下、昭和二三年(れ)第一二七七号、同年一二月一八日第二小
法廷判決、判例集二巻一四号一八三一頁以下)。しかるに所論指摘の原判決の各証
拠は「第一審第四回公判調書中被告人の供述として同人に対する司法警察官の第二
回聴取書の供述記載と相俟つて判示と同旨の記載」「証人Aの当公廷における証言
中同人に対する司法警察官の聴取書の供述記載と相俟つて判示に照応する請託饗応
顛末の供述」「Bに対する検事の聴取書中同人に対する司法警察官の聴取書中の供
述記載と相俟つて判示に照応する各金品供与顛末の供述記載」と記してあつて、証
拠書類に記載されている供述又は公判廷の供述の内容をなす他の書類がそれぞれ明
示されているのである。従つてむしろ右各証拠の表示は十分というべきであつて、
所論のごとき非難は全く当らないから、論旨は理由がない。
 よつて、刑訴施行法二条、旧刑訴法四四六条に従い、裁判官全員一致の意見によ
つて、主文のとおり判決する。
 検察官 田中巳代治関与
  昭和二六年五月四日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    藤   田   八   郎
 裁判官小谷勝重は出張につき署名押印することができない。
         裁判長裁判官    霜   山   精   一

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