弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     各被告人に対する原判決を破棄する。
     本件を名古屋高等裁判所金沢支部に差し戻す。
         理    由
 被告A弁護人小室薫上告趣意第一点、同弁護人秋山要、同中野義定、同伊藤利夫、
同中野清重上告趣意第一点及び被告人B、同C弁護人本林譲上告趣意第一点につい
て。
 旧刑訴三二九条によれば、公判廷は判事、検事及び裁判所書記列席して開くべき
ものであり、また同六四条、六〇条によれば、公判期日における訴訟手続は、公判
調書のみによつて証明することを得るもので、その調書には判事、検事及び裁判所
書記の官氏名等を記載すべきものである。しかるに原審第四回公判調書を見るに、
所論のごとく立会検事の官氏名が記載されていないから、同公判に如何なる官氏名
の検事が列席して開廷したかまた果して検事が列席して開廷したかの証明がなく、
従つて旧刑訴四一〇条第一号にいわゆる法律に従い判決裁判所を構成しなかつたと
きに該当するものといわなければならない。従つて、各論旨はその理由があつて、
被告人A、同B、同Cに対する原判決は破棄を免れない。そして、この破棄の理由
は、上告をした相被告人Dに共通であるから、同被告人のためにも原判決を破棄し
なければならない。
 被告人A弁護人小室薫上告趣意第三点について。
 被告人Aに対する原判決の擬律を見るに、所論摘示のとおりであつて、刑法一四
条を適用した形跡が認められない。従つて、原判決の同被告人に対する処断刑は三
〇年以下となる筋合であるから、刑法一四条に照し違法であるといわなければなら
ない。本論旨も、その理由があつて、同被告人に対する原判決はこの点においても
破棄を免れない。
 なお職権を以て、原判決の被告人A、同B、同Dに対する法律適用を見るに物価
統制令(新令)第五〇条により旧令第三条第四条等を適用している。しかし、物価
統制令第五〇条にいわゆる旧令とは同令四二条により廃止せられた価格等統制令を
指すものである。しかるに本件犯行は昭和二一年一二月二八日以降昭和二三年三月
九日頃までに行われた事案であるから、すべて新令たる物価統制令を適用すべく、
価格等統制令を適用すべきではない。それ故この点においても原判決は破棄さるべ
きである。
 よつて爾余の論旨並びに被告人Cの上告趣意に対する判断を省略し、旧刑訴四四
七条、四四八条の二に従い主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 安平政吉関与
  昭和二五年四月一三日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    岩   松   三   郎

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