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判決言渡日平成24年1月19日東京高等裁判所
平成23年(ネ)第4633号保証債務請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所平成22年(ワ)第21600号保証債務請求事件)
主文
1原判決を取り消す。
2被控訴人の請求を棄却する。
3訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1請求の趣旨(被控訴人)
(1)控訴人は,被控訴人に対し,24万9375円及びこれに対する平成
21年2月27日から支払済みまで年14パーセントの割合による金員を
支払え。
(2)仮執行宣言
2控訴の趣旨
主文と同旨
第2事案の概要
1概要
本件は,被控訴人が,Aの被控訴人に対する電話機リース料支払債務につ
き,Aの妻である控訴人が連帯保証したと主張して,控訴人に対し,保証債
務の履行として残リース料24万9375円及びこれに対する期限の利益を
喪失した日の翌日である平成21年2月27日から支払済みまで約定の年1
4パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案である。控訴人は,
保証契約の成立を否認して争っている。
原審が保証契約の成立を認めて被控訴人の請求を認容したため,控訴人が
控訴した。
2前提事実
前提事実は,原判決の「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の1に
記載のとおり(原判決2頁1行目から3頁5行目まで)であるから,これを
引用する。
3争点
本件の争点は,控訴人と訴外会社(被控訴人による吸収合併前のB株式会
社)との間で本件保証契約が有効に成立したか否かである。
(1)被控訴人の主張
ア控訴人は,平成17年4月5日,リース契約書(甲1。以下「本件契
約書」という。)の連帯保証人欄に自ら署名押印してこれを作成した
か,仮にそうでないとしても,Aその他の第三者に権限を授与して署名
押印を代行させ,又は,事後にAその他の第三者による署名押印を承認
したことにより,本件契約書をもって本件リース契約に基づくAの訴外
会社に対する債務を連帯保証した(本件保証契約)。
イ被控訴人の従業員は,同年3月29日,控訴人に電話を架け,受話者
が控訴人であることを確認した上で,本件リース契約の内容及び控訴人
の保証意思を確認している。
ウ民法446条2項に規定する要件(保証の要式性)を満たすために
は,当該書面以外の証拠に照らして保証の意思を確実に看取しうる書面
が作成されることで足り,当該書面に保証人が自ら署名,押印する必要
はなく,また,当該書面が保証人の意思によって署名,押印されること
まで要しないと解すべきである。
(2)控訴人の主張
ア被控訴人の主張アはいずれも否認ないし争う。本件契約書の控訴人作
成名義部分の成立は否認する。本件契約書の連帯保証人欄の控訴人の氏
名は控訴人の自署ではなく,同名下の印影も控訴人の印鑑によって顕出
されたものではない。控訴人は本件契約書の作成に一切関与しておら
ず,事前にAその他の第三者に控訴人の署名押印代行の権限を授与した
ことも,事後にこれを承諾したこともない。
イ同主張イは否認する。控訴人が被控訴人の従業員からの電話を受けた
事実はなく,保証意思を確認されてこれに応じたこともない。
ウ同主張ウは争う。民法446条2項の趣旨に照らせば,基本的には保
証人自身が保証契約書に署名,押印しなければ保証の効力は生じないと
解すべきである。
第3当裁判所の判断
1当裁判所は,被控訴人の本件請求は理由がないものと判断する。その理由
は,次のとおりである。
(1)保証契約は,書面でしなければその効力を生じないとされているとこ
ろ(民法446条2項),同項の趣旨は,保証契約が無償で情義に基づい
て行われることが多いことや,保証人において自己の責任を十分に認識し
ていない場合が少なくないことなどから,保証を慎重にさせるにある。同
項のこの趣旨及び文言によれば,同項は,保証契約を成立させる意思表示
のうち保証人になろうとする者がする保証契約申込み又は承諾の意思表示
を慎重かつ確実にさせることを主眼とするものということができるから,
保証人となろうとする者が債権者に対する保証契約申込み又は承諾の意思
表示を書面でしなければその効力を生じないとするものであり,保証人と
なろうとする者が保証契約書の作成に主体的に関与した場合その他その者
が保証債務の内容を了知した上で債権者に対して書面で明確に保証意思を
表示した場合に限り,その効力を生ずることとするものである。したがっ
て,保証人となろうとする者がする保証契約の申込み又は承諾の意思表示
は,口頭で行ってもその効力を生じず,保証債務の内容が明確に記載され
た保証契約書又はその申込み若しくは承諾の意思表示が記載された書面に
その者が署名し若しくは記名して押印し,又はその内容を了知した上で他
の者に指示ないし依頼して署名ないし記名押印の代行をさせることによ
り,書面を作成した場合,その他保証人となろうとする者が保証債務の内
容を了知した上で債権者に対して書面で上記と同視し得る程度に明確に保
証意思を表示したと認められる場合に限り,その効力を生ずるものと解す
るのが相当である。
(2)以上を前提に,本件保証契約が民法446条2項の要件を満たすか否
かについて検討する。
本件で被控訴人が同項所定の書面として主張するものは本件契約書(甲
1)のみであるところ,本件契約書の連帯保証人欄の控訴人の氏名が控訴
人の自署であること又は同名下の印影が控訴人の押印によるもの若しくは
その指示に基づいて控訴人の印鑑によって顕出されたものであることを認
めるに足りる証拠はない。かえって,証拠(乙3)及び弁論の全趣旨によ
れば,Aその他の第三者(販売会社であるCの関係者等が考えられるが,
これを明らかにする証拠はない。)が同欄に控訴人の氏名を記載し,Aが
工場(A製作所)に保管し使用していた同人の認め印を上記氏名下に押捺
したものであること,その場に控訴人は同席しておらず,Aに上記行為を
指示したり依頼したりしたわけではなかったことが認められる。
これに対し,被控訴人は,控訴人はAその他の第三者による本件契約書
への署名押印の代行を承諾していたと主張する。そこで検討するに,被控
訴人の従業員(保証意思確認担当)が作成した電話記録(甲2,3)に
は,平成17年3月29日午後5時47分に控訴人の自宅に電話をかけ,
電話に出た女性に対し,氏名,生年月日,保証意思を確認したことなどが
記載されている。しかし,同電話記録には,「保証意思」として「Ye
s」等と記載されているのみで,その他の証拠(甲4,原審D証人)を総
合しても,当該従業員と電話に出た女性との間で具体的にどのようなやり
取りがあったのか明らかでなく,控訴人が上記のような電話を受けたこと
はない旨を原審本人尋問で供述していることなどに照らし,電話に出た女
性が控訴人本人であったか否かについて疑念があるといわざるを得ない。
このことに加えて,上記電話の際,保証契約書を作成することや控訴人名
義の署名押印をAその他の第三者に代行させることなどについて話がされ
た形跡はないこと,控訴人が保証契約書の作成を承諾しながら,その署名
をAに代行させたり,自分の印鑑を使わずにAの使用していた認め印で代
用させたりする理由も見当たらないことなどに照らせば,電話記録に上記
のような記載があっても,控訴人がAその他の第三者に署名押印を代行さ
せて本件契約書を作成することを承諾していたとの事実を認めるに足りな
い。そして,他に,本件契約書の控訴人作成名義部分が控訴人の意思に基
づいて作成されたことを認めるに足りる証拠はない。
そうすると,被控訴人の主張する本件保証契約は書面でされたものとい
うことができないから,その効力を有しないものというべきである。
2よって,被控訴人の本件請求は,その余の点につき判断するまでもなく,
理由がないから,これを棄却すべきである。
第4結語
以上の次第で,当審の上記判断と結論を異にする原判決は不当であって,
本件控訴は理由があるから,原判決を取り消した上,被控訴人の本件請求を
棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第8民事部
裁判長裁判官高世三郎
裁判官森一岳
裁判官増森珠美

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