弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴は孰れも之を棄却する。
         理    由
 被告人三名並びにその弁護人上田誠吉及び同藤井英男の各控訴趣意は本判決末尾
添附の(一)被告人三名作成名義、(二)弁護人上田誠吉作成名義、(三)弁護人
藤井英男及び同上田誠吉作成名義の各控訴趣意書(合せて三通)に記載のとおりで
あるから、これらについて判断する。
 一、 弁護人上田誠吉の控訴趣意第一点
 <要旨>刑法第二〇八条の暴行には、加害者が相手方に対し自己の手足をかけたり
又は器物をもつて直接物理的力を加える場合ばかりでなく、不法に空気を強
烈に振動させて、この振動力を人体に作用させる攻撃方法を用いる場合をも包含さ
れるものと解すべきである。これを原判決についてみるに、前述の如く被告人等は
他の組合員多数と共同して部課長等の身辺で大太鼓または鉦等を連打するなど室内
で判示の如き喧噪な行動に及び因つてA外数名の会社側部課長等に対し暴行を加え
たというのである。この際被告人等がA等の身体に対し直接自己の手足を掛け又は
器物等を以て触れさせたのではないが、部課長等の身辺で極めて喧噪にして刺戟的
なる影響を不法に長時間に渉り発せしめこの空気振動を鼓膜に作用させる物理的機
械的方法により部課長等の身体に不法に外力を加えたのであるから、これはやはり
前記説明の通り暴行の一態様であると見るを相当とする。故に原判決が大太鼓等を
連打し因つて暴行を加えた旨判示したのは正当であつてその間毫も理由のくいちが
いを来してはいない。論旨は理由がない。
 (その他の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 佐伯顕二 判事 久礼田益喜 判事 武田軍治)

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