弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2被控訴人の請求を棄却する。
第2事案の概要
1被控訴人は,高松市長が被控訴人の高松市情報公開条例5条に基づく建築
計画概要書の公開請求につき平成18年1月23日付けでした非公開処分の
うち,建築計画概要書の第2面及び第3面に関する部分は違法であるとして,
控訴人に対し,上記部分に係る非公開処分の取消しを求めたところ,原審が
被控訴人の請求を認容したため,控訴人が控訴した。
2本件における前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張の要旨は,後
記3のとおり当審における新たな主張があるほか,原判決「事実及び理由」
第2の2,3に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決
5頁26行目の「並びに」を「及び」と改め,6頁1行目の「,建築基準法
令による処分の概要書」及び同6行目の「及び処分事項(中間検査,検査済
みも含む)」をいずれも削り,6頁24行目の「情報」の次に「(以下「本
件情報」という。)」を加え,同25行目及び7頁6行目の「個人情報」を
いずれも「個人識別情報」と,同11行目の「配置図等」を「配置図」とそ
れぞれ改め,9頁1行目の「ア建築主」を下記のとおり改めるとともに,
同4行目の「イ」を「ウ」と,同7行目の「ウ」を「エ」とそれぞれ改め,
7頁3行目,8頁24行目,9頁7行目,10頁7行目及び同20行目の
「ただし書き」をいずれも「ただし書」と改める。
「ア本件情報は,建築基準法93条の2の規定により,公にされ,又は公
にすることが予定されている情報に当たる。
イ建築主」
3当審における当事者の新たな主張の要旨は次のとおりである。
(控訴人)
被控訴人は,全国各地の地方自治体に対し大量かつ継続的に建築計画概要
書についての情報公開請求を行い,その結果を有償での不動産情報の提供資
料として使用するなどして営利事業を営むものであり,本件情報公開請求も
こうした被控訴人の営利事業の一環として行われるものであること,被控訴
人の提供する不動産情報を有料で入手した営利業者等からの建築主等へのセ
ールス活動が行われることにより,建築主のプライバシー侵害等が懸念され
ること,本件情報公開請求の対象文書は1572件にも及ぶもので,これに
応じる地方自治体側のコストは膨大である上,今後も同種の請求の反復継続
が見込まれることなどからすれば,本件情報公開請求は権利濫用である。
(被控訴人)
控訴人における情報公開制度は,文書を特定して情報公開請求がされた場
合には,請求の対象となった文書は,一定の非開示事由に該当する場合を除
いて,原則として開示すべきものとしており,非開示事由の有無の判断に際
しては,請求者と文書との関連性や請求者の文書利用目的が考慮されること
のない仕組みとなっているのであって,こうした情報公開制度の構造にかん
がみれば,当該請求に係る文書が大量であっても開示を拒む理由とはならず,
当該請求が専ら行政事務に著しい支障を生じさせることを目的として行われ
ているなどの極めて例外的な場合に限って,当該請求を権利濫用として排斥
することができるにすぎないところ,本件情報公開請求は上記のような例外
的な場合に当たらない。
第3当裁判所の判断
1本件情報の本件条例7条1号本文(個人識別情報)該当性について
(1)本件条例7条1号本文の趣旨・目的
ア本件条例7条1号本文は,原則として,行政文書の公開請求に応じる
べき義務を実施機関に課す一方で,(a)個人に関する情報であって,
当該情報により特定の個人を識別することができるもの,(b)個人に
関する情報であって,他の情報と照合することにより,特定の個人を識
別することができることとなるもの,(c)特定の個人を識別すること
はできないが,公にすることにより,なお個人の権利利益を害するおそ
れがあるものについては,非公開情報に該当する旨規定している。
イ控訴人における情報公開制度は,「市民の知る権利を尊重し,市の保
有する情報の一層の公開を図り,もって市の諸活動を市民に説明する責
務が全うされるようにするとともに,市政への市民参加を一層促進し,
市民の市政に対する理解と信頼を深め,市民と市との協働による公正で
民主的な市政の推進に資することを目的とする」(本件条例1条)もの
であるが,その一方,「実施機関は,個人に関する情報が十分に保護さ
れるよう最大限の配慮をしなければならない。」(同3条)として,個
人のプライバシー保護との調整を図り,行政文書に個人識別情報が記載
されているときは,その行政文書を非公開とすることにより,個人識別
情報が公開されて当該個人が不利益を受けないようにしている。
ただし,個人識別情報に該当すれば,いかなるものでも非公開とされ
ると,今度は市政に対する市民の理解を深めることができない場合が頻
繁に生じることから,既に公開され,あるいは公開が予定されている情
報や公益上公開の必要性の高い情報については,本件条例7条1号ただ
し書アないしエに該当する情報として公開すべきものとしている。
(2)本件条例7条1号本文該当性
ア控訴人は,本件文書第2面記載の情報のうち,建築物及びその敷地の
地名地番及び住居表示等については,上記(1)ア(a)もしくは(b)に,同
第3面記載の付近見取図及び配置図については,同(c)に該当する旨
主張する。
イ本件条例7条1号本文にいう「個人に関する情報」とは,個人の内心,
身体,身分,地位その他の個人に関する一切の事項についての事実,判
断,評価等のすべての情報が含まれ,個人の人格や私生活に関する情報
に限らず広く個人との関連性を有するすべての情報(ただし,事業を営
む個人の当該事業に関する情報を除く。)をいうものと解すべきところ,
本件情報のうち個人から提出されたものは,人の関与が不可欠の前提と
なる建築物及びその敷地等に関するものであり,個人との関連性を有す
る情報に当たるものといわざるを得ない。
そして,本件文書第2面及び第3面に記載された地名地番,住居表示,
建築面積,建築物の数や高さ,建築物の所在地の付近見取図及び配置図
等の情報が開示されても,これを見た者は,当該場所に,いつごろ,ど
のような建物が建つのかを知ることができるにすぎず,上記情報自体か
ら特定の個人を識別することはできないものであるけれども,上記各情
報と,住宅地図,電話帳,不動産登記簿等一般人が通常入手し得る他の
情報と照合することにより,建築主の氏名,住所等特定の個人を識別す
ることは可能となるものと認められるから,本件情報のうち個人から提
出されたものは,本件条例7条1号本文所定の個人識別情報に該当する
というべきである。
2本件情報の本件条例7条1号ただし書ア(法令等及び慣行により公にされ,
公にすることが予定されている情報)該当性について
(1)建築基準法上の閲覧制度と建築計画概要書
ア建築基準法93条の2は,建築基準法令の規定による処分並びに同法
12条1項及び3項の規定による報告に関する書類のうち,当該処分若
しくは報告に係る建築物若しくはその敷地の所有者,管理者若しくは占
有者又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがないものとして国
土交通省令で定めるものについては,閲覧の請求があった場合には,こ
れを閲覧させなければならない旨規定しているところ,この閲覧制度の
趣旨は,周辺住民の協力の下に違反建築物の建築を未然に防止するとと
もに,無確認・違反建築物の売買等を防止しようとするものである。な
お,同条については,平成16年の法改正により,閲覧対象に関して,
上記のとおり,建築物の所有者等の「権利利益を不当に侵害するおそれ
がないものとして国土交通省令で定めるもの」と改められたものである。
そして,建築計画概要書は,第1面を含めてそのすべてが上記国土交
通省令で定める文書に該当するものとされており,何人からであっても
その閲覧の請求があった場合には,建築基準法施行規則11条の4に基
づく別記第3号様式に規定された建築主の氏名・住所,設計者の氏名・
所在地,建築物及びその敷地に関する事項等のほか,付近見取図,配置
図を内容とする建築計画概要書を閲覧に供さなければならないとされて
いる(なお,上記平成16年の法改正に際して,建築計画概要書の様式
につき,建築主の電話番号の欄が削除されたものに改められた。)。も
っとも,実務上,明らかに営利目的での閲覧請求については,閲覧を拒
否しても違法でないとの見解の下に,制度の趣旨に反することが明らか
な閲覧請求についてはこれを制限する運用が行われている(乙4,15
の2,16の2,19)。
イ建築基準法に基づく建築計画概要書の閲覧制度に関しては,事業者が
上記閲覧制度を利用して建築主の氏名・住所等の個人情報を収集し,家
具・インテリア,電化製品等の販売の勧誘のためにダイレクトメールを
送付するなどの事例が全国的に発生し,これについての苦情や相談が寄
せられるようになったことから,総務省行政評価局は,建築計画概要書
の閲覧制限の当否ないしその在り方等について検討し,平成19年7月
5日,個人情報の保護,国民生活の安心・平穏の確保並びに建築計画概
要書の閲覧申請及び情報公開請求に関する特定行政庁・地方公共団体の
統一的かつ的確な対応を推進する観点から,制度の趣旨に沿わない「営
利目的の閲覧」,「大量閲覧」及び「建築物が特定されていない閲覧」
を制限することができるよう,閲覧事項等の見直し等による制度の整備
も含めて,国土交通省において適切に対応する必要がある旨の検討結果
を取りまとめた(乙14,15の1・2,16の1・2,19)。
(2)本件条例7条1号ただし書ア該当性
ア被控訴人は,本件情報は,建築基準法93条の2の規定により,公に
され,又は公にすることが予定されている情報に当たるから,本件条例
7条1号ただし書アに該当すると主張する。
前記のとおり,建築基準法93条の2の規定に基づく閲覧制度は,周
辺住民の協力の下に違反建築物の建築を未然に防止するとともに,無確
認・違反建築物の売買等を防止するという趣旨で設けられた制度であり,
同条所定の処分及び報告のうち,建築物やその敷地の所有者等の権利利
益を不当に侵害するおそれがないものとして国土交通省令で定めるもの
については,規定上その閲覧を制限する文言はなく,何人であってもこ
れを閲覧することが可能な仕組みになっているところ,建築計画概要書
は上記国土交通省令で定めるものとして閲覧対象に含まれるものである
から,本件情報は,本件条例7条1号ただし書ア所定の公開予定情報に
当たるものというべきである。
イ控訴人は,建築基準法93条の2に定める閲覧制度の運用上,明らか
に営利を目的としたものなど閲覧制度の趣旨に反する閲覧請求は認めな
いという形で閲覧制限を実施しているところ,被控訴人の本件情報公開
請求は営利を目的としたものであり,これが建築基準法上の閲覧請求と
して行われた場合には認められないことが明らかであるから,本件情報
は,本件条例7条1号ただし書アには該当しないと主張する。
しかしながら,建築基準法に基づく閲覧請求につき例外的に濫用的な
請求としてこれを排斥することが許される場合があるとしても,それは
権利濫用の禁止という法制度に内在する制約の表れにすぎず,そのこと
のゆえに上記閲覧制度の一般的公開性が否定されると解するのは相当で
ない。また,前記認定のとおり,建築基準法に基づく建築計画概要書の
閲覧制度につき見直しの動きがあることをもって,直ちに上記閲覧制度
の一般的公開性を否定する根拠とすることもできないというべきである。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
3本件情報の本件条例7条2号本文(事業情報)の該当性について
(1)本件条例7条2号本文の趣旨
本件条例7条2号本文は,法人等に関する情報または事業を営む個人の
当該事業に関する情報であって,公にすることにより,当該法人等または
当該個人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるも
のについて,非公開情報に該当する旨規定している。これは,法人の事業
等に関する情報で,その公開により当該法人の営業上の地位等に対し不利
益を及ぼすものについて非公開とすることにより,公正な競争秩序の維持
を図る趣旨と解される。
(2)本件条例7条2号本文該当性
ア控訴人は,本件情報のうち法人等及び事業を営む個人から提出された
ものについては,建築に関するノウハウ,技術開発上,営業上の経営戦
略その他の内部的管理情報が含まれていると考えられるから,上記非公
開情報に該当する旨主張する。
イ本件文書第2面及び第3面に記載された情報からは,前記1(2)イのと
おり,当該場所に,いつごろ,どのような建物が建つのかを知ることが
できるにすぎず,上記情報から,法人等及び事業を営む個人の事業に係
る内部的管理情報等を窺い知ることができるとまではいえず,上記情報
が公開されたからといって,法人等の営業上の地位等に対し不利益を及
ぼすおそれがあるとは認められない。したがって,これを公にすること
により,「当該法人等または当該個人の権利,競争上の地位その他正当
な利益を害するおそれがある」と認めることはできない。
ウまた,事業情報を非公開とすべきものとした趣旨に照らせば,当該情
報が既に公になっている場合や法令等により公にすることが予定されて
いるものである場合には,当該情報は,非公開とすべき事業情報には当
たらないと解するのが相当である。
そして,前記2のとおり,建築計画概要書に記載された情報は,建築
基準法93条の2の規定に基づく閲覧制度により何人でも閲覧可能なも
のであるから,この点からしても事業情報には該当しないといわなけれ
ばならない。
エそうすると,本件情報のうち法人等及び事業を営む個人から提出され
たものについては,本件条例7条2号本文所定の事業情報には該当しな
いというべきである。
4本件情報公開請求の権利濫用性について
(1)控訴人は,本件情報公開請求が被控訴人の営利事業の一環として行われ
るものであること,被控訴人の提供する不動産情報を有料で入手した営利
業者等からの建築主等へのセールス活動が行われることにより,建築主の
プライバシー侵害等が懸念されること,本件情報公開請求の対象文書は1
572件にも及ぶもので,これに応じる地方自治体側のコストは膨大であ
る上,今後も同種の請求の反復継続が見込まれることなどから,本件情報
公開請求は権利濫用として許されない旨主張する。
(2)控訴人の情報公開制度は,本件条例1条に定める目的(前記1(1)イ)
の下に,原則として行政文書の公開請求に応じるべき義務を実施機関に課
した上で,個人識別情報等の非公開情報を列挙するとともに,個人識別情
報に該当する場合でも例外的に公開すべき場合を定めているところ,開示
請求の対象とされた行政文書を非公開とすることができるかどうかについ
ては,当該文書に記載された情報の内容に基づいて判断するという基本的
な枠組みが採られており,その際に請求者と当該文書との関連性や請求者
の利用目的について考慮することは予定されていないと解される。そうす
ると,控訴人が主張する被控訴人の本件情報公開請求の目的やこれに応じ
ることによって生じ得る事態への懸念については,これをもって本件情報
公開請求が権利濫用に当たることを肯認させるに足りるものとはいえない
し,本件条例に基づく情報公開請求に係る控訴人の事務処理は正しく本件
条例に基づく控訴人の本来的事務に属するものであるから,事務負担が大
であることをもって本件情報公開請求の権利濫用性を基礎付けることはで
きないというべきであって,他に本件情報公開請求が権利濫用であること
を認めるに足りる証拠はない。
したがって,本件情報公開請求が権利濫用である旨の控訴人の主張は採
用することができない。
5結論
以上の次第で,本件情報は本件条例に定める非公開情報に該当せず,その
開示を求める被控訴人の請求に応じて開示すべきものであるから,本件処分
のうち本件文書第2面及び第3面を非公開とした部分は,違法として取消し
を免れないものである。よって,その取消しを求める被控訴人の本件請求は
理由があり,これを認容した原判決は正当であって,本件控訴は理由がない
からこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
高松高等裁判所第4部
裁判長裁判官矢延正平
裁判官豊澤佳弘
裁判官齋藤聡
(原裁判等の表示)
主文
1高松市長が,原告に対し,平成18年1月23日付け高建指第▲▲▲▲
▲号でした行政文書非公開決定のうち,平成17年4月1日から平成17
年11月末日までに確認のおりた建築計画概要書の第2面及び第3面を公
開しないこととした部分を取り消す。
2訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
主文同旨
第2事案の概要等
1請求の要旨
本件は,原告が高松市情報公開条例5条に基づいてした建築計画概要書の
公開請求について,高松市長が平成18年1月23日付けでした当該行政文
書を公開しないとの決定に関し,原告が,被告に対し,上記処分のうち建築
計画概要書の第2面及び第3面に関する部分については,上記条例7条1号,
同2号,8条の解釈適用を誤った違法なものであるとして,その取消しを求
めた事案である。
2前提事実(争いのない事実,掲記の証拠及び弁論の全趣旨により認められ
る事実)
(1)当事者
ア原告は,松山市に本店を有する株式会社である(弁論の全趣旨)。
イ被告は,行政文書の公開を定めた高松市情報公開条例(平成12年1
2月25日条例第39号,以下「本件条例」という。甲6)を制定して
いる地方公共団体である。
(2)行政文書の公開義務
本件条例には,次のような定めがある(甲6)。
第7条実施機関は,公開請求があったときは,公開請求に係る
行政文書に次の各号に掲げる情報(以下「非公開情報」とい
う。)のいずれかが記録されている場合を除き,公開請求者に
対し,当該行政文書を公開しなければならない。
(1)個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する
情報を除く。)であって,当該情報に含まれる氏名,生年月
日その他の記述等により特定の個人を識別することができる
もの(他の情報と照合することにより,特定の個人を識別す
ることができることとなるものを含む。)または特定の個人
を識別することはできないが,公にすることにより,なお個
人の権利利益を害するおそれがあるもの。ただし,次に掲げ
る情報を除く。
ア法令もしくは条例(以下「法令等」という。)の規定に
より,または慣行として公にされ,または公にすることが
予定されている情報
イ人の生命,健康,生活または財産を保護するため,公に
することが必要であると認められる情報
ウ当該個人が公務員(国家公務員法(昭和22年法律第1
20号)第2条第1項に規定する国家公務員および地方公
務員法(昭和25年法律第261号)第2条に規定する地
方公務員をいう。)である場合において,当該情報がその
職務の遂行に係る情報であるときは,当該情報のうち,当
該公務員の職および氏名ならびに当該職務遂行の内容に係
る部分(当該公務員の氏名に係る部分を公にすることによ
り,当該個人の権利利益を不当に害するおそれがある場合
にあっては,当該部分を除く。)
エ公益上公にすることが必要である情報として実施機関が
定める情報であって,公にしたとしても個人の権利利益を
不当に害するおそれがないと認められるもの
(2)法人その他の団体(国および地方公共団体を除く。以下
「法人等」という。)に関する情報または事業を営む個人の
当該事業に関する情報であって,公にすることにより,当該
法人等または当該個人の権利,競争上の地位その他正当な利
益を害するおそれがあるもの。ただし,事業活動によって生
じ,または生ずるおそれのある危害から人の生命,健康,生
活または財産を保護するため,公にすることが必要であると
認められる情報を除く。
(3)公にすることにより,犯罪の予防,鎮圧または捜査,公
訴の維持,刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障
を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の
理由がある情報
(4)市の機関,国の機関および他の地方公共団体の内部また
は相互間における審議,検討または協議に関する情報であっ
て,公にすることにより,率直な意見の交換もしくは意思決
定の中立性が不当に損なわれるおそれ,不当に市民の間に混
乱を生じさせるおそれまたは特定の者に不当に利益を与え,
もしくは不利益を及ぼすおそれがあるもの
(5)市の機関,国の機関または他の地方公共団体が行う事務
または事業に関する情報であって,公にすることにより,次
に掲げるおそれその他当該事務または事業の性質上,当該事
務または事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの
ア監査,検査,取締りまたは試験に係る事務に関し,正確
な事実の把握を困難にするおそれまたは違法もしくは不当
な行為を容易にし,もしくはその発見を困難にするおそれ
イ契約,交渉または争訟に係る事務に関し,市,国または
他の地方公共団体の財産上の利益または当事者としての地
位を不当に害するおそれ
ウ調査研究に係る事務に関し,その公正かつ能率的な遂行
を不当に阻害するおそれ
エ人事管理に係る事務に関し,公正かつ円滑な人事の確保
に支障を及ぼすおそれ
オ市,国または他の地方公共団体が経営する企業に係る事
業に関し,その企業経営上の正当な利益を害するおそれ
(6)法令等の定めるところまたは実施機関が法律上従う義務
を有する各大臣その他国もしくは他の地方公共団体の機関の
指示により,公にすることができないとされている情報
第8条実施機関は,公開請求に係る行政文書の一部に非公開情
報が記録されている場合において,非公開情報が記録されてい
る部分を容易に区分して除くことができるときは,公開請求者
に対し,当該部分を除いた部分につき公開しなければならない。
ただし,当該部分を除いた部分に有意の情報が記録されていな
いと認められるときは,この限りでない。
2公開請求に係る行政文書に前条第1号の情報(特定の個人
を識別することができるものに限る。)が記録されている場
合において,当該情報のうち,氏名,生年月日その他の特定
の個人を識別することができることとなる記述等の部分を除
くことにより,公にしても,個人の権利利益が害されるおそ
れがないと認められるときは,当該部分を除いた部分は,同
号の情報に含まれないものとみなして,前項の規定を適用す
る。
(3)建築計画概要書
建築計画概要書は,建築基準法6条1項,同法施行規則1条の3に基づ
き,
建築確認申請の際に提出される書類で,第1面ないし第3面からなり,そ
の記載事項は以下のとおりである(乙1)。
ア第1面には,建築主,代理者,設計者,建築設備に関し意見を聴いた
者,工事監理者及び工事施工者等建築主と当該建築物に関わる関係者の
契約情報が記載されている。
イ第2面には,建築計画地の地名地番,住居表示,都市計画区域及び準
都市計画区域の内外の別等,道路,敷地面積,主要用途,工事種別,建
築面積,延べ面積,建築物の数,建築物の高さ等,工事履歴並びに行政
処分等建築物及びその敷地に関する事項が記載されている。
ウ第3面には,当該建築物の所在地の付近見取図並びに敷地と当該建築
物の計画位置を示す配置図,建築基準法令による処分の概要書が記載さ
れている。
(4)本件処分
ア原告は,平成18年1月5日,高松市長に対し,本件条例5条に基づ
き,平成17年4月1日から同年11月30日までに確認通知をした建
築計画概要書の第1ないし第3面及び処分事項(中間検査,検査済みも
含む)(以下「本件文書」という。)等についての公開請求(甲1)を
した。
イこれに対し,高松市長は,平成18年1月23日付けで,建築計画概
要書について,個人から提出されたものは,本件条例7条1号に,法人
等又は事業を営む個人から提出されたものは,同条2号にそれぞれ該当
するとして,本件条例11条2項に基づき,全部公開しない旨の決定を
した(高建指第▲▲▲▲▲号,以下「本件処分」という。甲2)。
(5)原告の異議申立て等
原告は,平成18年3月1日付けで,本件処分につき,行政不服審査法
6条に基づく異議申立てをした(甲4の1)が,高松市長は,高松市情
報公開審査会に諮問した上,平成18年7月28日付けで,上記異議申
立てを棄却する旨の決定をした(甲4の2ないし4)。
(6)本件訴訟提起
原告は,平成18年8月10日付け(同月11日受付)で本件処分の
取消し(後に,建築計画概要書の第2面及び第3面を非公開とした部分
の取消しに減縮)を求めて,本件訴訟を提起した(当裁判所に顕著な事
実)。
3争点及び争点に関する当事者の主張の要旨
本件の争点は,本件処分が適法かどうか,すなわち,①原告が非公開処分
の取消しを求めている本件文書第2面及び第3面記載の情報が,個人から提
出されたものについて本件条例7条1号本文(個人情報),また法人等又は
事業を営む個人から提出されたものについて同条2号本文(事業情報)の掲
げる非公開情報に該当するか,②上記非公開情報に該当するとしても本件文
書第2面及び第3面記載の情報が,非公開情報の例外的公開事由である本件
条例7条1号ただし書きアの情報に該当するか,③上記非公開情報に該当す
るとしても,本件条例8条1項本文,2項により,本件文書について非公開
部分を除き一部公開をするべきか,との点である。
(1)本件条例7条1号本文(個人情報)該当性について
(被告の主張)
ア本件文書のうち,第2面記載の情報のうち,建築物及びその敷地の地
名地番及び住居表示等については,特定の個人を識別することができる
情報を含んでいると考えられる。
イ第3面記載の付近見取図及び配置図等については,建築物等の場所が
特定されることから,特定の個人を識別することはできないが,公にす
ることにより,なお個人の権利利益を害するおそれがある。
ウしたがって,本件文書第2面及び第3面は,本件条例7条1号本文に
該当する。
(原告の主張)
ア本件文書第2面及び第3面に記載されている情報自体から分かること
は,せいぜい,いつ,どこに,どのような建物ができるかの概要であっ
て,特定の個人を識別することは不可能であるから,「個人に関する情
報であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により
特定の個人を識別することができるもの」には該当しない。
イまた,本件文書第2面及び第3面に記載された情報(地名・地番,許
認可番号)と照合することによって,特定の個人(建築主)を識別する
ことが可能となる情報は,建築計画概要書それ自体(特に第1面)であ
る。「他の情報と照合することにより,特定の個人を識別することがで
きることとなるもの」にいう「他の情報」とは,新聞などのように一般
人が容易に入手しうる情報をいうのであるから,建築計画概要書が誰で
も閲覧できないのであれば,同概要書は「他の情報」に該当しない。
ウ「公にすることにより,なお個人の権利利益を害するおそれがあるも
の」とは,カルテや反省文のように個人の人格的利益に深く関連し,本
人にのみそのコントロールを委ねるのが適当であるものや,設計図や工
程表のように著作物性が認められるゆえに開示行為自体が財産権の侵害
になるようなものをいうのであり,本件文書に記載された情報がこれに
該当しないことは明らかである。
エよって,本件文書第2面及び第3面は,本件条例7条1号本文に該当
しない。
(2)本件条例7条2号本文(事業情報)該当性について
(被告の主張)
ア法人等又は事業を営む個人から提出された建築計画概要書にあっては,
建築に関するノウハウ,技術開発上,営業上の経営戦略に関する内部管
理上の情報であり,公開することにより,当該法人等又は当該個人の権
利,競争上又は事業運営上の地位,その他正当な権利利益を害するおそ
れがある。
イよって,本件文書第2面及び第3面は,本件条例7条2号本文に該当
する。
(原告の主張)
本件文書第2面及び第3面に記載された情報は,いつ,どこに,何が建
つかの概要を示すものにすぎず,事細かな設計図や工程表が示されている
わけではないから,本件条例7条2号本文には該当しない。
(3)本件条例7条1号ただし書きア(法令等及び慣行により公にされ,公に
することが予定されている情報)該当性について
(原告の主張)
ア建築主,設計者等の氏名及び当該工事にかかる確認があった旨は,建
築基準法89条1項に基づいて工事現場の見やすい場所に表示されてい
るのであり,「法令の規定により,公にされている」情報であるといえ
る。
イ国土交通省は,建築計画概要書のネット公開を検討しており,同概要
書には,広く公にすることが許容され,かつ有意である部分が存在する
と考えているようである。
ウよって,本件条例7条1号ただし書きアに該当する。
(被告の主張)
ア建築基準法93条の2に規定する閲覧制度の目的は,周辺住民の協力
の下に違反建築を未然に防止するとともに,併せて違反建築物の売買等
を防止しようとするにあり,したがって閲覧の目的を問わず無限定に閲
覧が認められているものではなく,明らかに営利を目的とする閲覧請求
については,これに応じなくても違法とはいえないとの運用がなされて
いる。
原告の本件公開請求は,明らかに営利を目的としたものであり,建築
基準法上の閲覧制度の趣旨を逸脱している。
近年,経済・社会の情報化の進展に伴い,官民を通じて大量の個人情
報が処理される中,個人情報に関する意識が高まり,個人情報は個人の
人格尊重の理念の下に慎重に取り扱われるべきとして,適正な取扱いの
厳格な実施を確保する必要がある個人情報の法制上の措置が執られた。
個人情報の目的外利用が原則として制限される今日において,公共性・
公益性のある目的の場合のみ開示を認めるとすることは,行政を司る者
にとって当然の義務であるし,また情報を得た第三者にも適正な利用の
義務が課せられている。
イ建築基準法89条1項の表示は,工事施工者に対して,当該工事現場
に表示することが義務付けられたものであり,建築基準法6条6項の工
事の禁止が確認を受けたことにより解除され,法律上工事が適法になさ
れていることを表示したものにすぎず,広く一般に公開されたものでは
ない。
ウ建築計画概要書のネット公開については,同概要書をデータベース化
するとしても,目的として行政間において情報を共有することにより,
違反建築物への対応の迅速化・効率化を図ることが想定され,個人情報
保護法及び著作権法等から勘案して,現時点での建築計画概要書そのも
のの一般公開は考えられない。
エよって,本件条例7条1号ただし書きアに該当しない。
(4)本件請求文書の一部開示を認めるべきかについて(本件条例8条該当
性)
(原告の主張)
仮に建築計画概要書に記載された個人情報部分が,非公開情報に該当す
るとしても,本件条例には部分開示義務が定められているのであるから,
一部にせよ本件情報は開示されるべきである。
(被告の主張)
本件条例7条1号本文,同条2号本文により非開示とされる情報を除く
と,本件文書第2面及び第3面に記載された情報は,第2面記載の敷地面
積,用途地域,建築物の容積率,建築面積及び延べ面積等の情報のみとな
り,これらが公開されたとしても,当該建築物の場所,その他の概要等の
情報が確認できなければ本来の建築計画概要書の意味をなさないものであ
る。
よって,非公開部分を除くと,有意な情報が記載されているとは認め難
いことから,全部非公開とした(本件条例8条1項ただし書き,2項)。
第3当裁判所の判断
1本件情報が本件条例7条1号本文(個人情報)に該当するかについて(争
点(1))
(1)本件条例7条1号本文の趣旨・目的
ア本件条例7条1号本文は,原則として,行政文書の公開請求に応じる
べき義務を実施機関に課す一方で,(a)個人に関する情報であって,
当該情報により特定の個人を識別することができるもの,(b)個人に
関する情報であって,他の情報と照合することにより,特定の個人を識
別することができることとなるもの,(c)特定の個人を識別すること
はできないが,公にすることにより,なお個人の権利利益を害するおそ
れがあるものについては,非公開情報に該当する旨規定している。
イ被告における情報公開制度は,「市民の知る権利を尊重し,市の保有
する情報の一層の公開を図り,もって市の諸活動を市民に説明する責務
が全うされるようにするとともに,市政への市民参加を一層促進し,市
民の市政に対する理解と信頼を深め,市民と市との協働による公正で民
主的な市政の推進に資することを目的とする」(本件条例1条)もので
あるが,その一方,「実施機関は,個人に関する情報が十分に保護され
るよう最大限の配慮をしなければならない。」(同3条)として,個人
のプライバシー保護との調整を図り,行政文書に個人識別情報が記載さ
れているときは,その行政文書を非公開とすることにより,個人識別情
報が公開されて当該個人が不利益を受けないようにすることとしている。
ただし,個人識別情報に該当すれば,いかなるものでも非公開とされ
ると,今度は市政に対する市民の理解を深めることができない場合が頻
繁に生じることから,既に公開され,あるいは公開が予定されている情
報や公益上公開の必要性の高い情報については,本件条例7条1号ただ
し書きアないしエに該当する情報として公開すべきものとしている。
上記本件条例の趣旨・目的からすれば,個人情報にも,個人情報の内
容や秘匿の必要性の程度等によって,プライバシーとしての要保護性の
強いものから弱いものまで様々なものがあり,公知に近い事実のように
プライバシーとしての要保護性の極めて低いものは,同号ただし書き該
当性を問題とすることなく,非公開情報である個人情報には該当しない
と解すべきである。
よって,上記の観点から,本件文書第2面及び第3面に記載された情
報が,本件条例7条1号本文に該当するかどうか検討することとする。
(2)本件条例7条1号本文該当性
ア被告は,本件文書第2面記載の情報のうち,建築物及びその敷地の地
名地番及び住居表示等については,上記(1)ア(a)もしくは(b)に,同第
3面記載の付近見取図及び配置図等については,同(c)に該当する旨
主張する。
イ本件文書第2面記載の情報は,建築物及びその敷地に関する事項であ
り,地名地番,住居表示,建築面積,建築物の数,高さ等の情報が開示
されても,これを見た者は,当該場所に,いつごろ,どのような建物が
建つのかを知ることができるにすぎず,上記情報自体から,特定の個人
を識別することはできないし,開示によって得られる情報もそれほど秘
匿の必要性の高い情報とも解されない。
本件文書第3面記載の情報は,建築物の所在地の付近見取図,配置図
及び建築確認や中間検査,完了検査等建築基準法令による処分の概要書
が記載されているにすぎず,やはり上記情報自体から,特定の個人を識
別することはできないし,開示によって得られる情報もそれほど秘匿の
必要性の高い情報とも解されず,したがって,公開することにより,個
人の権利利益を害するおそれがあるとは認められない。
ウもっとも,上記各情報と,住宅地図,不動産登記簿等一般人が通常入
手し得る他の情報と照合することにより,建築主の氏名,住所等特定の
個人を識別することは可能であるが,「建築主,設計者,工事施工者及
び工事の現場管理者の氏名又は名称ならびに当該工事に係る建築確認が
あった旨」は,工事現場の見易い場所に表示しなければならないとされ
ており(建築基準法89条1項),当該場所における建築物の建築主の
氏名,住所等の情報は,既に公開されているに近いといえる。
そして,国土交通省が,建築計画概要書のネット公開を検討している
こと(甲8)も考慮すれば,本件文書第2面及び第3面に記載されてい
る情報は,プライバシーとしての要保護性が極めて低く,本件条例7条
1号本文(個人情報)に定める非公開情報に該当しないと解するのが相
当である。
エよって,被告の上記主張は,これを採用することはできない。
2本件情報が本件条例7条2号本文(事業情報)に該当するかについて(争
点(2))
(1)本件条例7条2号本文の趣旨
本件条例7条2号本文は,法人等に関する情報または事業を営む個人の
当該事業に関する情報であって,公にすることにより,当該法人等または
当該個人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるも
のについて,非公開情報に該当する旨規定している。これは,法人の事業
等に関する情報で,その公開により当該法人の営業上の地位等に対し不利
益を及ぼすものについて非公開とし得るものとした趣旨と解される。
(2)本件条例7条2号本文該当性
ア被告は,本件情報のうち,法人等から提出されたものについては,建
築に関するノウハウ,技術開発上,営業上の経営戦略等,法人内部の管
理情報が含まれていると考えられるから,上記非公開情報に該当する旨
主張する。
イ本件文書第2面及び第3面記載の情報からは,前記1(2)イのとおり,
当該場所に,いつごろ,どのような建物が建つのかを知ることができる
にすぎず,これらの情報から,法人等の内部の管理情報等を知ることは
できず,上記情報が公開されたからといって,法人等の営業上の地位等
に対し不利益を及ぼすおそれがあるとは認められない。したがって,
「当該法人等または当該個人の権利,競争上の地位その他正当な利益を
害するおそれがある」と認めることはできない。
そうすると,本件文書第2面及び第3面に記載された情報は,本件条
例7条2号本文(事業者情報)に定める非公開情報には該当しないと認
めるのが相当である。
ウよって,被告の上記主張も,これを採用することはできない。
3(1)被告は,建築基準法93条の2に定める閲覧制度の趣旨は,周辺住民の
協力の下に違反建築を未然に防止するとともに,併せて違反建築物の売買
等を防止しようとするにあり,原告の本件公開請求の目的が明らかに営利
を目的としたものである以上,建築基準法上の閲覧請求は認められないの
であるから,本件公開請求も,本件条例7条1号ただし書きアには該当せ
ず,認められるべきではないと主張する。
これに対し,原告は,被告の主張する建築基準法上の閲覧制度は,本件
条例7条6号(国等関係情報)該当性をいうものであるとして反論をする
ので,本件文書第2面及び第3面に記載された情報が,本件条例7条6号
に該当するか否かについて検討する。
(2)建築基準法93条の2の閲覧制度の趣旨は,建築基準法令の規定による
処分に関する書類を閲覧の用に供することにより,周辺住民の協力の下に
違反建築物を未然に防止するとともに,違反建築物の売買をも防止しよう
とするものである。したがって,かかる本制度の目的・趣旨を逸脱して明
らかに営利目的のために閲覧請求がなされた場合においては,行政運用上,
これを拒否しても違法とはいえないと取り扱われている(昭和50・7・
25住指発1126,乙4)。
しかし,かかる行政解釈は,明らかに営利を目的とする閲覧請求に対し
てはこれを拒んだとしても違法ではないことをいうにとどまるものであっ
て,建築基準法93条の2の規定からは,営利目的の閲覧を禁止しなけれ
ばならないとの趣旨を直ちに読み取ることはできない。また,原告の本件
文書の公開請求の目的は,利用しやすい地図インフラの整備にあるとのこ
とであって(弁論の全趣旨),社会一般の利益にも通じるものであり,営
利のみを追求するものということもできない。
(3)そうすると,原告が建築基準法93条の2の閲覧請求をした場合,特定
行政庁は,必ずこれを拒否しなければならないものではないから,本件文
書第2面及び第3面に記載された情報は「法令等の定めるところまたは実
施機関が法律上従う義務を有する各大臣その他国もしくは他の地方公共団
体の機関の指示により,公にすることができないとされている情報」(本
件条例7条6号)に該当するということもできない。
第4結論
以上によれば,本件処分のうち,本件文書第2面及び第3面を公開しない
こととした部分は,これに記載された情報が非公開情報に該当しないにもか
かわらず,該当するものとして非公開とした違法な処分であるから,その取
消しを求める本件請求は,理由があるから認容することとし,主文のとおり
判決する。
高松地方裁判所民事部
吉田肇裁判長裁判官
森實将人裁判官
長尾崇裁判官

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