弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中、被告人Aに関する部分を破棄する。
     本件を高松高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 弁護人山本耕幹の上告趣意は、事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、いず
れも刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。
 しかし、所詮にかんがみ、職権をもつて調査するに、原判決は、被告人Aに関す
る部分につき、刑訴法四一一条一号、三号により破棄を免れない。その理由は、次
のとおりである。
 原判決が維持した第一審判決第一の二及び同判決添付別紙犯罪一覧表(四)番号
5の犯罪事実の要旨は、「被告人Aは、高知市ab番地所在の国立高知療養所会計
主任として会計、物品の購入・保管・出納等に関する職務に従事する厚生事務官で
あるが、同所事務長B、同所補給係長Cと共謀のうえ、昭和四二年三月三一日頃同
療養所において、D株式会社(代表取締役E)の外交員として医薬品などの卸販売
外交に従事するFから、同療養所が同会社より医薬品を買入れたことに対する謝礼
ならびに買入方を依頼する趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら、
現金一八万円の供与を受け、もつて前記職務に関し賄賂を収受したものである。」
というのであり、第一審判決が認定したところによると、右一八万円の収賄事実は、
同被告人らが共謀のうえ、昭和四〇年八月一三日頃から同四二年三月三一日頃まで
の間、前後二二回に亘り、右F外三名から、前同趣旨のもとに、現金合計一一八万
三、〇〇〇円を収賄した事実の一部であるとされている。
 しかし、本件記録によると、同被告人は、昭和四二年三月六日付で国立香川療養
所へ転任を命ぜられ、同被告人が右の現金一八万円を収受したとされている同月三
一日頃の時点では、国立高知療養所に在職していなかつたことが明らかであり、記
録中のFの検察官に対する供述調書謄本、Cの検察官に対する供述調書によると、
右一八万円は、FからCに交付され、Cはこれを同被告人の後任として着任してい
たGに渡した、ということであり、同被告人の捜査官に対する供述調書の中では、
右一八万円の授受分についての具体的供述がなく、転任発令後従前の授受分に関す
る秘密資金関係の帳簿を同療養所事務長Bに引き継いだ旨供述しているにすぎない
ことが窺われる。そして、被告人らが授受した本件各金員の趣旨、性格についての
原判決の認定によれば、同療養所へ医薬品を納入していた販売外交員らは、自己の
販売成績を維持し、さらに拡大するため、同療養所における医薬品購入の事務を担
当する同被告人らから、ひき続き自己の会社の特殊薬品を療養所に購入してもらい
たい意思で、その取引の都度納入薬品の種類、数量、価格に応じ一定の割合により
算出された金員を値引き返金と称して被告人らに交付し、他方、被告人らは、本件
金員を受領するや、これを秘密裡に保管し、被告人らの意のままになる資金グルー
プをつくり、その一部を予算上不足する出張旅費、会議費等に使用したほか、他は
すべて私的な宴会などの接待費、交際費等に費消し、本件金員が被告人らよりなる
団体への収入であつた、とされているのである。
 以上の事実関係に徴すると、本件金員の授受は、国立高知療養所で現に医薬品購
入の職務を担当している者と医薬品納入業者の販売外交員との間で医薬品の継続的
購入を前提としてなされていたものであり、前記一八万円の授受もその一部であつ
て、この一八万円の授受に限り、特に、転出した同被告人の在職当時の職務行為に
対する謝礼の趣旨をも包含するものと認めるべき特段の事情は、記録上窺うことは
できないのである。そうすると、被告人は、国立香川療養所へ転出するとともに、
他の共犯者との共謀関係から自然に離脱したものであり、かつ、贈賄者である前記
Fも、既に他所に転出し医薬品購入の職務を担当していない被告人を除外した趣旨
で、前記一八万円をCに交付したものではないか、と疑う余地があるといわなけれ
ばならない。
 しかるに、原審は、同被告人が国立香川療養所へ転出した後の本件一八万円の授
受分に関し、他の共犯者との共謀関係の有無、右金員授受が特に同被告人の在職当
時の職務行為に対する謝礼の趣旨のものと認むべき特段の事情について何ら審理す
ることなく、たやすく第一審判決の認定を維持しているのである。してみると、原
判決は、本件一八万円の授受に関し、右の点につき事実の認定を誤り、ひいては審
理を尽くさなかつた違法があり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかである。
そして、原判決の維持する第一審判決によると、本件一八万円の収賄事実は、被告
人が外二名と共謀のうえ、二二回にわたり合計金一一八万三、〇〇〇円の賄賂を収
受した事実の一部に過ぎないが、右一八万円の収賄罪は、他の二一個の収賄罪と刑
法四五条前段の併合罪の関係にあり、これらの罪の中で最も犯情重き罪として併合
罪の加重がなされていることは、その判文上明らかであり、かつ、右一八万円の収
賄罪の成否は、同被告人に対する追徴金額にも影響することが明らかでるから、原
判決を破棄しなければ著しく正義に反するものといわざるを得ない。
 なお、原判決の維持する第一審判決は、同被告人に対し、懲役五月執行猶予三年、
追徴金三七万二、三三三円の刑を科しているところ、右説示により明らかなとおり、
本件一八万円の収賄罪のみを分離することはできないから、原判決中同被告人に関
する部分を全部破棄することとする。
 よつて、刑訴法四一一条一号、三号により、原判決中同被告人に関する部分を破
棄し、同法四一三条本文に従い、本件を原審である高松高等裁判所に差し戻すこと
とし、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 検察官 鎌田好夫 公判出席
  昭和四九年九月一二日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    藤   林   益   三
            裁判官    大   隅   健 一 郎
            裁判官    下   田   武   三
            裁判官    岸       盛   一
            裁判官    岸   上   康   夫

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