弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

○ 主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
○ 事実
一 双方の申立
1 控訴人は「原判決を取消す。被控訴人広島市建築主事が昭和四二年広島市建築
確認第二四六号をもつて参加人株式会社長崎屋に対してなした建築確認処分は無効
であることを確認する。被控訴人広島市は控訴人に対し、金五〇万円およびこれに
対する昭和四六年七月二二日から完済にいたるまで年五分の割合による金員を支払
え。訴訟費用は一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求めた。
2 被控訴人らおよび参加人は主文同旨の判決を求めた。
二 双方の主張と証拠関係
当事者双方の主張および証拠関係は、左記に付加するほか原判決事実摘示のとおり
である(ただし、原判決八枚目裏三行目に「被告」とあるのを「被害」と、一〇枚
目表五行目に「A」とあるのを「A」と訂正する。)から、これを引用する。
控訴人の主張
被控訴人広島市建築主事は、本件建築確認処分をするに際しては、当該建築物の敷
地の現況、或いは同土地に対し第三者が使用権を有するか否かの点などを調査すべ
きであるのに、これをなさず、たんに建築確認申請者が提出した書面上の審査のみ
で、本件建築確認処分をしたのは違法である。
○ 理由
一 本案前の主張について
まず、控訴人の訴えの利益について検討するに、建築基準法(昭和四三年法第一〇
一号による改正前のもの、以下たんに法と呼ぶ)六条一項は、建築主が同項第一号
から第三号までに掲げる建築物を建築しようとする場合には、当該工事に着手する
前に、当該工事の計画が当該建築物の敷地、構造および建築設備に関する法律並び
にこれに基く命令および条例の規定に適合するものであることについて、確認の申
請書を提出して建築主事の確認を受けなければならない旨を規定し、その具体的基
準については、同法および同法施行令などに定められている。
しかして、法が右規制を設けている趣旨は、直接には、健全な建築秩序を確保し、
一般的な火災危険の防止、生活環境の保全等という公共の利益の維持増進にその目
的があることは同法一条の規定により明らかであるが、この場合における公共の利
益は、具体的には、建築主または近隣居住者の採光、通風、住居の静ひつという生
活環境の保全または火災における安全の保護ということを離れては考えられず、近
隣居住者の生命、健康を保護し、火災等の危険から守ることが、とりもなおさず公
共の利益に合致するものということができる。そして、右建築規制法規は、これが
右近隣居住者の採光、通風、生活環境の保全、防火に寄与する限度において、公共
の利益と同時に近隣居住者の右個人的利益をも保障する趣旨と解すべきである。
してみれば、本来建築確認を受けられない筈の違法建築により、生活環境上の悪影
響あるいは火災の危険等を感ずる近隣居住者は、個人の法的利益を害されたものと
して、右建築確認処分の無効確認を求めうる法律上の利益を有するものというべき
である。
ところで、本件においてに、控訴人が本件建築物に隣接する家屋に居住しているこ
とは被控訴人らにおいて明らかに争わないところであり、原審における証人Aの証
言により真正に成立したものと認められる乙第一号証、同号証の二によれば、本件
建築確認処分の対象となる建築物は、増築後の一階面積四七七・六五平方メートル
の木造二階建店舗および事務所であることが認められるので、違法な建築確認によ
つて右建築物が施工完成された場合には、控訴人はこれにより日常の生活環境上の
悪影響をうけ、あるいは火災等の不測の危険にさらされるおそれがないとはいい得
ないというべきである。
そして、この危険の排除は、その性質上、当該処分の存否またはその効力の有無を
前提とする現在の法律関係に関する訴によつてその目的を達し得ないものと解され
るので、控訴人は、本訴につき行政事件訴訟法三六条に定める当事者適格を有する
ものと認めるのが相当である。
二 本案について
当裁判所も控訴人の被控訴人らに対する本訴請求をいずれも失当として棄却すべき
ものとするが、その理由は左記に付加、訂正するほか、原判決一二枚目表二行目か
ら一八枚目表八行目までに説示するとおりであるから、これを引用する。
1 原判決一二枚目表五行目に「前記乙第一号証の一」とあるのを「原審における
証人Aの証言により真正に成立したものと認められる乙第一号証、同号証の二」
と、一五枚目表一〇行目と一六枚目表九行目に「A」とあるのを「A」と、一五枚
目裏七行目に「残存させる」とあるのを「一部除去した残部の六二・七平方メート
ルを存置する」と、それぞれ訂正する。
2 原判決一三枚目裏六行目の末尾に、左記のとおり付加する。
即ち、建築主事の確認は、確認申請書に明示されている事項について、申請建築物
の計画が建築基準法などの法令が定める客観的基準に適合するかどうかを判断する
ものであつて、右建築確認に際し、建築主事は、申請建築物の敷地を現地調査した
り、また同土地に対する所有権、使用権の有無を調査することは要件ではなく、申
請書の記載と現地の状況または真実の権利関係が合致していなかつたとしても、こ
れにより建築確認の処分自体が直ちに違法となるものではない。
3 原判決一七枚目表九行目の次に、左記のとおり挿入する。
仮に、控訴人主張のように建ぺい率算定の基準となる敷地面積は、登記簿謄本の記
載の地積によるとしても、本件建築物の敷地、即ち、別紙(一)の(1)ないし
(6)の各土地の合計地積は控訴人主張の計九三三・八四平方メートルとなるとこ
ろ、本件建築確認申請において、申請建築物の面積は四七七・六五平方メートル、
残存倉庫(別紙(二)記載の建物)の面積が六二・七平方メートル、以上合計五四
〇・三五平方米として、確認申請がなされていることは前認定のとおりであるか
ら、これによつて建ぺい率の合否を算出すると
建築可能面積(933.84-30)×0.6=540.040
542.3040-540.35=1.9540
となり、建ぺい率に違反しないこと明らかである。
もつとも、成立に争いがない甲第三号証の二によれば、後日完成した本件建築物の
登記簿上の一階床面積は四八三・三〇平方メートルと記載され、前記確認申請の際
の申請建築物面積より五・六五平方メートル広いことが認められるので、右事実か
ら別個の問題が生ずる余地が存するとしても、本件建築確認処分自体を重大かつ明
白な瑕疵により無効ならしめるものではない。
三 よつて、民事訴訟法三八匹条、九五条、八九条を適用し、主文のとおり判決す
る。
(裁判官 胡田 勲 西内英二 高山 晨)
(原裁判等の表示)
○ 主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
○ 事実
第一、当事者の求めた裁判
(請求の趣旨)
一、被告広島市建築主事が昭和四二年広島市建築確認第二四六号をもつて参加人株
式会社長崎屋に対してなした建築確認処分は無効であることを確認する。
二、被告広島市は原告に対し金五〇万円およびこれに対する昭和四六年七月二二日
以降右支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
三、訴訟費用は被告らの負担とする。被告広島市建築主事および参加人長崎屋
一、本案前の申立
(一) 本件訴を却下する。
(二) 訴訟費用は原告の負担とする。
二、本案の申立
主文と同旨。
被告広島市
主文と同旨。
第二、当事者の主張
(請求の原因)
一、参加人長崎屋は広島市<以下略>に木造瓦葺二階建建物(床面積四八三・三〇
平方メートル、二階面積三五一・九七平方メートル、用途店舗兼倉庫兼寮以下本件
建築物という。)を建築するため、被告建築主事に対して建築の確認の申請をした
ところ、同被告は昭和四二年広島市建築確認第二四六号をもつて右申請を確認する
行政処分をなした。
二、しかし、右建築確認処分には以下に述べる如き重大かつ明白な瑕疵があるから
無効である。
(一) 本件建築物は、登記簿上、建築基準法(条文の引用は昭和四三年法律第一
〇一号による改正前のもの、以下単に法という。)五五条一項、同法施行令一条一
号所定の敷地面積を有しない。
まず、本件確認申請においては、本件建築物の敷地として別紙(一)記載の土地が
記載されているが、そのうちの番号(1)ないし(3)の土地上には右申請時以前
より別紙(二)記載の建物が建つており、この建物は本件建築物の用途上不可分の
関係にあるものでないから、両建築物は一団の土地上にある一団の建物ではなく別
個の敷地上にある別個の建物とみるべきである。そうすると本件建築物の敷地は別
紙(一)番号(4)ないし(6)となるが、これは別紙(三)計算式(1)のとお
り法五五条一項所定の敷地に二三六・一二平方メートル不足することとなる(なお
本件建築物の所在地一帯は住居地域である。)。
かりに、右と異り、別紙(二)記載の建物と本件建築物とが一体をなす建物である
としても、別紙(三)計算式(2)のとおり、右所定敷地に六・三三平方メートル
不足する。さらに、別紙(一)記載番号(1)ないし(3)の土地のうち一〇〇平
方メートルは、昭和四一年八月より昭和月六年七月まで、訴外Bが自己建物の建ぺ
い地として当時の所有者たる訴外Cより借用していたものであつて、右部分を本件
建築物の敷地とすることはできないから、結局本件建築物は合計一〇六・三三平方
メートル不足することとなる。
(二) 別紙(一)記載番号(1)ないし(3)の土地は、本件建築物が所在する
同記載(4)ないし(6)の土地の西南隅のわずか一・四メートル位の出入口と連
結されているだけで、本件建築物の敷地たる機能すなわち当該建物についての安
全、防火および衛生確保等の機能を果していないから敷地としての実質を有しな
い。
(三) 参加人は、本件建築物に一三・五キロワツトの電力を導入し、六台のモー
ターを使用して冷凍加工業を営み、約九時間その加工品を販売している。すなわ
ち、本件建築物は住居地域における工業を主体とする工場というべきであり、作業
の床面積も五〇平方メートルをこえるものであるから法四九条一項、同法別表第二
(い)項二、同項三の(七)に違反する建築物である。
かりに、本件建築物が法四九条一項ただし書に該当するとしても、被告建築主事に
おいて法五一条一項に定める手続を経た事実はない。
(四) 法によれば、店舗とは電動設備を有することなく、住居地域内において建
築を許可された販売専業の事業を指すと解されるところ、被告建築主事は本件にお
いて、単に店舗として用途確認をしながら、前記のような設備を有する冷凍加工業
兼営の建造物を認可しているものであつて用途確認違反である。
三、よつて右処分の無効確認を求める。
四、被告建築主事の違法な右確認処分にもとづぎ本件建築物が建築されたため、こ
れに隣接する家屋に居住する原告は、火災の危険におびえ、また、本件建築物より
排出される騒音、悪臭および廃棄物ならびに冷凍機の運転等による振動等により生
活環境を害され、特別被爆者たる原告の療養生活に障害を与えている原告の精神的
苦痛を慰藉するには金銭に評価して金五〇万円を相当とする。
被告建築主事は被告広島市の職員であるから、原告は、国家賠償法一条により、被
告広島市に対して右五〇万円およびその履行期後である昭和四六年七月二二日以降
右支払ずみに至るまで民事法定利率年五分の割合による金員の支払いを求める。
(本案前の主張)
被告建築主事および参加人
一、建築基準法の定める各種の規制措置は社会全体の利益を図るためのものであつ
て住民個々の利益の保護を目的とするものでなはない。
二、したがつて被告建築主事のなした本件確認処分により隣地に居住する原告が何
らかの不利益を受けるとしても、それは単なる事実上のものであつて、原告の法律
上の利益が害されるものではない。
三、そうすると、原告は、本件確認処分につき抗告訴訟を提起する適格を有するも
のではないから、本件訴は不適法として却下さるべきである。
(請求原因に対する答弁)
被告らおよび参加人
一、請求原因一項のうち、本件建築物の用途およびその建築面積を否認し、その余
は認める。右の用途は店舗および事務所でありり、建築面積は四七七・六五平方メ
ートルである。
二、請求原因二項の本件処分に重大かつ明白な瑕疵があるとの主張は争う。
同項(一)において、原告は、建ぺい率を登記簿上の敷地面積から算出している。
しかし、建築確認申請の際に必要とされる書類には建築基準法施行規則一条一項所
定のとおり登記簿謄本は含まれていない。従つて建築主事が確認を行う際には申請
書記載の数値により所定の計算を行い、建ぺい率の適否を認定すれば足る。本件に
おいては別紙(三)計算式(3)のとおり(なお本件建築物の敷地面積は、当初、
九五一・九〇平方メートルとして申請されたが、後九三四・七一平方メートルと変
更された。)適法と認められ確認されたものである(本件建築物の所在地が住居地
域であることは認める。)。
本件確認申請において、本件建築物の敷地として別紙(一)記載の土地が掲げられ
ていること、そのうち(1)ないし(3)の土地に別紙(二)記載の建物が所在し
ていることは認めるが、本件建築物と別紙(二)記載の建物とが用途上不可分の関
係にないとの事実は否認する。一般に、二以上の建築物を共存させ一体として利用
することが社会的経済的に有用であれば、安全上、防火上、衛生上および交通上特
に支障のない限り、これらの建築物は用途上不可分の関係にあるものとし、それら
の敷地を一つのものとして取扱うべきものとされている。別紙(二)記載の建物は
倉庫として使用されており、店舗である本件建築物において販売される商品の貯蔵
に使用されているのであるから、本件建築物と用途上不可分の関係にあり、さら
に、前記の支障もない以上、その敷地は建築基準法施行令一条一号に規定する敷地
である。
訴外Bが原告主張の土地を原告主張のように賃借していたことは認める。しかし、
建築主事としては、建築確認申請があつた場合、当該敷地についての私法上の権利
関係などについて審査することは要求されていないし、その権限もない。また、右
土地は、昭和四二年八月二三百、訴外Cより参加人に売却されたもので、本件建築
物の適法な敷地である。
同項(二)のうち別紙(一)の(1)ないし(3)の土地と同(4)ないし(6)
の土地の連結部分が少いことは認めるが、建ぺい率を設けた法の趣旨および本件建
築物の別紙(二)記載の建物とが用途上不可分の関係にあることからすると、別紙
(一)記載(1)ないし(3)の土地は本件建築物の有効な敷地である。
同項(三)・(四)主張の事実は否認する。本件建築用の用途は工場ではない。
被告広島市
請求原因四項のうち、被告建築主事が被告広島市の職員であることは認めるが被告
広島市に損害賠償責任があるとの主張は争う。本件確認処分は違法なものではな
く、また、右処分と原告主張の被告との間には相当因果関係がない。
参加人
建築主事の行う建築確認は高度の専門的技術的判断を伴う行政処分である。この特
質から考えると、原告主張の瑕疵の如きは、たとえあるとしても、未だ、本件処分
をして当然無効ならしめる程度に重大かつ明白なものではない。
かりに、本件処分が無効とされ、本件建築物を除却することとなれば、そこでスー
パーマーヶツトを経営する参加人は甚大な損害を蒙ることになる。これに比して原
告の主張する被害は他の方策によつて回復することが可能である。
かかる観点からしても本訴請求は棄却さるべきである。
(本案前の主張に対する原告の答弁)
争う。
(被告らおよび参加人の本案についての主張に対する原告の反論)
一、敷地面積の算定について
登記簿は私法上の権利や事実の存在を広く公示する制度であり、建築確認もかかる
登記簿記載の事実を根拠としてなされなければならないのは当然である。
二、B借用の土地について
本件処分時、Bの右賃借契約は継続しており、同人所有の建築物も存在していたの
であるから、参加人が右土地を取得しても、同人は、法八条により右B所有建物の
敷地としてこれを維持保全すべき責任を負つていた。すなわち、右土地は本件建築
物の敷地とはなりえないものである。
第三、証拠関係(省略)
○ 理由
一、本案前の申立について
建築基準法(以下単に法といい、条文の引用は昭和四三年法第一〇一号による改正
前の同法による。)六条一項各号に該当する建築物を建てる場合には同条により当
該工事の計画が当該建築物の敷地、構造および建築設備に関する法律並びにこれに
基く命令および条例の規定に適合することについて建築主事の確認を受けることが
要求されている。そして、その具体的基準については、同法および同法施行令等の
規定するところであるが、立法の目的は法一条に掲げるごとく国民の生命、健康及
び財産の保護を図りもつて公共の福祉の増進に資するものであつて具体的には保健
衛生、火災予防等の必要上独り建築主を保護の対象とするに止まらず建築に関連し
て利害関係を負担する近隣居住者をも併せて保護の対象とするものと解するのが相
当である。
従つて、法六条による建築確認処分の対象となつた建築物の近隣居住者は右建築に
より各々の土地利用を妨げられることがないとはいえ、本件建築確認を受けえられ
ないはずの違法建築により保健衛生上の悪影響あるいは火災の危険等日常生活に重
大な支障を蒙るおそれがあるときは、右確認処分の無効確認を訴求する法律上の利
益を有し当事者適格を有すると解すべきである。
これを本件についてみると、本件建築物敷地に隣接する家屋に原告が居住している
ことは被告らおよび参加人において明らかに争わないので自白したものとみなすべ
きであり、証人Aの証言により真正に作成されたことが認められる乙第一号証の一
によれば本件建築物は総面積四七七・六五平方メートルの木造二階建店舗および事
務所であることが認められ、建築基準法の前記立法目的に照らし仮りに本件建築物
に関し建築確認をなすべきでない法違反があつた場合、原告の居住環境が悪化し保
健衛生上不断の悪影響を受け、あるいは火災等の危険にさらされるおそれがないと
はいえないものと認められる。そして、この危難の排除は、性質上、本件処分の存
否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴によつては、その目
的を達することができなといわなければならない。
従つて、本件確認処分の無効確認を求める訴は適法なものである。
二、本案についての判断
1、被告建築主事が昭和四二年広島市建築確認第二四六号をもつて本件建築物建築
申請を確認する行政処分をなしたことは当事者間に争いがない。そして、前記乙第
一号証の一および証人Dの証言により真正に作成されたことが認められる同第二号
証並びに弁論の全趣旨によれば、本件建築物の敷地面積は、右申請の当初、九五
一・九〇平方メートルとされていたが、その後変更されて九三四・七一平方メート
ルとなり、本件確認処分は結局右変更後の面積を対象としてなされたものと認めら
れる。
そこで原告主張の本件処分の各瑕疵について判断する。
(一) 建ぺい率違反の瑕疵について
(1) 建築確認申請に対する審査は法六条に規定するように申請にかかる計画が
当該建築物の敷地、構造および建築設備に関する法令の規定に適合するものである
か否かについてなされるものである。しかして法六条八項同法施行規則一条によれ
ば、申請書に記載すべき建築物の敷地についてはその面積、地名地番および指定地
域の別を明らかにすることが必要とされ、申請付属図書中に附近見取図および配置
図を提出すべきものとされ右のほかに格別当該建築物の敷地の登記簿謄本や地積測
量図さらには敷地に関する建築主の私法上の権限を証する書類等の提出は要求され
ていない。
また法六条四項は審査の方法につき、「建築主事は・・・・・・申請書の記載によ
つては、(申請にかかる計画が)これらの規定に適合するかどうかを決定すること
ができない正当な理由があるときは、その理由をつけてその旨を文書をもつ
て・・・・・・当該申請者に通知しなければならない。」と規定し、このほかに建
築主事が事実関係を調査するために関係人を審訊しその他申請事項の調査をする権
限ないし義務を定めた規定は存しない。
右建築基準法の規定の体裁並びに建築確認なる行政処分が公共の福祉の観点から私
人の建物建築に対し課した一般的制限を解除するいわゆる警察許可に属する処分で
あることを考慮すれば、建築確認における審査は原則として申請にあたつて提出さ
れる書類を資料として行われる書面審理であり、建築確認は右書類によつて判定し
うる範囲において建築工事の概要に対して付せられる許可の認定であるということ
ができる。
従つて建築主事は右書面審理の過程において申請の不実過誤を発見しえた場合を除
き右提出された書類等につき審理すれば足り建ぺい率合否の判定も右特段の事情あ
る場合を除いては右書類等に記載された数値を基準としてなされれば充分といわね
ばならず建築主事が書類等によつて判定しえない事項については設計者ないし申請
者の責任にゆだねられているものと解するのが相当である。従つてこの点について
の原告の主張は接用し難い。
本件において右の如き特段の事情があることを認めるに足る証拠はない。
(2) 原告は、本件建築物の敷地として申請された土地のうちには訴外Bの賃借
地が含まれており、右土地は本件建築物の敷地となしえないと主張するがこの点に
ついても前説示のとおり建築主事がなす建築確認処分の性格に照らし仮りに本件建
築物の敷地として申請された部分に訴外人の為賃借権が設定せられていたとして
も、申請書並びに添附図面にそのことが顕われない以上、申請書等の記載内容に即
して所定の建築基準に適合するか否かを判断した確認処分に瑕疵ありとはいえな
い。(このことは必ずしも建築につき申請者の私法上の権限を認めたことにはなら
ず、私法上の権利救済もしくは義務負担は当事者間において別個に処理されるべき
問題となる)
従つて右木村の賃借地を看過してなされた本件処分は違法であるとの原告の主張は
既にこの点において理由がない。
(3) 別紙(一)の(1)ないし(3)の土地上に別紙(二)記載の建物が所在
すること、別紙(一)の(1)ないし(3)の土地と本件建築物が所在する同
(4)ないし(6)の土地の連結部分か狭小であることは当事者間に争いがなく証
人Aの証言により真正に作成されたことが認められる乙第一号証の二によれば、右
連結部分は三メートル巾と認められ、これに反する証拠はない。
証人Dの証言により真正に作成されたことが認められる乙第二号証、ならびに同証
人の証言によれば、別紙(二)記載の建物は、本件建築物の建築に際して除却され
る予定であつたが、その後、店舗たる本件建築物のための倉庫として使用するため
残存させることとして本件確認申請がなされたことが認められる。右事実からすれ
ば、別紙(二)記載の建物は本件建築物と用途上不可分の関係にあると考えるのが
相当である。そして、別紙(一)の(1)ないし(3)の土地と同(4)ないし
(6)の土地の連結部分が前記のように三メートルであることからすれば両者を一
団の土地とみるのもあながち不当とはいえない。そうすると別紙(一)の(1)な
いし(6)の土地は、法施行令一条一号にいう「用途上不可分の関係にある二以上
の建築物のある一団の土地」として本件建築物の敷地とすることができる。右に反
する原告の主張は採用しない。さらに原告は右連結された土地は本件建築物の敷地
としての実質を有しないと主張するが、前記乙第一号証の二ならびに証人D、同A
の各証言によれば、右土地も災害避難等の点につき本件建築物にとつて有用なもの
と認められ、これに反する証拠はないから、右原告の主張も理由がない。
以上の判断をもとに本件建築物が法五五条所定の建ぺい率に違反するか否かを検討
する。
本件建築物の敷地として別紙(一)記載の土地があげられていることは当事者間に
争いがなく、前記乙第二号証によれば、右の面積は九三四・七一平方メートルとし
て申請されたものであることが認められ、右申請自体から右の数値に明らかな誤り
があることを看取しえたとの証拠はないから、建ぺい率の算定にあたつては右数値
を基礎とすれば足るものである。右土地が住居地域の指定を受けていることは当事
者間に争いがないから、法五五条一項により、右土地に建築可能な建築物の面積を
算定すると、別紙(三)計算式(3)のとおり五四二・八二六平方メートルとな
る。そして、本伴申請においては、本件建築物の面積が四七七・六五平方メートル
とされていたことは前記のとおり、前記乙第二号証によれば、別紙(二)記載の建
物の面積は六二・七平方メートルとして本件申請がなされたことが認められる。そ
うすると右の合計面積は五四〇・三五平方メートルとなる。従つて、本件建築物が
建ぺい率に違反するとの原告の主張は理由がない。
(二) 電動設備等設置の違反について
前記乙第一号証によれば、本件建築物は、用途店舗兼事務所として申請されたもの
で、法四九条一項、別表第二(い)項に該当し、あるいは右法条の制限を越える建
築物として申請されたものではない。また本件建築物が、右法条に該当し、あるい
はその制限を越える建築物であるとの点については原告本人尋問の結果によるも、
これを認めるに充分でなく、他にこれを認めるに足る証拠はない。
従つて、本件確認処分が法四九条一項、五一条一項に反し、また、用途確認違反で
あるとの原告の主張は理由がない。
よつて、本件確認処分に原告所論の瑕疵はないから、右処分の無効確認を求める原
告の請求は失当として棄却を免れない。
2、損害賠償請求について
原告は、本件確認処分が違法無効であることを前提として右請求をなしているので
あるが、右処分に原告所論の瑕疵が認められないことは前判示のとおりであり、さ
らに、原告が本件建築物における参加人の営業により受認すべき限度を越える被害
を蒙つているとしても、右は本件確認処分と相当因果関係があるものとはいえない
から、その余の判断をするまでもなく、右請求も理由がないといわざるをえない。
3、以上の次第で、原告の請求はすべて理由がないから、これを棄却することと
し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九四条を適用して主文のとおり判決
する。
別紙(省略)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛