弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1原判決を取り消す。
2本件訴えをいずれも却下する。
3訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
主文第1,2項同旨
第2事案の概要
1事案の要旨
本件は控訴人がA株式会社以下Aというに対し建築基準法以,(「」。),(
下法ともいう6条の2第1項に基づき神奈川県逗子市α×××番6外「」。),
(「」。)(「」22筆以下本件敷地というに建築する共同住宅以下本件建築物
。)(「」という及び付属自動車車庫について確認をした以下本件建築確認処分
というところ本件敷地の周辺に居住する被控訴人らが本件建築確認処分。),,
は上記建築計画が法20条,建築基準法施行令93条に違反しているのを看過
した違法なものであるなどと主張して,控訴人に対し,その取消しを求めた事
案である。
原審は,被控訴人らの請求を認容したところ,控訴人が訴えの却下を求めて
控訴した。
2当事者の主張等
基礎となる事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,次のとおり原判決
を補正し,訴えの利益に関する当事者の主張を付加するほかは,原判決の「事
実及び理由」中の「第2事案の概要」の「2基礎となる事実」及び「第3
争点及び争点に関する当事者の主張」の控訴人及び被控訴人らに関する部分
に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)原判決の補正
ア原判決6頁19行目の次に,改行して次のとおり加える。
「ア建築基準法6条(建築物の建築等に関する申請及び確認)1項
建築主は,第1号から第3号までに掲げる建築物を建築しようとする
場合(増築しようとする場合においては,建築物が増築後において第1
号から第3号までに掲げる規模のものとなる場合を含む,これらの建。)
築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第
4号に掲げる建築物を建築しようとする場合においては,当該工事に着
手する前に,その計画が建築基準関係規定(この法律並びにこれに基づ
く命令及び条例の規定以下建築基準法令の規定というその他建(「」。)
築物の敷地,構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及
び条例の規定で政令で定めるものをいう以下同じに適合するもので。。)
あることについて,確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け,確
認済証の交付を受けなければならない。当該確認を受けた建築物の計画
の変更国土交通省令で定める軽微な変更を除くをして第1号から(。),
第3号までに掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする
場合においては,建築物が増築後において第1号から第3号までに掲げ
る規模のものとなる場合を含む,これらの建築物の大規模の修繕若し。)
くは大規模の模様替をしようとする場合又は第4号に掲げる建築物を建
築しようとする場合も,同様とする。
1別表第1(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物でその用途に供,
する部分の床面積の合計が100平方メートルを超えるもの
2木造の建築物で3以上の階数を有し又は延べ面積が500平方メ,
ートル,高さが13メートル若しくは軒の高さが9メートルを超える
もの
3木造以外の建築物で2以上の階数を有し又は延べ面積が200平,
方メートルを超えるもの
4前3号に掲げる建築物を除くほか都市計画区域若しくは準都市計,
画区域(いずれも都道府県知事が都道府県都市計画審議会の意見を聴
いて指定する区域を除く)若しくは景観法(平成16年法律第11。
)(。)0号第74条第1項の準景観地区市町村長が指定する区域を除く
内又は都道府県知事が関係市町村の意見を聴いてその区域の全部若し
くは一部について指定する区域内における建築物
(2項以下省略)
()イ建築基準法第6条の2国土交通大臣等の指定を受けた者による確認
第1項
前条第1項各号に掲げる建築物の計画(建築士法第3条から第3条の
3までの規定に違反するものを除くが建築基準関係規定に適合するも。)
のであることについて,第77条の18から第77条の21までの規定
の定めるところにより国土交通大臣又は都道府県知事が指定した者の確
認を受け,国土交通省令で定めるところにより確認済証の交付を受けた
ときは,当該確認は前条第1項の規定による確認と,当該確認済証は同
項の確認済証とみなす」。
イ6頁20行目を「ウ建築基準法20条(構造耐力)1項(平成18年
法律第92号による改正前のもの」に改める。)
ウ7頁8行目のイをエに同行目の36条を36条1項平「」「」,「」「(
成19年政令第49号による改正前のもの」に改める。)
エ11頁13行目から17行目までを削除する。
(2)訴えの利益に関する当事者の主張
(控訴人の主張)
ア本件建築確認処分がなされた後,本件変更確認処分がなされた以上,本
件建築確認処分は効力を失い,原確認に基づく工事を行うことはできない
から,被控訴人らに訴えの利益はない。
すなわち,建築確認は,その基準時において確認に係わる建築計画が当
該建築基準関係法令に適合しているとの行政庁の判断の表示にすぎない。
建築確認処分を取得した者は,申請建築物の工事を適法にすることができ
るが,これは建築確認処分が準法律行為的行政行為であることから,同処
分を得た者に対し,法が特に与えた法定効果であると解されている。そし
て,変更確認処分がなされた後においては,原確認処分は,その基準時に
おいて確認に係わる建築計画が当該建築基準関係法令に適合しているとの
行政庁の判断があったといういわば歴史上の事実にすぎず,原確認処分に
基づく建築物を適法に建築することができるという法的な効果は変更確認
処分によって失われる。なぜなら,原確認と変更確認とは同一行政庁によ
る同一事項についての処分であるから,行政法の一般論としては,後行処
分たる変更確認によって原確認の内容は前記の歴史的事実に属する部分の
ほかは,取り消されたと見るのが自然かつ相当であるからである。また,
実質的にみても,仮に原確認処分の法定効果としての建築工事の自由が変
更確認のそれによって消滅せずに併立するものとすると,両者の自由の行
使による建築物の内容が互いに矛盾抵触し,収拾がつかなくなるおそれが
あるからである。
イ仮に,一般論として,変更確認処分がなされた場合にも依然として原確
,,認に基づく工事が可能であるという立場に立つとしても本件においては
本件建築確認に基づく着工が未だなされない間に平成14年の建築基準法
改正により,法28条の2及び建築基準法施行令20条の4ないし7が加
えられ,本件建築確認はこれらの新規定に適合しなくなったため,本件建
築確認処分に基づく建築工事は不可能である。
(被控訴人らの主張)
ア変更確認処分は,原確認処分の効力を吸収し,又は,消滅させる新たな
処分ではない。すなわち,変更確認処分は,原確認処分の存在を前提とし
たうえで,原確認処分の法律効果の内容を一定の限度のものに変更する効
果を生ぜしめるにすぎないものであり,この変更確認処分により,原確認
処分は,当初から,変更確認処分のとおりの法律的効果を伴う確認処分と
して存在していたものとみなされることになる。
本件変更確認処分が,本件開発変更許可処分に基づいて造成される敷地
を前提として建築基準関係規定への適合性を審査したうえで,変更処分を
したとするならば,明らかに変更確認の限度を超えるものであり,変更確
認処分自体が違法となる。一方本件変更確認処分が構造に係る計画変更で
はなく,原確認処分を前提として,法6条1項後段の変更確認できる限度
での変更確認とすれば,原確認処分は所与の事実として,変更をしたにす
ぎず,本件変更確認処分によって,原確認処分が吸収される訳でもなく,
取り消されたと解することはできない。
法87条に基づき,原確認処分の変更確認処分をした場合は,原確認処
分の効力に消長をきたさず,有効に存在すると解されているところ,法8
7条の変更の方が,法6条1項後段に基づく変更より,原確認処分の変更
の程度が重大であるのに,原確認処分の効力に影響を与えないのであるか
ら,より原確認処分の同一性の範囲である変更確認処分によって,原確認
処分の効力が消滅ないし取り消されたとするのは,極めて不合理な解釈で
ある。
イ原確認処分が有効に存在するのであれば,建築が可能か不可能かは,訴
えの利益とは直接の関係はない。
第3当裁判所の判断
,,まず本件建築確認処分の取消しを求める訴えの利益があるか否かについて
判断する。
前記のとおり,法6条1項前段及び法6条の2第1項は,建築主は,一定の
建築物を建築しようとする場合においては,当該工事に着手をする前に,その
計画が建築基準関係規定等に適合するものであることについて,建築主事又は
法77条の18から77条の21までの規定の定めるところにより指定を受け
た指定確認検査機関以下建築主事等というの確認を受けなければなら(「」。)
ないとし,法6条1項後段及び法6条の2第1項は,確認を受けた建築物の計
画の変更をして,建築物を建築しようとする場合も,同様とするとしている。
そして,法6条1項後段は,上記のとおり,確認を受けた建築物の計画の変
更をして,建築物を建築しようとする場合も,当初の建築の計画の場合と同様
に取り扱うものとしているから,同項は,確認を受けた建築物の計画の変更が
あった場合には,当該工事に着手をする前に,変更に係る建築物の建築計画が
建築基準関係規定等に適合するものであることについて,改めて,建築主事等
の確認を受けることを義務付けているものと解される。このような同条の文理
及び規定の趣旨に照らすと,同項は,当初の建築物の計画についての確認の効
力がそのまま存続することを前提として,その変更部分についてのみ,建築主
事等の確認を受ければ足りるとしているものではなく,変更に係る建築物の建
築計画の全体について建築主事等の確認を受けることを義務付けているものと
解するのが相当である。
したがって,建築確認変更処分は,当初の建築確認処分が有効であることを
前提として,変更に係る部分についてのみ,これが建築基準関係規定等に適合
することを確認するものではなく,変更に係る部分以外の部分を含む変更後の
建築計画の全体につき,改めて建築基準法令の規定等に適合するか否かを判断
し,適合すると判断した場合には既にされた建築確認処分を変更する処分であ
ると解されるから,建築確認変更処分がされると,これにより既存の建築確認
処分は取り消され,その効力は消滅することになると解するのが相当である。
そうすると,本件建築確認処分は,本件変更確認処分がされたことにより取
り消され,その効力は失われたものであるから,本件建築確認処分の取消しを
求める訴えの利益は失われたものというべきである。
上記判断に反する被控訴人らの主張は,いずれも独自の見解に基づくもので
あって,採用することができない。
第4結論
以上によれば,本件訴えは,いずれも却下すべきであり,これと異なる原判
決は相当でなく,本件控訴は理由があるから,原判決を取り消し,本件訴えを
いずれも却下することとする。
東京高等裁判所第12民事部
裁判長裁判官柳田幸三
裁判官田中治
裁判官白石史子

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