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平成27年2月27日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成26年(ワ)第65号差止請求事件
口頭弁論終結日平成26年12月22日
判決
東京都渋谷区<以下略>
原告株式会社コアアプリ
同補佐人弁理士古志達也
東京都新宿区<以下略>
被告KDDI株式会社
同訴訟代理人弁護士一
同渡辺光
同高石秀樹
同補佐人弁理士鈴木信彦
主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1被告は「REGZAPhoneIS04」を生産,譲渡,輸入,輸出し,又は譲渡の申出
をしてはならない。
2被告は,その占有に係る前記記載の製品,及び,前記記載の製品に搭載され
たソフトウェアのソースコードとバイナリイメージを廃棄せよ。また被告は,
前記記載の製品に搭載されたソフトウェアのソースコードとバイナリイメー
ジの製造設備を除却せよ。
3被告は,原告に対し,252万円及びこれに対する平成23年10月12日
から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
1本件は,名称を「入力支援コンピュータプログラム,入力支援コンピュータ
システム」とする発明についての特許権(特許第4611388号。以下
「本件特許権」といい,同特許権に係る特許を「本件特許」という。)を有
する原告が,被告に対し,被告の販売に係るスマートフォン「REGZAPhone
IS04」(以下「被告製品」という。)にインストールされている「ホーム」
と呼ばれるソフトウェア(以下「本件ホームアプリ」という。)は本件特許
の特許請求の範囲の請求項1,3記載の各発明(以下,それぞれ「本件発明
1」,「本件発明3」という。)の技術的範囲に属し,本件ホームアプリが
インストールされた被告製品は本件特許の特許請求の範囲の請求項4,5記
載の各発明(以下,それぞれ「本件発明4」,「本件発明5」といい,本件
発明1,3,4,5を併せて「本件発明」という。)の技術的範囲に属する
と主張して(ただし,原告は,本件発明4,5のうち,本件特許の特許請求
の範囲の請求項1,3の記載を引用する各態様を専ら問題にしており,被告
製品が本件発明4,5のうち,本件特許の特許請求の範囲の請求項2の記載
を引用する態様の技術的範囲に属する旨の主張はしていない。),特許法1
00条1項に基づき,被告製品の生産,譲渡,輸入,輸出及び譲渡の申出の
差止め,被告製品及び本件ホームアプリのソースコードとバイナリイメージ
の廃棄,本件ホームアプリのソースコードとバイナリイメージの製造設備の
除却を求めるとともに,特許権侵害の不法行為による損害賠償金の一部であ
る252万円(特許法102条3項に基づく損害額5億0400万円〔平成
23年2月12日から平成26年1月2日〔訴状の日付〕までの被告製品の
売上額126億円に相当実施料率4パーセントを乗じた額〕の一部)及びこ
れに対する平成23年10月12日(同月7日付け通知書〔甲4の1〕が被
告に到達した日の翌日)から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅
延損害金の支払を求める事案である(なお,原告が,同日より後の被告製品
の販売につき,同日からの遅延損害金の支払を求めることができるとする理
由は明らかでない。)。
2前提となる事実(末尾に証拠等を付した以外の事実は当事者間に争いがな
い。)
(1)当事者
ア原告は,ソフトウェア開発を業とする法人である。
イ被告は,移動通信及び固定通信を業とする法人である。
(2)本件特許権
原告の保有に係る本件特許権の内容等は,以下のとおりであり,本件特許
に係る特許請求の範囲の記載は,本判決末尾添付の本件特許に係る特許公報
の写し(甲2)の【特許請求の範囲】欄記載のとおりである。
ア発明の名称入力支援コンピュータプログラム,入力支援コンピュータ
システム
イ出願番号特願2007-547822
ウ出願日平成17年11月30日
エ登録日平成22年10月22日
オ特許番号特許第4611388号
(3)本件発明1
本件発明1を構成要件に分説すると,次のとおりである。
[A1]情報を記憶する記憶手段と,情報を処理する処理手段と,利用者に
情報を表示する出力手段と,利用者からの命令を受け付ける入力手段とを
備えたコンピュータシステムにおけるコンピュータプログラムであって,
[A2]利用者が前記入力手段を使用してデータ入力を行う際に実行される
入力支援コンピュータプログラムであり,
[B]前記記憶手段は,
ポインタの座標位置によって実行される命令結果を利用者が理解できる
ように前記出力手段に表示するための画像データである操作メニュー情報
と,当該操作メニュー情報にポインタが指定された場合に実行される命令
と,を関連付けた操作情報を1以上記憶し,
当該操作情報は,前記記憶手段に記憶されているデータの状態を表す情
報であるデータ状態情報に関連付けて前記記憶手段に記憶されており,
[C1]前記処理手段に,
[D](1)前記入力手段を介して,前記入力手段における命令ボタンが利
用者によって押されたことによる開始動作命令を受信した後から,利用者
によって当該押されていた命令ボタンが離されたことによる終了動作命令
を受信するまでにおいて,以下の(2)及び(3)を行うこと,
[E](2)前記入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信
すると,当該受信した際の前記記憶手段に記憶されているデータの状態を
特定し,当該特定したデータ状態を表すデータ状態情報に関連付いている
前記操作情報を特定し,当該特定した操作情報における操作メニュー情報
を,前記記憶手段から読み出して前記出力手段に表示すること,
[F](3)前記入力手段を介して,当該出力手段に表示した操作メニュー
情報がポインタにより指定されると,当該ポインタにより指定された操作
メニュー情報に関連付いている命令を,前記記憶手段から読み出して実行
し,当該出力手段に表示した操作メニュー情報がポインタにより指定され
なくなるまで当該実行を継続すること,
当該命令の実行により変化した前記記憶手段に記憶されているデータの
状態を特定し,当該特定したデータ状態を表すデータ状態情報に関連付い
ている前記操作情報を特定し,当該特定した操作情報における前記操作メ
ニュー情報を,前記記憶手段から読み出して前記出力手段に表示すること,
[C2]を実行させることを特徴とする入力支援コンピュータプログラム。
(4)本件発明3
本件発明3を構成要件に分説すると,本件発明の構成要件A1~F,C
2に,次のGを加えたものとなる。
[G](4)前記入力手段を介して,前記開始動作命令の受信に対応する,
前記命令ボタンが利用者によって離されたことによる終了動作命令を受信
すると,前記出力手段へ表示している前記メニュー情報の表示を終了する
こと,
(5)本件発明4
本件発明4を構成要件に分説すると,次のHとなる。
[H]情報を記憶する記憶手段と,情報を処理する処理手段と,利用者に情
報を表示する出力手段と,利用者からの命令を受け付ける入力手段とを備
えたコンピュータシステムであって,前記記憶手段が,請求項1乃至3の
いずれか1記載の入力支援コンピュータプログラムを記憶し,前記処理手
段が前記各処理を行うことを特徴とする入力支援システム。
(6)本件発明5
本件発明5を構成要件に分説すると,次のIとなる。
[I]前記命令ボタンを備えた入力手段は,1のポインティングデバイスで
あること,を特徴とする請求項4記載の入力支援システム。
(7)被告は,平成23年2月10日から被告製品を販売している。
被告製品には,本件ホームアプリがインストールされている。
(8)本件ホームアプリの構成
本件ホームアプリは,以下の構成を有している(甲3,甲17の1・2,
乙3,弁論の全趣旨)。
[a1]情報を記憶するRAM等の記憶手段と,情報を処理するCPU等の
処理手段と,利用者に情報を表示する液晶パネルと,利用者からの命令を
受け付けるタッチパネルとを備えた携帯電話機におけるコンピュータプロ
グラムであって,
[a2]利用者がタッチパネルを使用してホーム画面のショートカットアイ
コンの並べ替えを行う際に実行される,ホーム画面をカスタマイズするコ
ンピュータプログラムであり,
[b]前記記憶手段は,
ホーム画面の右端に表示される縦長の長方形の画像(以下「右スク
ロールメニュー表示」という。)と,当該「右スクロールメニュー表
示」にタッチパネル上の指の座標位置が指定された場合に実行される,
ページを右にスクロールする命令と,を関連付けた操作情報を1以上記憶
し,
当該操作情報は,前記記憶手段に記憶されているページ番号の情報に関
連付けて(すなわち,右スクロールが不可能な右端ページが表示されてい
る時には「右スクロールメニュー表示」は表示されず,右スクロールが可
能な右端でないページが表示されている時には「右スクロールメニュー表
示」が表示されるように)前記記憶手段に記憶されており,
[c1]前記処理手段に,
[d](1)タッチパネルを介して,タッチパネル上のショートカットアイ
コンを指で長押し(ロングタッチ)した後から,利用者によってタッチパ
ネル上のショートカットアイコンから指が離されるまでにおいて,以下の
(2)及び(3)を行うこと,
[e](2)タッチパネルを介して,タッチパネル上のショートカットアイ
コンを指で長押し(ロングタッチ)すると,当該長押しした際の前記記憶
手段に記憶されているページ番号を特定し,当該ページ番号に関連付いて
いる「右スクロールメニュー表示」の要否を特定し,当該ページが右端
ページでなかった場合,「右スクロールメニュー表示」を,前記記憶手段
から読み出して液晶パネルに表示すること,
[f](3)タッチパネルを介して,当該液晶パネルに表示した「右スク
ロールメニュー表示」上にタッチパネル上の指の位置が指定されると,
「右スクロールメニュー表示」に関連付いている,ページを右にスクロー
ルする命令を,前記記憶手段から読み出して実行し,指の位置が「右スク
ロールメニュー表示」上になくなるまで当該実行を継続すること,
当該命令の実行により変化したページ番号を特定し,当該ページ番号に
関連付いている「右スクロールメニュー表示」の要否を特定し,当該ペー
ジが右端ページでなかった場合,「右スクロールメニュー表示」を,前記
記憶手段から読み出して液晶パネルに表示すること,
[g](4)タッチパネルを介して,タッチパネル上のショートカットアイ
コンから指が離されると,液晶パネルへ表示している「右スクロールメ
ニュー表示」を終了すること,
[c2]を実行させることを特徴とする,ホーム画面をカスタマイズするコ
ンピュータプログラム。
(9)被告製品の構成
本件ホームアプリがインストールされた被告製品は,以下のような構成
を有している(甲3,甲17の1・2,乙3,弁論の全趣旨)。
[h]情報を記憶するRAM等の記憶手段と,情報を処理するCPU等の
処理手段と,利用者に情報を表示する液晶パネルと,利用者からの命令を
受け付けるタッチパネルとを備えた携帯電話機であって,前記記憶手段が,
a1~g,c2の構成を備えたコンピュータプログラム(本件ホームアプ
リ)を記憶し,前記処理手段が前記各処理を行うことを特徴とする携帯電
話機。
[i]前記タッチパネルは,1のタッチパネルであること,を特徴とする
携帯電話機。
3争点
(1)本件ホームアプリは「データ入力を行う際に実行される入力支援コン
ピュータプログラム」(構成要件A2,C2)であるか(争点1)
(2)本件ホームアプリは「ポインタ」(構成要件B,E,F)を用いるもの
であるか(争点2)
(3)本件ホームアプリは「操作メニュー情報」(構成要件B,F)を記憶す
る記憶手段を備えたコンピュータシステムにおけるコンピュータプログラ
ムか(争点3)
(4)本件ホームアプリは「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命
令を受信すると……操作メニュー情報を……表示する」(構成要件E)出
力手段を備えたコンピュータシステムにおけるコンピュータプログラムか
(争点4)
(5)本件ホームアプリは「命令ボタン」(構成要件D)を有する入力手段を
備えたコンピュータシステムにおけるコンピュータプログラムか(争点
5)
(6)本件ホームアプリは本件発明1,3の争点1~5に係る構成以外の構成
要件を充足するか,被告製品は構成要件H,Iを充足するか(争点6)
(7)本件発明は,乙13発明から新規性を有するか(争点7)
(8)差止め等の必要性(争点8)
(9)損害額(争点9)
第3争点に関する当事者の主張
1争点1(本件ホームアプリは「データ入力を行う際に実行される入力支援コ
ンピュータプログラム」(構成要件A2,C2)であるか)について
(原告の主張)
構成要件A2,C2にいう「データ」とは,「何かを文字や符号,数値など
のまとまりとして表現したもの」であり(甲14),被告のいう「編集対象
データ」に限定されるものではない。
本件ホームアプリは,ショートカットアイコンを移動させる機能を有し,
「座標の入力」という「データ入力」を行うプログラムである。
仮に「データ」を「編集対象データ」に限定したとしても,本件ホームアプ
リは「ショートカットアイコンを並び替える/削除する」機能を有しており,
アイコンの配置は「編集対象データ」であるから,本件ホームアプリは
「データ入力」を行うプログラムである。
(被告の主張)
本件発明は,「利用者が……データ入力」を行う際に,当該データ入力を
「支援」するコンピュータプログラムである。したがって,本件発明の
「データ」は,利用者が入力するデータであり,その入力が「支援」される
対象である。そうであるところ,本件発明において「入力支援コンピュータ
プログラム」により利用者がコンピュータに入力する対象は,利用者にとっ
て意味のある文章等の編集対象情報であって,画面上の位置を示す「座標」
ではない。そもそも,「座標」は,利用者が「データ入力」する対象ですら
ない。
また,本件ホームアプリは,ホーム画面(ホームスクリーン)をカスタマイ
ズするプログラムであって,画面上の指でタッチした位置である「座標」を入
力するプログラムでなく,「座標」の入力を「支援」するプログラムでもない
(これを支援しているプログラムは,本件ホームアプリでなく,タッチパネル
の入力デバイスが有するプログラムである。)。
したがって,本件ホームアプリは「データ入力を行う際に実行される入力支
援コンピュータプログラム」(構成要件A2,C2)ではない。
2争点2(本件ホームアプリは「ポインタ」(構成要件B,E,F)を用いる
ものであるか)について
(原告の主張)
(1)本件発明にいう「ポインタ」とは「画面上の位置情報を提供するもの」
(甲18)であり,画面上に表示される必要はない。
本件ホームアプリにおいては,タッチパネル上の指の座標位置が「ポイ
ンタの座標位置」に当たる。
(2)仮に画面上に表示される「カーソル」が必要であるとしても,本件ホー
ムアプリにおいて指の動きに追従するアイコンは「カーソル」であるとい
える。
(3)仮に「ポインタ」の解釈が被告の主張するとおりだとしても,「ポイン
タ」が画面上表示されることは本件発明の本質的部分ではなく(第1要件),
「マウスとカーソルの組合せ」と同一の作用効果を「タッチパネルと指の
組合せ」が有しており(第2要件),その置換は容易に想到できた(第3
要件)から,均等が成立する。
(被告の主張)
(1)本件特許に係る特許請求の範囲,明細書及び図面(以下,併せて「本件明
細書」という。)の各記載を参照して解釈すれば,本件発明にいう「ポイン
タ」は,①出力手段である画面上に表示され,②何かの位置を指し示すもので
あり,③その位置を「入力手段を介して……移動させる」ものを意味する。
本件ホームアプリは,そのような「ポインタ」を用いていない。
(2)何秒か押し続けるまでは指の動きに追従しないアイコンは「ポインタ」
(カーソル)とは解釈できない。
(3)「簡易かつ便利な入力の手段を提供」するために,「画像データである操
作メニュー情報をポインタで指定する」前提として「ポインタ」が視覚的に
表示されていることは,本件発明の課題解決に不可欠であり,均等の第1要
件を満たさない。
「入力手段」として「マウス」と「タッチパネル」とが対応するならば,
仮に原告の均等論において主張する置換を何か観念するとしても,「ポイン
タ」(カーソル)を「指」に置換するという論理になるが,ユーザの「指」
は被告製品の一部ではないので,均等論は成立しない。
3争点3(本件ホームアプリは「操作メニュー情報」(構成要件B,F)を記
憶する記憶手段を備えたコンピュータシステムにおけるコンピュータプログラ
ムか)について
(原告の主張)
本件発明にいう「操作メニュー情報」は,「ポインタの座標位置によって実
行される命令結果を利用者が理解できるように前記出力手段に表示するための
画像データ」であり(構成要件B),「利用者が……命令を理解できることを目
的や目標として構成されている画像データ」を意味する。
本件ホームアプリを実行した際にホーム画面の左右の隙間に表示される画像は,
隣のホーム画面を表すアイコンであり,実行される(スクロール)命令の内容や
対象(隣のホーム画面)を小さな絵で表現した画像データである。これは,「隣
のホーム画面にスクロールするという命令を利用者が理解できる」ように,「ス
クロール命令の実行後に表示される画面・対象を小さな絵で表現した画像デー
タ」を,「ホーム画面の左右に表示している」ものであるから,「実行される命
令結果を利用者が理解できるように前記出力手段に表示する画像データ」であり,
「操作メニュー情報」である。
(被告の主張)
本件ホームアプリを実行した際にホーム画面の左右両端部に表示される縦長
の長方形である隙間は,「どのような命令が実行されるのかを表す文字を含ん
だ画像データ」や「実行される命令の内容や対象を小さな絵や記号で表現した
画像データ」の表示が全くなく,隣のホーム画面にスクロールするという命令
を利用者が理解できるように表示されていないから,本件発明の「操作メ
ニュー情報」に相当しない。
4争点4(本件ホームアプリは「入力手段を介してポインタの位置を移動させ
る命令を受信すると……操作メニュー情報を……表示する」(構成要件E)出
力手段を備えたコンピュータシステムにおけるコンピュータプログラムか)に
ついて
(原告の主張)
(1)「ポインタの位置を移動する」と,「ポインタの位置を移動させる」は,
日本語としても別の意味を有している。
「ポインタの位置を移動する」であれば,「ドラッグ操作」が該当する。
これに対し,「ポインタの位置を移動させる」の「させる」とは,使役
の意味の助動詞であり,「ある行為をするように仕向ける」という意味で
ある(甲27)。したがって,「ポインタの位置を移動させる命令」とは,
「ポインタの位置を移動するように仕向ける命令」,「ポインタの位置を
移動させる状態に切り替える命令」という意味である。
本件ホームアプリにおいては,画面上への指のタッチが「入力手段を介
して,入力手段における命令ボタンが利用者によって押されたことによる
開始動作命令を受信した」(構成要件D)に該当し,そのまま指を動かさ
ずにタッチし続けること(ロングタッチ)が,「入力手段を介してポイン
タの位置を移動させる命令を受信する」(構成要件E)に該当する。
(2)被告の主張する「ポインタの位置が移動した(ことにより発せられる)
命令」と解釈しても,ロングタッチしたアイコンは,指が動いていなくて
も,アイコンがやや下方に移動してからぶるぶる揺れるのであり,ロング
タッチしたアイコンは「カーソル」であり,その移動は「ポインタの座標
位置の移動」であるから,構成要件Eを満たす。
(3)携帯式電話も含めて,現代のコンピュータ(ノイマン型コンピュータ)
の出力手段は,記憶手段のデータを出力するものである(甲30)。被告
製品の出力手段である液晶画面に表示されている以上,そのような画像を
構成するための画像データが,記憶手段に保存されていることは疑いよう
がない。
(被告の主張)
(1)「ポインタの位置を移動させる命令」とは,これがコンピュータプログ
ラムの命令である以上,その「命令」を実行することにより「ポインタの位置
を移動させる」と理解する他なく,これを「ポインタの座標位置を移動させる
状態に切り替える命令」と解釈する理由は存在しない。
本件ホームアプリにおいて,利用者が「ロングタッチ」を行っても,ポイ
ンタの座標位置は全く移動しないし,「ドラッグ操作」も開始されない。利
用者が「ロングタッチ」を行った後,指をタッチパネルに接触したままの状
態で上下左右にスライドしたときに初めて,「ポインタの座標位置を移動」
する操作である「ドラッグ操作」が開始されるのである。
(2)原告は,アイコンの一つにロングタッチすると,アイコンがぶるぶる揺れ
るので,指を動かさなくてもアイコンが移動していると主張する。しかしなが
ら,原告の主張は,タッチパネルにおける接触位置検出の際に不可避的に生じ
る検出誤差を「移動」と称するものにすぎず,全く理由がない。
(3)本件ホームアプリを実行した際にホーム画面の左右両端部に表示される縦
長の長方形である隙間の画像は,「『隣のホーム画面』のアイコンの配列を縮
小し,上下方向にグラデーション処理を施した薄紫色の長方形を合成した画
像」である。そのような合成画像は,被告製品の記憶手段に保存されていない。
したがって,本件ホームアプリは,ホーム画面の左右両端部に表示される縦
長の長方形である隙間を「記憶手段から読み出して表示する」という構成を充
足しない。
5争点5(本件ホームアプリは「命令ボタン」(構成要件D)を有する入力手
段を備えたコンピュータシステムにおけるコンピュータプログラムか)につ
いて
(原告の主張)
被告製品において,構成要件Dの「命令ボタン」として押されるのは,
「タッチパネル(入力手段)」である。この「タッチパネル」を押した時に
発せられる電気信号が,構成要件Dの「命令ボタンが利用者によって押され
たことによる動作開始命令」である。
したがって,本件ホームアプリは,構成要件Dの「命令ボタン」を有する入
力手段を備えたコンピュータシステムにおけるコンピュータプログラムであ
る。
(被告の主張)
構成要件Dには,「前記入力手段における命令ボタン…」と規定されている
ところ,構成要件A1は,「利用者からの命令を受け付ける入力手段とを備
えたコンピュータシステムにおけるコンピュータプログラム」と規定してい
るから,本件発明において,「入力手段」は構成要件であり,「命令ボタ
ン」も構成要件である。
本件発明において,「命令ボタン」は「ポインタ」と別個の構成要素であり,
それが画面上に表示されるボタンであるとしても,少なくとも「ポインタ」
と別個に用意されたものである。
本件ホームアプリは,そのような「命令ボタン」を有しないコンピュータシ
ステムにおけるコンピュータプログラムである。
原告は,「タッチパネルを押した時に発せられる電気信号が,『命令ボタン
が利用者によって押されたことによる動作開始命令』である」と主張するが,
そうすると「タッチパネル」が本件発明の「命令ボタン」となるが,「入力手
段を介したポインタの位置を移動させる命令」も「タッチパネル」をタッチ
することで命令するものであり,さらに根本的には「入力手段」も「タッチ
パネル」であるから,原告のあてはめは破綻している。
6争点6(本件ホームアプリは本件発明1,3の争点1~5に係る構成以外の
構成要件を充足するか,被告製品は構成要件H,Iを充足するか)について
(原告の主張)
(1)本件ホームアプリは,本件発明1,3の他の構成要件を充足し,本件発
明1,3の技術的範囲に属する。
(2)本件ホームアプリをインストールした被告製品は,本件発明4,5の構
成要件H,Iを充足し,本件発明4,5の技術的範囲に属する。
(被告の主張)
(1)本件ホームアプリは,前記のとおり,少なくとも,構成要件A2,B,
C1,C2,D,E,Fを充足しない。
(2)上記(1)のとおりである(前記第2の1のとおり,原告は,本件発明4,
5のうち,本件特許の特許請求の範囲の請求項1,3の記載を引用する各
態様を専ら問題としており,被告製品が本件発明4,5のうち,本件特許
の特許請求の範囲の請求項2の記載を引用する態様の技術的範囲に属する
旨の主張はしていない。)から,本件ホームアプリをインストールした被
告製品は,構成要件H,Iを充足しない。
7争点7(本件発明は,乙13発明から新規性を有するか)について
(被告の主張)
本件発明は,いずれも本件特許の出願前に頒布された刊行物である特開平9
-152856号公報(乙13)に記載された発明(以下「乙13発明」と
いう。)と同一であり,新規性を有しないから,これらの発明についての特
許は特許無効審判により無効とされるべきものであって,特許法104条の
3第1項に基づき,原告は,被告に対し,本件特許権を行使することはでき
ない。
(原告の主張)
乙13には,その段落【0014】~【0030】の「第1の実施の形態」
で説明される発明(以下「第1類型の発明」という。)と,段落【003
1】~【0048】の「第2の実施の形態」で説明される発明(以下「第2
類型の発明」という。)という2つの異なる発明が記載されており,被告の
主張は両者を組み合わせたものであるから,新規性を争う主張ではなく,進
歩性の主張である。
「第1類型の発明」及び「第2類型の発明」は,いずれも,本件発明1,3
の構成要件A1,A2,B,C2,E,Fに相当する構成を有しておらず,
両発明を組み合わせても同様である。さらに,「第2類型の発明」は,構成
要件Dも有さない。
乙13発明は,本件発明と技術分野の関連性がないこと等から,引用発明と
しての適格性がない。
8争点8(差止め等の必要性)について
(原告の主張)
争点1ないし7で主張したところによれば,被告製品の生産等は本件特許
権の侵害を構成するから,原告は,被告に対し,特許法100条1項に基づ
き,被告製品の生産,譲渡,輸入,輸出及び譲渡の申出の差止めを求めるこ
とができ,また,同条2項に基づき,被告製品及び被告製品に搭載されたソ
フトウェア(本件ホームアプリ)のソースコード(人間が理解できるように
記述されているプログラム)とバイナリイメージ(CPUが理解できるよう
に変換したコンピュータプログラム)の廃棄,並びに,同ソフトウェアの
ソースコードとバイナリイメージの製造設備の除却を求めることができる。
(被告の主張)
争う。
9争点9(損害額)について
(原告の主張)
被告製品の販売価格は6万3000円であるところ,平成23年2月12
日から平成26年1月2日〔訴状の日付〕までの被告製品の販売台数は20
万台を超えるから,売上金額は126億円を超える。この金額に相当実施料
率4パーセントを乗じた5億0400万円が,原告が被告から本件発明の実
施に対して受けるべき金銭の額(特許法102条3項)である。
したがって,原告は,被告に対し,民法709条,特許法102条3項に
基づき,上記損害額の一部である252万円及びこれに対する平成23年1
0月12日(同月7日付け通知書〔甲4の1〕が被告に到達した日の翌日)
から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める
ことができる。
(被告の主張)
争う。
第4当裁判所の判断
1争点4(本件ホームアプリは「入力手段を介してポインタの位置を移動させ
る命令を受信すると……操作メニュー情報を……表示する」(構成要件E)
出力手段を備えたコンピュータシステムにおけるコンピュータプログラム
か)について
(1)事案の内容に鑑み,争点4について先に判断する。
構成要件Eは,以下のとおりである。
[E]前記入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信すると,
当該受信した際の前記記憶手段に記憶されているデータの状態を特定し,
当該特定したデータ状態を表すデータ状態情報に関連付いている前記操作
情報を特定し,当該特定した操作情報における操作メニュー情報を,前記
記憶手段から読み出して前記出力手段に表示すること,
(2)甲32の1・2によれば,本件ホームアプリにおいて,タッチパネル上
のショートカットアイコンを指で長押し(ロングタッチ)すると,ショート
カットアイコンは長押し前の状態からやや下に移動し,ぶるぶる振動する状
態(以下「振動状態」という。)に遷移し,振動状態になれば,ショート
カットアイコンのドラッグ操作を行わなくても,画面右端に右スクロールメ
ニューが表示されることが認められる。
そこで,ショートカットアイコンのドラッグ操作ではなく,ショート
カットアイコンのロングタッチが「ポインタの位置を移動させる命令」に当
たるかが問題となる。
(3)「ポインタの位置」を「タッチパネル上の指の座標位置」とした場合
本件ホームアプリが「ポインタ」(構成要件B,E,F)を用いるもの
であるかについては争いがあるが(争点2),仮に,原告の主張するとおり,
本件ホームアプリを実行した際における「タッチパネル上の指の座標位置」
が「ポインタの位置」に当たるとした場合には,ショートカットアイコンの
ロングタッチは,「タッチパネル上の指の座標位置」を移動させなくても可
能な操作であるから(甲17の2),ロングタッチが「ポインタの位置を移
動させる命令」に当たるということはできない。
この場合,原告の主張するとおり,「移動させる」を「移動可能な状態
に切り替える」という意味に解釈したとしても,「タッチパネル上の指の座
標位置」は,ショートカットアイコンが振動状態であると否とにかかわらず
常にタッチパネル上で移動可能であるから(振動状態でなければショート
カットアイコンが追従しないだけである。),ロングタッチが「ポインタの
位置(=タッチパネル上の指の位置)を移動可能な状態に切り替える命令」
であるとはいえない。
また,振動状態においてショートカットアイコンが振動し,また元々の
位置よりもやや下の位置に移動するとしても,ショートカットアイコンは
「ポインタ」に当たらず,「ポインタ」である指の位置は変化しないのであ
るから,ショートカットアイコンの移動は「ポインタの位置」の移動とは関
係がない。
したがって,「ポインタの位置」を「タッチパネル上の指の座標位置」
と解する限り,「移動させる」の意義をどのように解釈するかにかかわらず,
ロングタッチが「ポインタの位置(=タッチパネル上の指の座標位置)を移
動させる命令」に当たるということはできない。
(4)「ポインタの位置」を「指の動きに追従するショートカットアイコン画
像の座標位置」とした場合
「ポインタ」は画面上に表示されることを要すると解釈した場合,原告
は,「指の動きに追従するショートカットアイコン画像」が「ポインタ」
(カーソル)に相当すると主張している(原告準備書面(1)12頁,原告
準備書面(2)39頁,原告準備書面(4)15頁)。
このように解釈した場合には,上記のとおり,右スクロールメニューは
ショートカットアイコンがロングタッチにより振動状態になれば表示される
のであり,この段階ではショートカットアイコンはいまだ「指の動きに追
従」していないのであるから,画面上に「ポインタ(=指の動きに追従する
ショートカットアイコン画像)」は存在せず,ロングタッチが「ポインタ
(=指の動きに追従するショートカットアイコン画像)の位置を移動させる
命令」に当たるということはできない。
(5)「ポインタの位置」を「振動状態のショートカットアイコンの座標位
置」とした場合
「ポインタ」の解釈に関する原告のいずれの主張とも異なり,「ロング
タッチ中の振動状態のショートカットアイコン」をもって「ポインタ」
(カーソル)とした場合についても,念のため検討する。
なお,単なるショートカットアイコン,振動状態のショートカットアイ
コンをもって「ポインタ」とすることは,ショートカットアイコン及び振動
状態のショートカットアイコンは画面中に複数存在するから,「ポインタ」
が複数存在することになり,このような解釈を採り得ないことは明らかであ
る。
「ロングタッチ中の振動状態のショートカットアイコン」は,ロング
タッチ操作によって①「移動(ドラッグ操作)可能な状態」になり,また②
元々の位置よりもやや下に移動し,③アイコン画像が小刻みに振動している
ので,それぞれこの点をとらえてロングタッチが「移動させる命令」といえ
るか,順次検討する。
ア振動状態のショートカットアイコンが移動可能な状態になることについ

甲3,甲17の1,甲32の1・2及び弁論の全趣旨によれば,本件
ホームアプリにおいて,振動状態でないショートカットアイコンにドラッ
グ操作を行っても指の動きに追従して移動することはないが,振動状態の
ショートカットアイコンにドラッグ操作を行うと,指の動きに追従して移
動することが認められる。
そうすると,ロングタッチは,「ポインタ(=ロングタッチ中の振動状
態のショートカットアイコン)の位置を移動可能な状態に切り替える命
令」とみることができる。
原告は,「させる」とは「ある行為をするように仕向ける」という意味
であるから,「ポインタの位置を移動させる命令」とは,「ポインタの座
標位置を移動させる状態に切り替える命令」という意味であると主張する。
しかし,「させる」とは「ある行為をするように仕向ける」という意味
であるから(甲27),「ポインタの位置を移動させる命令」とは,「ポ
インタの位置を移動するよう仕向ける命令」すなわち「ポインタの位置を
移動するよう指示する命令」を意味することは一義的に明確であって,こ
れを「ポインタの位置を移動可能な状態に切り替える命令」であると解釈
する余地はない。「ある行為をするように仕向ける」ことと,「ある行為
が可能な状態に切り替える」こととが異なることは明らかであるから,
「させる」に前者の意味があるとしても,後者の意味があることにはなら
ない。原告の主張は失当である。
本件明細書の段落【0052】~【0101】の実施例の説明を見ても,
構成要件Eにいう「ポインタの位置を移動させる命令」に対応するものと
しては,「例えば,マウスにおける左ボタンや右ボタンを押したままマウ
スを移動させること(ドラッグ操作)や,キーボードにおける特定のキー
を押しつつマウスを移動させる行為,等が該当する。」(段落【007
9】)とされ,「ポインタの位置を移動するよう指示する命令」をもって
「ポインタの位置を移動させる命令」としているのであって,「ポインタ
の位置を移動可能な状態に切り替える命令」をもって「ポインタの位置を
移動させる命令」とすることについては何らの記載も示唆もない。このよ
うな本件明細書の記載を参酌すれば,「ポインタの位置を移動させる命
令」が「ポインタの位置を移動するよう指示する命令」を意味し,「ポイ
ンタの位置を移動可能な状態に切り替える命令」を意味しないことは一層
明らかである。
したがって,ロングタッチが「ポインタ(=ロングタッチ中の振動状態
のショートカットアイコン)の位置を移動可能な状態に切り替える命令」
であったとしても,構成要件Eにいう「ポインタの位置を移動させる命
令」に当たるということはできない。
イ振動状態のショートカットアイコンがやや下に移動することについて
ロングタッチにより振動状態となったショートカットアイコンは,元々
の位置よりやや下に移動して振動するものと認められる。
しかし,甲32の1・2によれば,Facebookアイコンをロングタッチす
ると,ロングタッチ中のFacebookアイコンのみならず,ロングタッチして
いないEvernoteアイコンやTwitterアイコンも元々の位置よりやや下に移
動して振動状態となっていることが認められる。
そうすると,ロングタッチが,「ポインタ(=ロングタッチ中の振動状
態のショートカットアイコン)の位置」を「元々の位置よりもやや下に移
動させる」ことを指示する命令ということはできない。ロングタッチ中の
振動状態のショートカットアイコンがやや下に移動するのは,他のショー
トカットアイコン(非「ポインタ」)の移動と同様,振動状態になったこ
とを示す付随的な動作にすぎず,このような付随的な動作が生じることを
もって,ロングタッチが「ポインタの位置を移動させる命令(=移動を指
示する命令)」であるということはできない。
ウ振動状態のショートカットアイコンが小刻みに振動することについて
甲32の1によれば,ロングタッチにより振動状態となったロングタッ
チ中のショートカットアイコン(=「ポインタ」)は小刻みに振動するこ
とが認められるが,これも,他のショートカットアイコン(非「ポイン
タ」)の振動と同様,振動状態になったことを示す付随的な動作にすぎず,
このような付随的な動作が生じることをもって,ロングタッチが「ポイン
タの位置を移動させる命令(=移動を指示する命令)」であるということ
はできない。
(6)「ポインタの位置」を「『MultiTouch』ソフトウェアがカーソルや数
値で表示する座標位置」とした場合
原告は,甲32の1・2において「MultiTouch」と題するソフトウェア
が赤いカーソルの位置や画面左上の数値で表示する座標位置の変化をもって,
「ポインタの位置の移動」であるかのような主張をする(原告準備書面
(2)42頁)。
しかし,原告は,「MultiTouch」と題するソフトウェア(及びこれに
データを提供していると主張する「MotionEvent」と題するソフトウェア)
がどのようなデータを検出しており,それが本件発明にいう「ポインタ」の
定義を満たすのかについて主張立証をしないから(指を離した状態でも,ま
た「ショートカットアイコンが指に追従する」状態でなくてもカーソルが表
示されているのであるから,「タッチパネル上の指の座標位置」でも,「指
の動きに追従するショートカットアイコンの座標位置」でもないことは明ら
かである。),当該ソフトウェアが何を検出しているにせよ,それが本件発
明にいう「ポインタ」に当たると認めることはできず,仮にロングタッチに
おいて上記ソフトウェア上のカーソルや数値で表示される座標位置が変動す
るとしても,ロングタッチが「ポインタの位置を移動させる命令」に当たる
とはいえない。
(7)本件ホームアプリが「ポインタ」を用いるものでない場合
被告の主張するとおり,本件ホームアプリが「ポインタ」を用いるもの
でないと解釈した場合には,当然ながら,「ポインタの位置を移動させる命
令」も存在しない。
(8)以上のとおり,本件ホームアプリにおける「ポインタ」をどのように解
釈するにせよ,ロングタッチが「ポインタの位置を移動させる命令」である
とはいえないから,その余の点につき判断するまでもなく,本件ホームアプ
リは,本件発明の構成要件Eの「入力手段を介してポインタの位置を移動さ
せる命令を受信すると……操作メニュー情報を……表示する」出力手段を備
えたコンピュータシステムにおけるコンピュータプログラムであるとは認め
られない。
2結論
以上によれば,本件ホームアプリは,少なくとも構成要件Eを充足せず,そ
の余の点について判断するまでもなく,本件発明1,3の技術的範囲に属しな
い。
本件ホームアプリが構成要件Eを充足しない以上,これをインストールした
被告製品は,構成要件H,Iのうち,原告が問題としている本件特許の特許請
求の範囲の請求項1,3を引用する態様を充足しているとはいえず,本件発明
4,5のうちの上記態様の技術的範囲に属しない。
よって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理
由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官
嶋末和秀
裁判官
鈴木千帆
裁判官
西村康夫

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