弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を福岡高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人中村栄治の上告理由第二点について。
 被上告人らの本訴請求は、本件各不動産は亡Dの相続財産であるところ、これに
ついて、亡Dと被上告人B間の嫡出子たる資格に基きEのため相続登記が為され、
次いで、Eより上告人のため抵当権設定登記が為されているが、Eには相続権がな
く、真正相続人は被上告人らであるから、右抵当権設定登記は無効である、として、
上告人に対し右抵当権設定登記の抹消を求めるものである。そして、原判決(その
引用する第一審判決)理由によると、原審は、曩に被上告人BがEを相手方として
長崎家庭裁判所に調停を申立てたことに基き、家事審判法二三条により、亡D及び
被上告人BとEとの間に親子関係が存しないことを確認する旨の審判が為され、同
審判の確定したことは当事者間に争がないから、その既判力が第三者に対しても及
ぶ結果として、裁判所もその既判力に拘束され、Eと亡D間には親子関係が存在し
ないと認定せざるを得ないとし、これを前提としてEの相続権を否定した上、被上
告人らの本訴請求を認容しているのである、
 しかしながら、家事審判法二三条は身分関係について当事者間に合意が成立し、
これを前提として当該合意に相当する審判をすることができることを規定したもの
であつて、身分関係の存否が確認される場合は、その審判の性質上、存否が確認さ
れる身分関係の主体となる者が当事者として加り、その当事者間に合意が成立して、
始めてその審判に人訴三二条、一八条の類推によるいわゆる対世的効力が附与され
得るものと解すべきである。従つて、本件の場合、前記長崎家庭裁判所の審判のう
ち、亡DとEとの間に親子関係が存しないことを確認する旨の部分は、存否が確認
された親子関係(父子関係)の主体の一方である亡Dがその手続の当事者となつて
いないことが明らかである以上、これに対世的効力を認めることはできない。しか
るに原審が、右審判部分にも対世的効力があるものとし、これを前提として被上告
人らの本訴請求を認容していること前叙のとおりであるから、原判決は家事審判法
二三条、二五条、人訴三二条、一八条の解釈を誤り、ひいて審理不尽、理由不備を
来した違法があるといわなければならない。論旨は結局理由があり、原判決は破棄
を免れない。
 よつて、その余の論旨に関する判断を省略し、民訴四〇七条を適用して、全裁判
官一致の意見により、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助
 裁判長裁判官藤田八郎は出張につき署名押印することができない。
            裁判官    池   田       克

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