弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

○ 主文
本件控訴をいずれも棄却する。
控訴費用は、控訴人らの負担とする。
○ 事実
控訴代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人が昭和四五年六月二七日訴外A、同
B、同C、同Dおよび同Eを訴外学校法人P学園の仮理事に選任した処分を取り消
す。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控
訴代理人は、主文第一項と同旨の判決を求めた。
当事者双方の事実上の主張、証拠関係は、次に付加するほかは、原判決の事実欄に
記載のとおりであるから、これを引用する。
控訴代理人は、
一、本件訴外学園の破産は特殊異常なものである。昭和四一年末の職員への給与の
支給遅滞に便乗して、訴外学園のF理事は、G学長追放の陰謀を企て、昭和四二年
三月九日手形を不渡にして、訴外学園をして銀行取引停止処分を受けさせ、訴外学
園の債権者である三井建設株式会社の顧問弁護士Qらと通謀して債権者集会を開
き、かつ、債権者代行委員会と称する会合をもち、昭和四二年五月一七日福岡地方
裁判所に対し、控訴人Gをはじめとする理事の職務執行停止の仮処分申請をし、昭
和四二年七月二一日付仮処分決定によりR弁護士が代行理事長となつた。そして、
さらに、F理事は有限会社和興と通謀して同会社に破産申請をさせ、ついに訴外学
園に対し破産宣告をさせるに至らしめたが、訴外学園は当時四十数億円の資産を有
していたものであるから、支払不能ないし債務超過の状態にはなかつた。以上の次
第で、本件破産宣告は学園乗取りを計画したF理事らの陰謀によるもので、訴外学
園が真実破産状態にあつたものでないから、理事は信頼関係を失ういわれはなく、
本件学校法人の破産宣告により当時の理事であつた控訴人Gらは当然にその地位を
失うものでない。
二、右破産宣告当時における理事(原判決一四枚目裏(2)参照)は、訴外学園再
建のために新任された理事であり、債権者の意向を代弁するものである。そして、
右理事らによつて構成される理事会により控訴人Gは学長理事長として信頼が確認
されたものである。
三、本件仮理事の選任処分当時、控訴人Gを理事長とする理事会は存在していた。
四、本件において、破産管財人Hが独自の意思に基づき、なんらの手続をもとら
ず、一片の通告書をもつてG学長を解任しようとしたことは、教育公務員特例法の
精神および大学の自治、学問の自由の法理に反し、違法である。
五、私立学校の役員(理事ないし学長)の欠格事由は私立学校法三八条の準用する
学校教育法九条によるのであり、これよりも民法施行法二七条が優先するものでは
ない。仮に控訴人Gが仮理事選任処分当時破産者であることにより学校法人の理事
たる資格を喪失していたとしても、他の理事は全員適法に理事たる地位にあつたか
ら、理事の欠けたときにはあたらない。
六、訴外学園は、その名称を昭和四八年九月二〇日学校法人S学校と変更し、同年
一〇月四日その旨の登記を了した。
と陳述し、
被控訴代理人は、
一、本件仮理事選任処分の日の以前である昭和四四年二月二七日付そのころ到着の
解任の意思表示により控訴人Gの学長の地位は消滅していたものであるが、仮にな
んらかの理由によつてなお学長としての地位を有していたと認められるとしても、
控訴人Gは昭和四四年五月六日福岡地方裁判所において破産宣告を受けたのである
から、法律上法人の理事たりうる資格を欠いていたものである。学長が当然理事に
なるとの訴外学園の寄附行為九条一号の規定は、民法施行法二七条により、学長が
破産者である場合には当然に効力を有しないものというべきである。
二、控訴代理人の主張によれば、いわゆる桑原理事会の理事全員は昭和四四年六月
二九日全員辞任し、同日新たに寄附行為に基づき本件仮理事選任処分当時のいわゆ
る桑原理事会の理事全員が選任されたというが、控訴人Gが破産宣告を受けたのは
右新たな桑原理事会の発足する前の昭和四四年五月六日である。そして、当時の訴
外学園の寄附行為九条一項は、理事選任方法につき「1S大学々長 2この法人の
設立当初から功績のあつた者のうちから前号の理事により指名された者二人以上三
人以内 3評議員の内から前一号、前二号の理事の全員により推薦された者二人 
4前三号までに規定する理事の過半数以上をもつて選任された者二人」と規定し、
一号の理事から順次選任されることとなつている。ところで、控訴人Gは、前記の
とおり、その破産により法人の理事たりうる資格を喪失していたのであるから、右
2ないし3の規定によつて選任されたその余の理事全員についても、その選任の基
礎たる1の理事が理事たりうる資格を欠いていたのであるから、その選任は無効で
ある。と陳述した。
(証拠関係省略)
○ 理由
一、当裁判所は、控訴人らの本訴請求をいずれも理由がないと判断するが、その理
由の詳細は、次に付加するほかは、原判決の理由欄に記載のとおりであるから、こ
れを引用する。
二、学校法人と理事との関係は委任ないし委任類似の関係であり、学校法人が破産
の宣告を受けた場合には、特段の事情のないかぎり、右の委任ないし委任類似の関
係は、民法六五三条により終了し、理事がその地位を失うに至るものであり、本件
において右特段の事情の認められないこと、訴外学園の場合においては、後任理事
の選任は前理事の善処義務に含まれないものであること、昭和四三年七月二日訴外
学園の破産宣告により、当時の理事はその地位を失い、この破産宣告により訴外学
園の学長たる理事も理事たる地位を失い、他の理事の選任権をも失うに至ること、
その結果訴外学園の寄附行為九条一項によつて選任された学長以外の他の理事(控
訴人G以外の控訴人らおよび訴外I)は、いずれも理事たる地位を取得しなかつた
ものであり、本件仮理事選任処分当時、訴外学園には理事が欠け、その選任の遅滞
の損害を生ずるおそれのあつた状態であつたものであることは、原判決の認定判断
するとおりである。当審で新たに提出された甲第三六号証以下および当審の証人
J、K、L、M、N、Oの各証言も右認定を左右するものではない。
当審証人N、同Jの各証言ならびに原審における控訴人G本人の供述中の本件破産
宣告当時本件学園が債務の支払不能の状態になかつた旨の部分は、原審における証
人Rの証言に照し信用しない。その他控訴人ら提出援用の全証拠によつても、本件
破産宣告当時本件学園が債務の支払不能の状態になかつたことを認めるに足りない
から、右事実を前提とする控訴人らの主張は採用しない。
ただし、原判決二二枚目裏一行目の「ある。」の次に一更に詳論すれば、学校法人
の理事は、学校法人から委任を受けて学校経営の一切の業務執行の任にあたり、学
校法人の人的物的設備管理につき、寄附行為に別段の定めのない限り、原則として
自由にこれを掌理処分する権限を有する。そして、学校法人においては、専ら営利
を目的とする会社等と違い、公共性が強いことはいうまでもないが、学校法人とい
えども、本来の事業経営の資金を獲得するために収益事業を営むことも認められて
いるのであり(私立学校法二六条参照)、このことから、学校法人の本来の事業目
的を達するためにはその経済的基礎が重要であることか分るのであり、経済的基礎
なくして学校法人は所期の目的を達することができないのである。これを要する
に、学校法人の理事としての職務内容は、人的な面と物的な面との二つがあるが、
この二つは一体的な切り離せない関係にあり、その一方に対する理事としての事務
処理についての信頼関係が破壊される以上、当然に他方における理事としての事務
処理についての信頼性も破壊され、理事としての権利義務を追行する適格性が失わ
れるものといわなければならない。従つて、学校法人が破産宣告をうけたときは、
理事は当然に理事たるの地位を失うものといわなければならない。民法七四条の規
定はこのことを裏づけでいるものといえる。」を加える。
三、訴外学園の寄附行為九条一項によれば、訴外学園の理事は、S大学々長がな
り、同人が同条一項二号の理事を選任し、これらの理事が順次同項三号以下の理事
を選任してゆくことになつているので、S大学々長が理事たりうる資格を失つたと
きは、訴外学園においては理事を選任しえない状態になり、ひいて訴外学園におい
ては理事が存在しないことになるものであることは明らかである。そして、訴外学
園が昭和四三年七月二日破産宣告を受けたことにより、当時の理事全員がその地位
を失つたものというべきであるが、仮に控訴人Gが右破産宣告によつては理事たる
地位を失わず、あるいはその後理事たる地位を回復したものとしても、控訴人Gは
昭和四四年五月六日破産宣告を受けたのであるから、これにより同控訴人は訴外学
園の理事たりうる資格を失つたものというべきであり、従つて、右寄附行為九条一
項によつて選任された他の理事も、その選任の基礎を欠き、選任は無効であること
は明らかである(民法施行法二七条は剥奪公権者および停止公権者は法人の理事と
なることをえない旨規定するが、破産者がこれにあたることは明らかであり、この
規定は強行規定たる性質を有するので、学校法人の寄附行為によつてこれを排除す
ることができないものである。従つて、訴外学園の寄附行為九条一項の規定によつ
ても、学長が破産者である場合には、その学長は理事たる資格を有しないものとい
わざるをえない。)。また、控訴人Gが訴外学園の破産により学長の地位を失わな
いとしても、その理事たる資格を有しないことも前記により明らかである。
以上に説示したところによつて、控訴代理人が当審でした前記二ないし五の主張の
理由のないことは明らかである。従つて、この主張は採用できない。
四、訴外学園がその名称を昭和四八年九月二〇日学校法人S大学と変更し、同年一
〇月四日その旨の登記を経たことは、被控訴人の明らかに争わないところである。
五、そうすれば、控訴人らの本訴請求を棄却した原判決は相当で、控訴人らの控訴
は理由がないから、これを棄却すべきである。そこで、訴訟費用の負担につき民訴
法九五条、八九条、九三条を適用し、主文のとおり判決する。
(裁判官 満田文彦 鈴木重信、小田原満知子)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛