弁護士法人ITJ法律事務所

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主文
1原判決中,上告人の敗訴部分のうち,平成6年5月
4日以降の取引に係る不当利得返還請求に関する部
分を破棄する。
2前項の部分につき,本件を大阪高等裁判所に差し戻
す。
3上告人のその余の上告を棄却する。
4前項に関する上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人井上元,同中井洋恵の上告受理申立て理由(ただし,排除されたもの
を除く。)について
1原審の確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1)被上告人は,貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業法」という。)
3条所定の登録を受けた貸金業者である。
(2)上告人は,被上告人との間で,平成元年4月25日ころ,クレジットカー
ドを利用して被上告人から繰り返し金銭の借入れを受けることができる旨,返済日
は毎月27日とし,返済方法は元利均等分割返済方式とする旨の条項を含むクレジ
ットカード会員契約(以下「本件カード契約」という。)を締結した。
上記借入れの約定利率は,利息制限法1条1項所定の制限利率(以下,単に「制
限利率」という。)を超過している。
(3)被上告人は,上告人に対し,本件カード契約に基づき,第1審判決別紙計
算書(ただし,原判決による訂正後のもの。以下同じ。)の「年月日」欄記載の各
年月日に「借入金額」欄記載の各金員を貸し付け(以下,これらの各貸付けを「本
件各貸付け」と総称する。),上告人は,被上告人に対し,同計算書の「年月日」
欄記載の各年月日に「返済金額」欄記載の各金員を支払った(以下,これらの各支
払を「本件各弁済」と総称し,本件カード契約に基づく全体としての取引を「本件
取引」という。)。
(4)被上告人は,本件各弁済に貸金業法43条1項の規定の適用がある旨の主
張立証をすることなく,本件各弁済の弁済金のうち,利息制限法1条1項所定の利
息の制限額を超えて利息として支払われた部分(以下「制限超過部分」という。)
をその当時存在する他の貸金債権に充当することを前提とした計算書を提出してい
る。この計算書では,貸金債権が存在することになっているが,被上告人は,本訴
提起前の平成17年1月12日に上告人代理人弁護士に対し,10万6622円の
過払金があると届け出ている(以下「本件届出」という。)。
2本件は,上告人が,被上告人に対し,本件各弁済の弁済金のうち,制限超過
部分を元本に充当すると,第1審判決別紙原告計算書のとおり過払金が発生してお
り,かつ,被上告人は上記過払金の受領が法律上の原因を欠くものであることを知
っていたとして,不当利得返還請求権に基づき,過払金239万6557円及び民
法704条前段所定の法定利息(以下,単に「法定利息」という。)1万3558
円並びに本件取引の終了の日以降の上記過払金に対する年5分の割合による法定利
息又は遅延損害金の支払を求める事案である。
3前記事実関係等の下において,第1審は,過払金及び法定利息の合計額23
7万0127円並びに過払金に対する法定利息又は遅延損害金の支払を求める限度
で上告人の請求を認容し,その余の請求を棄却した。被上告人が,第1審判決中被
上告人敗訴部分を不服として控訴したところ,原審は,本件取引のうち平成3年5
月27日までの取引は一体をなすものであり,同日までの本件各弁済によって発生
した不当利得返還請求権については,それまでに金額が確定し権利行使が可能にな
ったものということができるから,同日から10年の経過により,時効消滅してい
るとしてこれを認めず,同日以降の最初の貸付日である平成6年5月4日以降の本
件取引について,次のとおり判断して,上告人の請求を過払金19万9964円及
びこれに対する本件届出の日以降の法定利息の支払を求める限度で認容し,その余
の請求を棄却した。
(1)本件取引により発生する貸金債権と不当利得返還請求権の清算について
は,本件各貸付けは合算されて1個の貸付けとなり,弁済は,その1個の債権に対
するものとして扱い,過払金が生じた場合は不当利得返還請求権が発生し,その後
貸付けがされた場合には,その貸金債権と不当利得返還請求権が当然に差引計算さ
れるという上告人主張の計算方法によるというのが当事者の合理的意思であると認
められる。
(2)被上告人が本件各貸付けによる貸金債権が別個のものであることを前提と
する充当計算をしてきたことからすると,被上告人が貸金債権が残存すると考える
ことにも相当の理由があり,被上告人が本件届出において過払金の発生を自認する
までは悪意の受益者であると認めることはできない。
4しかしながら,原審の上記3(2)の判断は是認することができない。その理
由は,次のとおりである。
貸金業者が借主に対して制限利率を超過した約定利率で貸付けを行った場合,貸
金業者は,貸金業法43条1項が適用される場合に限り,制限超過部分を有効な利
息の債務の弁済として受領することができるにとどまり,同規定の適用がない場合
には,制限超過部分は,貸付金の残元本があればこれに充当され,残元本が完済に
なった後の過払金は不当利得として借主に返還すべきものであることを十分に認識
しているものというべきである。そうすると,貸金業者が制限超過部分を利息の債
務の弁済として受領したが,その受領につき貸金業法43条1項の適用が認められ
ないときは,当該貸金業者は,同項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そ
のような認識を有するに至ったことがやむを得ないといえる特段の事情がある場合
でない限り,法律上の原因がないことを知りながら過払金を取得した者,すなわち
民法704条の「悪意の受益者」であると推定されるものというべきである。
これを本件についてみると,前記事実関係等によれば,貸金業者である被上告人
は,制限利率を超過する約定利率で上告人に対して本件各貸付けを行い,制限超過
部分を含む本件各弁済の弁済金を受領したことが明らかであるところ,被上告人
は,本訴において貸金業法43条1項の適用があることについて主張立証せず,本
件各弁済の弁済金のうち,制限超過部分をその当時存在する他の貸金債権に充当す
ることを前提とした計算書を提出しているのであるから,上記各弁済金を受領した
時点において貸金業法43条1項の適用があるとの認識を有していたとの主張をし
ているとはいえず,上記特段の事情を論ずる余地もないというほかない。被上告人
が受領した弁済金について本件各貸付けによる貸金債権が別個のものであることを
前提とする充当計算をしてきたとしても,それによって上記判断が左右されること
はない。したがって,本件各弁済によって過払金が生じていれば,被上告人は上告
人に対し,悪意の受益者として法定利息を付してこれを返還すべき義務を負うもの
というべきであるから,原審の上記3(2)の判断には,判決に影響を及ぼすことが
明らかな法令の違反がある。
5以上によれば,論旨は理由があり,原判決中,上告人の敗訴部分のうち,平
成6年5月4日以降の本件取引に係る不当利得返還請求に関する部分は破棄を免れ
ない。そして,更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
なお,平成6年5月4日より前の本件取引に係る不当利得返還請求に関する上告
については,上告受理申立て理由が上告受理の決定において排除されたので,棄却
することとする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官堀籠幸男裁判官藤田宙靖裁判官那須弘平裁判官
田原睦夫裁判官近藤崇晴)

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