弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

       主   文
一 被告が原告らに対し平成一〇年一〇月一日付けでした別紙物件目録記載(一)
の土地のうち別紙図面斜線表示部分に係る道路位置指定を一部廃止できないとした
通知処分を取り消す。
二 訴訟費用は被告の負担とする。
       事実及び理由
第一 請求
 本件は、原告らが、その所有に係る別紙物件目録記載(一)の土地(以下「本件
(一)の土地」という。)のうち別紙図面斜線表示部分及び同物件目録記載(二)
の土地(以下「本件(二)の土地」という。)につき、被告において昭和四八年四
月二日付けでした建築基準法四二条一項五号の規定に基づく道路位置指定(以下
「本件道路位置指定」という。)のうち前記斜線表示部分に係る道路位置指定を廃
止しても、本件(一)の土地が接道要件を充足しない事態になるわけではないの
に、原告らのした平成一〇年七月二日付け道路位置指定一部廃止申請に対し、被告
が同年一〇月一日付けでこれができないとして通知した処分が違法であるとして、
その通知処分(以下「本件通知処分」という。)の取消しを求める請求である。
第二 事案の概要
一 争いのない事実並びに証拠により容易に認められる事実(甲第二ないし第四号
証、第六号証、第七号証)
1(一) 原告A及び同Bは、訴外有限会社津喜不動産(以下「訴外会社」とい
う。)から昭和四六年一一月二日本件(一)の土地を買い受けて所有する者であり
(持分割合各二分の一)、原告Aは、訴外会社から昭和四七年八月二五日本件
(二)の土地の贈与を受けて所有する者である。
(二) 被告は、建築基準法四三条一項の規定又は同条二項の規定に基づく建築基
準法施行条例の規定に定める接道義務に違反する私道の変更又は廃止を禁止し、制
限することのできる権限を有する建築基準法四五条一項に定める特定行政庁であ
る。
2(一) 訴外会社は、被告に対し、昭和四七年八月二五日付けで本件(一)の土
地のうち別紙図面斜線表示部分及び本件(二)の土地(以下「本件私道」とい
う。)につき建築基準法四二条一項五号に基づく道路位置指定の申請をし、被告
は、これを受け、昭和四八年四月二日付けで本件道路位置指定をした。
(二) 原告らは、平成一〇年七月二日付けで本件道路位置指定を廃止する旨の申
請をしたところ、被告は、同年一〇月一日付けで、①岡山市道路位置指定指導要綱
第一三条による廃止する道路に面した土地・建物の所有者及
びその他の権利者の承諾書(七〇〇番一の土地の所有者、抵当権者及び根抵当権者
並びに六九六番一の土地の所有者の承諾書)が添付されていないこと、②本件私道
及びこれに接続する道路を通行の用に供している隣接住宅団地の住民の了解が得ら
れた旨の書面の添付がないことを理由に、本件道路位置指定を廃止しない旨通知
し、本件通知処分をした。これに対し、原告らは、平成一〇年一〇月一六日付けで
岡山市建築審査会に対し審査請求をしたが、建築審査会も、平成一一年三月三〇日
付けで本件通知処分に違法はないとして、本件通知処分の取消しを求める請求を棄
却し、廃道にする処分を求める請求を却下する旨の裁決をし、原告らに右裁決の結
果を通知した。
二 争点
本件の争点は、被告が平成一〇年一〇月一日付けでした本件私道に係る道路位置指
定の一部廃止ができないとした本件通知処分が適法であるか否かという点である。
(原告らの主張)
 建築基準法上の道路位置指定処分は、私人が土地上に建築物(建築基準法二条一
号)を建築するに当たりその敷地が同法四三条に定める接道義務を充たさない場合
に、自らの土地を用いてその要件を充足させるためのものであり、その指定処分は
原則としてその開設者のためにあるものであるけれども、例外的に当該位置指定道
路に接し、その存在を前提とするとき接している土地が建築基準法上の接道要件を
充たしている場合にはその利益は反射的利益にとどまらず、保護する必要があると
認められることから、その位置指定道路の廃止に当たっては右の土地の権利者の同
意を要するとしたものであるところ、七〇〇番一の土地は国道一八〇号線に接して
おり、本件私道を廃止しても建築基準法上の接道義務を充たすものであるから、そ
の同意を得る必要はなく、六九六番一の土地は細長い形状の土地であって、右の土
地の状況からして建築基準法二条一号に定める建築物を建築することはできないか
ら、同様にその同意を得る必要はない。また、被告は、本件私道及びこれに接続す
る道路を通行している隣接住宅団地の住民の了解が得られた旨の書面が必要である
とするが、第三者が本件私道をその通行の用に供することができる利益は、建築基
準法による道路指定位置処分の反射利益にすぎず、右の通行が日常生活をする上で
必要不可欠であるといった特段の事情がある場合があるならば格別、そうでない限
り、右の書面が必要であるとは認められない
ところ、隣接住宅団地住民は他の公衆用道路を用いることにより、自動車通行を含
め、その通行に支障を生じないものであるから、右の書面は必要でないというべき
である。
第三 争点に対する判断
 建築基準法(昭和二五年法律第二〇一号)四二条一項五号に定める道路位置指定
が当該私道を築造しようとする者の申請に基づき四三条一項本文に定める建築物の
敷地に必要な接道要件を充たすために設けられた制度であることからすると、同法
上明文の規定は存しないもの、当該私道を廃止し、又は変更することも、所有者そ
の他当該私道につき占有支配する権原を有する者(以下「所有者等」という。)の
申請に基づき特定行政庁においてなしうるものと解されるところ(なお、岡山市建
築基準法施行細則(昭和四八年岡山市規則第五六号)一七条三項参照)、右の道路
位置指定制度の趣旨に加え、その実効性を担保するため、四五条一項において当該
私道の変更又は廃止によってその私道に接する建築物の敷地が四三条一項の規定又
は同条二項の規定に基づく条例の規定に抵触することとなる場合に、特定行政庁
は、当該私道の変更若しくは廃止を禁止し、又は制限することができる旨規定して
いることからすると、特定行政庁において当該私道につき所有者等の申請に基づき
当該私道を廃止し又は変更することができるのはこれによって接道要件を充たさな
いこととなる建築物の敷地が存在しない場合に限られるとともに、右に述べる建築
物の敷地が存在しない以上当該私道の所有者の申請に応じ、当該私道を廃止し、変
更する義務があるというべきである。もとより、当該私道に対して通行等を目的と
する権利を有する第三者が存在する場合には、その所有者等にあっては、第三者の
権利を害し得ないことはもちろんであるから、当該私道の廃止・変更につき法的制
約を受けることとなるけれども、特定行政庁は、右の第三者の通行を目的とする権
利の存否につき認定判断する権能を有しないのであるから、当該私道が周辺住民に
とって唯一の生活道路であるといった特別の事情があり、かつ、この事実が確定判
決等の存在によって明白であるといえる場合は格別、そうでない限り、当該私道の
廃止・変更につき右の第三者の承諾が存在しないことを理由に、当該私道の変更若
しくは廃止を禁止し、又は制限することは許されないと解するのが相当である。た
だし、建築基準法は、一条に規定するように、建築物
の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び
財産の保護を図り、もって公共の福祉を増進することをその目的とするものであっ
て、当該私道の通行を巡る私人間における通行権その他の権利の保護は、当然には
右の法目的の実現に当たる特定行政庁において掌理すべき事務に含まれず、右の権
利の保護は、本来所有者等と第三者間の訴訟手続等によって図られるべき筋合いの
ものであるからである。
 そうであるところ、被告は、原告らの本件私道のうち本件(一)の土地の一部に
係る道路位置指定の廃止申請に対し、先に第二の一において明らかにしたとおり、
①岡山市道路位置指定指導要綱第一三条に定めるところの廃止する道路に面した土
地・建物の所有者及びその他の権利者の承諾書、具体的にはいずれも本件(一)の
土地の隣接地である七〇〇番一の土地の所有者及び抵当権者・根抵当権者と六九六
番一の土地の所有者の承諾書が添付されていないこと、②本件私道及びこれに接続
する道路を通行の用に供している隣接住宅団地に居住する住民の了解が得られた旨
の書面の添付がないことを理由に、右の道路位置指定の一部廃止ができない旨の本
件通知処分をしたものであって、本件私道の道路位置指定の一部廃止によって接道
要件を充たさないこととなる建築物の敷地が存在することは、被告において何ら主
張立証しないところであるから(なお、甲第三号証によれば、本件私道に接する七
〇〇番一の土地はその北側を国道一八〇号線と接し、かつ、同土地の上に建築され
ている建物は国道一八〇号線と接する部分に出入口を有し、仮に廃道されてもその
出入りにつき支障がなく、六九六番一の土地はそもそも建物の建築が物理的に不可
能な形状の土地であることが認められる。)、本件通知処分は、右の①及び②の理
由の有無につき判断するまでもなく、違法であって、取消しを免れない。
 なお、岡山市道路位置指定指導要綱第一三条では、廃止する道路に面した土地・
建物の所有者及びその他の権利者の承諾書の添付を求めているが、右の関係者の承
諾の有無は、当該私道の廃止及び変更によって接道要件を充足しない建築物の敷地
が生じるか否かを確認するための判断に当たって有益であることがうかがえること
からすると、右の指導要綱に従い、道路位置指定の廃止及び変更申請に当たり、申
請者から任意に関係者の承諾書の提出を求める措置自体が違法である
ということはできない。
第四 結論
 よって、原告らの請求は理由があるから、これを認容し、訴訟費用の負担につき
行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六一条を適用して主文のとおり判決する。
岡山地方裁判所第一民事部
裁判長裁判官 渡邉温
裁判官 酒井良介
裁判官 竹尾信道

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛