弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人神谷幸之の上告理由第一ないし第三点について。
 訴外D商工株式会社は、昭和三三年九月一〇日株主総会の決議により解散し、そ
の旨の登記が同月二〇日になされたこと、その解散にあたり清算人に選任されたの
は上告人一人であつたこと、上告人は、右登記の日より後に右会社を代表して被上
告人に対する貸金債権を上告人自身に譲渡したこと、以上の事実は、原審の適法に
確定するところである。
 そこで案ずるに、株式会社の清算人の員数は、法律上必ずしも二人以上であるこ
とを要せず、一人しか選任されなつたときは、同人が当然にその会社を代表する権
限を有するものと解すべきである。けだし、株式会社の清算人の員数は法定されて
いないからであり、商法四三〇条二項は、清算人について取締役会の規定を準用し、
清算業務の執行は清算人会がこれを決し、代表清算人は清算人会においてこれを定
めるものとしているのであるが、これは清算人が二人以上選任された場合に適用さ
れる規定と解されるのであつて、清算人会の制度が認められているからといつて、
必ず清算人が二人以上でなければならないと解すべきではない。
 それゆえ、清算人の員数は少なくとも二人以上必要であるとの前提に立つて、上
告人が訴外会社を代表してした債権譲渡は無効であるとした原判決の判断には、法
令の解釈適用を誤つた違法があり、上告理由第一点は、その理由がある。
 しかしながら、右違法は、原判決の結論に影響しないものといわなければならな
い。すなわち、本件記録によれば、当裁判所第二小法廷は、昭和四二年一二月一五
日本件について名古屋高等裁判所がした判決を破棄し同裁判所に差し戻した判決の
理由において、「株式会社の清算手続が清算人ひとりでこれをすることができると
しても、その清算人は、特段の事情のないかぎり清算会社と取引することは許され
ず、これに違反してされた取引は無効と解するのが相当であるところ(商法四三〇
条二項、二六五条参照)、原判決は、右の特段の事情について判示することなく、
本件債権譲渡を有効であると説示しているのは違法である。」と判示していたので、
差戻を受けた名古屋高等裁判所は、前述の判断に加えて、第二小法廷の右見解に従
つたうえ、商法二六五条の規定の適用を排除すべき特別事情にあたると解すべき事
実は全証拠によつてもこれを認めがたく、本件債権譲渡はこの理由によつても無効
である旨判示して上告人の請求を排斥していることが明らかである。ところで、上
告審裁判所は、下級審裁判所が上告審裁判所の破棄理由とした法律上の判断に従つ
てした判決に対する再度の上告事件につき審判する場合には、その差戻判決に示さ
れた右判断に拘束され、その下級審裁判所の判決を違法視することは許されない(
最高裁昭和二四年(れ)第二〇二九号同二五年一〇月二五日大法廷判決、刑集四巻
一〇号二一三四頁、同二三年(オ)第九〇号同二八年五月七日第一小法廷判決、民
集七巻五号四八九頁参照)から、当裁判所は、第二小法廷の右見解に従つてした原
判決の右判断を違法視することはできないといわなければならない。そして、上告
理由第二点は、第二小法廷が破棄理由とした右法律上の判断の違法をいうに帰する
から、その論旨は、採用することができない。また、原審において取り調べた証拠
関係に照らすと、商法二六五条の規定の適用を排除すべき特別事情にあたると解す
べき事実は認められない旨の原判決の判断は是認することができるところ、同第三
点は、原審の認定しない事実の存在することを前提として原判決の右判断の違法を
いうにすぎないから、その論旨も、採用することができない。
 以上の理由によれば、上告人の本訴請求は、すべて失当であるとした原判決は、
結局、正当であり、本件上告は排斥を免れない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    松   本   正   雄
            裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    関   根   小   郷
            裁判官    天   野   武   一

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛