弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人船内正一の上告趣意は末尾に添附した別紙記載の通りである。
 第一点について。
 本件は昭和二三年八月三一日詐欺被告事件について、同年九月四日業務上横領、
臨時物資需給調整法違反被告事件について公判の請求があり、第一審においては右
二つの起訴状記載の犯罪事実について審理を為し第二審において検察官は第一審判
決事実摘示事実と同趣旨の被告事件につき陳述し原審においてはこれについて審理
を為したものであることは記録上明らかである。たゞ原判決書冒頭において詐欺及
び業務上横領被告事件のみを記載しているだけであるが、原判決事実摘示第二は正
に臨時物資需給調整法違反事実を掲げている点に鑑みれば右冒頭記載において臨時
物資需給調整法違反被告事件と記載することを遺脱したものと認められる。されば
原判決は審理をしない右臨時物資需給調整法違反の事実を認定したとはいえない。
従つて論旨は理由がない。
 第二点について。
 原判決が一罪として認定した判示第一事実中のある行為が行われた場所が明確で
ないとしても所論第二表を調べて見れば判示第一事実が行われた場所については裁
判所の管轄を明らかにする程度の記載があるから理由不備の違法はない。なお論旨
中段は事実誤認の主張であるから上告適法の理由とならない。
 第三点について。
 被告人は原審公判廷において裁判長より被告事件を告げられ弁解を求められた際、
業として本件が加工水産物販売をした事実を認めているし、その他原判決挙示の証
拠によれば被告人が塩乾鱈及び鰊の佃煮を業として売買した事実を認め得るから、
論旨は理由がない。
 第四点について。
 本件犯行当時実施されていた農林省令である加工水産物配給規則第二条第二項本
文によれば「加工水産物とは指定水産物及び海産性動植物に加工を施したものであ
つて主として食用に供するものをいう」とあつて、指定水産物の内には鰊の佃煮は
ふくまれていないが、海産性動植物に加工を施し主として食用に供するものゝ内に
は鰊の佃煮はふくまれると解すべきであるからこれを加工水産物とした原判決には
違法はなく、論旨は理由がない。
 第五点について。
 被告人は原審公判において本件詐欺の事実を認めて居るしその他原判決挙示のA
に対する検事の聴取書によるも判示事実を認め得るものであるから、原判決は所論
の如き違法はなく、論旨は理由がない。
 第六点について。
 量刑不当の主張は、刑訴応急措置法第一三条第二項の規定により上告適法の理由
にならない。論旨は理由がない。
 よつて旧刑訴四四六条により主文の通り判決する。
 以上は裁判官全員一致の意見である。
  検察官 田中己代治関与
  昭和二五年一一月二八日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
 裁判官穂積重遠は差支えのため署名押印することができない。
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎

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