弁護士法人ITJ法律事務所

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主文
原判決を破棄する。
本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。
理由
上告代理人山本毅,同越後雅俊の上告受理申立て理由4(1)について
1記録によれば,本件の経過等は次のとおりである。
(1)承継前被上告人亡Aは,第1審判決別紙物件目録記載1の土地(以下「本
件土地」という。)の賃借人である被上告人Yが,妻の姉である上告人に賃借権の
無断譲渡又は無断転貸をしたことを理由に,賃貸借契約を解除した旨主張して,被
上告人Yに対し,本件土地上の同目録記載2の建物(以下「本件建物」という。)
を収去して本件土地を明け渡すことなどを求める訴訟(以下「本件被参加訴訟」と
いう。)を提起した。
(2)上告人は,本件土地の賃借人は被上告人Yではなく上告人であると主張し
て,本件被参加訴訟の原告であるAを相手方として独立当事者参加の申出をした
(以下,上記の参加の申出に係る訴訟を「本件参加訴訟」という。)。
上記の参加の申出書(以下「本件申出書」という。)には,請求の趣旨として,
「原告と参加人との間において,参加人が別紙物件目録記載の土地につき,貸主を
原告とする建物所有目的の賃借権を有することを確認する」と記載され,請求原因
として,B(以下「B」という。)が,昭和45年1月,Aとの間で,本件土地に
つき,木造建物及びその他の工作物の設置を目的とし,期間を20年,地代を年額
で固定資産評価額の1000分の60に相当する金額とする賃貸借契約を締結した
こと,Bの死亡により,Bの長女である上告人が本件土地の賃借権を相続により承
継したことなどが記載されている。
(3)第1審においては,本件参加訴訟では,専ら,上告人がBから本件土地の
賃借権を相続により承継したか否かが争点となり,本件土地の地代額が争点となる
ことはなかった。
(4)第1審判決は,主文において,本件被参加訴訟に係るAの請求を棄却する
とともに,本件参加訴訟について,上告人が,本件土地につき,Aを貸主として,
地代を年額で固定資産評価額の1000分の60に相当する金額とし,木造建物及
びその他の工作物の設置を目的とする賃借権を有することを確認した。
(5)上告人は,第1審判決に対し,第1審においては単に賃借権の確認を求め
たのであって,地代額の確認は求めていなかったなどと主張して控訴した上,原審
において,上告人が本件土地につきAを貸主として地代を年額6万8160円とし
木造建物及びその他の工作物の設置を目的とする賃借権を有することの確認を求め
る旨の訴えの変更の申立てをした。なお,上記金額は,第1審口頭弁論終結当時の
本件土地の固定資産評価額の1000分の60に相当する金額より低額である。
2原審は,本件申出書における請求原因の記載によれば,上告人は,地代を年
額で固定資産評価額の1000分の60に相当する金額とする賃借権の確認を求め
ていたと認められ,第1審判決は上告人の請求を全部認容したのであるから,控訴
の利益を認めることができないとして,上告人の控訴を却下した。
3しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次
のとおりである。
土地賃借権を有すると主張する者は,土地所有者に対し,地代額の確認を求めず
に,土地賃借権そのものを有することの確認のみを求めることができるところ(最
高裁昭和44年(オ)第500号同年9月11日第一小法廷判決・裁判集民事96
号539頁参照),本件申出書における請求の趣旨の記載に加え,第1審における
審理の経過等を併せ考慮すると,上告人は,第1審において,本件土地の賃借権そ
のものを有することの確認を求めたのであって,地代額の確認まで求めたものとは
いえず,本件申出書における請求原因中の地代額の記載は,自らが相続により承継
したと主張する上記賃借権の発生原因であるBとAとの間で締結された当初の賃貸
借契約の内容として,その地代額を主張したものにすぎないことが明らかである。
しかるに,第1審判決の「事実及び理由」中の「参加人の請求」及び「参加人の
主張(請求原因)」には,上告人が本件土地につき地代を年額で固定資産評価額の
1000分の60に相当する金額とする賃借権の確認を求める旨の記載がされてい
るのであって,第1審は,上告人が上記地代額の確認をも求めているものとして,
上告人の請求を認容する判決をしたと認められ,第1審判決の主文に記載された地
代額に係る部分が,係争法律関係に関してされた判断ではないということはできな
い。
したがって,第1審判決には,当事者が申し立てていない事項について判決をし
た違法があり,この違法を看過し,控訴の利益がないとして第1審判決に対する控
訴を却下した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があ
る。
論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,訴えの変更後の上告人の
請求につき審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官寺田逸郎裁判官那須弘平裁判官田原睦夫裁判官
岡部喜代子裁判官大谷剛彦)

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