弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人Aを懲役二年六月に、同Bを懲役一年六月に処する。
     原審における訴訟費用(証人Cに支給分及昭和二十四年十二月十四日出
頭の証人D同Eに支給分)は被告人等の負担とする。
         理    由
 被告人Aの弁護人辻丸勇次、被告人Bの弁護人下尾栄の各控訴趣意は夫々末尾添
付の書面に記載のとおりである。
 辻丸弁護人の控訴趣意第一点について。
 <要旨>市町村農業会は農業団体法に基き設立されたものであるが、農業協同組合
法の公布施行に伴い農業協同組合を設立する前提として一応解散することと
なつたので、従前の農業会と新設の農業協同組合とは法律上形式的には全く人格を
異にした別個の法人ではあるが、後者は前者の事業設備、財産上の権利義務一切を
包括承継して発足したものであることは、前記両法及関係法令に照らして明かであ
る。それ故本件におけるF組合も昭和二十三年八月・々、前叙の手続により従前の
G会の解散に伴い、同会の事業並にその設備及び財産上の権利義務一切を包括承継
して発足したこと、従つて従前のG会の役職員は一部交迭及事務の分担替えがあつ
た外そのまま新設のF組合の役職員となつたのであつて、被告人等も農業会時代と
同一の職場において引続き同一の事務を担当して来たものであることは原審第二回
公判調書中証人Cの供述記載被告人A、同Bの各司法警察員に対する第二回供述調
書及各検察事務官に対する第一回供述調書中の供述記載によつて推認することがで
きる。而して本件起訴事実は弁護人所論のように単に被告人等がF組合金融係書記
又は同組合金融主任として同組合保管にかかる組合員の預金を着服横領した事実の
みではなく、被告人等が同組合設立以前のG会金融係書記又は同会金融主任として
同会保管の預金を着服横領した事実をも包含することは、本件記録中の起訴状及追
起訴状並検察官の原審公判廷における立証方法に徴して自ら明白である。然るに被
告人等両名に対する各昭和二十四年八月三十日附追起訴状及原判決が未だF組合の
設立されていない昭和二十三年七月以前において被告人等がG会金融係書記又は同
会金融主任として同会保管預金を着服横領した事実を摘示するに当り、同年八月以
後のF組合保管金横領事実の摘示と区別することなく、漫然被告人等が終始同組合
金融係として同組合保管金を横領したが如く記載したことは杜撰の譏は免れないが
右は記載上の不注意の結果であつて、かような瑕疵は未だ起訴の効力を失わしめる
ものではなく、又判決に影響することでもないので事実誤認として原判決破棄の事
由とするに足らないので論旨は採用し得ない。
 同弁護人の控訴趣意の第二点及下尾弁護人の控訴趣意について、
 本件記録全般を検討すると各弁護人指摘の如き組合内部の機構上並に人的欠陥、
最高幹部の怠慢も窺知せられ之等が本件発生の誘因なり助長せしめた情況も見られ
るので、その他被告人等の性格、年令、境遇、犯罪後の情況を彼此考量すれば原判
決の刑の量定は些か過重と思料されるので、論旨は理由がある。そこで刑事訴訟法
第三九七条に従い原判決を破棄した上更に同法第四〇〇条但書を適用して次のよう
に自判する。
 本件について当裁判所が認定する被告人等の各犯罪事実は原判決摘示の事実中第
一の被告人Aの関係において「被告人Aは筑紫郡F組合金融係書記として同組合員
の」とあるのを「被告人Aは予て筑紫郡G会金融係書記としてG会員又は同組合員
の」と第二の被告人Bの関係において「被告人Bは同組合金融主任として組合員
の」とあるのを「被告人Bは予てG会金融主任、昭和二十三年八月以後はF組合金
融主任としてG会員又は同組合員の」と夫々改め又第一、第二の各被告人関係にお
いて「同組合において擅に組合保管の預金から云々横領した外」とあるのを「G会
において擅に同会保管の預金から云々横領した外同会又は同組合において同会又は
同組合保管の預金から」と夫々改める外該事実(犯罪表を含む)と同一であるから
茲に引用する。
 以上の判示事実は一、被告人両名の原審公判調書中各判示同旨の供述記載一、被
告人両名の各司法警察員に対する第二回供述調書及各検察事務官に対する第一回供
述調書中の供述記載一、E作成の各上申書及添附明細書中の記載一、被告人両名が
何れも短期間内に同種行為を反覆累行したる事蹟に依つて認める。
 法律に照すと、被告人等の各判示所為は刑法第二百三十五条(昭和二十二年十月
迄の所為については改正前の同法第五十五条)に夫々該当するが以上は同法第四十
五条前段の併合罪であるから同法第四十七条第十条に則り被告人Aに対しては最重
の昭和二十二年十月三十一日の一万五千円の横領罪の刑に、被告人Bに対しては最
重の同二十四年二月二日の二万三千円の横領罪の刑に各法定の加重をした刑期範囲
内で被告人Aを懲役二年六月に、同Bを懲役一年六月に夫々処することとし、刑事
訴訟法第百八十一条第一項により原審における訴訟費用(証人綾部浩雄に支給分、
昭和二十四年十二月十四日出頭した証人D、同Eに各支給分)は被告人等に負担さ
せることにする。
 仍て主文のように判決する。
 (裁判長判事 石橋鞆四郎 判事 筒井義彦 判事 柳原幸雄)

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