弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
本件控訴を棄却する。
理由
本件控訴の趣意は,弁護人新井重明作成の控訴趣意書に記載されたとおりである
(なお,弁護人は量刑不当の主張はしないと釈明した)から,これを引用する。。
論旨は,法令適用の誤りの主張であり,原判決は,被告人が,平成20年7月2
6日,茨城県a郡b町の自宅において,同所に設置されたパーソナルコンピュータ
ーを操作して,そのような意図がないにもかかわらず,インターネット掲示板に,
同日から1週間以内に東日本旅客鉄道株式会社土浦駅において無差別殺人を実行す
る旨の虚構の殺人事件の実行を予告し,これを不特定多数の者に閲覧させ,同掲示
板を閲覧した者からの通報を介して,同県警察本部の担当者らをして,同県内にお
いて勤務中の同県土浦警察署職員らに対し,その旨伝達させ,同月27日午前7時
,,ころから同月28日午後7時ころまでの間同伝達を受理した同署職員8名をして
,,,上記土浦駅構内及びその周辺等への出動警戒等の徒労の業務に従事させその間
同人らをして,被告人の予告さえ存在しなければ遂行されたはずの警ら,立番業務
その他の業務の遂行を困難ならしめ,もって偽計を用いて人の業務を妨害した,と
の事実を認定し,業務妨害罪(刑法233条)が成立するとしているが,本件にお
いて妨害の対象となった警察官らの職務は「強制力を行使する権力的公務」である
から,同罪にいう「業務」に該当せず,同罪は成立しないから,原判決には法令適
用の誤りがある,というのである。
そこで,検討すると,上記警察官らの職務が業務妨害罪(刑法234条の罪をも
含めて以下本罪というにいう業務に該当するとした原判決の法令解釈,「」。)「」
は正当であり,原判決が「弁護人の主張に対する判断」の項で説示するところもお
おむね正当として是認することができる。
すなわち最近の最高裁判例において強制力を行使する権力的公務が本罪に,,「」
いう業務に当たらないとされているのは,暴行・脅迫に至らない程度の威力や偽計
による妨害行為は強制力によって排除し得るからなのである。本件のように,警察
に対して犯罪予告の虚偽通報がなされた場合(インターネット掲示板を通じての間
接的通報も直接的110番通報と同視できる,警察においては,直ちにその虚偽。)
であることを看破できない限りは,これに対応する徒労の出動・警戒を余儀なくさ
せられるのであり,その結果として,虚偽通報さえなければ遂行されたはずの本来
の警察の公務(業務)が妨害される(遂行が困難ならしめられる)のである。妨害
された本来の警察の公務の中に,仮に逮捕状による逮捕等の強制力を付与された権
力的公務が含まれていたとしても,その強制力は,本件のような虚偽通報による妨
害行為に対して行使し得る段階にはなく,このような妨害行為を排除する働きを有
しないのである。したがって,本件において,妨害された警察の公務(業務)は,
強制力を付与された権力的なものを含めて,その全体が,本罪による保護の対象に
なると解するのが相当である(最高裁昭和62年3月12日第一小法廷決定・刑集
41巻2号140頁も妨害の対象となった職務はなんら被告人らに対して強制,,「
、、、、、、、、
力を行使する権力的公務ではないのであるから威力業務妨害罪にいう業務に,」「」
当たる旨判示しており,上記のような解釈が当然の前提にされているものと思われ
る。。)
所論は,①警察官の職務は一般的に強制力を行使するものであるから,本罪にい
う「業務」に当たらず,②被告人の行為は軽犯罪法1条31号の「悪戯など」に該
当するにとどまるものである,というようである。
しかし,①については,警察官の職務に一般的に強制力を行使するものが含まれ
るとしても,本件のような妨害との関係では,その強制力によってこれを排除でき
ず,本罪による保護が必要であることは上述したとおりであって,警察官の職務に
上記のようなものが含まれているからといって,これを除外した警察官の職務のみ
が本罪による保護の対象になると解するのは相当ではない。なお,所論の引用する
最高裁昭和26年7月18日大法廷判決・刑集5巻8号1491頁は本件と事案を
異にするものである。
②については,軽犯罪法1条31号は刑法233条,234条及び95条(本罪
及び公務執行妨害罪)の補充規定であり,軽犯罪法1条31号違反の罪が成立し得
,。るのは本罪等が成立しないような違法性の程度の低い場合に限られると解される
これを本件についてみると,被告人は,不特定多数の者が閲覧するインターネット
上の掲示板に無差別殺人という重大な犯罪を実行する趣旨と解される書き込みをし
たものであること,このように重大な犯罪の予告である以上,それが警察に通報さ
れ,警察が相応の対応を余儀なくされることが予見できることなどに照らして,被
告人の本件行為はその違法性が高く悪戯などではなく偽計による本罪に,,「」「」
該当するものと解される。
,,。その余の所論を検討しても原判決に法令適用の誤りはなく論旨は理由がない
よって,刑訴法396条により本件控訴を棄却し,当審における訴訟費用の処理
につき同法181条1項ただし書を適用して,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官安廣文夫裁判官小森田恵樹裁判官地引広)

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