弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中「当審における未決勾留日数中七〇日を原判決の刑に算入する。」
との部分を破棄する。
     原審における未決勾留日数中六九日を本刑に算入する。
     その余の部分に対する上告を棄却する。
         理    由
 検察官の上告趣意について
 記録によれば、被告人は、本件公訴事実と同一性のある暴力行為等処罰に関する
法律違反及び傷害の事実について、起訴前である平成四年一月三一日勾留状の執行
を受け、その後一、二審を通じて引き続き勾留されていたものであるが、その間、
第一審は、同年七月三一日、被告人を懲役一年二月に処し、未決勾留日数中九〇日
を右刑に算入する旨の判決を言い渡し、これに対して、被告人が同月一四日控訴を
申し立てたところ、原審は、同年一一月一八日、右控訴を棄却するとともに、「当
審における未決勾留日数中七〇日を原判決の刑に算入する。」との判決を言い渡し
たことが明らかである。また、記録によると、被告人は、同年三月一六日神戸簡易
裁判所において、傷害罪により、罰金三〇万円に処せられ、右裁判は同月三日確定
し、右罰金刑の換刑処分としての労役場留置の執行が同年九月二一日から開始され、
原判決の言渡しがあった同年一一月一八日現在いまだ執行中であったことが認めら
れる。
 このように罰金刑の換刑処分としての労役場留置の執行と競合する未決勾留日数
を刑法二一条によって本刑に算入することが違法であることは、所論引用の当裁判
所の判例(最高裁昭和四一年(あ)第一八七八号同四二年五月二六日第二小法廷判
決・裁判集刑事一六三号四三五頁、最高裁昭和五三年(あ)第二三二八号同五四年
四月一九日第一小法廷判決・刑集三三巻三号二六一頁)の示すところであるから、
原審における未決勾留日数のうち本刑に算入することの許される限度は、被告人が
控訴を申し立てた日である平成四年七月一四日から前記労役場留置の執行開始の日
の前日である同年九月二〇日までの六九日間である。したがって、原審が右の限度
を超えて原審における未決勾留日数を本刑に算入したのは、刑法二一条の適用につ
いて右判例と相反する判断をしたものといわなければならず、論旨は理由がある。
 よって、刑訴法四〇五条二号、四一〇条一項本文、四一三条ただし書により、原
判決中「当審における未決勾留日数中七〇日を原判決の刑に算入する。」との部分
を破棄し、刑法二一条により原審における未決勾留日数中六九日を本刑に算入し、
原判決中その余の部分に対する上告は、上告趣意として何らの主張がなく、したが
って、その理由がないことに帰するから、刑訴法四一四条、三九六条により棄却し、
当審における訴訟費用は、同法一八一条一項ただし書により被告人に負担させない
こととし、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 検察官河内悠紀 公判出席
  平成五年四月一三日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    可   部   恒   雄
            裁判官    貞   家   克   己
            裁判官    園   部   逸   夫
            裁判官    佐   藤   庄 市 郎

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