弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人戸毛亮蔵の上告理由について。
 (一) 自作農創設特別措置法による農地買収処分は民法一七七条の適用を見な
いものであつて単に登記簿の記載によつて登記簿上の所有者を相手方として行うべ
きものでなく真実の所有者からこれを買収すべきものであることは当裁判所大法廷
の判例(昭和二五年(オ)第四一六号同二八年二月一八日判決)とするところであ
る。そして、真実の所有者が自己所有の農地について誤つて買収処分が行われたこ
とを知り若しくは知り得べき状態に在つたと認められるにかかわらず、その取消を
求めるため法律上許された異議、訴願又は出訴等一切の不服申立方法を採らず期間
を徒過したような場合はその後において訴によりその違法を主張することは許され
ないと解すべく、従つて買収処分はその瑕疵にかかわらず無効となるものでないと
すること、また当裁判所の判例(昭和二四年(オ)第一七七号同二五年九月一九日
第三小法廷判決、同二五年(オ)第二八〇号同二九年一月二二日第二小法廷判決、
同二八年(オ)第六五七号同三〇年四月二六日第三小法廷判決)である。
 原判決の確定したところによれば、本件農地は、もと、上告人の母Dの所有であ
つたところ、同人は昭和二〇年三月一一日死亡し、上告人が遺産相続により同日そ
の所有権を取得したが、登記簿上はなおD所有名義のままになつていたため、a村
農地委員会が昭和二二年六月五日定めた買収計画に基き被上告人は同年一二月二日
附で右特別措置法三条により本件農地についてD名義で買収処分をしたのであつた。
そして、後記のとおり上告人と永年同居しているその妻Fは昭和二三年初頃右農地
委員会において上告人を代理して右D名義買収令書を受け取り且つ上告人名義のそ
の受領証に上告人の印章を(Gの手により)押捺したというにあり、しかるに上告
人が本件農地の買収計画若しくは買収処分に対して異議、訴願、出訴等の不服申立
をしなかつたことは原判決の確定した事実関係から推知し得るところである。これ
によれば、昭和二二年一二月二日附本件買収処分は、処分当時本件農地が登記簿上
上告人の亡母所有名義のままになつていたため登記簿上の名義人(亡母)に対して
なされたのであつて真実の所有者たる上告人に対してなされなかつたものであるか
ら、違法たるを免れないが、それだけで常に直ちに当然無効と解すべきではない。
そして右によれば、上告人は右母の死亡により本件農地を相続し、本件買収令書は
昭和二三年初頃上告人の永年同居の妻が上告人を代理してこれを受け取り且つその
受領証に上告人の印章を押捺したという事実であるから、上告人としては自己所有
の農地について誤つて所有者を亡母とした買収処分が行われたことをその頃知り若
しくは知り得べき状態にあつたものということができる。しかるに上告人は本件買
収の計画若しくは処分に対して前記不服申立をしないで期間を徒過したのであるか
ら、本件買収処分は前記の瑕疵があつてもその効力を失うものでなく本件農地は適
法に国の所有に帰するものと解するを相当とする。論旨は理由がない。
 (二) 原判決は、挙示の証拠によつて、本件買収処分当時買収令書の用紙は「
買収令書」と「その受領証」及び「H銀行に対する農地買収の対価、報償金の受領
に関する一切の件の委任状」とが連絡した一枚の用紙よりなりその各部分がそれぞ
れ切取線で切り取られるようになつていたものであつて本件D名義買収令書は昭和
二三年初頃上告人と永年同居の妻Fがa村農地委員会において同委員会主任書記G
より説明を聞いた上上告人を代理してこれを受け取り同人をして上告人名義のその
受領証及び委任状に上告人の印章を押捺せしめた事実を認め、又、これによつて当
時Fが本件買収令書受領について上告人を代理する権限があつた事実を認定したこ
とは判文上明瞭であり、かような事実から右代理権の存在を推認することは相当で
ある。論旨はFは故人であるDの代理人になる権限はないという点は原認定を正解
せざるにいでた主張であつて、原判決はFがDでなく上告人を代理して受領したこ
とを認定しているのである。本件買収令書が上告人に交付されなかつたという論旨
は理由がない。
 (三) 原判決は、本件農地の買収計画を定めた判示a村農地委員会に本件農地
の一部の小作人であるIが小作人側委員として出席し本件農地を含む農地の総括的
買収計画の議事に関与し決議の成立を見た事実を認定したのであるから、右によれ
ばI委員は自己の小作地を含む本件農地の買収計画についての議事に関与し当時施
行の農地調整法一五条の一二に違反したものであつて従つて本件買収計画は違法の
ものといわねばならない。けれども原判決の認定によれば右I委員は右審議に当り
何ら発言しなかつたにかかわらず定員と同数の出席委員全員の一致で右決議は成立
したというのであり、I委員が右議事についての審議に出席し採決に加わつたこと
が審議方法又は決議内容の公正を疑わしめるような何らか格段の影響を与えたもの
と推測されるような事情は原判決の認定しないところであるから、I委員が右議事
に関与しなかつたとしても右決議は成立すべかりしものというに足るので、結局、
右決議は違法のものであり出訴期間内に取消訴訟が提起されたならば取消されるこ
とを免れないものであるが、当然無効のものであるということはできない。この点
について原判決には違法なく論旨は理由がない。
 よつて民訴四〇一条、九五条、八九条に従い裁判官全員の一致で、主文のとおり
判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎

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