弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
被審人を過料金一〇〇万円に処する。
本件手続き費用は被審人の負担とする。
       理   由
 被審人は肩書地に本社を、東京、大阪および高松に支社を、高知県中村市に放送
局を置き、従業員約一八○名を雇用してラジオ、テレビの民間放送を営なむ会社で
あるが、昭和四一年一〇月一日、同会社の従業員でテレビ進行部勤務であつたAに
対し大阪支社への配置転換を、同じくテレビ技術部勤務であつたBに対し中村放送
局への配置転換を、同じく報道部勤務であつたCに対し大阪支社への配置転換を、
同じく報道部勤務であつたDに対し東京支社への配置転換を、それぞれ命じたとこ
ろ、同人等の所属する高知放送労働組合から不当労働行為であるとして高知県地方
労働委員会に対し救済命令の申立がなされ、昭和四四年二月二六日同委員会から
「被審人は前記四名に対する配置転換命令を撤回し、同人等を原職に復帰させなけ
ればたらない。」ことなどを内容とする命令をうけたので、被審人は中央労働委員
会に再審査の申立をしたが、昭和四五年五月六日右中立は棄却された。そこで、被
審人は東京地方裁判所に右中央労働委員会の命令の取消請求訴訟を提起したのであ
るが、同裁判所は同委員会の申立により(昭和四五年(行ク)第六六号)、昭和四
五年一〇月七日「被申立人(被舞人をさす)は、被申立人を原告とし、申立人を被
告とする当庁昭和四五年(行ウ)第一一四号救済命令取消請求事件の判決が確定す
るまで、申立人が中労委昭和四四年(不再)第四号事件において維持した高知県地
方労働委員会の昭和四四年二月二六日付命令(高労委昭和四二年(不)第七号不当
労働行為申立事件)に従い、A、B、C、Dを昭和四一年一〇月一日当時の原職
(ただしAについては原職と同種同等の職種)に復帰させなければならない。」と
の緊急命令を発し、同命令は同年一〇月九日被審人に送達された。
 従って、被審人としては、右緊急命令の命ずるところに従い、前記四名を原職に
復帰させるため、旅費規定によって赴任旅費、諸手当を支給する等通常の配置転換
の場合に準ずる具体的措置をとるべきであるのに、昭和四五年一〇月一二日付をも
つて前記四名に対し、「束京地裁から一〇月九日緊急命令の決定が送達された。会
社としてはこの命令に従わねばならないのですみやかに本社に帰られたい。」と通
知し、また、同月二一日付をもつてE総務局長名で高知放送労働組合に対し「緊急
命令にもとづいて本社へ帰る場合、原則として旅費は支給できない。理由は、正規
の人事異動ではなく、この事件は未だ継続中であり、最終確定で仮りに会社主張を
認められた場合には本人らは再ぴ同四一年一〇月の異動通りそれぞれの任地へ行か
なければならなくなる。そうした場合には当然また旅費の問題が起るであろう。し
たがつて会社は最終確定まで必要な旅費実費を無利子で貸し付ける。」と通知し、
かつ、同年一一月七日前記四名に対し被審人本社でE総務局長が同人等の質問に対
して口頭で右旅費実費貸付けの点と同人等の所属部(D、Cは報道部、Bはテレピ
第一技術部、Aは原職相当の整理部)を明らかにする等同人等が原職に復帰して就
労するのを妨げないとの態度をとるのみで、A、BおよびDの三名が赴任に要する
旅費等を支給せず、また、A等四名の担当事務を指示し勤務条件を説明する等同人
等が現実に職場で勤務につくことができるような具体的措置を講ぜず、前記緊急命
令を履行していないものである。
 右事実は本件記録により明らかであるから、労働組合法三二条前段、非訟事件手
続法二〇七条四項により主文の通り決定する。

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