弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴は之は棄却する。
         理    由
 弁護人石井幸雄の陳述した控訴の趣意は別紙の通りである。
 控訴の趣意第一点乃至第四点に付いて。
 <要旨>自白によつて犯罪事実を認定するには所謂補強証拠は罪となるべき事実中
所謂罪体についてのみ存在することを要し故意過失等の主観的条件について
は自白のみによつて之を認め得べく之に対する補強証拠の存在を必要としない。
 原判決挙示の証拠を綜合すれば被告人は本件犯行当時少くとも所謂未必の殺意を
有していたことを窺知するに足る。
 従つて論旨は執れも理由がない。
 同第五点に付いて。
 原審は審理の結果被告人は本件犯行当時心神喪失乃至粍弱の情況になかつたもの
との心証を得弁護人の精神鑑定の申請を却下したものであること記録に懲して明で
ある。而して裁判所において審理の結果既に心証を得た事実に付いては、当事者の
証拠の申請を却下することを得べく仮令それが被告人の精神状態に対する鑑定の申
請であつてもその理を異にしない。従て本論旨も理由がない。
 同第六点に付いて記録を精査すると原審の刑は相当であると思われるので本論旨
もまた理由がない。
 以上の説示のように本件控訴は理由がない故刑事訴訟法第三百九十六条に則つて
主文の通り判決する。
 (裁判長判事 島村廣治 判事 後藤師郎 判事 青木亮忠)

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