弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決ならびに第一審判決中業務上過失傷害の公訴を棄却した部分を破
棄する。
     本件を徳山簡易裁判所に差し戻す。
         理    由
 検察官の上告趣意第一点は、判例違反を主張するが、所論引用の判例は、本件と
事案を異にし、適切ではなく、同第二点は、単なる法令違反の主張であつて、いず
れも刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。
 しかし、所論にかんがみ、職権により調査すると、原判決ならびにその維持する
第一審判決中業務上過失傷害の公訴を棄却した部分には、以下に述べる法令の違反
があり、これを破棄しなければ著しく正義に反すると認める。
 すなわち、起訴状によると、本件は、昭和二二年一一月七日生れの被告人が、そ
の年令一九歳二カ月であつた昭和四二年一月二八日、福岡県宗像郡a町の道路にお
いて普通貨物自動車を運転中、業務上必要な注意義務を怠つて、自己の車両をガー
ドレールに衝突させ、さらに路外の田圃に転落させ、よつて同乗者二名にいずれも
全治まで約一週間を要する傷害を負わせたという事案であるところ、原判決の判示
するところによれば、昭和四二年一月二八日、被告人からの急報を受けた宗像警察
署の交通事故係巡査Aは、本件事故現場において実況見分をしてその調書を作成し、
同日被害者二名の各診断書を、また、同月三〇日にガードレールの損壊についての
被害届と修理費用の見積書を各関係人から提出させ、さらに同年二月四日同警察署
において被告人および被害者の一人であるBを取り調べてそれぞれ供述調書を作成
し、同年三月二二日被告人の事故車の修理費用等の見積書が提出されたので、その
約一〇日後に再度本件事故現場を見分し、被告人や被害者らの供述の信憑性を確認
し、その頃までに本件事故に関する必要書類の作成と収集を完了したが、同巡査は、
本件ほか七件の交通事故未済事件を抱えたまま、同年四月一日付で交通事故係から
交通指導係となり、さらに同年九月一日付で外勤係となつたところ、同年八月末ま
でに右未済事件のうち四件を処理しながら、本件については被告人が成人となる時
期が切迫している少年であることを知りつつ日時を経過し、同年一〇月一六日に至
つて本件の捜査報告書一通を作成したうえ、捜査記録を上司である事故係主任に引
き継いだけれども、同署交通課長、同署長が決裁する頃にはすでに同年一一月六日
を過ぎて被告人は成人となつており、その後、昭和四三年五月一七日、徳山区検察
庁検察官により公訴が提起されたというのである。
 ところで、少年の被疑事件を家庭裁判所に送致するためには、司法警察員または
検察官において、犯罪の嫌疑があると認めうる程度に証拠を収集し、捜査を遂げる
必要があり、このことは、少年法四一条、四二条の明定するところである。したが
つて、捜査機構、捜査官の捜査能力、事件の輻輳の程度、被疑事件の難易等の事情
に左右されることではあるが、その捜査にある程度の日時を要することはいうまで
もなく、捜査に長期の日時を要したため、家庭裁判所に送致して審判を受ける機会
が失われたとしても、ただちに、それのみをもつて少年法の趣旨に反し、捜査手続
を違法であると速断することはできない。もつとも、捜査官において、適時に捜査
が完了しないときは家庭裁判所の審判の機会が失われることを知りながらことさら
捜査を遅らせ、あるいは、特段の事情もなくいたずらに事件の処理を放置しそのた
め手続を設けた制度の趣旨が失われる程度に著しく捜査の遅延を見る等、極めて重
大な職務違反が認められる場合においては、捜査官の措置は、制度を設けた趣旨に
反するものとして、違法となることがあると解すべきである。そして、以上の理は、
当小法廷がすでに昭和四四年(あ)第八五八号同年一二月五日判決において判示し
たところである。
 この見地から本件を考察すると、原判決の判示する前記事実関係のもとにおいて
は、捜査に従事した警察官には、本件の処理につき適切な配慮を欠いた点なしとし
ないとはいえ、いまだ前示のごとき重大な職務違反があるとは認めがたいから、そ
の捜査手続は、これを違法とすることはできない。原判決が、これに反して、本件
捜査手続を違法とした判断は、法令の解釈適用を誤つたものであり、したがつて、
この判断を前提として、公訴提起の手続が無効であるとの理由により公訴棄却を言
い渡した第一審判決を維持した判断もまた、誤つているといわなければならない。
 よつて、刑訴法四一一条一号により原判決ならびに第一審判決中業務上過失傷害
の公訴を棄却した部分を破棄し、さらに審理を尽くさせるため、同法四一三条本文
により本件を徳山簡易裁判所に差し戻すべきものとし、裁判官全員一致の意見で、
主文のとおり判決する。
 検察官内田実 公判出席
  昭和四五年五月二九日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    色   川   幸 太 郎
            裁判官    村   上   朝   一

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛