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平成28年3月29日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成27年(ワ)第24749号印税等請求事件
口頭弁論の終結の日平成28年2月25日
判決
原告A
被告株式会社ジヤパンタイムズ
同訴訟代理人弁護士野本俊輔
同吉葉一浩
同三神光滋
同中谷仁亮
主文
1別紙却下請求目録記載の各請求に係る訴えを却下す
る。
2原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3訴訟費用は原告の負担とする。
4この判決に対する控訴のための付加期間を30日と
定める。
事実及び理由
第1請求
1被告は,原告に対し,140万円及びこれに対する平成26年5月15日か
ら支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2被告は,原告に対し,1080万円及びこれに対する平成27年9月26日
(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3被告は,印税額のの決定に関わる“辞典”部数の定義について,
“契約”第
17条の規定に従え。
“契約”第17条規定の印税額とは,
“辞典”の一部あた
りの本体価格に発行部数(即ち印刷部数)を乗じたものの20%に相当する金
額を言う。
(ママ)
4被告は,
“取引書類”
(その定義については,本件に関わる「文書提出命令申
立書」をご参照)を含め,契約”第18条に規定する発行部数を証する全ての
証拠書類の保存期間をそれぞれの契約規定の保存期間満了日から更に2年間延
長,という原告の要求に対し,2016年2月末までに応じろ。
(ママ)
第2事案の概要
本件は,被告から出版された「中日英ビジネス用語辞典会計・金融・法律」
(以下「本件書籍」という。
)の編著者である原告が,被告との間で締結した
本件書籍の出版契約(以下「本件契約」という。
)に基づく印税が未払である
などと主張して,被告に対し,①本件契約に基づく印税140万円及びこれに
対する支払日である平成26年5月15日から支払済みまで商事法定利率年6
分の割合による遅延損害金の支払(上記第1の1。以下「本件請求1」とい
う。

,②被告による印税の過少申告という不法行為に基づく損害賠償金108
0万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成27年9月26日(訴状
送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金
の支払(上記第1の2。以下「本件請求2」という。
)をそれぞれ求めるとと
もに,③本件契約17条に係る文言についての原告の解釈が正しいことを認め
るよう求め(第1の3。以下「本件請求3」という。

,また,④本件契約18
条に規定する発行部数を証する全ての証拠書類について,本件契約が定める保
存期間の満了日からさらに2年間延長することを求める(第1の4。以下「本
件請求4」という。
)事案である。
1前提事実(各項末尾に掲記した証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定でき
る事実)
(1)当事者
原告は,平成2年から平成12年まで旭硝子株式会社に勤務し,契約書作
成等をはじめとする国際ビジネスの実務に携わっていた者である。
被告は,書籍,雑誌等の出版販売等を目的とする株式会社(昭和9年3月
7日設立,資本金5億5000万円)である。
(甲1,弁論の全趣旨)
(2)本件契約の締結
原告は,平成18年7月4日,被告との間で,原告を著作権者とし,被告
を出版権者とする本件書籍の出版契約(本件契約)を締結した。
本件契約には次の各条項がおかれている(なお,
「甲」とは原告を,
「乙」
とは被告を指す。


ア12条1項(増刷の通知義務等)
「乙は,本出版物を増刷するに際して,あらかじめ著作者にその旨を通
知する。

イ17条(著作権使用料および支払方法・時期)
(ア)1項
「乙は,本著作物を発行する都度,本著作物の一部あたりの本体価格
に発行部数を乗じたものの20%に相当する金額を本著作物の著作権使
用料(以下「印税」という)として下記規定の支払時期に甲に対し支払
う。ただし,初刷については,本出版物の奥付に記載する発行日(以下
「発行日」という)から2年を経過しても増刷にならない場合は,甲乙
が実売部数および残りの部数を確認のうえ,乙は本著作物の一部あたり
の本体価格に甲乙が確認した実売部数を乗じたものの20%に相当する
金額を印税として甲に支払う。

(イ)2項
「乙の甲への印税の支払時期」
「2.1初刷の場合は,乙がその次の増刷の予定を甲に通知した月
の翌月15日(金融機関休業の場合はその翌営業日)とする
が,発行日から2年を経過しても増刷にならない時には,発
行日から2年を経過した月の翌月15日(金融機関休業の場
合はその翌営業日)とする。

「2.2増刷の場合は,増刷をする都度,乙は,本著作物の一部あ
たりの本体価格に発行部数を乗じたものの20%に相当する
金額の80%を,本出版物の奥付に記載する発行月(以下
「発行月」という)の翌々日15日(金融機関休業の場合は
その翌営業日)に支払い,その残額の20%は,乙が,甲に
次の増刷の予定を通知した月の翌月15日(金融機関休業の
場合はその翌営業日)に支払う。ただし,該当する発行日か
ら2年を経過しても次の増刷にならない時には,実売部数お
よび残りの部数を甲乙が確認のうえ,この発行における乙の
甲への既に支払った金額を含め,印税を清算する。この清算
した結果に基づき,清算した月の翌月15日(金融機関休業
の場合はその翌営業日)に,甲が乙に対し,該当の取りすぎ
た印税金額を払い戻しとして,乙が指定した金融機関の乙の
口座に振り込み,または乙が該当の甲への未払いの印税金額
を甲に支払う。

(ウ)4項
「甲は,乙の納本・贈呈・批評・宣伝・業務などに使用する部数につ
いて,印税を免除とする。乙は甲に上記に使用した部数を通知する。乙
は甲の申し出があった場合には,上記に関係する書類の甲の閲覧に応じ
る。

ウ18条(発行部数の報告等)
「乙は,本出版物の発行部数を証するため,甲に対し製本のつどその部
数を報告する。なお,乙はその証拠となる書類をそれぞれ発行からの2年
間保存し,甲の申し出があった場合には,その閲覧に応じる。
(甲2)
(3)本件書籍の出版等
被告は,平成26年4月5日,本件契約に基づき,原告の編著に係る本件
書籍を出版し,これに先立つ同年3月26日から本件書籍の出荷を開始した。
(甲1,3)
2争点
(1)本件請求1の当否
印税支払請求権の有無(争点1)
(2)本件請求2の当否
不法行為の成否及び損害額(争点2)
(3)本件請求3の当否
本件契約における印税額の算定基準(争点3)
(4)本件請求4の当否(争点4)
3争点に関する当事者の主張
(1)争点1(印税支払請求権の有無)について
[原告の主張]
ア被告は,本件書籍の初刷1000部を既に完売し,本件書籍の増刷を既
に複数回行っている。
その根拠は,次のとおりである。
(ア)被告提供の販売データでは,本件書籍の実際の発売日である平成2
6年3月26日から平成27年4月末までの本件書籍のPOSデータに
よる店頭実売数が96冊となるが,同期間において,日本全国の国公立
図書館及び大学図書館の本件書籍の購入部数は合計148冊に上ってい
る(しかし,図書館の蔵書用の購入部数は全体の購入部数のごく一部に
すぎないはずである。


これについて,被告は,図書館の購入部数がPOSデータによる店頭
実売部数を上回っている原因として,株式会社大洋社が取次を行う図書
館流通センター(TRC)の実売データがPOSデータによる店頭実売
部数に含まれていないことを挙げて説明しているが,同期間におけるT
RCへの本件書籍の実際の納入部数(出荷部数から返品部数を控除した
もの)は48冊であり,POSデータによる店頭実売数である96冊と
併せても144冊と,図書館の購入部数である148冊を4冊下回って
いるのであって,被告の上記説明は虚偽である。
このように,被告主張の店頭実売数は実売数のごく一部であり,被告
は,原告に対し,意図的に本件書籍の実売部数を過少に報告している。
(イ)インターネット書店数社が本件書籍を取り扱っているが,①在庫切
れによる取寄せのため,数社同時に本件書籍の販売を一時停止する事態
が平成27年6月末までに13回も繰り返され,②口頭弁論終結時まで
にさらに同様の事態が3回繰り返されている。
原告が上記①の事実を指摘したのに対し,被告は,
「ネット書店は商
品の在庫を持っていないことがあり,注文が入るなどした時点で初めて,
取次会社に問い合わせて商品を仕入れるケースが頻繁にある。取次会社
に在庫がなければ,さらに取次会社が出版社に問い合わせることになる。
このようなシステムの性格上,ネット書店のホームページに正確な在庫
状況が反映されるまでには時間がかかり,出版社等に在庫があるにもか
かわらず,
『品切れ』や『売り切れ』と表示されてしまうことがある。

旨説明した。しかし,増刷するまでもなく本件書籍の在庫が十分にある
なら,被告への発注から二,三日で各インターネット書店に届けられる
はずであるのに,インターネット書店による被告からの本件書籍の取寄
せには6日ないし16日を要しているのであるから,被告はこの間に増
刷を繰り返したと解釈するほかない。
(ウ)被告は,POSデータによる店頭実売数に一部の大手インターネッ
ト書店(Amazon,セブンネット,楽天ブックスなど)での販売部
数が含まれていると説明しているが,他方で,被告が提供した本件書籍
の出荷情報,実売情報には,セブンネット及び楽天ブックスの分が全く
触れられておらず,又は一部しか触れられていない。したがって,被告
の説明は信用できない。
イ被告は,少なくとも本件書籍のうち初刷の1000部を完売しているか
ら,同売上に相当する印税額は,140万円(7000円×1000部×
20%)である。
[被告の主張]
被告は,平成26年3月7日,図書印刷株式会社(以下「図書印刷」とい
う。
)に対し,本件書籍の初版1000部の印刷を発注し,図書印刷におい
てこれを印刷した上,中間業者(倉庫会社及び取次業者)を通じてこれを書
店に出荷したが,本件書籍の初版は現在まで完売しておらず,一度も増刷し
ていない。
印税の支払期日について,本件契約17条2項2.1には「初刷の場合は,
…発行日から2年を経過しても増刷にならない時には,発行日から2年を経
過した月の翌月15日(金融機関休業の場合はその翌営業日)とする。
」と
規定されており,同条1項ただし書には「発行日」について「本出版物の奥
付に記載する発行日」と規定されている。本件書籍の奥付には「2014年
4月5日初版発行」と記載されているから,被告の原告に対する本件書籍
の印税の支払期日は平成28年5月15日であり,未だ到来していない。
なお,原告は,図書館の購入部数がPOSデータによる店頭実売部数を上
回ることはもちろん,店頭実売部数とTRCの販売部数の合計部数をも上回
ると主張する。しかしながら,全国にある約1万7000店の書店のうち,
POSデータを専門業者に提供しているのは約3分の1にすぎず,残り3分
の2の書店の販売数についてはPOSデータではカバーされていないから,
POSデータは現実の店頭実売数を完全に反映したものではない。図書館が
POSデータを提供していない書店から本件書籍を購入することもある上,
図書館の購入先がTRC以外の書店等であることもあり得るから,原告の主
張は,被告の説明が虚偽であることを示すものではない。
(2)争点2(不法行為の成否及び損害額)について
[原告の主張]
被告は,原告に対し,印税を過少申告しており,これは,原告に対する不
法行為に当たる。
原告は,被告の不法行為により,次のとおりの損害を被った。
ア原告の人件費500万円
原告は,被告の不法行為への対応のために長時間を費やし,応分の時
間的コスト(人件費)が発生した。
具体的には,①平成26年4月16日から毎日,本件書籍を扱うイン
ターネット書店のウェブサイトにおける本件書籍の在庫表示の変動の有
無を確認する作業,②図書館による本件書籍の購入状況を毎月調査する
作業,③被告からのメールの内容や同メールに記載された本件書籍の販
売に関するデータを解析してまとめる作業,④訴状及び添付書類等の裁
判書類の作成作業のため,1年4か月間にわたり,ほぼ毎日,7時間以
上の時間を費やした。これらの作業に費やした原告の負担は重く,また,
原告は,この間,他の書籍の編さん作業を行うことができなかった。
イ渡航実費80万円
原告は,本件訴訟及び訴訟提起の準備のために,来日する都度,往復
の航空券代金及びホテル代を支払っており,その額は概算で80万円で
ある。
ウ精神的損害500万円
原告は,支払を受けるべき応分の印税を受けられず,被告に全て奪わ
れ続けているのであり,これにより多大な精神的な苦痛を受けたのであ
り,これを金銭に換算すると500万円に相当する。
[被告の主張]
不知ないし争う。
(3)争点3(本件契約における印税額の算定基準)について
[原告の主張]
原告の受け取るべき印税額は,本件書籍の実売部数ではなく発行部数(す
なわち印刷部数)を基準に算定されるべきである。このことは本件契約17
条の文脈や発行部数の定義に関する社会的通念からも明らかである。
[被告の主張]
本件書籍は一度も増刷されていないから,本件契約17条1項ただし書の
規定に従い,被告に対して支払うべき印税は,本件書籍の「実売部数」を基
準に定められる。
(4)争点4(本件請求4の当否)について
[原告の主張]
本件契約18条所定の書類保存期間が満了してしまえば,本件の裁判に影
響を及ぼす可能性が十分あるから,保存期間を2年間延長する必要がある。
[被告の主張]
争う。
第3当裁判所の判断
1職権による検討
(1)本件請求3は,
「被告は,印税額のの決定に関わる“辞典”部数の定義に
ついて,
“契約”第17条の規定に従え。
“契約”第17条規定の印税額とは,
“辞典”の一部あたりの本体価格に発行部数(即ち印刷部数)を乗じたもの
の20%に相当する金額を言う。

(ママ)というものであり,被告に対し,
本件契約中の文言に関する原告の解釈が正しいことを認めるよう求めるもの
と解される。
また,本件請求4は,
「被告は,
“取引書類”
(その定義については,本件
に関わる「文書提出命令申立書」をご参照)を含め,契約”第18条に規定
する発行部数を証する全ての証拠書類の保存期間をそれぞれの契約規定の保
存期間満了日から更に2年間延長,という原告の要求に対し,2016年2
月末までに応じろ。

(ママ)というものであり,本件書籍の発行部数の証拠
となる書類について,本件契約18条の定める保存期間(本件書籍の発行か
ら2年間)の満了後もさらに2年間これを保存することを求めるものと解さ
れる。
(2)しかしながら,本件請求3については,裁判所が当事者間の契約条項を
解釈するのは,訴訟で争われる請求権等の存否を判断する前提として必要な
場合に限られるところ,具体的な請求権等の存否を離れて,契約条項の抽象
的な解釈についての公権的判断を求めることは,何ら具体的紛争の解決に資
するものではなく,確認ないし給付請求の対象として不適格であるから,本
件請求3に係る訴えは不適法である。
また,本件請求4について,原告は,
「保存期間が満了してしまえば本件
の裁判に影響を及ぼす可能性が十分あるから,保存期間を2年間延長する必
要がある」旨主張するばかりで,何ら法律的な請求原因を具体的に示してお
らず(なお,原告は,第1回口頭弁論期日において,同請求に係る主張につ
き,
「これまでの書面にすべて記載してあります。
」と述べている。

,請求の
特定を欠くというほかない。
(3)以上によれば,本件請求3及び4に係る訴えは不適法であるからこれを
却下すべきである。
2争点1(印税支払請求権の有無)について
(1)認定事実
各項末尾に掲記する証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められ
る。
ア被告が,書店や一般消費者に対し,自ら出版物の販売を行うことは稀で
あり,大多数の出版物は,中間業者である倉庫会社及び取次会社を介して
書店に販売している。具体的には,被告が印刷会社に出版物の印刷を発注
し,印刷会社は被告が契約する倉庫会社に納品し,倉庫会社は出版物を保
管して被告の出荷指示に応じて取次会社に出荷し,取次会社が書店に出荷
している。なお,被告が委託する倉庫会社は,大村紙業株式会社(以下
「大村紙業」という。)のみである。
(乙1~8(枝番のあるものは枝番を含む。以下同じ)
,弁論の全趣旨)
イ被告,大村紙業,取次会社及び書店の間における本件書籍の具体的な出
荷及び返品の流れは,次のとおりである。
(ア)出荷の場合
①被告が,書店に対して本件書籍の営業活動を行い,書店から注文を
受ける。
②被告が,大村紙業に対し,①の注文数に応じた本件書籍を取次会社
へ出荷するよう指示する。
③大村紙業が,取次会社に対し,②の注文数に応じた本件書籍を出荷
する。その際,大村紙業は,取次会社に対し,被告名義の納品書を
発行する。他方,取次会社は,本件書籍を受領すると,受領書(受
領印を押印し又は受領を示すパンチ穴を開けたもの)を大村紙業に
交付し,大村紙業は同受領書を被告に送付する。
④取次会社は,大村紙業から入荷した本件書籍を書店に対して出荷す
る。
(イ)返品の場合
書店は本件書籍をいつでも取次会社に返品することができ,この場合,
取次会社は,書店から受けた返品に係る本件書籍を大村紙業に返品する。
取次会社は,大村紙業に本件書籍を返品する際,被告宛ての返品伝票
を大村紙業に交付し,大村紙業は,被告に同返品伝票を送付する。
(乙3~7,弁論の全趣旨)
ウ被告は,平成26年3月7日,図書印刷株式会社(以下「図書印刷」と
いう。)に対し,納入日を同月25日として,本件書籍1000部の印刷
を発注した。これを受けて,図書印刷は,本件書籍の初版1000部を印
刷し,同月25日,うち970部を大村紙業に,残りの30部を被告に,
それぞれ納入した。
なお,図書印刷は,その後,本件書籍を一度も増刷していない。
(甲3,乙1,2,5)
エ大村紙業は,図書印刷から納入を受けた本件書籍970部について,納
入日である平成26年3月25日以降,取次会社への出荷と取次会社から
の返品の受入れを繰り返した。本件書籍について,平成27年10月まで
の間における大村紙業から取次会社への出荷数,取次会社から大村紙業へ
の返品数及び各月末時点での大村紙業の保管在庫数は,それぞれ別紙在庫
数等一覧表(乙2)のとおりである。
(乙2~8)
オ被告は,平成26年3月に図書印刷から入荷した本件書籍30部に加え,
同年4月に大村紙業から本件書籍10部を入荷した。被告は,これらの合
計40部の本件書籍のうち合計38部を,献本,直販又は無償提供などに
より出荷し,平成27年10月末日時点において,残り2部を保管してい
た。
(甲3,乙8)
(2)判断
ア前記第2の1(2)イ(イ)のとおり,本件契約17条2項によれば,被告
の原告に対する本件書籍に係る印税の支払期限は,①初刷については,被
告が次の増刷の予定を原告に通知した場合は,その月の翌月15日(金融
機関休業の場合はその翌営業日。以下の支払期限についても同様。
)とさ
れ,本件書籍の奥付に記載された発行日から2年を経過しても増刷になら
ない場合は,同発行日から2年を経過した月の翌月15日とされる一方,
②増刷されたときは,増刷をする都度,印税の80%を本件書籍の奥付に
記載された発行月の翌々日15日に支払い,残りの20%を,被告が原告
に次の増刷の予定を通知した月の翌月15日に支払うこととされている。
そして,口頭弁論終結日である平成28年2月25日時点においては,本
件書籍の奥付に記載された発行日である平成26年4月5日から未だ2年
が経過していないから,原告の被告に対する印税支払債権の支払期限到来
の有無は,増刷の有無及び増刷予定の通知の有無によって決せられること
となる。
そこで検討するに,被告において本件書籍を増刷したことを裏付ける証
拠は見当たらず,かえって,別紙在庫数等一覧表のとおり,被告の倉庫会
社である大村紙業が,図書印刷から納入された本件書籍の初刷分970部
について,納入から約1年半が経過した平成27年10月末日までの間,
継続して620部以上の保管在庫を抱えていること,被告が本件書籍の印
刷を発注した図書印刷が本件書籍を一度も増刷していないこと(乙5)等
に照らせば,本件書籍の増刷はなかったものと認められる。そして,本件
書籍の初刷後,被告が次の増刷の予定を原告に通知した事実についても主
張・立証がないから,本件契約17条2項2.1後段により,被告の原告
に対する印税の支払時期は,平成28年5月16日(本件書籍の奥付に記
載された発行日である平成26年4月5日から2年を経過した月の翌月1
5日(平成28年5月15日)が日曜日であるので,その翌日)となる。
したがって,原告の主張する印税支払請求権(履行期到来済みのもの)の
存在は認められない。
イこれに対し,原告は,被告が本件書籍の初刷1000部を既に完売した
上,既に複数回の増刷を行っている旨主張し,その根拠として,要旨,①
平成27年4月末までの全国の国公立図書館及び大学図書館における本件
書籍の購入部数(148冊)が,POSデータによる店頭実売数(96冊)
やこれとTRCへの実売数(48冊)を合計した実売数(144冊)をい
ずれも上回っていること,②本件書籍を取り扱うインターネット書店数社
が,在庫切れによる取寄せのために本件書籍の販売を同時に一時停止する
事態が繰り返されていること,③被告提供に係る本件書籍の出荷情報,実
売情報には,セブンネット及び楽天ブックスの分が全く又は一部しか触れ
られておらず,これらにおける販売部数がPOSデータによる店頭実売数
に含まれる旨の被告の主張が信用できないことを挙げる。
しかしながら,①については,POSデータによる店頭実売数又はこれ
とTRCへの実売数の合計が本件書籍の実売数と一致すると認めるに足る
証拠はない(なお,被告は「全国の書店の3分の2の書店の販売数につい
てはPOSデータではカバーされていないから,POSデータは現実の店
頭実売数を完全に反映したものではない」旨主張している。
)から,原告
の主張を裏付ける事情とはいえない。
また,②についても,被告は,
「ネット書店は,注文が入るなどした時
点で初めて,取次会社(ひいては出版社)に問い合わせて商品を仕入れる
ケースが頻繁にあるため,ネット書店のホームページに正確な在庫状況が
反映されるまでには時間がかかり,出版社等に在庫があるにもかかわらず,
『品切れ』や『売り切れ』と表示されてしまうことがある」旨説明してい
る(甲3)ところ,この内容は合理的で首肯できるものである(なお,原
告は,
「インターネット書店による被告からの本件書籍の取寄せには6日
ないし16日を要しているから,被告はこの間に増刷を繰り返したと考え
られる」旨主張するが,そのような短期間に増刷を繰り返すことは容易に
は想定し難い。

。したがって,この点も原告の主張を裏付ける事情とはい
えない。
さらに,③についても,被告提供に係る本件書籍の出荷情報,実売情報
に含まれていない,セブンネット及び楽天ブックスにおける販売部数があ
ることを認めるに足りる証拠はないから,これも原告の主張を裏付ける事
情とはいえない。
したがって,原告の指摘する事情は,いずれも前記認定判断を左右する
ものとはいえない。
ウなお付言するに,原告の文書提出命令の申立て(被告と取次会社及び被
告と株式会社アマゾンジャパンとの間で行われた本件書籍の販売に係る取
引書類の提出を求める申立て)については,当裁判所は,上記のとおり,
既に被告から本件書籍に係る取引の詳細を裏付けるに足る証拠が十分提出
されており,これについて原告が指摘する疑問点もいずれも採用できず,
提出済みの証拠のみによっても本件書籍が増刷されていない事実が積極的
に認定できることなどから,上記文書提出命令の申立てを必要性がないと
して却下したものである(なお,同申立てについての被告の意見は,被告
準備書面1の4~5頁参照)

3争点2(不法行為の成否及び損害額)について
原告は,被告が原告に印税を過少申告したことが原告に対する不法行為に当
たると主張するところ,その趣旨は必ずしも明確ではないが,いずれにしても,
被告が原告に支払われるべき印税額を実際よりも低く伝えたとか,本件書籍の
印刷部数ないし実売部数を実際よりも低く伝えたことを認めるに足りる証拠は
なく,その他,本件全証拠によっても,原告の主張するような不法行為の成立
を認めるに足りない。
4結論
以上によれば,その余の争点について判断するまでもなく,本件請求3及び
4に係る訴えは不適法であるからこれを却下し,その余の請求(本件請求1及
び2)はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして,主文のとおり
判決する。
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官沖中康人
裁判官矢口俊哉
裁判官廣瀬達人
(別紙)却下請求目録
1「被告は,印税額のの決定に関わる“辞典”部数の定義について,
“契約”第17条の規定に従え。
“契約”第17条規定の印税額とは,
“辞典”の一部あたりの本体価格に発行部数(即ち印刷部数)を乗じた
ものの20%に相当する金額を言う。
」との請求
2「被告は,
“取引書類”
(その定義については,本件に関わる「文書提
出命令申立書」をご参照)を含め,契約”第18条に規定する発行部数
を証する全ての証拠書類の保存期間をそれぞれの契約規定の保存期間満
了日から更に2年間延長,という原告の要求に対し,2016年2月末
までに応じろ。
」との請求

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採用情報


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答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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