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令和2年(ヲ)第4号差押禁止債権の範囲変更(差押命令取消)申立事件
(基本事件令和2年(ル)第244号債権差押命令申立事件)
主文
1上記当事者間の当庁令和2年(ル)第244号債権差押命令申立事件につい
て,当裁判所が令和2年9月1日にした債権差押命令のうち,別紙差押債権目
録記載の部分を取り消す。
2申立費用は,相手方の負担とする。
理由
1事案の概要
本件は,基本事件の債権差押命令(以下,「本件差押命令」という。)により相
手方(債権者)が申立人(債務者)の第三債務者に対する貯金債権(以下「本件貯
金債権」といい,同貯金債権に係る口座を「本件貯金口座」という。)を差し押さ
えたのに対し,申立人が,本件貯金債権の一部につき,その原資がいわゆる持続
化給付金の支給を受ける権利であり,給付対象の事業者に現実に確保させなけれ
ばならないものであるから,差押えは禁止されるべきであるとして,差押禁止債
権の範囲変更の申立てとして,本件差押命令の一部取消しを求めた事案である。
2当裁判所の判断
⑴一件記録によれば,以下の各事実が認められる。
ア申立人は,昭和a年b月c日生まれの女性であり,兵庫県川西市において
「A」の屋号で飲食店を営む個人事業者である。
イ本件貯金口座には,令和2年9月1日時点で499円の残高があり,同月
2日に持続化給付金として100万円が振り込まれ,残高が100万049
9円となった後,同日に本件差押命令が第三債務者に送達され,残高100
万0499円全額(本件貯金債権)が差し押さえられた。
⑵前記認定事実によれば,本件差押命令により差し押さえられた本件貯金債権
のうち,100万円については,令和2年9月2日に持続化給付金として10
0万円が振り込まれた後,同日に本件差押命令が第三債務者に送達されるまで
の間,入出金がないことから,持続化給付金の支給を受ける権利を原資とする
ものと認められる。
⑶持続化給付金の支給を受ける権利については,現時点において,これを差押
禁止債権とする法律の規定は存在しないが,法律に差押えを禁止する旨の明文
の規定がない場合であっても,譲渡性がない債権や他人が代わって行使するこ
とのできない債権については,その性質上,差し押さえることができないもの
と解すべきである。
⑷持続化給付金の制度は,新型コロナウイルス感染症の拡大に伴うインバウン
ドの急減や営業自粛等により,特に大きな影響を受けている中小企業等及び個
人事業者等に対して,事業の継続を支え,再起の糧とするために事業全般に広
く使える給付金を給付することを目的とするものであり(持続化給付金給付規
程(個人事業者等向け)2条),令和2年1月以降,新型コロナウイルス感染症
拡大の影響等により,前年同月比で事業収入が50パーセント以上減少した月
が存在すること等一定の要件を満たす個人事業者等の申請で成立し,持続化給
付金事務局の審査を経て,中小企業庁長官が給付額を決定する贈与契約である
とされている(同規程4条1項2号,9条1項)。持続化給付金は,給付対象の
個人事業者等に現実に確保されなければ,上記目的を実現することは困難であ
ると考えられるから,当該個人事業者等の債権者が,持続化給付金の支給を受
ける権利を差し押さえ,当該個人事業者等に代わって支給を受けるということ
は予定されていないというべきである。よって,持続化給付金の支給を受ける
権利は,性質上の差押禁止債権にあたると認めるのが相当である。
⑸本件では,持続化給付金は,一旦本件貯金口座に振り込まれ,その法的性質を
貯金債権に転化しているので,本件貯金債権を差し押さえることが直ちに差押
禁止に抵触するとはいえないが,差押禁止債権の範囲変更の申立てにおいて,
その原資の属性が持続化給付金の支給を受ける権利であることが認められれば,
他に事業継続を支える財産や手段があること等その取消しを不当とする特段の
事情のない限り,当該貯金債権に対する差押命令は取り消されるべきであると
解するのが相当である。
これに対し,相手方は,本件貯金債権の原資が持続化給付金の支給を受ける
権利であったとしても,これを差し押さえても申立人の生活に著しい支障が生
じるとは認められず,差押禁止債権の範囲変更を認める必要性はない旨主張す
る。
しかし,持続化給付金の制度は,前述のとおり,新型コロナウイルス感染症の
拡大により特に大きな影響を受けている中小企業等に対して事業継続や再起の
ために事業全般に使える給付を目的とするもので,事業収入の大幅な減少等の
要件を満たす場合に給付されるものであることを踏まえると,相手方が意見書
で指摘する事情など一件記録に表れた事情を考慮しても,上記の特段の事情が
あるとは認められない。
⑹以上によれば,本件差押命令により差し押さえられた本件貯金債権のうち,
100万円については,性質上の差押禁止債権である持続化給付金の支給を受
ける権利を原資とするものと認められ,この部分についての本件差押命令の取
消しを不当とすべき特段の事情は認められないから,本件差押命令のうち,別
紙差押債権目録記載の部分を取り消すのが相当である。
3よって,申立人が差押禁止債権の範囲変更の申立てとしてした本件差押命令の
一部取消しの申立ては理由があるから,民事執行法153条1項により,これを
認容することとし,主文のとおり決定する。
令和2年11月19日
神戸地方裁判所伊丹支部
裁判官谷口真紀
(別紙)
差押債権目録
申立人(債務者)が第三債務者Bに対して有する下記貯金債権

貯金の種類通常貯金
C番号D
口座名義人E
金額100万円
以上

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