弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

        主        文
 被告人を懲役10月に処する。
   この裁判が確定した日から2年間その刑の執行を猶予する。
   訴訟費用は被告人の負担とする。
        理        由
(犯罪事実)
 被告人は,平成13年8月30日午前1時ころから同日午前3時ころまでの間,
神戸市中央区A通a丁目b番c号所在の当時の被告人方において,妻V(当時37
歳)と口論の末,同女に対し,その胸倉を両手でつかんで同女の背部をタンスに打
ち当て,座り込んだ同女の頭部,顔面,胸部,右肩部等を多数回にわたり足蹴に
し,次いで,その後頭部を上記タンスに打ち付けさせ,焼酎の水割りを同女の頭か
ら浴びせかけ,さらに同女の腹部等を足で踏み付けるなどの暴行を加え,よって,
同女に約25日間の加療を要する頚椎捻挫,胸骨部挫傷,頭部打撲の傷害を負わせ
た。
(証拠の標目)(括弧内の数字は検察官の証拠請求番号を示す。)
省略
(補足説明)
1 弁護人は,判示の暴行につき,その程度,態様を争うので,以下,裁判所の判
断を補足して説明する。
2 関係各証拠によれば,被告人の当時の妻で本件被害者であるVは平成13年8
月29日経営する「B整骨院」で仕事をしており,被告人は,同日夕方から同整骨
院でVの仕事を手伝っていたこと,Vは帰宅後,うたた寝をしていたところ,被告
人が,Vに対してアパートを借りたのはなぜか,浮気をしているのではないかなど
と責め立て被告人とVの口論が始まったこと,その後,被告人はVに対して,頭か
ら焼酎の水割りを浴びせかけ,同女の顔面を踏んだこと,Vは同年9月3日整形外
科で受診し,頚椎捻挫,胸骨部挫傷,頭部打撲で3週間の加療を要する旨の診断書
が出されていることが認められ,これらの点については,被告人もおおむね争わな
い。
3 証人Wは,公判廷において,本件当日,被告人方リビングルームで,被告人と
Vとの間で口論が始まった経緯から,被告人がVを同リビングルームの整理ダンス
の前まで引っ張っていき,その前で,Vを整理ダンスに押しつけたりした上,頭
部,腹部,肩部等を蹴ったり,後頭部を打ち付けたり,腹部を踏みつけるなど,判
示認定事実に沿う供述をしているところ,その供述内容は,詳細かつ具体的で,格
別不自然なところは見受けられない。Wは,Vの長女で,被告人と別居後,証言時
まで約1年半の間,Vと同居してその養育を受けており,実母であるVの影響を受
けやすい心情にあることは否定できないが,その証言は,Vが在廷しない法廷でな
され,かつ,中学校1年生という年齢でありながら,弁護人の反対尋問にも揺るが
ず,また,被告人に遊
びに連れて行ってもらったことなども率直に述べ,覚えていないことは覚えていな
いと供述しているのであり,このような供述態度等に照らすと,その信用性は,相
当高いと認められる。
  次に,被害者であるVの証言は,被告人に対する敵意があらわであり,特に,
犯行以前の経緯に関する事項や,犯行後の事情等については,不自然な部分が多々
あり,その供述をそのまま信用することはできない。しかし,本件被害の核心部分
については,その供述は,前記Wの供述とよく符合しており,その限度では,信用
性を否定すべき事情は見当たらず,相互にその供述を補強するものということがで
きる。
4 もっとも,前記両名の供述中には,被告人が,被害者に対し,いわゆる「かか
と落とし」をしたという部分があり,Wの供述中には,「回し蹴り」をしたなどと
いう部分があるが,「かかと落とし」や「回し蹴り」がどのようなものを指すのか
具体的には明らかでないものの,被害者の左側頭部にこぶし大の腫れがあった他は
目立った外傷はなく,被害者は,そのまま寝入っていることなどからすると,その
暴行態様は,要するに,かかとや足で蹴ったという程度の意味であって,それが殊
更大きな衝撃を与える特殊な「技法」であるとまでは考えられない。
  他方,被害者は,犯行当日を含めて5日後に,C整形外科クリニックで診察を
受け,判示認定に沿う診断がなされているところ,弁護人が指摘する諸事情を考慮
しても,その信用性を疑うべき事情はうかがえない。
5 以上のとおりであって,被告人の暴行及びその結果としての傷害は,判示記載
の限度で,これを優に認めることができ,その態様,結果に照らすと,加罰的違法
性のあることは明らかである。
(法令の適用)
 被告人の判示行為は刑法204条に該当するので,所定刑中懲役刑を選択し,そ
の所定刑期の範囲内で被告人を懲役10月に処し,情状により同法25条1項を適
用してこの裁判が確定した日から2年間その刑の執行を猶予することとし,訴訟費
用については,刑事訴訟法181条1項本文により全部これを被告人に負担させる
こととする。
(量刑の理由)
 本件は,被害者である妻の浮気を疑っていた被告人が,ささいなことから立腹
し,口論の末,被害者の背中をタンスに打ち当て,顔面,頭部を蹴り腹部を踏むな
どの暴行を加え傷害の結果を負わせた事案である。
 被害者の傷害の程度は約25日間の加療を要するもので軽くないこと,さらには
被害者に対して焼酎を頭からかけ,足の裏で顔や胸を蹴り,腹部を踏みつけるなど
被害者にとって屈辱的な暴行が加えられており犯行態様は芳しくないことなどから
すると,被告人の刑事責任は軽視することができない。
 他方,被害者にも,アパートの貸借を巡る経過など,被告人の疑惑を招いてもや
むを得ないような行動等があり,被告人の暴力それ自体を正当化する理由にはなら
ないとはいえ,本件に至る経緯には,被告人の責任にのみ帰せられない事情があっ
たことは否定できない。加えて,被告人に前科はなく,これまで犯罪と無縁の生活
を送ってきたこと,本件の原因となった被告人らの夫婦関係は,裁判手続きを経て
離婚により決着していること,被告人なりに反省の気持ちを示していることなど,
被告人のために酌むべき事情も認められる。
 そこで,これら諸般の事情を考慮し,被告人に対し主文の刑を定め,その刑の執
行を猶予することとした。
(求刑・懲役1年6月)
(検察官鈴木淳史 出席)
平成15年7月16日
神戸地方裁判所第4刑事部
          裁判官  笹野明義

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛