弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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              主       文
 1 被告は,原告に対し,485万1417円及びうち435万1417円に対
する平成12年6月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 2 原告のその余の請求を棄却する。
 3 訴訟費用はこれを10分して,その6を原告の負担とし,その余を被告の負
担とする。
 4 この判決は第1項に限り仮に執行することができる。
             事 実 及 び 理 由
第1 請求
   被告は,原告に対し,1187万8543円及びうち1087万8543円
に対する平成12年6月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払
え。
第2 事案の概要
   本件は,原告が,被告に委託して商品先物取引を行ったところ,被告の従業
員らによる違法な勧誘行為等により損害を被ったと主張して,被告に対し,不法行
為(使用者責任)に基づき,損金1087万8543円,弁護士費用100万円,
及び,上記損金に対する最終取引日の翌日である平成12年6月28日から支払済
みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求した事案である。
 1 争いのない事実等
  (1)当事者
    原告は,昭和8年11月20日生まれの男性であり,旧国鉄を退職して,
本件当時ビル管理会社に勤めていた者である。
    被告は,商品先物取引の受託業務等を目的とする株式会社で,全国の各商
品取引所の商品取引員の資格を有する者である。
  (2)原告の取引
    原告は,被告の従業員であるAから,商品先物取引の勧誘を受け,平成1
1年7月8日,被告との間で商品先物取引委託契約を締結し,その後,別紙1ない
し3「建玉分析表」(全商品の取引について別紙1,金の取引について別紙2,白
金の取引について別紙3)記載のとおり原告名義で東京工業品取引所における金,
白金,ゴムの取引(以下「本件取引」という。)が行われた。
    その間,原告は被告に対し,別紙4「原告の入出金一覧表」記載のとお
り,委託証拠金等として合計1367万1393円を預託したが,うち1087万
8543円が別紙1「建玉分析表」記載の売買損金,委託手数料,消費税に充当さ
れ,損失となった。
 2 争点
  (1)被告従業員の勧誘行為及びその後の受託業務の違法性
   ア 断定的判断の提供
    (原告の主張)
     商品取引所法136条の18第1号は,商品市場における取引につき,
顧客に対し,利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的な判断を提供
してその勧誘をすることを禁止している。
     被告の従業員であるAは,原告に対して,当初の金の先物取引の勧誘に
おいて「金の値段が上昇します。下がることは考えられません。」等と言い,さら
に,同じく被告の従業員であるBも「金が今良いと思います。商社が買いに入っ
て,どんどん上がっているようなので,まだ枠があるかどうか分かりませんが,枠
が取れたらやってみませんか。」等と言って,原告を勧誘した。これは,断定的判
断を提供して原告を金の先物取引に勧誘したもので,上記法規に違反する行為であ
る。
    (被告の主張)
     争う。
     原告はAらから「商品先物取引委託のガイド」と題するパンフレット等
の交付と説明を受けて,商品先物取引の危険性,損益発生の仕組み,相場予測が外
れて損計算となった場合に必要となる追証拠金の計算方法,利益又は元本保証のな
い取引であること等を理解し,本件取引が投機的取引であることを十分承知してお
り,Aらが原告に対し,商品先物取引の投機的本質を誤認させるような勧誘を行っ
た事実はない。
   イ 説明義務違反
    (原告の主張)
     (ア)商品先物取引は投機行為そのものであり,その仕組みは複雑で危険
性は大きく,一般大衆委託者はこれに対する知識も経験も有しない。したがって,
商品取引員は,勧誘に際して,商品先物取引の仕組みや危険性等の重要事項を顧客
に対して十分に説明すべき義務がある。
       日本商品先物取引協会が定める受託等業務に関する規則5条(4)も,
「顧客に対し,取引の仕組み,その投機的本質及び損失が発生する可能性等,前条
第1項第2号及び第2項に規定する内容について,事前交付書面に基づいて説明を
しないで勧誘し,受託し,又は委託の取次ぎを引き受けること」を禁止している。
     (イ)本件では,A及びBは,当初の勧誘において,原告に対し金が値上
がりして利益が得られることのみ強調し,商品先物取引の仕組みや危険性等につい
て一切説明しておらず,また「商品先物取引委託のガイド」も「後で読んでおいて
ください。」と言って交付したにすぎず,上記説明義務を怠ったものである。
    (被告の主張)
     Aは原告に対し,金の先物取引を始めるに当たって,日本経済新聞の記
事,金相場のチャート,「商品先物取引委託のガイド」等の資料を原告に示しなが
ら,①新聞に出ている金相場の値段(呼値)が10円動くと売買単位1枚では10
円×1000=1万円の値上がり,値下がりになり,委託手数料(往復9000円
と消費税)を差し引き(又は加算)した金額が確定損益になること,②その取引を
するには1枚6万円の委託本証拠金(担保)が必要であり,値上がり予想で買った
ところ逆に値下がりし,1グラム当たり31円以上値下がりして損勘定が本証拠金
の半額(3万円)を超えると追加の証拠金を入れる必要があること,③そのような
場合の対処方法等を分かりやすく説明しており,重要事項の説明義務を怠った違法
はない。
   ウ 虚偽の説明
    (原告の主張)
     (ア)前記受託等業務に関する規則5条(3)は,「商品市場における取引の
委託につき,顧客に対し,事実に反する事項を告げ又は威迫する言動を交えて勧誘
すること」を禁止している。
     (イ)Bは,当初の勧誘において原告に,委託証拠金は3週間後には返還
すると告げて返還を約束し,委託証拠金として120万円を入金して取引を開始さ
せ,平成11年7月14日に追証拠金が必要となった時点でも,同年7月末か8月
上旬には返還できる旨告げて返還を約束し,委託証拠金として240万円を入金さ
せた。
       また,被告の従業員であるCも原告に,同年7月26日に追証拠金
が必要になったとして,同年8月上旬か同月16日までには返還する旨告げて返還
を約束し,委託証拠金として420万円を入金させた。
       しかし,委託証拠金は,差損金や手数料,各種税金等に充当され,
相場の変動によっては返還されない可能性の高いものである。にもかかわらず,委
託証拠金の返還を約して入金させることは,事実に反する事項を告げた受託行為で
あるといわざるを得ない。
     (ウ)よって,B及びCの上記受託行為は,上記受託等業務に関する規則
に反する違法なものである。
    (被告の主張)
     (ア)Bが当初の勧誘において,委託証拠金は3週間後には返還すると告
げた事実はない。
       最初の勧誘はBではなくAが行っており,最初の取引(平成11年
7月8日に委託証拠金120万円を預かり,翌9日金20枚を買建した取引)は,
Aが原告から受注している。
       Aは原告から,金の買建をするについて「どのくらいで結果が出る
だろうか。」と聞かれ,「相場の動きにもよるが,2,3週間のうちには結果が出
ると思う。」と答えただけで,「3週間後には証拠金を返還する。」と言って勧誘
したことはない。
     (イ)平成11年7月14日に追証拠金が必要となり,Bが原告方を訪問
した際,Bは,金の売玉40枚を建てるにつき,「金の相場が値下がりし,予想ど
おり今月末か来月上旬に底を打つようであれば,その時点で売玉を決済し,買玉2
0枚だけにして値上がりを待ちましょう。その場合には,証拠金240万円はお返
しできます。」という話をしたのであって,虚偽の説明をした事実はない。
     (ウ)平成11年7月26日に追証拠金が必要となった際,Cは原告に電
話で金の市況を説明し,金70枚を売建する注文を受けるにつき,「8月上旬か中
旬ころには底を打って売玉を仕切ることができるのではないか。」と言ったのであ
って,虚偽の説明をした事実はない。
   エ 委託者の指示違反
    (原告の主張)
     (ア)商品取引所法136条の18第5号は,商品市場における取引又は
その受託等に関する行為であって,委託者の保護に欠け,又は取引の公正を害する
ものを省令に委任して禁止している。これを受けて商品取引所法施行規則46条は
禁止行為を列挙しているが,その1号で「委託証拠金の返還,委託者の指示の遵守
その他委託者に対する債務の全部又は一部の履行を拒否し,又は不当に遅延させる
こと」を禁止している。
     (イ)原告は,Cから「臨時増証拠金(相場変動が著しいとき,あるいは
何らかの要因によって激しい値動きが予想されるときに,取引所の判断によって臨
時に徴収される証拠金)は本証ではないので,解除になれば返還する。」と約束さ
れて,平成11年10月26日金の臨時増証拠金として451万4580円を被告
に預託した。
       しかるに,Cは同年11月1日に臨時増が解除されたにもかかわら
ず,原告に上記金員を返還せず,連絡もしなかった。
       さらに,Bは,同月8日,原告に対して臨時増が解除されたことを
告げずにゴムの取引を勧誘し,解除された臨時増証拠金を上記ゴムの委託証拠金に
充当した。
       これらは,当初の原告との約束に反するものであり,委託者の指示
に従わなかった行為であるといわざるを得ず,前記商品取引所法施行規則で禁止さ
れている,委託者に対する債務の履行拒否に該当するもので,違法である。
    (被告の主張)
     (ア)平成11年10月20日現在,原告の建玉は金の売り47枚,買い
46枚,白金の売り50枚,買い49枚であった。この時点の金の証拠金は本証拠
金が1枚4万5000円,臨時増証拠金が1枚4万5000円,白金の証拠金は本
証拠金が1枚3万7500円で,原告の建玉に対する必要証拠金は1208万25
00円であった。
       Bは原告に対し,預かっていた証拠金819万円との差額389万
2500円に帳尻差損金62万2080円を加えた451万4580円を入金する
よう請求した。 
     (イ)平成11年10月26日午後2時30分ころ,BとCは原告方を訪
問し,451万4580円を預かった。
       Cは,臨時増がいつごろ解除されるかという原告の質問に対して,
「2週間くらいで解除されると思います。」と答えた。臨時増は同月29日をもっ
て解除されたので,Bは同年11月1日午後,原告にそのことを連絡した。
     (ウ)平成11年10月下旬から11月にかけて,Bは原告にゴムの買建
(証拠金は1枚4万5000円)を勧めていた。
       同年11月8日午後1時30分ころ,Bは原告に電話し,臨時増が
解除されて証拠金に余裕が出ているので,その分でゴムを買うことを勧め,原告か
らゴム52枚の買注文を受けた。
       同日,Bは原告を訪問し,残高照合通知書を見てもらいながら,ゴ
ム・金・白金の建玉の値洗い状況,預かり証拠金・必要証拠金の額,返還可能額に
ついて説明し,相違ない旨の確認をもらっている。
     (エ)したがって,被告従業員が原告の指示に従わなかった事実はない。
   オ 新規委託者保護義務違反
    (原告の主張)
     (ア)新規委託者保護義務については,昭和53年3月29日に定められ
た新規委託者保護管理協定等によって,新規委託者について一定の保護育成期間及
び受託枚数の管理基準を設けることとされ,これは3か月以内20枚とされて,建
玉制限が取られてきた。
       平成10年の法改正に伴い,受託業務の適正確保と委託者保護は第
一次的に日本商品先物取引協会が行うことになったが,その際改正された同協会が
定める受託等業務に関する規則3条において,「会員は,商品市場における取引に
ついて,顧客の知識,経験及び財産の状況に照らして不適当と認められる受託等業
務を行ってはならない。」と定められ(1項),さらに「会員は,取引開始後にお
いても,顧客の知識,経験及び財産の状況に照らして不相応と認められる過度な取
引が行われることのないよう,適切な委託者管理を行うものとする。」とされ(3
項),さらに8条で「会員は,受託等業務の適正な運営及び管理に必要な事項につ
いて,本会が別に定めるガイドラインを踏まえ,社内規則として受託業務管理規則
を制定し,これを役職員に遵守させなければならない。」とされ,上記改正に併せ
て制定された「受託業務管理規則の制定に係るガイドライン」の「5 未経験者等
の取引に係る管理措置」では「(2)委託者の取引意思,取引の経験,資金力,判断
力等適格性の審査結果に応じて受託取引数量を制限する等特段の管理措置を講ずる
こと。」とされている。
       したがって,被告には,委託者の知識,経験,財産状況に照らし
て,過度な取引にならないよう努めるべき義務がある。
     (イ)原告は,被告と商品先物取引委託契約を締結した直後の平成11年
7月9日に金の買玉を20枚建て,同月15日には金の売玉40枚を建て,同月2
3日には同売玉40枚を仕切って金の買玉46枚を建てて建玉総数66枚となり,
さらに同月26日には金の売玉70枚を建てて総数で136枚となり,取引開始後
3か月目の同年10月1日の時点では売玉97枚,買玉95枚となり,その後は2
00枚を超える建玉を行っている。
       原告は,かなり以前に証券会社で株式を取引したことはあるもの
の,被告から勧誘されて取引を始めるまで商品先物取引の経験はなかった。また,
原告は当初自己資金を委託証拠金に充てていたものの,すぐに資金が不足して他か
らの借入金をこれに充当せざるを得なくなった。
       そうすると,このような原告の知識,経験及び資力の程度に照らせ
ば,上記取引は不相応な取引といわざるを得ず,その結果,原告は多額の損失を被
っているが,3か月以内20枚という制限枚数が遵守されていれば,原告がこのよ
うに多額の損失を被ることはなかったことは明らかであり,B,Cらの行為が前記
新規委託者保護義務に違反することは明白である。
    (被告の主張)
     被告では社内規則として「受託業務管理規則」(乙12)を定め,新規
委託者の保護育成を図るため,契約に際しては,勧誘の説明及び交付書面の内容を
理解し,自主的に取引を行うことを確認する目的で,本人から「商品先物取引口座
設定の申込書」(乙6)の差入れを求め,商品先物取引等の経験のない委託者につ
いては,3か月の習熟期間を設け,各委託者の資質・資金力等を考慮の上,相応の
建玉枚数の範囲において行う旨を定めるとともに,新規委託者から受注する建玉枚
数については,従来どおり外務員の判断枠を20枚までとし,20枚を超える建玉
を受注する場合には,管理責任者の審査判断により許可を得て行うこととしてい
る。その趣旨は,新規委託者の商品取引に関する知識,理解度,資力,取引に対す
る積極性等の諸事情を考慮して相応の運用をするところにある。
     したがって,当該新規委託者の商品先物取引の仕組み等に関する知識,
理解度,資力,取引に対する積極性等の諸事情を考慮して社内の管理責任者が20
枚を超える建玉の受託をするにつき妥当と判断した場合には,上記期間内であって
も20枚という外務員の判断枠に拘束されるものではない。
     原告は,平成11年7月9日に金20枚の買建玉をして取引を始め,3
か月以内の最高建玉数が206枚を超えていることは事実であるが,被告の従業員
らは,その都度原告の注文内容,資金状況を確認して受注しており,新規委託者に
対する保護義務違反はない。
   カ 無意味な反復売買
    (原告の主張)
     (ア)不適正な取引行為の規制
       無意味な反復売買とは,一般に「短日時の間における頻繁な建て落
ちの受託を行い,または既存玉を手仕舞うと同時に,あるいは明らかに手数料稼ぎ
を目的とすると思われる新規建玉の受託を行うこと」であるとされ(商品取引員の
受託業務に関する取引所指示事項(平成元年11月27日廃止前のもの),甲5
4),その後改正された「商品取引員の受託業務に関する取引所指示事項」(甲5
5)も「委託者の十分な理解を得ないで,短期間に頻繁な売買取引を勧めること」
を「不適正な売買取引行為」として掲げ,委託者の十分な理解が得られないまま過
度の取引を勧めることを禁止している。
       さらに,社団法人全国商品取引所連合会の受託業務指導基準(甲5
6)では,売買に当たっての禁止事項の一つとしての不適正な取引行為につき,
「委託者の十分な理解が得られないまま過度の取引を勧めることを禁止する主旨で
あり,委託者の取引経験,値動き,平均建玉日数等を参酌して判断する必要がある
が,事例としては既存建玉を仕切ると同時に売直し,又は買直しを行うこと,同一
計算区域内の建ち落ちを繰り返して行うこと等があげられる。また,委託者の意思
に反しての同時両建又は引かれ玉を手仕舞しないままでの両建等を勧めることを禁
じている。」という説明がなされている。
     (イ)特定売買の危険性
       原告の本件取引において多数見られる「直し」「途転」「両建」
「不抜け」といった手法は,いわゆる特定売買と呼ばれるものであるが,前記受託
業務指導基準等でこれらが禁止されているのは,これらの手法がいたずらに取引回
数を増やして受託業者への手数料を増大させるだけで,委託者にとっては有害無益
な過度の取引となる危険性を有することによる。
       特に両建については,商品取引員が両建を勧誘すること自体に委託
者を手玉に取ろうとする意図がうかがえるのであり,かかる危険性にかんがみて,
平成10年の法改正に伴い,「商品市場における取引の委託につき,顧客に対し,
特定の上場商品構成物品等の売付け及び買付けその他これに準ずる取引とこれらの
取引と対当する取引の数量及び期限を同一にすることを勧めること」が禁止行為と
されるに至ったものである(商品取引所法136条の18第5号,同法施行規則4
6条11号)。
     (ウ)特定売買の監督,規制
       農林水産省は,平成元年4月1日から「受託者売買状況チェックシ
ステム」を,通商産業省は「売買状況に関するミニマムモニタリング」(MMT)
をそれぞれ導入し,前記各手法を「特定売買」として,監督官庁に対し売買取引状
況及び特定売買比率等を報告すべきものとした。
       上記チェックシステム等は,取引内容の分析・精査及び報告を商品
取引員に対して義務付けるものであり,直し,途転,両建,不抜け,日計り(新規
に建玉し,同一日内で仕切る手法)を「特定売買」として取り上げて,監督官庁
が,①これら特定売買の比率を全体の20パーセント以下にする②手数料化率を1
0パーセント程度とする③売買回転を月間3回以内にとどめる,という方向で指導
していくものとされている。
       このようなチェックシステム等が採用されたのは,特定売買に該当
する各取引手法が,その性質上定型的に受託者事故をじゃっ起しやすい危険かつ不
合理な取引手法であり,また実際上も商品取引員が顧客を食いものにする手数料稼
ぎの客殺し商法の主要な手段として用いられていることが多く,委託者保護の見地
から望ましくないものであることにかんがみて,これを規制し監督する趣旨であ
る。
     (エ)本件取引における特定売買
      a 原告の金の取引について見ると,平成11年7月9日から平成1
2年6月27日までの取引期間中,新規の建玉は8回,そのうち直しは3回,途転
は2回,両建は7回で,仕切のうち不抜けが1回あり,これら特定売買の比率は4
2パーセントを上回る。
        また,金の取引における損金473万6550円のうち,手数料
額は233万1000円で,手数料化率は49.21パーセントと非常に高い率と
なっている。
        さらに,平成11年7月9日に建てた買玉20枚については,以
後買建時の値段を上回ることがないため,同年12月27日に1枚仕切ったもの
の,残り19枚は平成12年3月24日まで持ち続けている。これは,引かれ玉又
は因果玉と呼ばれるもので,これを手仕舞しないままの両建は無意味な取引の典型
例とされる。
        平成11年8月19日に建てた売玉についても,値段が最も安い
時点で建てており,以後その値段を下回ることがないため有利に仕切ることができ
ず,最後まで持ち続けて,結局多額の損失を出している。
        そして,取引期間中常時両建に組み,一度仕切って利益が出た場
合には,その利益を証拠金に振り替えた上で枚数を増やして更に建玉し,その増加
した建玉で更に両建を組むという手法が取られ,そのために取引枚数が次第に増加
している。その結果,前記のように多額の手数料が発生しているものである。
        以上によれば,上記金の取引が,原告の利益を顧慮せず被告の利
益のみを考慮してなされたものであることは明らかである。
      b 原告の白金の取引について見ると,平成11年8月5日から平成
12年6月27日までの取引期間中,新規の建玉は16回,そのうち直しは6回,
途転は4回,両建は10回で,仕切のうち不抜けが3回あり,これら特定売買の比
率は59パーセントを上回る。
        また,白金の取引における損金328万6545円のうち,手数
料額は186万2900円で,手数料化率は56.6パーセントと非常に高い率と
なっている。
        そして,白金の取引においても,取引期間中常時両建に組み,一
度仕切って利益が出た場合には,その利益を証拠金に振り替えた上で枚数を増やし
て更に建玉し,その増加した建玉で更に両建を組むという手法が取られ,そのため
に取引枚数が次第に増加し,多額の手数料が発生する結果となっている。
        したがって,上記白金の取引においても,手数料稼ぎが行われた
ことは明らかである。
     (オ)まとめ
       特定売買は,そもそも商品先物取引の危険性について十分理解して
いる委託者であれば通常自主的・主体的に指示して行うはずがないものであり,取
引の半数近くが特定売買に該当する本件取引は,全体として委託者たる原告の利益
を顧慮せず,被告の利益を図る方向で被告により誘導されてなされたものであった
ことを強く推認させる。
       特に,両建は,あくまで例外的,緊急避難的なものであり,両建を
してなお利益を得るには,相場の変動を見極め,一方の建玉を外す時期を誤らない
ようにする等,相当高度な商品先物取引に対する知識や技量,相場観が要求される
ほか,両建によって帳尻上は利益が生じているかのように委託者が錯覚,混乱する
こともあることを考慮すると,両建が,本件のように極めて高い割合で行われ,か
つ本件取引により生じた損金に占める手数料の割合が大きいことは,特別の事情又
は合理的な理由がない限り,本件取引が被告の誘導によりなされた無意味な反復売
買であることを推認させるというべきである。
       したがって,本件取引には強度の違法性がある。
    (被告の主張)
     (ア)特定売買について
       特定売買は,委託者が損をする危険性の高い不合理な売買仕法で
も,通常の取引においてまれにしか行われない,あるいは行うべきでない特殊な売
買仕法でもなく,いずれも商品先物取引においては日常的に行われている相場仕法
である。
       特に両建についていえば,商品取引所法136条の18第5号,同
法施行規則46条11号による禁止は認めるが,本件取引ではこれに該当する両建
はない。
       両建は,取引を行う者が,損計算となった建玉を仕切って現実に差
損金と委託手数料の額を確定させその時点において債務を支払う義務を負担するの
を避け,飽くまでその時点における計算上の差損金額を固定させながら(したがっ
て現実には確定的債務を負担しないで),その後の相場の変動状況に沿って,相場
動向を見ながらなるべくよい条件で仕切ろうとする際に用いられる普通の売買戦法
の一つである。両建を不当な相場仕法というのであれば,既に建てていた買建玉が
値下がりにより損計算となった状況において売建玉をするには,まず買建玉を仕切
ってから売建玉をしなければならず,いわゆる途転しか許されないという不合理な
ことになってしまう。
     (イ)監督官庁の対応
       農林水産省が定めたチェックシステム及び通商産業省が定めたミニ
マムモニタリング(平成11年4月に廃止)は,いずれも「特定売買」を定めてい
るが,特定売買を不合理なものとは一言も言っていない。むしろ,農林水産省の担
当官は,チェックシステムは個々の特定売買そのものの是非を論ずるものではな
い,とわざわざ断っているのである。
       また,農林水産省や通商産業省は,特定売買比率,売買回転率,手
数料化率を一定の割合以下になるような指導をしたことは全くない。
     (ウ)手数料化率について
       原告は,利益となった取引の手数料額と損失となった取引の手数料
額とを合算して,総損失(実損)額に対する総手数料額の割合(すなわち原告の主
張する手数料化率)を算出し,この割合が高いことを問題とする。
       しかし,前記ミニマムモニタリングで問題とされていた「手数料化
率」とは,一定期間内の総委託者の総預かり委託証拠金額に対する総手数料額の割
合という意味で,原告が言うような「全損金に対する全手数料の割合」という意味
ではない。
       また,相場変動や委託者の仕切の仕方に左右される偶然的な損益額
と,確定額である手数料を対比して手数料化率を算出しても,そこに算出される数
字は全く偶然的な数字であるし,売買差金の損失額が小さければ高くなり,損失額
が大きくなれば低くなるものである。
       したがって,手数料化率は何の意味もない数値であって,この数値
から手数料稼ぎの存否を判断することはできない。
  (2)損害,過失相殺
   (原告の主張)
    ア 損害
     (ア)返還を受けられなかった委託証拠金の合計 1087万8543円
     (イ)弁護士費用 100万円
    イ 過失相殺
      本件における被告の受託行為の悪質さにかんがみると,原告の過失を
過大に評価して過失相殺の対象とすることは許されない。
   (被告の主張)
    ア 原告主張の損害は争う。
    イ 過失相殺
      仮に被告の勧誘行為等に何らかの点で違法性があるとしても,原告は
商品取引の危険性を十分承知しながら自ら積極的に取引に及んだものであるから,
大幅な過失相殺がなされるべきである。
第3 争点に対する判断
 1 前提事実
   証拠(甲1ないし53,62,63,70ないし74,乙1ないし13,2
1ないし23,証人A,同B,同C,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の
事実が認められる。
  (1)取引開始に至る経緯
   ア 原告は,高等学校を卒業後,旧国鉄に就職して客室列車の検査,修繕等
の業務に従事し,昭和62年に旧国鉄を退職した後は,ビル管理会社に勤務し,本
件取引当時は年金とビル管理会社からの給料とで生活していた。
     原告は,従前,国債の購入や株式の現物取引の経験はあったが,商品先
物取引の経験は全くなかった。
   イ 平成11年7月7日,被告の従業員であるAは原告に電話し,金の先物
取引を勧誘した上,同月8日,金の先物取引についての資料を持参して原告宅を訪
れた。
     Aは,経済新聞の記事や過去の金相場の値動きについてのグラフを示し
て,金相場の変動状況,新聞の商品相場欄の見方,金の売買単位や売買による差損
益の計算方法,委託証拠金の額等について説明し,金の値段が下がっているので今
後値上がりが予想されると述べて,金の先物取引を勧めた。しかし,原告は,その
場では取引の委託を決意せず,Aは原告宅を退去した。
   ウ 原告は,その後同日中にAに電話して,120万円の委託証拠金で金の
先物取引を開始したい旨述べた。そのため,Aは商品先物取引委託についての資料
を持参して再び原告宅を訪れた。
     Aは,「商品先物取引委託のガイド」と題するパンフレット(乙3の
1)と受託契約準則(乙2)を原告に交付し,上記委託のガイドの記載に沿って,
先物取引の仕組み,相場の変動によっては多額の損失が生じるといった取引の危険
性,委託証拠金の内容や金額,追証拠金,及び両建,難平といった手法の内容等に
ついて説明した。
     原告は,先物取引の危険性を了知した上で自己の判断と責任において取
引を行うことを承諾した旨記載された「約諾書」(乙1),受託契約準則,危険開
示告知書及び商品先物取引委託のガイドを契約前に受領した旨記載された「受領確
認証」(乙4),商品先物取引の仕組み,リスク,取引は自己の判断と責任で行う
ことを理解した旨記載した「受領書」(乙5),商品先物取引の損失発生のリスク
を承知し,その仕組みについて理解している旨記載された「商品先物取引口座開設
の申込書」(乙6)に署名押印した上で,Aに交付し,さらに金20枚分の取引に
必要な委託証拠金として120万円を手渡した。Aは,金の値上がりを予想してい
たので原告に買建玉を勧め,原告は,翌9日に金20枚の買建玉を行うことを委託
して,本件取引を開始した。
  (2)平成11年7月の取引状況
   ア 取引開始後,金の値段が下落したため,平成11年7月14日,被告広
島支店の支店長であったBは,原告に電話し,上記下落の状況や,今後追証拠金が
必要となる可能性があることを説明し,さらに同日被告の従業員であるDとBが原
告宅を訪問した。Bらは,残高照合通知書(乙11の1)を示して,原告に対し取
引状況を説明した。原告は,Aの予想とは逆に金の値段が下がっていることについ
て苦情を言ったが,値洗い損が生じたことについての対策をBらと相談した結果,
委託証拠金240万円を新たに用意して翌日金40枚の売建玉を行うことを委託
し,一部両建とすることにした。
     原告は,上記委託証拠金として,同月19日に60万円,同月21日に
180万円を被告に預託した。
   イ 金の値段はその後も下落した。平成11年7月23日,Bは原告に電話
して上記下落状況を伝え,同月15日に建てた売玉40枚を仕切って利益を確定さ
せ,その利益金を委託証拠金として買建玉を行うことを勧めた。原告はこの勧めに
従い,売建玉40枚を仕切って38万2000円の利益を得,そのうち36万円を
委託証拠金に振り替えて金46枚の買建玉を委託した。
   ウ しかし,その後も金の値段が引き続き下落したことから,値洗い損が増
大した。平成11年7月26日,Bは原告に電話して,上記下落状況を伝え,もう
一段の値下がりがあると追証拠金が必要になる旨説明した。
     原告は,Bの相場予想が外れたことを非難し,追証拠金を差し入れるこ
とも損切りの形で取引を終了させることも拒んだ。そこで,被告広島支社長であっ
たCがBに代わって電話で応対し,追証拠金の入金も損切りもしないのであれば,
同月15日に行ったのと同様に両建で対処することを勧めた。原告はこの勧めに従
い,委託証拠金420万円を用意して,70枚の売建玉を委託することとした。
     原告は,上記委託証拠金として,同月28日に300万円,同月29日
に120万円を被告に預託した。
  (3)平成11年8月5日から同年11月4日までの取引
   ア 平成11年8月5日,Bは原告に対し,金の値段がさらに下落している
ことを伝えて,同年7月26日に建てた売玉を一部仕切ることを勧め,原告はこれ
に従い上記売玉のうち20枚を仕切って22万円の利益を得た。
     また,Bは,今後値下がりが予想されるとして白金の取引を勧めた。原
告はこれに従い,同日,上記利益金のうち1万5000円を委託証拠金に振り替え
て,白金27枚の売建玉を委託した。
   イ 平成11年8月17日,原告は,同年7月23日に建てた金の買玉のう
ち20枚を仕切って24万円の損失を確定させ,同月26日に建てた金の売玉のう
ち20枚を仕切って2万円の損失を確定させた。
     また,原告は,白金40枚の買建玉を委託した。
   ウ 平成11年8月19日,原告は,同年7月26日に建てた金の売玉中残
りの30枚を仕切って81万円の利益を得,同年8月5日に建てた白金の売玉27
枚を仕切って28万3500円の利益を得,これら利益金のうち1万5000円を
委託証拠金に振り替えた上で,再び金38枚の売建玉及び白金30枚の売建玉を委
託した。
   エ 平成11年9月1日,原告は,金23枚の売建玉を委託し,白金20枚
の売建玉を委託した。
   オ 平成11年9月20日,原告は,同月1日に建てた金の売玉のうち8枚
を仕切って12万円の利益を得,白金9枚の買建玉を委託した。
   カ 平成11年10月1日,原告は,同年9月1日に建てた金の売玉のうち
6枚を仕切って61万2000円の損失を確定させた。
   キ 平成11年9月29日及び30日には,金の値段が高騰したことによ
り,東京工業品取引所の金の取引において,受託会員である被告が委託者である原
告から委託臨時増証拠金(金1枚当たり4万5000円)を受ける必要が生じてい
た。そこで,同年10月13日,Cは原告に対し,上記委託臨時増証拠金の入金が
必要であることを説明し,同年10月26日,原告は,上記委託臨時増証拠金によ
り必要となった委託証拠金として451万4580円を被告に預託した。この委託
臨時増証拠金は,同年11月1日に臨時増が解除されて預託不要となった。
   ク 平成11年10月28日,原告は,同年7月23日に建てた金の買玉の
うち13枚を仕切って61万1000円の利益を得,同年8月19日に建てた金の
売玉のうち10枚を仕切って85万円の損失を確定させた。
     また,原告は,白金30枚の売建玉を委託した。
   ケ 平成11年10月29日,原告は,同年8月17日に建てた白金の買玉
のうち11枚を仕切って37万9500円の利益を得,同年9月1日に建てた白金
の売玉のうち7枚を仕切って39万5500円の損失を確定させ,再び白金20枚
の買建玉を委託した。
   コ 平成11年11月1日,原告は,同年7月23日に建てた金の買玉の残
り13枚を仕切って29万9000円の利益を得,同年9月20日に建てた白金の
買玉9枚を仕切って24万4000円の利益を得,再び金15枚の買建玉及び白金
15枚の買建玉を委託した。
   サ 平成11年11月4日,原告は,同年8月17日に建てた白金の買玉の
うち19枚を仕切って60万8000円の利益を得,同月19日に建てた白金の売
玉のうち8枚を仕切って32万4000円の損失を確定させ,再び白金30枚の買
建玉を委託した。
   シ この間の上記取引はいずれも,原告が,Bら被告従業員による勧めに従
って行ったものであった。
     また,被告従業員らは,1か月に一度,残高照合通知書(乙11の2な
いし4)を原告のもとに持参して,取引の内容及び損失発生の状況について説明
し,原告は,同通知書中「残高照合の回答書」欄に,取引内容について同通知書の
とおり相違ない旨の記載に丸印を付けて署名した。
  (4)平成11年11月8日から同月19日までの取引
   ア 平成11年11月8日,Bは原告に電話し,ゴムの市況を説明した上
で,値上がりが予想されると述べてゴムの取引を勧め,委託証拠金としては,同月
1日に臨時増が解除されて預託不要となっていた金の臨時増証拠金を用いることと
して計算した上,取引枚数を提案した。原告はこの勧めに従ってゴム52枚の買建
玉を委託した。
     同日夕方,Bは原告宅近くの路上で原告と会い,ゴムの売買単位や委託
証拠金の額について説明し,原告は,同日行ったゴムの買建玉についても記載され
た残高照合通知書(乙11の5)中「残高照合の回答書」欄に,取引内容について
同通知書のとおり相違ない旨の記載に丸印を付けて署名した。
   イ 平成11年11月10日,原告は,同年8月17日に建てた白金の買玉
の残り10枚を仕切って33万5000円の利益を得,新たに白金17枚の売建玉
を委託した。
     同年11月15日,原告は,同月1日に建てた白金の買玉15枚を仕切
って21万円の利益を得,再び白金15枚の買建玉を委託した。また,原告は,同
月8日に建てたゴムの買玉52枚のうち15枚を仕切って5万2500円の損失を
確定させた。
     同月19日,原告は,同年9月1日に建てた白金の売玉のうち3枚を仕
切って21万円の損失を確定させ,新たに白金5枚の買建玉を委託した。
     これらの取引も,原告が,Bら被告従業員による勧めに従って行ったも
のであった。
  (5)平成11年11月20日以降の取引
   ア 平成11年11月20日以降平成12年6月27日に取引をすべて終了
するまでの間,原告は,平成12年6月5日に白金10枚の買建玉及び白金7枚の
売建玉を委託したほかは,新たな建玉を委託せず,仕切注文のみを行った。
   イ 平成12年3月28日,CとBが原告宅を訪れ,同日時点の帳尻差損金
768万6393円の支払に既に預託している委託証拠金を充当すると,委託証拠
金残額は501万8187円となり,残りの建玉を維持するのに必要な証拠金が1
35万6813円不足することを原告に説明し,建玉を全部仕切るか否か相談し
た。原告は,残りの建玉は仕切らずに持ち続けることとし,翌日29日委託証拠金
の不足分135万6813円を被告に預託した。
   ウ 平成12年4月13日,原告は,被告に対して預託金の返還を求め,被
告から委託証拠金のうち79万円の返還を受けた。
   エ 平成12年6月27日,原告は,建玉全部を決済して取引を終了し,同
月29日に被告から200万2850円の返還を受けた。
     最終的な損金(売買損金,委託手数料,消費税の合計)は1087万8
543円で,うち売買差損金は計611万3500円,委託手数料は計453万8
140円であった。
 2 争点(1)(被告従業員の勧誘行為及びその後の受託業務の違法性)について
  (1)争点(1)ア(断定的判断の提供)について
    原告は,当初の取引勧誘時に,Aが原告に対して,金の値段は今後上がる
と思う,今ではあまり下がることは考えられないなどと説明し,Bが電話で,金の
値段は随分下がっている,商社が買いに入っているから,希望しても枠が取れない
かもしれないなどと説明したと供述する。
    しかし,Aは,後記(2)で述べるとおり,先物取引の仕組み,取引の危険性
等について説明し,過去の金相場の値動き状況等,自己の相場観の根拠となる情報
を提供した上で利益が見込まれるものとして取引を勧誘したものであって,たとえ
Aらが上記のような説明を行ったのが事実であるとしても,それが飽くまでも営業
上の勧誘文言としての外務員の予想,予測(いわば相場観)にすぎないものである
ことはその説明内容からして明らかであるから,そのような表現も営業上の勧誘文
言として社会的に許容されるもので,違法な断定的判断を提供したものとはいえな
い。その他,被告の従業員において断定的判断の提供を行ったと認めるに足る証拠
はない。
  (2)争点(1)イ(説明義務違反)について
   ア 商品先物取引は,少額の証拠金で多額の取引ができる極めて投機性の高
い行為であって,相場の変動によっては委託者が不測の損害を被る危険性が高いも
のである。商品取引員は,このような商品先物取引の受託業務を独占する立場にあ
って,商品先物取引の仕組みや相場の変動要因,取引にかかわるリスクについて専
門的な知識を有しており,そのような専門的知識を有しない一般の個人投資家とし
ては,商品先物取引の仕組みやリスク等に関して商品取引員の提供する情報を信頼
して取引に参入することとなるのが通常である。
     このような商品先物取引の特質にかんがみれば,商品取引員は,商品先
物取引の勧誘に当たり,委託者が上記危険性についての認識を誤り,いわば自己責
任の原則の基盤を失ったまま取引に参入することのないよう,委託者に対して,先
物取引の仕組みや危険性を十分に理解させるために必要な説明をすべき注意義務を
負うというべきである。
   イ そこで,本件につき検討するに,前記1(1)に認定したところによれば,
Aは,平成11年7月8日に原告宅を訪れた際,新聞記事や過去の金相場の値動き
のグラフ等により具体的根拠を示しながら自己の相場観を述べて,金の先物取引を
勧誘し,さらにその後,原告から電話で先物取引を委託したいとの連絡があったの
を受けて同日中に再び原告宅を訪れた際に,原告に対し,先物取引の仕組みや危険
性についての詳しい説明が記載された商品先物取引委託のガイド及び受託契約準則
を交付し,同委託のガイドに沿って先物取引の仕組み,取引の危険性等について原
告に説明した,原告は,同委託のガイド,受託契約準則及び危険開示告知書を受領
し,商品先物取引の仕組み,リスク,取引は自己の判断と責任で行うことを理解し
た旨記載した「受領書」,先物取引の危険性を了知した上で自己の判断と責任にお
いて取引を行うことを承諾した旨記載した「約諾書」,及び商品先物取引の損失発
生のリスクを承知し,その仕組みについて理解している旨記載した「商品先物取引
口座開設の申込書」にそれぞれ署名押印した,原告は,旧国鉄に長年勤務した後に
退職して当時ビル管理会社に勤務しており,商品先物取引の経験はなかったが株式
の現物取引の経験があり,一般的な社会人として特に経済的知識や判断能力の点で
劣る事情は見受けられないといった事情が認められ,さらに,証拠(甲53,原告
本人)によれば,原告は取引開始時から建玉数,単価及び値動きを詳細にノートに
記載し,個々の取引に際してBらに質問したり説明を求めたりして,取引内容の把
握に努めていることが認められる。
     そうしてみると,原告は,Aから,先物取引の仕組み,取引の危険性等
についての十分な説明を受けてこれを認識し,その上で被告に委託して取引を開
始,継続したものと考えられるのであるから,被告の説明義務違反を認めることは
できない。
  (3)争点(1)ウ(虚偽の説明)について
   ア 前記(2)アで述べた商品先物取引の特質にかんがみれば,商品取引員は,
委託証拠金の返還が全額保証される等といった,商品先物取引の投機性,危険性に
ついての認識を誤らせるような虚偽の情報を提供して委託者を勧誘してはならない
というべきである。
   イ 原告は,Bが当初の勧誘において委託証拠金を3週間後に返還すると約
束し,平成11年7月14日にも,同月末か同年8月上旬には委託証拠金を返還す
ると約束し,Cが同年7月26日,同年8月上旬か同月16日までには委託証拠金
を返還すると約束し,原告はこれらの言を信頼してそれぞれ120万円,240万
円及び420万円の委託証拠金を入金した旨供述し,甲53(原告の手帳)の中に
もこれに沿うかのような記載があるし,同号証中の同年9月6日付の残高照合回答
書(甲45と同じ)にも原告は同旨の記載をしている。
     しかし,証人B及び同Cは,自己の相場観を述べた上で,予想どおりに
相場が動けば委託証拠金が戻ってくる旨の説明はしたが,原告の主張するような委
託証拠金の返還約束はしていない旨供述している。
     さらに,前記(2)イのとおり,原告は先物取引の仕組み,取引の危険性等
についての説明を受けて,委託証拠金の返還が全額保証される取引でないことは当
然認識していたものである。しかも,原告は,最初の委託証拠金120万円を預託
した後,Bから値洗い損が発生し追証拠金が必要となる可能性があることについて
説明を受けており,それにもかかわらず,最初の委託証拠金の返還を受けることの
ないまま,新たに240万円の委託証拠金を追加して被告に預託している。さら
に,その後もBから値洗い損が拡大し追証拠金が必要となる可能性があることにつ
いて説明を受けたにもかかわらず,既に預託している委託証拠金の返還を受けるこ
とのないまま,新たに委託証拠金420万円を再び追加して被告に預託している。
このように,原告が追加の委託証拠金を預託した時点においては,委託証拠金が全
額返還されない可能性が高いことは当然に認識し得る状況下にあったものであるか
ら,それにもかかわらず,被告従業員によって委託証拠金の全額返還が約束されそ
れを信頼したという原告の供述内容は,極めて不自然であるといわざるを得ない。
     これらに照らすと,原告の供述及び原告が一方的に作成した甲53の記
載のみから,BやCが委託証拠金を無条件で原告に全額返還するとの約束をし,原
告がこれを信頼したとの事実を認定することはできず,他に同事実を認めるに足る
証拠はない。
   ウ したがって,B及びCが,原告が主張するような虚偽の説明を行ったと
認めることはできない。
  (4)争点(1)エ(委託者の指示違反)について
    原告は,Cから,臨時増が解除になれば返還すると約束されて,平成11
年10月26日に臨時増証拠金451万4580円を被告に預託したが,Cは同年
11月1日に臨時増が解除されたにもかかわらず上記金員を原告に返還せず,解除
について連絡もせず,同月8日,Bは,臨時増が解除されたことを原告に告げずに
ゴムの取引を勧誘し,解除された臨時増証拠金を上記ゴムの委託証拠金に充当した
と供述し,これは当初の原告との約束に反するものであり,委託者の指示に従わな
かった行為であって違法であると主張する。
    しかし,甲53の平成11年11月8日の欄には「トウ,ゴムが良いと思
う」との記載があり,同日Bが原告に示した残高照合通知書(乙11の5)には,
ゴム52枚の買建玉について記載され,原告は同通知書中の残高照合の回答書欄に
おいて「通知書の通り相違ありません。」との記載部分に丸印を付し,その下に
「相違なし」と記載した上で,同回答書に署名していることからすれば,原告は同
日ゴム52枚の買建玉を新規に行うこと自体について了承していたことが明らかで
ある。
    そして,ゴム52枚の新規建玉を行うためには234万円の委託証拠金が
新たに必要となるところ(乙11の5),同日の時点で原告の帳尻金額は77万5
840円の損失となっていたので(甲16,乙11の5),帳尻益金を振り替えて
委託証拠金に充てることはできないから,原告が委託証拠金を新たに調達して追加
預託することが必要になる。しかし,被告からそのような要請があり,あるいは原
告がそのようなことを申し出た事実はうかがわれないから,ゴムの委託証拠金の財
源となるのは解除された臨時増証拠金以外には考えられない。
    そうすると,証人Bが供述するとおり,原告は,解除された臨時増証拠金
を上記ゴムの買建玉のための委託証拠金に充当することを了承していたものと認め
られる。
    したがって,この点についての原告の主張は理由がない。
  (5)争点(1)オ(新規委託者保護義務違反)について
   ア 被告の社内規則である「受託業務管理規則」においては,委託者の保護
育成措置として,投資経験のない委託者については3か月の習熟期間を設け,各委
託者の資質・資金力等を考慮の上,相応の建玉枚数の範囲において受託する旨定め
るとともに,被告の内規において,新規委託者から受注する建玉枚数については,
外務員の判断枠を20枚までとし,20枚を超える建玉を受注する場合には,管理
責任者の審査判断により許可を得て行うことと定めている(乙12,弁論の全趣
旨)。この規定は,日本商品先物取引協会が定める受託等業務に関する規則3条,
8条等に見られる商品先物取引業界における新規委託者保護育成措置の一環であ
り,そのような措置が採られている趣旨は,前記(2)アで述べた商品先物取引の特質
にかんがみ,受託者において,新規委託者の資質,能力,知識及び経験に応じた適
切な情報等を提供した上,新規委託者がその余裕資金の範囲内において不測の損害
を被ることのない限度で取引しつつ,取引の危険性等を経験的に認識する機会を与
えて,取引に習熟させることにあると解される。
     新規委託者に対するこのような配慮は,商品先物取引の前記特質にかん
がみれば,受託業務の適正及び商品先物取引の健全な発展のために当然強く要請さ
れるものといえるから,商品取引員は,新規委託者から取引を受託するに当たって
は,新規委託者の資質,能力,知識及び経験等にかんがみて,無理のない金額の範
囲内で取引を勧め,限度を超えた取引により当該新規委託者が不測の損害を被るこ
とのないようにすべき注意義務があるというべきである。
   イ 本件では,原告は,Aの勧誘に従い,取引開始時である平成11年7月
9日から,外務員の判断枠の上限である20枚の金の買建玉を委託し,その後,同
月15日にBの勧誘に従って一部両建で金40枚の売建玉を追加し,同月24日に
Bの勧誘に従って上記金の売玉40枚を仕切り,これにより得た利益金の大部分を
新たに委託証拠金に振り替えて金46枚の買建玉を委託し,同月26日にはCの勧
誘に従って一部両建で金70枚の売建玉を委託しており,わずか1か月足らずで総
建玉枚数を136枚として,780万円もの委託証拠金を入金している。さらにそ
の上,同年8月5日には,金の売玉20枚を仕切って白金27枚の売建玉を委託し
て白金の取引も開始し,同月17日には白金40枚の買建玉を委託して白金につい
ても両建としている。以後,被告の社内規則である「受託業務管理規則」において
習熟期間とされる3か月間を取ってみても,原告は,約150枚から200枚ない
しそれ以上の建玉を常時両建の状態で行い,損失を拡大させているのである。20
0枚の建玉というと,取引約定金額にして2億円近くにも上るものであるから,両
建状態にあることを考慮しても,商品の値動き次第では不測の損害を被る危険性が
高いものといえるし,被告内部の取り決めにおいて外務員の判断枠の上限とされる
20枚をはるかに超える建玉枚数であって,一般に新規委託者を勧誘して行わせる
取引としては過大であり不適切なものといえる。しかも,原告は旧国鉄を退職し主
として年金収入で生活していた者であって,被告はこのことを了知していたし,B
が原告との取引開始時に適格審査を行うに当たって用いた「お客様カード」(乙1
3)によっても,原告の資産状況は,「不動産30坪,預貯金500万円」と記載
されているのであるから,原告が資金的に余裕のある取引委託者でないことは認識
し得たものである。したがって,このような新規委託者である原告に対して,上記
のような過大な取引を勧誘し,これを受託した行為は,前記の新規委託者保護義務
に違反しているものというべきである。
  (6)争点(1)カ(無意味な反復売買)について
   ア 「直し」「途転」「両建」「不抜け」といった手法(いわゆる特定売
買)は,相場の状況に応じて適切に行使されれば,利益を確定し,又は損失の拡大
を防ぐことができる場合もあるから,これらの手法を行ったからといって,直ちに
委託者の利益を犠牲にして手数料を稼ぐことを目的とした違法なものということは
できない。しかし,合理性の乏しい特定売買が数多く繰り返されている場合など,
特定売買の手法の用いられ方いかんによっては,受託者が委託の趣旨に反して,委
託者の利益を顧みず専ら手数料収入を得るために行ったものとして,勧誘及び受託
行為が違法と評価される場合もあり得る。
   イ 本件では,前記1の(2)ないし(4)記載のとおり,特定売買の手法による
取引が行われているが,その中で具体的に問題となり得るのは直し及び両建であ
る。そこでまず両建について見ると,金の取引においては8回の新規建玉のうち6
回ないし7回,白金の取引においては16回の新規建玉のうち10回が一部両建と
なる取引というのであり,第1回目の建玉は当然両建にはなり得ないことも考慮す
れば,全取引のうちに占める両建となる取引の割合は異常に多いといえるし,本件
取引のほぼ全期間にわたって両建状態が継続している。しかも,本件取引のかなり
初期の段階から,金についても白金についても,売玉も買玉も50枚前後の両建状
態が継続しているのであり,特に白金については,平成11年8月5日に27枚の
売玉を建てた後,同月17日に,値段は若干下がっているのに40枚の買玉を建て
て両建とし,同月19日には更に値段が下がったところで売玉30枚を建てて両建
枚数を増やしているのであるが,これなどはその必要性,合理性を理解し難い取引
といわざるを得ない。また,当初同年7月9日に建てられた金20枚の買玉,同年
8月19日の白金30枚の売玉,同日の金38枚の売玉等は,いわゆる因果玉とな
って長期間放置され多額の損害を出しているのであるが,これらを決済しないまま
次々と両建取引が続けられているのである。
     両建というのは,計算上は玉を仕切って0とするのと同じことになるの
で,手数料及び委託証拠金を多額に必要とする分委託者に不利益となるものである
から,特に利益を確定したり,緊急避難的に損失の拡大を防ぐため,例外的になさ
れる限りにおいては合理性があるとしても,本件におけるように多くの枚数で長期
間にわたって常時,因果玉を放置した状態で行われ,しかも上記のようにその必要
性,合理性を理解し難いものがあるというのでは,もはや許される限度を超えたも
のといわざるを得ない。
   ウ 加えて,本件では,金の取引においては8回の新規建玉のうち3回,白
金の取引においては16回の新規建玉のうち6回の直しが行われているが,直しは
計算上既存の建玉をそのまま維持するのと何ら変わりがないものであり,手数料が
発生する分委託者に不利益となるものであるから,特にその時点で利益又は損失を
顕在化させる必要性が認められるといった例外的な場合であれば合理性は認められ
るものの,本件では必ずしもそのような必要性があったとはうかがわれず,その合
理性,必要性には疑問がある。
   エ 以上のような,本件取引における特定売買,とりわけ両建の手法の用い
られ方からすれば,これらの取引の勧誘及び受託は,委託者の利益を顧みずに専ら
手数料収入を得るために行われたもので,違法というべきである。
  (7)まとめ
    以上によれば,被告従業員らが原告に本件取引を勧誘し受託した行為に
は,上記(5)(6)で判示したとおりの違法性が認められるところ,本件取引に関する
被告従業員らによる一連の勧誘,受託行為は,一連の本件取引を通じて経済的一体
性を有するものと評価できるから,全体として違法であり,原告に対する不法行為
を構成するものというべきである。被告は,その従業員らが自己の事業の執行につ
き行った上記不法行為について,民法715条に基づき,使用者責任を負う。
 3 争点(2)(損害,過失相殺)について
  (1)原告は,本件取引によって,最終的な損金(売買損金,委託手数料,消費
税の合計)として1087万8543円の損失を被ったところ,これは被告従業員
らの不法行為によって生じたものと認められる。
  (2)過失相殺
    前記2で認定したとおり,被告には新規委託者保護義務違反及び無意味な
過当取引を行わせた点において違法性が認められる。他方で,原告は,商品先物取
引の仕組みについて説明を受けその危険性を十分承知しながら取引を開始し,取引
開始直後に損失を出して危険性を体験した後も,損失が大きく広がらないよう取引
を抑制しないしは終了させる機会が十分に与えられていながら,損失拡大の危険性
を顧みず損失を取り戻すことに固執して積極的に取引を継続したもので,このこと
が損失の発生・拡大に大きく寄与したことを考慮すると,原告にも相当の落ち度が
あったと認めるのが相当である。そして,被告の違法の程度,違法な取引の回数・
頻度及び原告の落ち度が損失に寄与した割合等の諸事情を総合考慮すると,原告の
過失の割合は6割と認めるのが相当である。
    したがって,原告が請求し得る損害額は,上記損失額1087万8543
円の4割に当たる435万1417円となる。
  (3)弁護士費用
    本件の認容額及び事案の専門性,難易度等に照らすと,本件と相当因果関
係のある弁護士費用相当の損害額は,50万円とするのが相当である。
第4 結論
   以上によれば,原告の本訴請求は,485万1417円及びうち435万1
417円に対する不法行為後である本件取引の最終取引日の翌日である平成12年
6月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求
める限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求は理由がないから棄却する
こととし,主文のとおり判決する。
       広島地方裁判所民事第3部
         裁判長裁判官    山 垣 清 正
            裁判官    田 中 一 隆
            裁判官    武 林 仁 美
※ 別紙1~4の添付は省略した。

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