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裁判例


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平成23年(あ)第494号住居侵入,強盗殺人被告事件
平成24年12月17日第三小法廷決定
主文
本件上告を棄却する。
理由
検察官の上告趣意は,判例違反をいう点を含め,実質は量刑不当の主張であっ
て,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
なお,所論に鑑み記録を調査しても,刑訴法411条を適用すべきものとは認め
られない。
付言するに,本件は,大阪市a区内の紳士服店で男性店主を殺害し金品を強奪す
る強盗殺人事件(以下「前件」ともいう。)を犯した被告人が,更に現金を強奪し
ようと企て,その13日後の平成13年8月28日に同市b区内の薬局に侵入した
上,当時84歳の女性店主に暴行を加えたところ,激しく抵抗されたことから,こ
の際殺害して現金を強奪しようと決意し,首を強く絞め続けて窒息死させて殺害
し,金品を強奪した,という事案である。被告人は,前件及び詐欺等の罪により無
期懲役に処せられ,この裁判が平成17年1月14日に確定しているところ,その
無期懲役の執行中に,遺留品のDNA型鑑定等により,本件も被告人の犯行である
ことが発覚したものである。
本件において量刑上重視されるべき事情は,被告人が,僅か13日前に本件と同
様の強盗殺人事件を犯しながら,再び強盗殺人に及んでいる点である。前件等の確
定裁判の余罪である本件の量刑判断に当たっては,前件等を実質的に再度処罰する
趣旨で考慮することは許されないものの,なお犯行に至る重要な経緯等として考慮
することは当然に許されるのであって,本件は,上記のような犯行に至る経緯等に
加え,落ち度のない被害者が殺害された結果の重大性等に照らせば,犯情が甚だ悪
く,殺害された被害者が1名であっても,死刑の選択が検討されてしかるべき事案
である。
他方,原判決及びその是認する第1審判決の認定によれば,被害者の殺害につい
ては,被害者の抵抗を受けてとっさに殺害を決意して敢行されたものであって,当
初からの計画性が認められないこと,また,被告人は前件等につき無期懲役に処せ
られ,その服役を通じて更生の兆しが見られ,矯正可能性がないとはいえないこ
と,不十分な点があるとはいえ,自己の刑事責任と向き合い,反省しようという姿
勢がうかがえることなどの事情が認められる。死刑が窮極の刑罰であることなどに
も照らせば,これらの事情を考慮し,なお死刑を選択することにはちゅうちょを覚
えるとして無期懲役を選択した第1審判決を是認した原判決が,刑の量定において
甚だしく不当であり,破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められない。
よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,
主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官大谷剛彦裁判官田原睦夫裁判官岡部喜代子裁判官
寺田逸郎裁判官大橋正春)

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