弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人Bおよび被告人Aの弁護人別城遺一の各上告趣意は、末尾に添えた別紙記
載の通りである。
 (一) 被告人Bの論旨第一点は、本件で問題となつた窃盗の事実中十三件は自
己の犯行だがその他は然らずと主張するのであるが、結局事実認定の非難であつて、
上告の適法な理由にならないのみならず、なお原審の認定事実は原判決引用の証拠
によつて認められ得るところである。なお被告人は、警察署において暴力によつて
自白が強制された、と言つているが、原判決の証拠説明を見ると、被告人Bの供述
中証拠に採られているのは第一審公判における同被告人の供述のみであつて、司法
警察官等に対する供述は証拠に採られておらず、右公判における供述が強制による
ものでないことは公判調書の記載に徴し明かであつて、論旨は理由がない。
 (二) 同論旨第二点は、銃砲等所持禁止令違反の罪に問われたことに対する不
服であるが、被告人が匕首を不法に所持した事実は原判決が証拠により認定したと
ころであつて、この論旨もまた事実認定に対する非難にほかならず、上告の適法な
理由にならない。
 (三) 別城弁護人論旨第一点は、原判決には法条の適用を誤つた違法がある、
というのである。なるほど原判決の適条の部分には「被告人等の所為中窃盗の点は
各刑法第二三五条」とあり、そして事実摘示の部分には、被告人Aの犯罪事実とし
て賍物運搬の事実だけが記載されているのであるから、文中「各」の字を「被告人
等」にかけて読むと、被告人Aにも刑法第二三五条を適用したことになるのである。
しかし右の「各」を「窃盗」にかけて「二十数件の窃盗については各刑法第二三五
条」という意味に読めば、所論の不都合はないことになる。原判決の措辞は適当で
ないが、その趣旨が後者であることは疑のないところであつて、論旨は理由がない。
 (四) 同論旨第二点は、被告人Aに対する起訴事実は窃盗であるのに、原判決
が賍物運搬として断罪したのは、不告不理の原則を破るものだ、というのである。
しかし、賍物運搬は窃盗の事後においてこれに便益を確保する犯罪であるから、窃
盗罪の公訴事実中には賍物運搬罪の事実をも含むものと解すべく、罪名に変更があ
つても、起訴事実の同一性を害するものでないこと、当裁判所の判例とするところ
であつて(昭和二四年(れ)第一七四五号同年九月八日第一小法廷判決)、論旨は
理由がない。
 よつて、旧刑訴法第四四六条に従い、主文の通り判決する。
 以上は当小法廷裁判官全員一致の意見である。
 検察官 岡本梅次郎関与
  昭和二五年六月一三日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

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